人口が減り、教育レベルが落ち、仕事がなくなる日本

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (251ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569817026

作品紹介・あらすじ

「老人の街で行われる東京五輪」「仕事を機械に奪われて失業者が増大」「流出していく富裕層」……悲観論による「未来地図」を描く!

感想・レビュー・書評

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  •  タイトルを見ればわかるとおり、ものすごく悲観的に日本の未来を描き出した本である。

     エコノミストの高橋乗宣は「悲観の乗宣」と呼ばれ、悲観的な経済予測をさせると水を得た魚のようにいきいきとすることで知られるが(笑)、山田順がこれまでに出した本にも悲観的なものが多い。『出版大崩壊』『出版・新聞 絶望未来』『2015年磯野家の崩壊――アベノミクスの先にある「地獄」』といった具合である。
     高橋乗宣の後継として、「悲観の順」の二つ名を用いるとよいと思う。

     まあ、悲観もここまで徹すれば一つの「芸」だし、悲観的な本も世の中には必要だ。
     本書も、読んでいて気が滅入る本ではあるが、“日本人はもっと未来に対して危機感をもつべきだ”というのはそのとおりだし、うなずける主張も多い。たとえば――。

    《本当に不思議なことだが、多くの日本人が、自分が暮らしている自治体の財政状況を知らない。いつ破綻するかわからないのに、何事も起こらないと思って暮らしている。
     そこで、読者のみなさんには、お住まいの自治体の「財政力指数」と「実質公債費(負担)比率」を見ることをお勧めする。》

    《アジアの新興市場が発展したのは、第一に賃金が安いことだが、第二は旧英国領の国が多く、英語ができる人々がいたからである。低賃金と英語を武器に、新興アジアは発展したのだ。
     日本人は、高賃金で英語ができない。この差は、グローバル経済ではかぎりなく大きい。》

     しかし、1冊全体として見ると、どうも眉ツバな極論が目立つ。

     山田順は長年光文社の編集者をしていた人だから、出版については専門家だ。ゆえに、出版界の暗い未来を語っている分には傾聴に値した。
     しかし、本書のテーマとなる経済・教育・人口問題についてはいずれも専門ではないわけで、“ほかの専門家の受け売り”の感が否めない。それも、専門家の主張をかなりねじ曲げて我田引水している印象がある。ところどころアヤシゲなのだ。

     たとえば、人口の増減を、国の経済の最大決定要因であるかのように扱っていて、あまりに単純すぎると思った。“中国は早晩人口が急減し始めるが、アメリカは今後も人口が増えつづけると予測されている。ゆえに、中国がアメリカを抜いて世界一の経済大国になることはあり得ない”みたいな書き方をしているのだ。

    《人口増の国の経済は成長を続けるという法則から見て、アメリカ経済は今後も順調に成長を続けていくことになる。ついこの間まで、アメリカ衰退論、アメリカ経済崩壊論がさかんに言われたが、この国連の人口予測から見ると、そうした事態は起こらないことになる。
     むしろ起こるのは、「米中はやがて逆転する」とも言われてきた中国が失速してしまうことだ。》

     世界経済って、そんなに単純にできているのだろうか?

     また、第12章で展開されている、“アメリカはすでにネットを通じて人類を監視する「全人類データベース」を完成させており、今後は『1984』(ジョージ・オーウェル)のような監視社会が到来する”との論は、ほとんど陰謀論である。

     そんな具合なので、「話半分」で読んだほうがよい本だ。

  •  本書は1952年生まれの元編集者が2014年に刊行した、人口指標のみで日本の未来を予測する本。目隠しでジグソーパズルを解くような、実験的で面白い試みだが、少なくとも経済学的な視点では確実に失敗している。一行で言うと、「設備投資や労働生産性といった重要な要素を無視して、人口(もとい労働者の数)だけを論拠にあらゆることがらを語ろうとしているので駄目。文献の解釈も我田引水で更に駄目」。
     さて、人口動態と経済成長という観点をメインに据えて日本を分析対象にした本としては、まず大泉氏の『老いてゆくアジア』(中央公論新社)がオススメ。しかも新書なので安価。
     出版業界のことを知りたくて読み始めたので、私はダメージもなく目的は果たせた。それでも二度と読みたくない。
     著者は以前から先行き悲観的なアジテーション本を世に送り出しているようだ。そして、これからもそういう本ばかり書いてゆくのだろう。
    「山田順プライベートサイト」〈http://www.junpay.sakura.ne.jp/

    【簡易目次】
    第01章 どんなビジネスも人口減に勝てない
    第02章 日本・中国・韓国 ともに衰退する未来図
    第03章 超高齢化社会到来 老人しかいない街
    第04章 老人の街でやる2020年東京五輪
    第05章 あなたの街がデトロイトになる日
    第06章 ものづくり国家 ニッポンの崩壊
    第07章 2020年日本車消滅という衝撃未来
    第08章 仕事を機械に奪われ失業者が増える
    第09章 英語ができないだけで貧乏暮らし
    第10章 さよならニッポン 続々出ていく富裕層
    第11章 巨大債務がある限り給料は上がらない
    第12章 増税で締め上げられ監視される市民生活
    第13章 ポルトガルと同じ運命をたどるのか?

