日本人として知っておきたい外交の授業

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (167ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569805993

作品紹介・あらすじ

日本は本当に三等国なのか?日本人の歴史、命、財産をいかに守るべきか。いまこそ「超日本人」が目覚めるとき。松下政経塾の白熱授業を完全収録。

感想・レビュー・書評

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  • 著者が松下政経塾で、国家観や歴史観の養成講座でレクチャーしたもの。
    著者は、日本人の日本国家観と歴史観の欠落に警笛を鳴らしている。
    戦後の日本社会においての国家に対する意見主張のタブー。代表的な例は閣僚が発した国家を押し出す発言は失言と捉えられ更迭される。このような日本社会において国際社会に適合するための意識改革を含む政治改革が必要であると説いている。

    日本の国家意思レベルは世界各国のそれと比べると認識が極めて低い。各国の国家意思は国益を中心とした確固たるものであり、その事実を日本人は早急に認識する必要がある。

    日本の国益を考える上で重要な課題の一つは憲法改正であると著者は主張する。
    理由(1) 現存の憲法は日本人が起草したものではないから。
    理由(2) 現存の憲法は無国籍。憲法で日本がどのようか国家が断定しにくく、またそれが日本人の国家形成の妨げになっているから。
    理由(3) 9条により安全保障の面で手足を縛られた状態であるから。

    各国の国益に対するリアリズムの重要性を、東西ドイツ統合やリンカーンの例を挙げ説明している。また、日本文明の皇室の重要性、皇室は国民精神の支えであるべきと述べている。

    自分は日本の皇室に関し知識がないので何とも主張できないが、各国のリアリズムの現状、現在の東アジアの不安定さから日本の安全保障の能力を高めることは極めて必須であり、それは憲法改正にもリンクすることであり、著者の意見に同感である。

    各国が己の国益を第一に外交をするのは常識であり、それの見極めが出来ない日本国民はまさにGHQが誘導した日本の歴史教育に影響された結果である。米国との同盟は、米国の国益に適っているのが前提での同盟であり、国益が見出せなくなると、同盟は消滅することを認識すべきである、

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    マルクス主義のような思想と無縁な人は、どこか「おぼこい」ところがあり、政治的手腕も弱い。

    マルクス思想を学んだ政治家が手強いのは、ロシアのプーチンや中国の胡錦濤、温家宝を見れば分かります。27
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    「北朝が正統だというなら、自分は腹を切る」とまで言い出した物もいた。91

    近代日本を動かした精神は、まさに「南朝の大義」というところにあったのです。93
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    「日本はどんな国ですか、教えてください」95

    こうした質問では普通、諸外国の多くは「その国が世界をどう見ているか」を知りたがります。端的に言えば「世界観」です。96
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    吉田の身体には、二千六百年にわたる日本の歴史が染みついていた。

    マッカーサーなど物の数ではない。104
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    国家観とは何か、歴史観とは何か。

    実はなかなか厄介なのである。とくに、この日本という国においては難しい。

    「一国一文明」というのは世界でも本当に稀な例なのだから。164
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  • 日本は本当に三等国なのか? 日本人の歴史、命、財産を守るにはどうすべきか? 松下政経塾で国際政治学者・中西輝政氏が行った「歴史観・国家間養成講座」の講義録。他国に劣るとも言われる日本の外交力。その要因や背景について、わかりやすく解説する。

    第1講 「空気」と「密教」の日本政治
    第2講 「心」とプラグマティズム
    第3講 透徹したリアリズムの大切さ
    第4講 日本文明の本能とは何か

  • 同盟の本質とは約束を信じられる真理あるいは互いの絆にかけようとするスピリットにあるから、いったん日米で合意した重要な約束は守るべき。

    保守の学者はまず有名大学では教壇に立つことができない仕組みになっている。中西さんも国際政治学会では危険なリアリスト扱いされている。ふつうはリアリスト学派こそ国際政治学界の主流なのだが、日本ではまったく逆転している。

