「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書 179)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569796208

感想・レビュー・書評

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  • 通貨自体は数あれど、世界中で決済や貨幣価値を図るモノサシとして使われる基軸通貨の性質と在り方を問う本。

    基軸通貨の歴史を概観し、それを踏まえて今後の日本円の在り方を考察している。

    経済学や世界史にあまり詳しくない私でも特に引っかかることなくスラスラと読めた。

    わかりやすい記述で1ドル50円時代の到来を予想し、読者の「まさか!」という考えを一つ一つ説得していく。

    新書という容量の制限と一般向けに専門的な内容は避けている点があるため、説得力にかける部分が散見される。

    これを補っても現在の日本を取り巻く世界情勢や、震災を経験しても揺らぐ事のなかった円高に興味がある人には一読の価値アリである。

    ぜひこれを読んで感じた「?」を埋めるようなわかりやすい入門書を著者にお願いすると共に、我々読者は他書で知識を身につけて「?」を解決する努力が必要だろう。

    それだけの興味を掻き立ててくれる本である。

  • これ、面白かったです。
    基軸通貨をラインの黄金の指輪に見立て、その変遷を説明しているのですが、読み物として、面白い。

    何も知らない私には、大変勉強になりました。

    そして、金について考えさせられますね。通貨とはなにか。まぁ答えが書いてあるわけですが。

  • 通貨の歴史と役割、これからのあるべき姿を解説している。
    浜矩子氏は、今後も円高は進み(言い方を変えればドル安が進み)、1ドル50円の時代がやがて来ると言う。
    TTPにも否定的な立場のようだ。

    また、最も印象に残ったのは、基軸通貨の定義
    『その国にとって良いことが、世界中にとってもいいことであるという関係が成り立っている国の通貨』

    なるほど♪

  • 1ドル:50円という著者の根拠は正直同感できませんでしたが、基軸通貨の移動の歴史については非常に参考になりました。
    今のTPPの流れについても違う側面から考えることができましたし、企業のグローバル化の先に何があるのか?こちらについても自分なりに一つの方向性が見いだせました。
    そういう意味では参考になった1冊ですね。。

  • 本の帯に付いていた著者の写真がコワかったですが、読んで良かった1冊。

    円高に騒ぐ日本経済だが、実は超円高の先に待っている世界は悲観的なものではない。
    ドルが基軸通貨がはなくなった時、強い円はかならず日本のためになる。
    目から鱗な感じでした。

  • この本はなぜ我々は「円高・円安」に一喜一憂しなくてはならないのか、そもそも「通貨」とは何なのか…。というテーマを綴ったものです。

    僕もかつては円高円安に翻弄された一人ですがそれでもなるほどと思いました。 通貨についてはさまざまな議論や意見があって、1ドル200円がいいですとか。彼女のように1ドル50円の時代が来るですとか。本当にいろいろな意見があって、どれが本当に正しいのかは僕もわかりません。もっとも、そんなことがわかっていれば僕は今頃億万長者の仲間入りでしょうね。

    本書は「通貨」をめぐる歴史や、基軸通貨としてのドルがもはやその役目を終わっているということ。ドル全の基軸通貨であったポンドや「女王陛下の銀行」といわれたイングランド銀行の興亡。そして通貨の未来と、円の行方についてさまざまな角度から語られていて、かつて、自分が金融関係の本を読み漁っていたことを思い出して楽しく読んでいました。

    自分が読んでいて一番面白かった箇所はやはり、ロンドンはシティの成り立ちと、商業銀行と国の銀行との「二つの顔」を持つイングランド銀行の歴史でした。大英帝国の歴史を通貨から見るというのもなかなか面白いものです。今この記事を書いているとき円は1ドル70円台の後半でした。ユーロも一時期は1ユーロあたり160円くらいだったことを思い出します。

    それがあれよあれよという間に1ユーロ100円くらいまで下がったというのはいかにEUの経済圏が危うい基盤の上に成り立っているんだな、という解釈を僕はしています。話はそれましたが、通貨の行方は今後も見守っていくべきテーマのひとつとして、この本はその参考になっていくと考えています。

  •  日常で身近なものである通貨とは何かを考えさせられる本です。通貨が誕生した頃から現代に至るまでの通貨の歴史を紐解きながら、通貨の将来を予測しています。

     以前からかなり話題になっている本で、新聞広告や書店でも代替的に宣伝されていて気にはなっていました。他の方々のレビューを見ると、賛否両論のようですね。個人的には、通貨の歴史を俯瞰できるだけでも著書を一読する価値はあると思います。

     著者の持論としては、アメリカはドル安を容認しており、その流れが続くと円に対するドルの価値が下がり、結果的に1ドル=50円の超円高になるとの考えです。1ドル=50円というフレーズは、物凄いインパクトで、著書のサブタイトルにもなっているため、良い意味でも悪い意味でも目に止まりやすいです。