  • 桃山学院大学附属図書館電子ブックへのリンク↓
    https://www.d-library.jp/momoyama1040/g0102/libcontentsinfo/?cid=JD202301001127

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  • 日本の少子高齢化、産業の衰退、重税や国策といった視点から、日本の行く先を憂いた本である。

    経済や社会情勢を当時叫ばれていた社会問題をネガティブに捉えたもので、読んでいてなかなか堪えるものもあるが、概ね事実であることから目を背けずに読むべきである。

    私が読了した時点で約9年前の本であることから「予言の書」のつもりで読んでみたところ、当たり前のことが起きただけのもの(日本の英語教育レベルの低下や外国人の日本離れ等)が多数を締めているが、韓国経済の衰退や日本メーカーのEVシフト(私は政府の失策と考えているが)等、当時はあまり話題に上がっていない事象が現実となっており大変興味深い。
    反対に、「経済予測は人口の増減と教育レベルで計れる。指標が多すぎると外れる。」という主張、クルーグマンの景気循環説への反論等、論拠の乏しいポイントも見受けられ、筆者のオリジナルの考えというよりか、誰かの言葉のツギハギを感じる部分もある。

    総じて、日本の行く先を悲観的に論じること自体は賛同できるが、論理の飛躍や論拠の無い部分が目立つ。筆者には、「日本を手放しで褒め称える本は激減しましたよ」とお伝えしたい。

    さて、本書が2030年、2050年に「予言の書」として手に取られるとき、どういった評価がされるのか、楽しみである。私もまた、拝読したいと思う。

  • 人口が減少で、生じる社会的な問題をわかりやすく取り上げている。

  • 金融緩和を否定しているようだけど、お金を刷らずに借金を返したら、どうなるんでしょうかね?
    1.000兆ー1.000兆で、お金が無くなるんでない?

  • あえて悲観的な視点でこれからの日本を考えてみたという本。

    資本主義において、経営者は生産性を追求するため、失業者が増える。すると、モノは安く作れるようになるが買う人がいなくなる。そして、経済が縮小する。
    資本主義が抱えている自己矛盾。

    ・どんなビジネスも人口減には勝てない
    ・2015年から中国、韓国も日本とともに人口減、高齢化に進む
    ・日本人は英語ができない
    ・自治体破綻は「財政力指数」と「実質公債費比率」をチェックしろ
    ・量的緩和の出口戦略があるのか?

  • 読書再開。再開一発目にしては刺激的。笑

    高齢化社会の現実、それに伴い引き起こされる様々な問題。

    イノベーションの虚構。技術革新がイノベーションではない。社会を変えられたか?すべて使われなければ意味がない。売れなければ意味がない。

    国際化社会から取り残される日本。言葉が通じない人に仕事なんかない。

    マイナンバーで成立する監視国家。

    取り上げられているテーマはすべて報道されたり、書籍化されていたりで周知の事実。
    ただ、本当の本当の現実社会で何が起こるかまで取り上げられることはあったのか?表向きの話だけで、突っ込んだ話になっていなかったのではないか。私はとても救いようのないぬるま湯に浸かっているのではないか。

  • シンガポールでは小学校から徹底した英語教育が行われている。国民の英語力は一気に増しグローバル化が始まった90年代になると、それが強みとなり、海外から多くの企業、多額の投資マネーが入ってくるようになった。東京証券取引所は、バブル崩壊以前は世界一の取引量でアジア経済の中心であったが、今やその地位はシンガポールに奪われている。英語を軽視し外国企業にまで日本語表記を義務付けていた。東証から外国企業が激減し、ようやく英語表記を認めるようになったが、時、既に遅し。英語ができなければ話にならないという時代に日本の学校では英語教育に十分な時間が充てられていない。日本人のほとんどが英語を話せない。購買力平価換算の一人当たりGDPは世界第24位。アジアの中ではシンガポール、ブルネイ、香港、台湾の後塵を拝している。日本は既に十分に貧しくその経済力は日ごと衰退している。全編悲観論で埋め尽くされているが、健全な悲観論こそ未来を開くものと信じたい。

  • 英語の重要性を再認識しました。
    前から英語不要論者の意見に違和感を感じていましたが
    この本が彼らの本音を見事に暴いています。
    「英語ができるという自分たちの優位性、希少価値が崩れてしまうからである。」
    英語を勉強する意欲を掻き立ててくれる本です。

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著者プロフィール

1952年、神奈川県横浜市に生まれる。立教大学文学部を卒業後、光文社に入社。「光文社ペーパーバックス」を創刊し、編集長を務めた後、2010年からフリーランスになり、国際政治・経済・ビジネスの分野で取材・執筆活動を展開中。
著書には『出版大崩壊』『資産フライト』(以上、文春新書)、『本当は怖いソーシャルメディア』(小学館新書)、『「中国の夢」は100年たっても実現しない』(PHP研究所)、『円安亡国』(文春新書)、『地方創生の罠』(イースト新書)、『永久属国論』(さくら舎)、翻訳書に『ロシアン・ゴッドファーザー』(リム出版)などがある。

「2018年 『東京「近未来」年表』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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