    サッチャー、レーガン、鄧小平、ビスマルク、リンカーン、コールは国際政治観がはっきりしたリアリスト。
    コールは東ドイツをお金でねじ伏せて、アメリカをうまく利用した。

    ゾルゲは日本の体制に深く入り込むために、日本の心や本質を知るために、古事記や日本書紀を学んだ。

    天皇陛下の前では皆平等だから、吉田茂は、上奏するときに、「臣 茂」と書いていた。苗字は意味がない。臣下の一人にすぎないから。

  • とても参考になる。いろいろな本を読んでみようと思った。

  • 日本の文明は「連続性」。第二次世界大戦を語る時も、その時代を切り取るだけでは、いつまでも、戦後のトラウマから脱け出すことができない。
    これも、南北朝時代からを理解しなければ、正しい歴史認識とは言えないと分かりました。


    「日本はどんな国ですか?」を歴史、国家観から語れるようになりたいです。

  • ケンブリッジ大学を卒業し、現在京都大学名誉教授である著者が松下政経塾で講演した時の内容をまとめたものです。タイトルを見て「外交戦術の本かな?」と思いましたが、日本人の国家観・アイデンティティの希薄さ、国際社会に対する日本人の甘い認識に対し叱咤する!といった内容でした。私はこのような主張は他の方の著書で何度も見かけてきたものだったので目新しさはあまりありませんでしたが、「インテリジェンス」「スパイ」等の言葉にあまり馴染みがない方なんかに是非勧めたい一冊です。国際社会は日本人が思っているよりずっと狡猾なんです。

  • 今こそ歴史観(縦軸)と国家観(横軸)を持った胆力のある政治家が待望される

  • ちょっと受け入れがたかったがなるほどと思うところも多々。
    取り込みたい考え方だけもう一度洗い出してみてもいいかも。

  • 国家とは何か、日本とはどういう国かというテーマに関して、松下政経塾の講義を収録したもの。160頁、講義調なのですぐに読み終わってしまう。実際の中身は、ロシア帝国、中国共産党、アメリカンヒポクラシ-など多岐な外交問題の判例を挙げるが、一つ一つがどうしても浅く、すぐに次のテーマに移ってしまう。
    この点を講義形式という著述が持つ宿命として容認すれば、氏の主張の根幹にあるものは、よく伝わってくる。現在の日本の置かれている状況、とるべき国家戦略、そして日本国家の”有り様”である。
    戦後史は分かるが、明治維新よりもさらに、建武の中興という南北朝時代にまで遡る氏の史観、その中から一つの軸を解として得ようとする意気にはいささか戸惑いも感じた。
    氏は指摘する。”日本の国柄”を考える座標軸が無いから、若い世代が根無し草になってしまうと。
    自分の国家観をいかに養うのか、一つのヒントを示してくれる作品かもしれない。

    最後に付け加え 氏の主張する身につけるべき3つの教養
    ”金融”, ”文明”, ”インテリジェンス”

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著者プロフィール

1947年、大阪府生まれ。京都大学法学部卒業。英国ケンブリッジ大学歴史学部大学院修了。京都大学助手、三重大学助教授、スタンフォード大学客員研究員、静岡県立大学教授、京都大学教授を歴任。石橋湛山賞(1990年)、毎日出版文化賞・山本七平賞(1997年)、正論大賞(2002年)、文藝春秋読者賞(1999年、2005年)受賞。専門は国際政治学、国際関係史、文明史。主な著書に『帝国としての中国――覇権の論理と現実』(東洋経済新報社)、『アメリカ外交の魂』(文藝春秋)、『大英帝国衰亡史』(PHP文庫)、『なぜ国家は衰亡するのか』(PHP新書)、『国民の文明史』(扶桑社)。


<第2巻執筆者>
小山俊樹(帝京大学教授)
森田吉彦(大阪観光大学教授)
川島真(東京大学教授)
石 平(評論家)
平野聡(東京大学教授)
木村幹(神戸大学教授)
坂元一哉(大阪大学名誉教授)
佐々木正明(大和大学教授)

「2023年 『シリーズ日本人のための文明学2 外交と歴史から見る中国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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