     ただ、アメリカもオバマ政権が変われば政策も変わってしまう可能性はあります。アメリカの雇用、輸出を増やすためにドル安を容認している状況がいつまでも続くとも限りません。今やアメリカ企業は、アメリカ国外に進出して、中国を始めとする諸外国に工場を建設して事業展開している時代です。

     日本人は、通常日本円だけを所有して生活しています。日本円は海外からも安全とされて、世界のリスク逃避マネーとして最近では円が買われやすい傾向が続いています。ただ、これも日本円が「安全」という確証は100%ではなく、大部分の日本国債を保有している
    日本企業や日本国民が、将来日本国債を手放して、ギリシャのような財政危機を引き起こす可能性もあると思います。

     将来、1ドル=50円になってもならなくても、通貨に振り回されずに対処するスキルを養っておくことは必要と思います。通貨の歩んだ道を振り返りながら、将来どうなるか自分で考えておく価値はあるかと思います。

    目次

    はじめに―通貨を知ることは、世界経済を知るということ
    第1章 我々はなぜ、通貨の動きに一喜一憂するのか?―「一ドル五〇円」に向かいつつある世界にて
    第2章 基軸通貨を巡る国家の興亡―世界経済を支配するのもラクではない
    第3章 通貨の「神々の黄昏」―「まさか」の連続が世界を震撼させた
    第4章 これからのドル、ユーロ、そして円と日本―基軸通貨なき時代はどのように進んでいくのか?
    終章 来るべき「二十一世紀的通貨」のあり方とは?

  • 筆者の言う「1ドル=50円」はただの脅しじゃなく、金融政策に絡む重要な主張を含んでいる。しかし、こんな薄い本では語りきれない。実際、最後の方の「全く新しい円の時代」のところなんて、さらっと触れられているだけだ。本書は「基軸通貨史」を振り返りアタマを整理する本として読むのが良いだろう。

    政策主張の部分を膨らまして考えるに、筆者の対局に高橋洋一のような金融緩和論者をもってくるとわかりやすい。

    高橋洋一はドルとユーロが黄昏(タソガレ)る現状を一種の近隣窮乏化政策と捉え、金融緩和に踏み出さない日本は「自国窮乏化政策」を採っていると批判している。だから円高で一人負けするのだ、ということだろう。

    筆者は違う。基軸通貨の黄昏によりウラ基軸通貨たる円に期待が集まっているのだから、そんな時に日本までもが金融緩和に踏み出せば、円キャリートレードを通じて世界に収拾のつかないほどのマネーがばら撒かれる、という主張だ。日本は成熟国になったのだから、いつまでも安い通貨で輸出立国という成功体験に拘ってはいけない、という主張も説得力がある。

    日本は世界の一端を支える債権大国、これは事実だ。そして「有事の円」が期待されているのも事実だろう。残念ながら、本書ではだったらどうする、の部分は薄く、地域通貨の話もソリューションじゃないと思う。ソリューションを知るには、筆者のほかのどの本を読めばよいのだろう?

