サツマイモと日本人 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569791920

作品紹介・あらすじ

サツマイモは米やパンよりも安価で、栄養価が高い。しかも、痩せた土地でも容易に育つ。近年、アフリカでは収穫量が増え続け、いま、宇宙ステーションでの宇宙メニューのエースと目されている。サツマイモが琉球に伝わったのは江戸時代のはじめ、約四〇〇年前のこと。「救荒作物」として飢饉に苦しむ民衆を救い、日本の各地へ栽培が広まっていく。そのことは、各地にサツマイモにまつわる寺社が多数建てられていることでも示される。本書は、こうした各地にある芋物語の足跡を訪ね、町おこしの現場を取材して歩く。

感想・レビュー・書評

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  • 資料ID:C0031760
    配架場所:本館2F新書書架

  •  「サツマイモ」の本である。本書によると、「サツマイモ」は、原産地が中南米で、紀元前8000~1万年前のペルーの遺跡に「サツマイモ」の根の化石が発見されているという。
     日本への伝来は万暦33年(1605年)だという。たしか関ヶ原の戦いが1600年だったから、そのころかと思った。スペインの南米侵略等の大航海時代の到来がサツマイモやジャガイモの世界への拡散を後押ししたのだろうと思った。
     しかし、本書は「各地のカライモ」「労研饅頭」「まちおこし、まちづくり」等を取り上げているが、詳細で冷静な研究ではなく、エピソードの羅列のようにも思える。詳細な考察の視点はあまり見当たらない。
     また、救荒作物としての「サツマイモの行く道」も、簡単な紹介にとどまっているようで物足りない。
     本書は、サツマイモを材料に簡単なレクチャーを並べただけの、とても残念な本であると思った。

  •  書店でタイトルも見た瞬間に購入してしまった! なんで「サツマイモ」なんてニッチな題材の新書を平積みにしていたんだろう、あのTSUTAYAは。特別、サツマイモが好きなわけでもなく、言ってしまえば、全く興味の持てない本だったのだけど、まーグイグイ引きこまれました☆ こんな出会いがあるから書店は面白いんだなー。

     不勉強にして、今まで意識をしたことすらなかったのですが、サツマイモは昔から日本人を支えてくれていた食料らしい。とにかく生産性が高く、飢饉の際やら戦時中やらには無くてはならないものだったようで。また、サツマイモが人々を救っていたのは日本に限った話でもないそうだ。本書の冒頭には筆者がベトナムで出会った人物のことばが紹介されている。「アメリカを打ち負かしたのは、ベトナムの民の勇気と、サツマイモだったのかもしれませんね。」うわ、サツマイモすげー! 以前、インターネットで「アメリカ人が一番好きな野菜はジャガイモ」という記事を読んだことがあります。それって、すごく因果めいていて面白い。ベトナム戦争といえば、米ソの代理戦争とされているけれども、実はサツマイモVSジャガイモの代理戦争でもあったのだ!(←もちろん、冗談ですけれどもぉ)

     そんな、昔から人々を支えてきたサツマイモ。どうやら、宇宙開発をはじめとして、未来食としても期待されているとのこと。西条真二さんのマンガ『鉄鍋のジャン!』では、未来食として昆虫やとにかく柔らかいものが想起されていたけれど、意外なところに未来食は転がっているのかも。あれだ、大切なものは実はそばにある的な。

     日本史を勉強した人からすると、サツマイモと言えば、「甘藷先生」と称される青木昆陽を思い出すだろうと思います。しかし、本書で青木昆陽について触れられているのは約250ページのうち、なんと3ページのみ。換言すれば、青木昆陽を3ページで収めなければならないほどに、他に「サツマイモと日本人」について記述する事柄があるということ。そんなことから、サツマイモの奥深さを推察すべしといった感じ。
     とはいえ、それ故にか、全体的に雑多な印象を受けたのは残念なところでもあったりなんかしちゃって。


    【目次】
    はじめに
    第1章 戦場のサツマイモ
    第2章 銃後では
    第3章 サツマイモの来た道
    第4章 神になった日本人
    第5章 カライモのセン
    第6章 出・天草
    第7章 「サツマイモ」VS「ジャガイモ」
    第8章 労研饅頭
    第9章 こんな出稼ぎもあった
    第10章 町おこし、まちづくり
    終章 サツマイモの行く道
    あとがき

  • 飢饉・戦中・戦後に人々を救った作物・サツマイモ。本書を読むことによって、その偉大さが理解できた。

    それだけでなく、サツマイモ畑に遮熱効果がありヒートイランド対策にもなったり、アフリカの食糧難の救済策、宇宙食に適していたりとサツマイモは今後も大活躍しそう。

  •  戦中・戦後の食糧難を支えたサツマイモ。ややノスタルジックというか古色蒼然とした切り口ではあるが、確かにこの芋なくして戦中の食事は成り立たず、いまだ60歳以上の人々の60半分以上が芋といわれればジャガイモではなくこちらを思い浮かべるという。そんな日本人の飢えや窮乏と密接に関わってきたサツマイモにまつわる歴史的な事柄から、町興しへの利用、宇宙食についてまで幅広く取り扱う。全体にライトな出来上りで、身近なものが題材名こともありさっぱり読めてよし。

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著者プロフィール

1940 年(昭和15)、旧満州(現・中国東北部)生まれ。1964 年、名古屋大学法学部卒。同年、中日新聞社(東京新聞)に入社、四日市支局、社会部記者、バンコク支局長、東京本社文化部長などを経て、1998 年、編集委員兼論説委員。2001 年から2010 年まで桜美林大学教授。現在、同大名誉教授。
主な著書に、『原点・四日市公害10 年の記録』(ペンネーム小野英二、勁草書房、1971 年)、『震災無防備都市』(共著、勁草書房、1979 年)、『タイ最底辺』(勁草書房、1984 年)、『現場が語る環境問題』(同、1995 年)、『夢みたものは――アジア人間紀行』(幻冬舎、1996 年)、『ジャガイモの世界史』(中公新書、2008 年)、『レバノン杉物語』(共著、桜美林学園出版部、2010年)、『風と風車の物語』(論創社、2012 年)など。
現在、「古文書一九会」「火曜古文書会」「横浜古文書を読む会」会員。

「2024年 『江戸の風に聞け! 武州磯子村から』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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