無縁社会の正体: 血縁・地縁・社縁はいかに崩壊したか

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569794143

作品紹介・あらすじ

32,000人の孤独死、1,500万の単独世帯、40,000件の熟年離婚…。「一人ぼっち社会」はどこまで広がるのか?孤独や貧困を救うにはどうすればよいのか。

感想・レビュー・書評

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  • ちょっとまとまりがない。

  •  同志社大学教授のエコノミストが、日本の「無縁社会」化の現状を概観して論じたものだ。

     「無縁社会」という言葉の発信源となった「NHKスペシャル」をまとめた本も私は読んだが、比べてみれば、概説書としては本書のほうがよくできている。「無縁社会」とはいかなる現象なのかが、「無縁死」(誰にも看取られず亡くなること)、未婚者の増加、家族の絆の希薄化などのテーマ別に、手際よくまとめられているのだ。
     「とりあえず一冊だけ『無縁社会』関連書を読んでおこう」と思っている人には、本書がオススメ。

     ただ、「よくまとまった概説書」以上のものではない。目からウロコが落ちるような分析は一つもなく、私たちが漠然と抱いている「無縁社会」のイメージが追認されていくのみの内容なのだ。
     
     とはいえ、さまざまなデータと図表を駆使して「無縁社会」の現状が数値の上から明らかにされていくので、資料的価値は高い。

     あと、本書はパートごとの出来不出来がかなり激しい。
     歴史に目を向けた記述は、総じてよい。たとえば、町内会の歴史的変遷をたどったり、哲学における「共同体主義」の歴史をたどったりしたくだりは、たいへん勉強になった。
     
     対照的に、最先端の現象を論じた部分に、薄っぺらい論述が目立つ。
     たとえば、「草食系男子」と「肉食系女子」について大真面目に分析しているのだが、これが失笑もの。そもそも、こんなチャラい流行語の中に、分析に値する内実があるとはとても思えないのである。本書全体の中でも、このくだりは浮きまくっている。

  • 将来が不安になる。やはり家族の重要性をあらためて認識した。

  • 題名の通り、無縁社会についてではなく、その原因について述べたもの。少子化、単身者の増加などが挙げられている。
    離婚の増加について、寿命が延びたことで、長い間一緒にいることは耐えられないと考えることが増えたというのは面白い。

  • TOPPOINT 2011年3月号より。

    著者は同志社大学教授。

    日本が突入した「無縁社会」の実態。

  • 私は核家族の家で育ちましたが、祖父母の家に行くことも年に1回はあり、今もそれと同じような生活をしています。ところが周りを見回してみると独身者の割合が増えています。


    少子化と騒がれていますが、保育園の待機児童の数は統計の取り方で減少しているかどうかはともかく、働く女性にとって子育てとの両立は依然として難しい状態は続いているような気もします。

    この本の著者の橘木氏によると社会を構成してきた、血縁・地縁・社縁は崩壊し始めていると解説していますが、現在の社会がどうなっているかは、自分が地域や職場との関係をどのように捉えているかによって大いに変わるものだと思います。

    特に、以前の家族形態を考える場合、日本人の平均寿命は40歳程度と短命であったことを考える必要があると実感しました。また、町内会がつくられた経緯に関する記述(p137)は興味深いものでした。

    以下は気になったポイントです。

    ・自殺者数の年度推移は、1998年に3万人を超えてから高止まり、1978年は2万人程度(p19)

    ・単身者が増えているのは、高齢者の単独世帯と、若者で結婚しない独身者の二つが増えているから(p28)

    ・1921年から戦後にあたる1945年までは、平均寿命は40~50年程度であり、高齢者の数は少なかったので、老親の面倒を誰が見るといった問題は起きにくかった(p36)

    ・高齢者の平均所得は306万円で、平均所得以下の高齢者が6割もいる、全世帯の所得平均は566万円(p51)

    ・日本の貧困は、母子家庭と高齢単身者の2つのグループが代表的(p62)

    ・1910年ころまでは離婚率は1.2%、婚姻率は9%、1960年ころから婚姻率9%以上、離婚率1%以下、2000年頃から婚姻率6%程度、離婚率2%である(p73)

    ・女性が男性にもとめる3Cは、快適な(=十分な収入のもとで余裕のある生活、comfortable)、通じ合える(=価値観を共有するスタイル、communicative)、協力的(=家事や育児に協力的、cooperative)である(p87)

    ・男性が女性にもとめる4Kは、かわいい、家庭的、賢い、(体重が)軽い、である、女性が価値観を変化させたのに対して、男性は変えていない(p87)

    ・肉食系女子の場合は、自分の夫のお金(給料)は出世はあきらめて、自分の息子にそれを期待するかもしれない(p103)

    ・日本の平均寿命は短かったので、親と同居するのは短期間、大家族制は想像されるほど多くなかったのが実態(p132)

    ・日本が戦争に向けて総動員体制に入ったときに、政府は町内会という組織を意図的に作って、市町村の下部構造として行政補助機構の役割を果たそうとした(p137)

    ・町内会は、徴兵制の補助事務担当、米などの配給事務を扱うこと、徴税業務の支援といった市町村が行うべき業務の補助を、多くの場合無償で行う必要があった(p137)

    ・1994年に結婚した人のうち、63%が仲人を立てていたが、2005年は1%であり、全国的にも急減しているのが現状(p169)

    ・戦前の昭和11年に全国規模で法制化された方面委員制度は、貧困者をみつけて救済が必要かどうかを見極める人であったが、児童委員も兼ねていた、無報酬であるが名誉職と言われていて地域の名士や有力人がその職についていた(p227)

    2011/4/3作成

  • 2011-33 数字が主で期待した内容とは違った。数字以外は目新しいことは書いていない。

  • 徳島新聞2011.02.21夕刊/共同通信か?
    コーナー「そと、2冊」で飯田泰之氏が紹介。

  • (2011/1/23読了)いま流行りの「無縁社会」ですが(笑)一部にあるような「古き良き有縁社会に戻りましょう」という本ではありましぇん。血縁・地縁・社縁はもう崩壊したんですよー
    いろんな統計資料が載ってて興味深い。

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著者プロフィール

京都女子大学客員教授,京都大学名誉教授
1943年兵庫県生まれ。
小樽商科大学,大阪大学大学院を経て,ジョンズ・ホプキンス大学大学院博士課程修了(Ph.D.)。京都大学教授,同志社大学教授を歴任。元日本経済学会会長。
専門は経済学,特に労働経済学。フランス,アメリカ,イギリス,ドイツで研究職・教育職に従事するとともに,日本銀行,経済産業省などで客員研究員を経験。
和文,英文,仏文の著書・論文が多数ある。
〔主要近著〕
『日本の構造:50の統計データで読む国のかたち』(講談社,2021年)
『教育格差の経済学:何が子どもの将来を決めるのか』(NHK出版,2020年)
『“フランスかぶれ”ニッポン』(藤原書店,2019年)
『日本の経済学史』(法律文化社,2019年)
『21世紀日本の格差』(岩波書店,2016年)
『フランス産エリートはなぜ凄いのか』(中央公論新社,2015年)

「2021年 『フランス経済学史教養講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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