源静香は野比のび太と結婚するしかなかったのか『ドラえもん』の現実(リアル) (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569818184

作品紹介・あらすじ

政権交代、フェミニズム、スクールカースト……現代日本のあらゆる問題が『ドラえもん』に書かれていた! 前代未聞の社会学的マンガ論。

感想・レビュー・書評

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  • 藤子・F・不二雄の代表作『ドラえもん』の世界について論じた、「ホンワカパッパな社会学的考察」です。

    しばしばフェミニズムの立場から、しずかちゃんの入浴シーンなどが批判の対象になることはありますが、著者はそれ以上に重要な問題として、しずかちゃんには「かわいい女の子」以外の役割があたえられていないと指摘しています。この点はそれなりにおもしろく感じたのですが、それ以上の掘り下げがなされているわけではありません。同様に、1960年代から70年代の郊外に暮らす核家族としてえがかれている野比家を、戦後日本の時代背景のなかに位置づける議論は納得のいくものですが、こちらも『ドラえもん』の世界にえがかれる時代と場所を限定するだけにとどまっており、そこからなんらかの問題を取り出すような試みは見られません。

    また、他のテーマについても、のび太とジャイアン、スネ夫の関係に民主党政権に通じる問題を見ようとするなど、こじつけの印象があります。

  • 純粋にドラえもんが好きでドラえもんのお話を語ってみてるのかと思いきや、ごちゃごちゃと現実の政治経済やらをがんばって絡ませてて不発、、

  • 何の気なしに借りてみた本。『ドラえもん』に関して、今まで考えたことがなかったような深掘りの考察がなかなか面白い。なぜ学校の場面が少ないのかとか、専業主婦のママは、昼寝とテレビばかりで、ご近所やママ友との交流がほとんどないとか、0点を取るからのび太ママは怒るのであって100点を取れないからではないとか、放任主義でのび太を塾に通わせたりしないとか。また雑誌掲載当時の逆境からの逆転の一発としての「ドラえもん」という事情は現在からは想像できない。行動パターンがよくわからない(類型にあてはめられない)静香ちゃんは、やっぱり「女性」なのであって、男性からは計り知れない『妻のトリセツ』にも書かれていた通りなのかもしれない。

  •  このところ立て続けに著書を刊行している中川右介は、すでに自分の仕事のスタイルを完全に確立した観がある。当事者・関係者への取材は一切せず、ひたすら膨大な関連資料を渉猟して一つのテーマを追っていくスタイルだ。
     さりとて学術論文ではなく、エッセイと評論の中間のような、分類不可能な独創的スタイルなのである。

     本書もしかり。
     国民マンガ『ドラえもん』全話を熟読し、過去の関連書籍をすべて読破したうえで、独創的な『ドラえもん』論を作り上げている。『ドラえもん』ほどの人気マンガになれば研究本のたぐいも山ほど出ているわけだが、本書のような本はありそうでなかった。

     しいて言えば、一昔前の『磯野家の謎』などのいわゆる「謎本」に、テイストが似ていないことはない。が、「謎本」よりももっとエッセイ寄りで主観的な内容である。

     章立ては次のようになっている。

    第1章 しずかちゃんの行動は冷静に考えればよくわからない
    第2章 ジャイアンとスネ夫はまるで民主党政権である
    第3章 「ドラえもん世代」は存在するのか
    第4章 のび太はスクールカーストの日本最初の被害者なのか
    第5章 野比家は郊外に住んでいなければならない
    第6章 じつはパラレルワールドだった!

     見てのとおり、フェミニズム・政治学・世代論・教育論・郊外論などの学問的装いが全体にまぶしてある。ただし、実際に読んでみれば学問的装いはスパイス程度で、肩の凝らない読み物として楽しめる内容だ。

     私がとくに面白く読んだのは、1章と2章。

     1章は、「しずかちゃん」の存在をフェミニズム的観点から読み解いたうえで、さらにひとひねりして、「フェミニストたちのしずかちゃん批判」を男の視点からナナメに見て面白がるような内容。 
     2章は、のび太・ジャイアン・スネ夫、そしてドラえもんという四者の関係を政治学的観点から読み解いたもの。といっても堅苦しいものではなく、笑える内容だ。とくに、四者の関係を日米関係や民主党政権に次々となぞらえていくあたりのアクロバティックな「文章の芸」は、なかなかのもの。

     しかし、3章~5章は1、2章に比べると出来が悪く、こじつけくささばかりが目につく。

     最後の第6章は、「ドラえもん作品史研究序説」という副題のとおり、藤子・F・不二雄が『ドラえもん』を各学年誌にどのように描き分けていたかをたどったもの。
     労作ではあるが、トリヴィアルにすぎ、読んで面白いものではない。

     全体としては、読んでためになるようなものではないし、再読したいと思える本でもないが、読み捨ての娯楽としては水準以上の本。
     それと、藤子・F・不二雄の作家論としては価値がある。国民的マンガ家でありながら、真正面から作家として論じられることは少なかった人だけに……。


  • 2018.10.8

  • 1章と2章のしずかちゃん、ジャイアン、スネ夫に関する考察と言うか分析については、こじつけが強いというか、私にとってはつまらなかった。
    読むのをやめようと思ったが、せっかく2章まで読み進めたのだから最後まで読んでみたところ、3章あたりから面白くなってきた。
    ドラえもんには小学館の学年ごとに別々に連載され学年ごとに第1回目と最終回が複数ある話とか、いろいろと知らなかったネタを仕入れることができた。
    スクールカーストの話で、そもそもカースト下位ののび太はカースト上位のしずかちゃんから無視されるという話になっていたが、そもそも、学力の差から同じ学校には通わないだろうと思った。

  • 意外に面白かった。
    ドラえもんに掛けた社会分析かと思っていたのだが、本当にドラえもんの分析だった。一部そうでないところもあったが。
    ドラもんは子供向けマンガであり、落語的物語なのだ。そういうことなのだ。
    実に面白い。
    最後の章で、ドラえもんのパラレルワールド的あり方を、そういやそうだったと思い出した次第。

  • 2015年9月1日読了。

  • 『ドラえもん』を社会学的に分析した一冊。

    ちまたにある謎本とは一線を画している。
    また、過去のドラえもんが生まれた経緯や連載事情なども知ることができて良かった。

  • 請求記号:SS/726.101/N32
    選書コメント:
    『ドラえもん』の中の人間関係、よく見るとこんなにも”現実的”です。
    (東松山図書課 閲覧担当)

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著者プロフィール

1960年生まれ。早稲田大学第二文学部卒業。「カメラジャーナル」「クラシックジャーナル」を創刊し、同誌のほか、ドイツ、アメリカ等の出版社と提携して音楽家や文学者の評伝や写真集などを編集・出版。クラシック音楽、歌舞伎、映画、漫画などの分野で執筆活動を行っている。

「2019年 『阪神タイガース1985-2003』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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