顔のない独裁者 「自由革命」「新自由主義」との戦い

著者 :
制作 : 三橋貴明(企画・監修) 
  • PHP研究所
2.77
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本棚登録 : 73
感想 : 7
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  • Amazon.co.jp ・本 (266ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569807485

作品紹介・あらすじ

民主博愛党政権の暗黒時代が終わり、新指導者による自由革命が成就。だが、それは新たな戦いの序曲だった……。衝撃の近未来小説。

感想・レビュー・書評

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  • 新自由主義経済が暴走したらどうなるかという事をストーリー仕立てで説明した小説。巨大多国籍企業がインフラや公共サービス(警察や国防なども)入札で受注する世界。すべてがコスト削減で動く世の中。なかなかぞっとさせる状況が展開する。

    ストーリー自体は後半から盛り上がるが、「希臘(ギリシャ)から来たソフィア」の時も感じたが、終わり方が面白くなかった。「希臘…」の時は恋愛関連で面白くない展開でがっかりしたが、本書は独裁者の最後に幼少期のストーリーを挿入するなどして陳腐に読者の感情移入を狙っているようで、何となくわざとらしく感じてしらけてしまった。

    おそらくさかき漣の性格からこのようなストーリー構成になるのだと思う。

    読後に生きる気力がわくようなストーリーでは無いし、何か行動できる指標を得た訳でもないので、星二つ。

  • ヒト、カネ、モノの自由化。こんな世の中になったら嫌だなぁ。
    自由化も行き過ぎるととんでもないことになるんだな、
    と空恐ろしくなりましたが、いろいろと参考にもなりました。
    日本の良さがなくなって、日本が壊れてしまってから後悔しても
    遅いですから、あまり行き過ぎたことにならないよう、
    私たちもしっかりしなくちゃいけませんね。

    自由化も規制緩和も全部認めるなんて、やっぱり日本の国柄には
    合わないと思います。
    警察も消防も国防も公共サービスもみ〜んな民営化しちゃって、
    お金のある人しか利用できない世の中になってしまったら・・・。
    これだけでも非常に不安になります。収入があれば、何とかなる?
    その職でさえ、海外からポンポンやってくる押しの強い
    外国人労働者に横取りされて日本人はあぶれてしまうかも。

    登場人物、薄っぺらかったなぁ。GKは病んでるし、
    みらいも好きになれなかった。こういう話に出てくる女性は、
    たいてい美しい人で、その時点でただただ胡散臭く感じます。
    ハニトラ要員かと思っちゃった・・・。

  • 『顔のない独裁者』というタイトルから、民意の暴走てきな事象をどう描くのか気になった。また、中国に攻められた後の日本という設定も面白そうだった。
    しかし結論を言うと拍子抜けで、非常に陳腐な一冊だった。Kindleで買ったので1185円もしてしまった。10円程度の価値はあったかもなので、1175円の損。

    とはいえターゲティングは上手くいっているのかも。社会に不満がある人、批判ばかりする人、まさに本書でいうところの「顔のない独裁者」は、こういう本を喜びそうだ。


    ■前半経緯

    ・日中による尖閣諸島領有権争いで中国船員が魚釣島上陸
    ・戦争初期は自衛隊有性
    ・北朝鮮の核ミサイルが日本本土に着弾、パニックに
    ・米国は極東戦争不参加(日米安保条約5条)
    ・早期講和を掲げた政党が選挙で圧勝、早期停戦実現
    ・博愛精神遵守法、異邦人地方参政権付与法、
     環境保護新法(凶悪犯罪男性への断種)、
     改正上級公務員法(官僚職の外国人への開放)
    ・創設された大エイジア連邦への参加とアジア共通通貨への参加
    ・国名の規定がないことによる国名正規化
    ・漢字の廃止(※これは中国からするとおかしいが)
    ・外国人参政権の影響で沖縄・対馬特別法が成立、両地域は中国・朝鮮に編入
    ・中国大陸で内戦(北京派対上海派)
    ・中国国家主席暗殺の誤報をきかっけに、各地域で連邦からの独立運動
    ・自由革命ではネット検閲システムを破壊

    <u>【革命後】</u>
    ・首相公選制と参院廃止(ねじれ解消目的)を可決、総理大臣への拒否権付与
    ・小選挙区廃止、人口比例選挙実現(一票の格差解消)、道州制導入、
     太平洋連合の自由貿易協定参加
    ・負の所得税(所定所得以下の人に富裕層からの税金を還元)導入
    ・経済自由化
     →公務員、賃金、雇用、公共事業、農地、医療、学校教育、軍隊、他


    ■「自由経済」という設定に対する疑問

    中国による統治はマクガフィンでしかなくて、本筋は「経済の自由化を極端にやるとどんなことが起きてしまうか」という机上実験的なった社会実験。敢えて極端に描いていて、それはいい。

    病院をはじめとする社会インフラの自由化、社会保障の打ちきり、自己責任の名のもとの貧富差が拡大、道州制導入するも予算獲得できず貧困化する地方。病院や消防局、警察、軍隊までも自由化されたことの代償。

    問題なのは経済の自由化による負の側面「だけ」を描いていて、メリット側を描いていないこと。自由化されビジネスになればもっとベンチャーが生まれて問題を解決していくはずだし、州間の交流だってもっと怒るだろう。
    競争社会になったはずなのに共産主義的結末になるのはおかしい。