  • う~ん、ちょっと現実離れした感があります。

    2章の基軸通貨を巡る国家の興亡は、通貨の歴史をざっと眺める助けになると思います。

    全体として、通貨の動きを理解するために、ストーリーを作り出そうと工夫されている気持ちは伝わってきました。

  • 浜のり子著「通貨を知れば世界が読める」PHPビジネス新書(2011)
    *通貨と貨幣の違いを一言で表すとすれば、「貨幣に足が生えると通貨になる」ということだと筆者は整理している。
    *1939年、ドイツ軍のポーランド侵略を機に第二次世界大戦が勃発。すでにこの時期基軸通貨としての地位を奪われていたイギリスポンドは、この対戦により完全に基軸通貨の地位を譲り渡すことになる。この大戦の敗戦国であった、日本、ドイツ、イタリアだけではなく戦勝国であったイギリスやフランスにも深い傷をのこしたまま終結。この後、金本位制策を維持できるような国はアメリカしか残されていなかった。
    *1783年に独立戦争に勝利してイギリスから独立して以来、ついにアメリカがイギリスを経済的に追い越す場面がやってきた。1944年7月に開かれたブレトンウッズ会議こそが基軸通貨ポンドの終わりを告げる瞬間であった。ここではドルを基軸通貨としてIMFと世界銀行を両輪とするブレトンウッズ体制が提唱された。これによって、金本位制を維持する唯一の通貨ドルとの関係でIMF諸国の通貨価値が決められることになった。日本は一ドル360円という体制である。第二次世界大戦の終結はその一年後のことであった。
    *このような状態が戦後しばらくの間続くことになるが、20年もしないうちに、その栄光にかげりがみえる。アメリカが保有する金の量よりも巨額のドルが世界中を駆け巡るようになったためである。ついに1971年8月にニクソンショックである「ドルと金との交換停止」を発表。27年におよんだブレトンウッズ体制は崩壊し、ドルは基軸通貨から退位をし始めた。すぐに、日本では、固定相場の変更が行われ、360円→308円→270円→240円と円高が進む。
    *ニクソンショックを機にアメリカ経済は猛烈なインフレになっていく。なぜなら、誰でも簡単にドルが刷れるようになる。次の山場が1985年のプラザ合意であった。1981年に大統領に就任したレーガンの政策はレーガノミクスといって賛美していたが、これがアメリカのドルの更なる下落を引き起こす終わりの始まりであった。この時期のアメリカのインフレ率は最低のところで収まっていた。低インフレの下での高成長という理想の状態が達成されたかに見えた。しかし、インフレ率があがらない原因は別の所に会った。1つが輸入の急拡大であった。国内需要が急激に増加すれば、普通はものの物価が上がるが、輸入が増え国内の供給不足を補ってくれたのだ。
    *サブプライムローンというのは、それが問題であるのではない。サブプライムローンの証券化が問題であるのだ。リーマンチョックによって真っ先に危機に陥ったのは投資銀行であった。そのうちゴールドマンサックスと、モルガンスタンレーは驚く方法で回避をのりこえようとした。それは、銀行持ち株会社へのわらじ替えである。銀行持ち株会社となれば、投資銀行と商業銀行の2足のわらじをはくことができる。これが重要であり、なぜなら、FBRの管轄下に商業銀行がはいり、その監視の目にさらされるが、そのかわり公的資金注入を得ることができるためである。
    *次の基軸通貨としてユーロの期待が高まったがそうにはならなかった。2008年リーマンショックによる信用不安が世界中を揺るがしている最中、アイルランドがある発表を行った。それは国内預金の全額保護である。通貨としてのユーロが統一されても実際の金融政策については各国が主導権を握っていた。
    *膨張を続けるアジア経済とそれを動かしていた円。確かに根強い円高恐怖賞が根本的な体質の変換の行くてを阻んだ。円の価値が上がることは日本経済の成熟度の証に他ならない。その現実から目を背けたばかりに、その後の日本経済は実に長期にわたって代償を払い続けることになる。しかしながらプラザ合意を機に日本企業が新たなチャレンジを始めたのは事実である。それは、円高を背景にしてのアジア進出である。日本にとってさらに都合が良かったのが、東アジア各国がドルと連動して通貨価値が動くドルペックという固定通貨体制をとっていた。アジア地域の高成長に日本という債権国からの投資資金が新興国で成長を生んだ。しかし、成長への投資も行き過ぎれ我バブルの種をまく。円にあおられた経済の景気過熱により、受け入れ側の各国はインフレ高とそれに伴う対ドル固定レートの切り下げ圧力にさらされるようになった。それをさけるべく各国は金融の引き締めに動いた。しかし、円高対応の日本による金融大緩和による影響がでてきた。つまり、超低金利の日本から引き締めで高金利化したアジア諸国へと向かう投機資金の流れが生まれたのだ。工場進出という直接投資がこのころおこった日本のバブル崩壊によって頭打ちになった代わりに、一攫千金をねらう短期の投資の動きがアジア投資の主流をしめるようになった。
    *アジア通貨危機の犯人は実は日本であった。つまり円である。アジア成長の奇跡を後押しし、そのバブル化をあおり、旧冷却をもたらし、諸通貨を暴落に至らしめた。ここに円の「隠れ基軸通貨」的な側面がある。影響力は大きいが、表の顔はドルの行方や、ヘッジファンドの暗躍に翻弄される弱体通貨風である。たよりなさそうな世を忍ぶ仮の姿の背後に、地球経済を震撼させる債権大国の底力が隠れている。本当に頼りないのは、その底力に対する自覚不足と管理能力不足である。子供じみた振る舞いとの決別のときが来ている。大人の国の大人の通貨を音ならしく管理する覚悟が求められている。
    *通貨危機の当事者達に対して、金融引き締めを求めたのはIMFであった。バブル崩壊の打撃に苦しんでいる国々にデフレの追い打ちをかけていった。その原因はIMF自体の体質の問題である。IMFは1944年のブレトンウッヅ協定によって生まれた。これはドル基軸通貨の側面の担い手として誕生した。アメリカ以外の国々にたいして、ドル不足を起こさないように監視をする。これが基本体制である。今は世の中は変わった。しかしIMFの行動はドルの希少性が前提となっている。
    *アメリカの大統領は、毎年の年頭に、一般教書演説を行う。ここで向こう一年間の政策の方針の背景と考え方が語られる。その意味で注目の演説となる。2010年にはオバマ大統領はむこう5年間でアメリカの輸出を倍増させるという輸出倍増宣言を行った。つまり通貨政策上はドル安の方が良いのである。さらに2011年には、本年以降世界で誕生する雇用機会は全部アメリカで生まれる物でなければならない。今後おこる新しいイノベーションは全部アメリカでおこる物でなければならない。輸出倍増の次は、雇用独り占めであった。この路線で行けば、明らかにドル高は国益に反する。

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著者プロフィール

1952年生まれ。同志社大学大学院ビジネス研究科教授。
主著=『新・国富論――グローバル経済の教科書』(文春新書、2012年)、
『老楽国家論――反アベノミクス的生き方のススメ』(新潮社、2013年)。

「2014年 『徹底解剖国家戦略特区』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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