なぜ風が吹くと電車は止まるのか (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569803487

感想・レビュー・書評

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  • レビュー省略

  • タイトルだけ見ると「風」に限定した内容に思えるが。実は風、雨、雷といった天災から火災まで扱い、電車の弱点とその対策についてわかりやすく解説している。電車自体だけでなく、架線、線路、鉄橋。駅舎、踏切、信号にも言及し、鉄道災害に対する現在の対策状況も知ることができる良書である。
    ちなみに、車内に閉じ込められた時に液晶画面に時間が掲示されていると助かるが。。。という文章があったが、本書で度々登場するJRのE233系車内液晶画面には、時刻が明示されますよ。

  • 風を中心に、災害と鉄道についてまとめられている一冊。

    地震、暴風雷雨、鉄道にはどのような危険があり、どのような備えがあるのか。この本を読むと、その答えが見えてきます(ただ、結論については断言できないところも多々みられます。それらはあくまで一つの答え、推測や考察というべきものでしょう)。

    たとえば僕は、「最近なんか鉄道がよく止まるな・・・」と思うことがよくあります。その多くは人身事故ですが、とりわけ首都圏では、京葉線が暴風雨のために運転見合わせなどになっているのをよくみかけます。その原因の一つには、京葉線が海に近いところを走っていることもありますが、なにより運転見合わせのための基準自体が強化されたことにあるそうです。

    こんにちでは、都市部の人びとの移動が鉄道に依存していることは明らかであり、同等の輸送力をもつ手段が他にないことも明らかです。だからこそ、鉄道はこれでもかと念入りに対処してゆくしかないわけですね。幅広い話題をとおして、鉄道が、節電、安全性、災害などといったさまざまな問題に直面していることが分かります。

    思えば、計画停電で鉄道が止まってしまうというのは、鉄道会社は電気の供給がとめられることなど考えもしていなかったのでしょうか・・・。

    • もの知らずさん
      本音を書くと、読んでいて「へえー!」と思っただけだった。読後にあれこれ考えさせられるということは”ほとんど”なかった(おい
      本音を書くと、読んでいて「へえー!」と思っただけだった。読後にあれこれ考えさせられるということは”ほとんど”なかった(おい
      2013/08/25
  • 東日本大震災を受けて,災害による鉄道事故とその対策をまとめてる。雑学本だけど意外に体系だってて良い。地震,大雨,強風,落雷,そして過密な都会での運行トラブル。自然の猛威には参るけど,被害が出る度に技術や制度の変遷で切り抜けていたんだなと感心。
    風による徐行,運転停止などちょっと抑制が効きすぎのとこもあるような気はするけど,この本にはそういった批判はなく,鉄道会社に全面的に理解を示している。そこは賛否両論かな。

  • 鉄道工学系の話題

  •  電車を利用していて遭遇する場面がある。それは、電車の運転間隔を調整する、あるいは運転を止める。人身事故で調査中、安全確認後に運転再開というアナウンスや、強風や地震で一時運転停止と言ったことを聞く機会がある。

     利用者も止まると困るが、運航している側も困る。享年のNHKで放送されていた「ブラタモリ」の中で、東京メトロの基地を訪れていたタモリと久保田アナウンサー。突然、事故か何かで、運航時間変更に追われていた職員の姿を映し出していた。見ていて大変だなあと思ったのを覚えている。

     著者は、地震が発生すると、なぜ運転再開までに長い時間を要するのか?として次の6つの手順を挙げている。

    1. 列車を止め、続いて運転士は列車の運行を一括して管理する
    2. 指令所の指令員、あるいは駅と連絡を取って被害の状況を報告する
    3. 駅と駅との間に停車した列車の利用客の避難や誘導を行う
    4. 線路や施設の点検と復旧を実施する
    5. 運転を再開するに当たっての運行計画の策定や乗務員、車両の手配を行う
    6. 運転再開前に、行政など関係機関や他の鉄道会社との連絡や調整を実施する