    経済学者の慣習なら、プロコンの両論をしっかり描いて、その上でバランスを傾けるべきだが、片方だけを描くというのはポジショントークに過ぎる。

    関税障壁撤廃に関する議論はTPPもあり気になるところだが、眉につばつけて聞く必要がある。三橋さんの意見は、片方側の極論として聞き、もう片方の意見は別の識者から収集した方がよさそう。

    ここまで自由化できる権限が付与された経緯も不明だった。単に「カリスマだから」で片づけられているが、「権力の所在」は物語の核心部分なのだし省いたら元も子もない。
    仮に彼がカリスマでも抵抗勢力は必ず存在するはずなのだけど、何やってたんだ。

    もしかしたら経済自由化に関しては、「極端にやるとこういう未来が訪れるかもだけど、これ読めばそんなこと起こるはずないってわかるでしょ、だから経済自由化してもOK」というメッセージだったのか?


    ■なぜ駒ケ根が成功「し続けられたのか」の疑問

    なぜ人々が抗わなかったのか疑問。初期にカリスマ性があったとはいえ、おかしな方向に進めば民衆はすぐに抗う。日本人舐めすぎ。

    もちろん衆愚化した民衆が国の道筋を誤ることはある。戦前戦中がそれで、軍部という巨大組織が暴走し、かつ米国という敵のために、民意は封殺された。そもそも戦前の体制が独裁に近い体制だった。

    しかし本書ではこうした社会構造的背景が描かれておらず、権限を集中したにしてもあくまで「民主的」な手続きで選ばれるトップが、カリスマにのみ頼って日本を誤らせていた。そんなことあるかよ。設定の詰めが甘い。

    物語では国民の不信感が高まってたけど、駒ヶ根は次回の選挙をどうするつもりだったんだろ。仮に駒ケ根がそれでも日本の大多数の支持を集めているなら(例えば人口の集中した3つの州の支持を集めるだけで次回勝てるなら)、逆にライジングサンに支持が集まるはずがないのだけど。矛盾。

    そして民意が離れてるなら民主的に戦えばそれでいいのに、なぜライジングサンがテロという手段を選んだのか謎。なんで暴力を使う必要があった?と思ったらライジングサンも国民の支持失ってた。当たり前の展開なんだけど、この物語はこれを通して何を言いたかったのか‥。

    普通に選挙して次回の当選議員が軌道修正してそれで終わりの話だったのでは。
    「顔のない独裁者」とは、「顔のない思想、顔を隠した特権階級、個別の顔を持たない大衆」。そんなことだろうと思ったが、こういう事態にはならないだろ。


    ■全体的に陳腐

    キャラクター造形や文章表現が陳腐。ネーミングとかもセンスない。

    あと駒ヶ根の過去や動機が笑えるほど陳腐。駒ヶ根は顔のない独裁者=責任を取らない人が嫌いで、自由化を進めた?動機として弱い。二重人格設定とかそういうのいらないし。
    悪役がバカ(なのにカリスマということになっている)だと白けるよなあ。

  • 意義はあるが、小説としては微妙

  • 設定、背景は村上龍かな、しかし小説としては残念か出来。かわぐちかいじ漫画の方がリアリティもクオリティも上かもしれない。

  • 副題:「自由革命」「新自由主義」との戦い

    「新世紀のビッグブラザーへ」の続編・パラレルワールド。

    国という枠組みがなくなり、「第三地域市民」となった日本。
    革命により、再び「日本」を取り戻した筈の、国民。
    しかし、その日本が保守すべきものは、何なのか?

    自由とは何か?
    僕達は何を背負っていくのか?
    経済的な効率化と自由の果てにある世界が見事に描かれている。

    1年前に書かれたものとは思えない!
    恐ろしくなるほど酷似する現代の日本を描き上げたこのミステリ作品・・・
    今読むことに大きな意味があると思う。

    このほんの結末が、希望へとつながれば良いのだが・・・

    ----------------
    【内容(「BOOK」データベースより)】
    201X年、中国漁船の大群が尖閣諸島に押し寄せ、そのうちの一隻の「船員」が魚釣島に上陸したことから、「極東戦争」が勃発。この事態に対してアメリカは、日中間の軋轢に軍事介入することを避け、参戦を拒否。果たして日本は、大エイジア連邦主席という独裁者によって支配され、日本国民は「第三地域市民」として生きることを余儀なくされる。秋川進と涼月みらいは、抵抗組織「ライジング・サン」の一員として「祖国・日本」を取り戻すために、新指導者を戴く革命を成就。暗夜が決壊し、新指導者“GK"は国民の万雷の拍手で迎えられる。だが、それは進とみらい、いや、心ある日本国民にとっては、次なる新たな戦いへの序曲に過ぎなかった……。
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  • 前半☆☆☆☆☆
    後半☆☆☆

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著者プロフィール

作家。立命館大学文学部哲学科哲学専攻卒業。著作に『コレキヨの恋文』(PHP文庫)、『希臘から来たソフィア』(自由社)、『顔のない独裁者』(PHP研究所)などがある(いずれも政治経済評論家とのコラボ作品)。2015年、「顔のない独裁者」が短編アニメ化。2016年11月、小説『エクサスケールの少女』発売。本作が初の単著となる。公式サイトhttp://rensakaki.jp/

「2016年 『エクサスケールの少女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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