そして日本経済が世界の希望になる (PHP新書)

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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569814780

作品紹介・あらすじ

アべノミクスは完全に正しい! 世界で最も著名な経済学者が金融緩和の力、日銀の使命、日本経済の未来を解析。山形浩生氏の解説も必読。

感想・レビュー・書評

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  • クルーグマンからのアベノミクスへの応援歌です。

    <アベノミクス:おさらい>

    第1の矢 大胆な金融政策 異次元緩和 日銀黒田総裁
    第2の矢 機動的な財政政策 10兆円の経済対策 麻生金融担当大臣
    第3の矢 規制緩和、民間投資を喚起する成長戦略 菅官房長官

    <クルーグマンが指摘するアベノミクスの優位点>

    ・実質金利を抑えながら、財政政策をすすめながら、財政赤字を軽減する
    ・デフレ脱却のために、政権とセントラルバンクが協調
    ・金融緩和とともに、財政出動の実施

    <結論>
    ・日本よ!たちあがれ、そして世界の手本になれ

    構成は以下

    プロローグ
    第1章 「失われた20年」は人為的な問題だ
    第2章 デフレ期待をただちに払拭せよ
    第3章 中央銀行に「独立性」はいらない
    第4章 インフレ率2パーセント達成後の日本
    第5章 10年後の世界経済はこう変わる
    エピローグ

  • クルーグマンへのロングインタビュー、Eメールなどの質疑応答を通じて、日本経済の展望について語ってもらったのが本書。発売が2013年なので、2017年の今から見るとアベノミクスへの評価が少々古びたものとなっているが、『道草』や『経済学101』で、有志がクルーグマンの論説を翻訳したものを除けば、日本語で読めるクルーグマンの論説で一番新しいものである。

    クルーグマンが日本政府に勧める経済政策は、金融政策としてはインフレターゲット、減税などの財政政策、この二つのポリシーミックスである。日本の公的債務を結構気にしているせいか、赤字国債を発行する公共事業にはあまり乗り気ではないようだ。その点はアメリカ政府に勧める政策との違いがわかっておもしろかった。
    また、「クルーグマンは、藻谷浩介と同じく、人口減少=デフレ不況主犯説を主張している。」と言う人がよくいるが、

    "デフレが引き起こす要因の「一部」は少子高齢化“(P.33)"
    "大規模なバブル崩壊のあと、日本の金融政策と財政政策はつねに遅かった(P.37)"

    とクルーグマンは、日本のデフレ不況は複合的な要因であると本書に書いており、藻谷の”人口減少=デフレ主犯説”とは大きく異なるものだろう。クルーグマンは、デフレに対してポリシーミックスで対応できると考えている点は、短期の経済政策さえ否定する藻谷とは大違いである。第一、雑な議論しかできないただのペシミストの藻谷とクルーグマンを一緒にするのは非常に失礼な事だと思う。

    『さっさと不況を終わらせろ』を平易に要約したような内容なので、『さっさと不況を~』がイマイチ分かりにくいと感じた人には、副読本として使える。訳は平易で読みやすい。『さっさと不況を~』と一緒に読むことをお勧めする。クルーグマンの本にしては内容は普通。

    評点:6点 /10点。

  • 2008年にノーベル賞を受賞したアメリカの経済学者で、トランプ大統領をやたらと批判する辛口のコラムニストでもある著者へのインタビューをまとめた一冊。日本が「失われた20年」によるデフレ不況から脱するための方策として、量的緩和やゼロ金利政策の継続といういわゆる「リフレ派」的な経済政策を展開する。ただ気になるのは多くの意見がアメリカ目線で、日本の復活を真剣に望んでいるようでもなく、古くは戦後のGHQによる金融引き締め政策の「ドッジライン」、最近ではFRB議長だったグリーンスパンによる「サブプライムローン」など、アメリカの学者の意見はさほどアテにならないという事を思い出させてもくれる。本書では発足後間もない安倍政権とアベノミクスを絶賛しているが、それから5年を経ても当初目標のインフレ率2パーセントとかが達成されていない最近では、ご本人もちょっと心変わりしている様子。

  • 山形氏の解説があるとは知らなかったが、相変わらず言いたいことを言う人のようだ。ノーベル賞をとったクルーグマン氏に対しても遠慮がない。

  • 2008年ノーベル賞
    デフレを好む高齢者層を説得する方法。1930年からのドイツ。ぶりゅーにんぐ大統領の増税、政府支出の削減、などのデフレ政策で、ヒトラーの台頭する土壌を作ったのだ。
    日銀法を改正して「雇用の最大化」という機能を持たせるべき。日銀の果たす義務は一つではない。

  • 著名かつ過激ともいえる、経済学者のグルーグマン氏の日本経済に関しての考えと現状とつづった本。グルーグマン氏自身、極端なインフレ推進派ですが、本の中身をちゃんと理解して読み進めると、その考え方が極端なだけではなく、歴史を振り返った時の資本主義社会での金融政策のオススメを言っているように思える。著者も言っているが、人間はもちろん過ちもするので完璧なかじ取りなどできるはずはない。それは個人の投資戦略にももちろん言えると思う。

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  • 原題:The World Looks To Japan’s Economy Again
    著者:Paul Krugman
    訳者:大野和基(1955-) ジャーナリスト
    内容:アベノミクスへの評価など。ちなみに、本書は日本のみでの発売。