     いろいろやることがあって、地震が止まったらすぐに出発進行とはいかないようだ。特に私鉄と東京メトロがつながっている路線ではそうなる。たとえば、東急田園都市線と東京メトロ半蔵門線、東武東上線と東京メトロ副都心線あるいは有楽町線がいい例だ。(東京の事例ばかりで申し訳ないが、モクモク羊の生活圏内が東京近辺なのでどうしてもそうなってしまう) 

     いくつもの路線がつながると便利なことは、乗り換えなしで目的地まですいすいと行けることだ。その反面、途中で事故が起きてしまうと一見関係のない路線でも被害にあい、運航見合わせという結果になることがある。その理由として、折り返し運転する余裕がないことがある。折り返し運転をするためには、場所と人員を確保する必要がある。しかし、民営化以来、折り返し用の人員削減を行った。さらに、運航管理をCTC( Centralized Traffic Control device 列車集中制御装置)が担うようになり、折り返し運転をこまめにするのが難しくなったとある。

     安全と言えば、ホームドアの設置が気になる。ホームドアがつけば安全性が高まっていいと思うが、付けるには多額の費用が掛かるとある。さらに著者によれは、飛び込みが多いのは通過駅だそうだ。東京駅だと人がいて仮に飛び込もうとしたら誰かが止めることが大いにありうる。それに、最近目に付くのが、停止位置の変更のために列車をちょっと動かすことに遭遇したことが何回かある。なかなか停止位置に止まるのが難しいのかなと思う。

     普段お世話になっているインフラだけに、運行がどうして止まるか気になって今回の本を読んだ。安全の確保には細心の注意を払ってほしいと思う。

  • 東日本大震災後、福島第一原発の事故で電力の供給が危うくなった
    (東電と政府曰く…だが)。そこで始まったのが計画停電という
    名ばかりの無計画停電だ。

    病院や自宅で酸素吸入をしている病人の方も大変だったろうが、
    混乱を極めたのが公共交通機関として他には比べるものがない
    くらいの大量輸送量を誇る各鉄道会社だ。

    間引き運転ならまだいい方で、鉄道会社によっては運休区間が
    あった。私が利用している地元駅も運休区間に当たっていた。

    始発駅となったふたつ先の駅は人で溢れていたという。私は
    「電車、動いてません」と会社へ連絡して休んだんだけどね。

    先の震災の時に限らず、台風や強風で遅れが出たり、運休したり
    する鉄道だが、これもみな、利用客の安全の為なんだよね。

    移動手段として非常に便利な鉄道。利用客は「動いて当たり前」と
    思っているから、遅延や運休になると駅員さんに食ってかかっている
    人を時折見かける。

    動いているはずの電車が動かない。確かに不便だけれど、自然がもた
    らすものなのだから駅員さんに喚いてもどうにもなるもんじゃないの
    になぁ。

    だって、台風や突風での事故って結構あるじゃないか。脱線・転覆
    なんてことになったら約束に送れるどころか、直に命に関わっちゃう
    のだぞ。

    本書はどうして電車が止まるのかを、過去の事故の例を引き合いに
    して解説している。

    雨でも、風でも、電車は止まる。その基準はどこにあるのか等、分かり
    やすく書かれているので今度、駅で駅員さんを脅している人を見掛け
    たら本書を渡してあげようか。笑。

    世界を見渡しても安全性が格段に高いと言われる日本の鉄道だけれど、
    まだまだリスクはあるんだね。日々、安全に運行出来るよう対策して
    くれている鉄道会社に感謝☆

  • 最近電車が止まることが多くなったと思っています、人身事故が主な原因のようですが、あまりにも頻繁に起こるので、関係者(駅員さんや乗客)もかなり慣れてきている感じがします。

    それでも台風や大雨が近づいているときは、ほんの僅かの差で普通に家に帰れたり、1時間以上も電車の中で缶詰になってしまったりすることが、この数年間体験したことです。

    この本は、電車が自然災害(台風、地震等)やテロによって受ける影響等について、梅原氏が解説したものです。鉄道にまつわる話について、楽しく読ませてもらいました。

    以下は気になったポイントです。

    ・関東大震災時に、脱線事故が11件、23人が死亡、120人が重軽傷、102人が行方不明となったが、今回の東日本大震災では1件の脱線事故もなかった、地震の揺れを察知して急停止させるシステムがあったから(p15)

    ・コンクリート路盤は、全国5.9万キロのうち、わずか7.9%の4691キロに過ぎない、そのうちの54.6%は、新幹線のもの(P32)

    ・新幹線の地震対策として、沿線地震計は40ガル(震度4程度)の地震を感知すると、即座に架線へ送電中止をする、東京地下鉄では、震度5相当の100ガルの揺れを感知すると、自動的に列車をとめる(p35、43)

    ・東日本震災における銀座線での苦い経験から、大地震が起きた場合、わずかな路線だけを復旧させても、かえって混乱が生じることが判明した(p53)

    ・車両用の塗料はすべて水性、実は車両を燃えにくくするため(p67)

    ・八ツ山トンネルの品川駅側の入口は谷間となっていて、品川駅・新横浜駅の双方から下り坂に位置するなど、冠水しやすい条件を備えていたので、1993.8.27に冠水した(p70)

    ・電気防食工法といって、鉄筋に直流の電気を流して腐食を防ぐ方法が採りいれられている(p106)

    ・今日の鉄道会社で24時間稼働する発電所を所有するのは、JR東日本、関西電力の2社に過ぎない。架線からバスに電力を供給するトロリーバス(p161)

    ・各駅に停車する列車のほうが、電力消費量が少くなる要素として、回生ブレーキを搭載しているから(p171)

    ・最新型のN700系という新幹線は、半径250メートルのカーブでも直線区間と同様に時速270キロで走行可能、カーブを通過する際に生じる強い遠心力を打ち消すために、車体をカーブの内側に1度傾ける車体傾斜装置を搭載している、これにより5%の消費電力がカットできた(p174)

    ・三大交通圏における1日当りの鉄道利用者数は、首都交通圏:1030万、京阪神:447万、中京:103万人、往復などを考えると、正味利用者数は、400,200,40万人台となる(p184)

    ・2011年の東日本大震災で、山手線が長時間不通になったのは、新宿ー新大久保間に架けられた橋梁を支える盛土が崩れたから(p197)

    ・近年の事故を見る限り、先頭車両と2両目(最後部とその前も同
    様)を避けて乗るほうがよい(p209)

    ・JR東日本の中央線、東中野駅構内は今までに3回も衝突事故が起きている(p210)

    ・2000年代初めまでは、何でもない場所でスピードを落とすことがあった、前の晩にバラストを突き固めた場所は安全のために時速170キロに速度を下げていた、今は専用機械が導入されているので徐行が不要となった(p230)

    2012年10月28日作成

  • 平素何気に利用している電車の災害対策などに興味があり、手にとった。

    筆者の専門知識が存分に活かされているので、時には難解な箇所もあるが、全体としてはためになった。

    例えは、大震災のときに計画停電があり、その時には全線で各駅停車しかなかった。疑問には思わなかったのですが、急行とかの通過電車の運転よりも消費電力が少ないことがよく分かった。自動車と同様に、カーブでの加減速が多いと電力が多くいり、各駅停車の場合は惰性運転が出来るので、省エネになるとのこと。

    色々と参考になる一冊と思います。

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著者プロフィール

1965年、東京生まれ。鉄道ジャーナリスト。『鉄道ファン』編集部などを経て、2000年に独立。執筆活動を中心に、マスメディアでの解説や講演、鉄道に関して行政が実施する調査等にも識者として参画している。

「2021年 『JR貨物の魅力を探る本』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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