    【目次】
    プロローグ [003-011]
      世界標準の方法論に反対した日本の識者たち
      日銀の政策は“船に乗り遅れた”
      安倍首相の非日本人的な決断力への期待

    目次 [013-020]

    第1章 『失われた20年』は人為的な問題だ 
    日本の経済不振は自らが蒔いた種
    『流動性の罠』が発動する条件
    戦後最長の景気回復期でもデフレ脱却に失敗
    リーマン・ショック時の政策対応は正しかったか
    目下の状況は学者を必要としている
    構造改革が足りないからデフレになる?
    デフレとITを結びつける議論の落とし穴
    財政政策という“筋力”の重要性
    金本位制の廃止がもたらした劇的な変化
    バーナンキ議長の道のりは成功物語ではない
    市場を崩壊の淵から救ったマリオ・ドラギ
    アメリカはアベノミクスを支持している
    世界各国のロ―ルモデルになれるか

    第2章 デフレ期待をただちに払拭せよ 
    なぜデフレよりインフレが望ましいのか
    ピグー効果を相殺する経済条件
    「ファントム・メナス」に脅えるエコノミスト
    日本国債の空売りは「未亡人製造機」
    すべての間違いは引き締めにあった
    金利の議論は経済学理論のよいテスト
    長期金利の上昇は「期待」の反映だ
    円安効果はいかなる懸念にも勝る
    ユーロ諸国が苦しむ低インフレ率の弊害
    デフレを好む高齢者層を説得する方法
    政治家は自分を不快にさせる人に耳を傾けよ
    効率的市場仮説への反対者だったケインズ
    斬新なリーダーシップが嘱望される時代

    第3章 中央銀行に「独立性」はいらない 
    英財務省の一機関だったイングランド銀行
    なぜFRBの独立性は問題にならないのか
    デフレ下での独立性はむしろ有害だ
    中央銀行の果たす義務は一つではない
    日銀法改正で人びとの「期待」を変えよ
    金融システムは救済して当たり
    マエストロ・グリーンスパンの過ち
    バーナンキヘの批判は期待の裏返し
    財政上の安定は何を担保するのか
    通貨当局と政府の望ましいあり方
    さらなる金融緩和競争のすすめ
    問われているのは「中央銀行総裁の資質」
    黒田日銀総裁が見失ってはいけないこと

    第4章 インフレ率2パーセント達成後の日本 
    株式市場はそもそも不安定なもの
    インフレで財政問題は大きく好転する
    不動産バブルは起こるのか
    「出口戦略」はまったく時期尚早
    公共事業以外でも財政出動はできる
    検証に耐えなかったアレシナの議論
    格好の材料と化したラインハー卜&ロゴフ論文
    緊縮政策推進派の学者はいまや冷笑の的
    財政緊縮で民間に信用が生まれる?
    理論と歴史の教訓を無視した政策決定者たち
    「金融抑圧政策」と呼びたければ呼べばよい
    日本はOECDのアドバイスを無視すべき
    スウェーデン、チリの社会保障政策
    医療保険制度改革をやり通したオバマ
    日本の皆保険制度は理想的だ
    政府は「勝ち組」を決めてはいけない
    国益ではなく産業益を代表するTPP
    女性の才能をもっと活用しよう
    成功した規制緩和、失敗した規制緩和

    第5章 10年後の世界経済はこう変わる
    金融危機で表出した「恐慌型経済」
    アメリカはまだ地盤を取り戻せていない
    世界が注目する「シェールガス革命」
    「革命」という言葉は完全に過大評価
    懲りないウォール街の住人たち
    オバマはなぜ「チェンジ」できなかったか
    共和党がつくったアメリカの借金
    銀行を破綻させれば経済は悪化する
    中国のボトルネックは環境破壊
    長期的な成長が勢いづいてきたブラジル
    アメリカは世界のリーダーでありつづける
    ビッグデータが激変させる世界経済
    英語はグローバル経済の入り口だ

    エピローグ 
     ものいう経済学者としてのミッション
     先進国でもっとも興味深い国
     いまこそ世界は日本を必要としている

    解説(二〇一三年八月 ヤンゴンにて 山形浩生) [181-196]
     1.はじめに 
     2.ポール・クルーグマンと「流動性の罠」
     3.クルーグマンとアベノミクス
     4.財政再建と消費税談義
     5.そして各種放談など
     6.終わり 

  • グルーグマン氏は日本の経済、政策に対しては好意的な方ですね。。日本という国が今後も成長をし続けてほしいという点では自分も同意ですが、現在の政策については大企業優位であり、既得権益者への政策であり、良いものだとは思わないのですが。

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著者プロフィール

NY市立大学教授。2008年、ノーベル経済学賞受賞。
イェール大学で学士号を、MITで博士号を取得。イェール大学、スタンフォード大学、MITで教鞭をとったのち、プリンストン大学経済学部教授。1982~83年には1年間大統領経済諮問委員会(CEA)のスタッフも務めた。主な研究分野は国際貿易。収穫逓増と不完全競争に焦点を置いた「新しい貿易理論」の創始者の1人である。国際金融、特に通貨危機の問題にも取り組む。1991年、アメリカ経済学会のジョンベイツクラーク賞受賞。日本語への翻訳書多数。

「2019年 『未完の資本主義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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