作品紹介・あらすじ
スーパーコンピュータ「京」の100倍の演算性能を持つ「エクサ」。それを搭載した「エクサスケール・コンピューティング」の力とは?
感想・レビュー・書評
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夢があって楽しい本。こういうホラ話から未来は始まると思うので、ホラを吹ける人というのは大変貴重な存在なのに、実際は厳しいことになっている。Top500やGreen500に上位ランクされるスパコンを100億円で作ったんだから、投資話としては成功だったと思うんだけど、補助金の世界じゃ完全にクロなのだろう。民間のファンドが食いつかなかったのは、技術的に筋が悪かったのか、日本の投資環境が貧しすぎるのか。それにしても、ここまで社会的に抹殺するほどのことではないだろうに。
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ページ数がかなり多いので根気が必要です
抜粋版である「プレ・シンギュラリティ」ならページ数少なくて内容もそこそこあるので、こちらを読むことをオススメします
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16.9.8 クローズアップ現代
日本にチャンス到来!? “新・ものづくり”革命
西川徹
木島晃
齊藤元章
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掻い摘んで言うと、”ITの進化により数十年後には、人類は労働から解放される”って事らしいです。ま、それはそれで楽なのかもしれませんが、本当にそれでいいのでしょうか。。。なんか違うんではないかと思うのは私だけでしょうか。確かにコンピューターの性能は飛躍的に上がっており、このまま進歩し続ければコンピューターが何もかもやってくれる世界になってもなんら不思議ではないのですが、そんな世の中で果たして満足出来るのかな。。。あと、あまり本筋には関係ないのですが、著者の歴史観は自分とは合いませんでした。長く海外に住んでいればもうちょっと公平な歴史観を持てるんじゃないかな~。
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期待して買ったものの、全くの肩透かしだった。スパコンにはほとんど触れておらず、スパコンが動いた後の未来予想というか、著者の空想というか。。内容がなく感じたのは、言ってることが予想に予想を重ねた話であるため、ふんわりしすぎてるせいだと思う。
最新テクノロジーの話を浅く広くざっくばらんに繋ぎ合わせた内容という意味で、俯瞰には良いのかもしれないが、その意味では文がかなり冗長なのでどのみちお勧めできない。
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レイ・カーツワイル氏が「ポスト・ヒューマン誕生 コンピュータが人類の知性を超えるとき」で提唱している特異点(シンギュラリティ)について、エクサスケールのスパーコンピュータがそのカギを握っているとして電力を中心としたエネルギー、衣食住やお金そして生命の未来についてついて考察する600ページを越える大著です。蓄電池や太陽光発電など現在の技術がここまで来ていると説明しての展望や元々医者である著者が死因を分析しての長寿化の話などはとても説得力があるのですが、その先となるエネルギーを始めとして衣食住が無料になるとか不老不死の展開になるとエクサスケールのスパーコンピュータがあれば解決するとの言説に持っていかれるところがいまひとつ釈然としません。本書の抜粋版 である「プレ・シンギュラリティ 人工知能とスパコンによる社会的特異点が迫る」でも思ったことですが、そのエクサスケールのスーパーコンピュータで動かすソフトウェアについて言及されていないのが、いまひとつ信憑性を欠くように思えます。と言いつつも今確実に見えているところに到達すると次が見えて来る事が多々あるので、未来について考えるにはとても勉強になる良書です。あと、長期海外滞在者によくある日本は素晴らしいの連呼がやや鼻につきました。
※2011年11月時点での世界最高のスーパーコンピュータ「京」は10.51Peta フロップス(1秒間に倍精度の浮動小数点演算が何回行えるかを表すコンピュータの演算性能単位)、その「京」の100倍である1000Petaすなわち1Exaのスーパコンピュータを開発して2020年に稼動開始と理化学研究所が発表している。
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「よく分かる人工知能」で筆者と対談してた方が書いた本。
なんというか、壮大な妄想本。600ページの7割が妄想で、3割がすごい妄想。多分、3割しか読まなくていい。でも、3割の妄想は絶対読んだほうがいい。そんな不思議な本。
着眼点がおかしい(良い意味で)。言われてみればそうだよね、って思うけれど、絶対に自分一人ではその思考には至れないよなぁという、絶妙な示唆に満ちている。
とりあえず、骨子は「世界=情報」「情報処理装置=コンピュータ」「もんのすごいコンピュータ=エクサスケールコンピュータ」。
よって、世界は、エクサスケールコンピュータの出現で、処理可能になる。
そんな1冊。
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【総合点】9.5/10点
基本的に9点以上つけることがまずない僕が9.5としたのはかなり例外的なこと。今まで読んだ本全ての中でトップ3に入るくらいのインパクトだった。
びっくりしたのはこんなに厚い(550頁前後)で、値段も結構する(3240円)にも拘わらず、アマゾンで48件もレビューがついていた。しかも平均4.5点。皆も凄く高評価なんだなぁと感心した。
ざっくり内容を書く(ほぼ序盤で語られる内容だが)と「衣食住、エネルギーはフリーになる。お金もフリーになる。人類は不老を手に入れ、指数関数的な加速度的なペースで進化を続ける」ということ。
指数関数がどのくらい凄いか、ちょっとネットで調べて感心したのは次の例題。
引用:http://www7b.biglobe.ne.jp/~math-tota/su2/kamioru.htm
●校庭の大きさくらいの厚さ0.1mmの紙を20回折ったら、どのくらいの厚さになるだろうか?予想して、次の中から最も近いものを選べ。
①人間の身長位(1.7m)
②サッカーゴール位(2.44m)
③学校の校舎位(35m)
④横浜みなとみらいのコスモクロック21(観覧車)の高さ位(112.5m)
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いかがだろうか?
答えは④だと言う。びっくりだ。
しかし何より驚くのは「人類はこれからその速度で進化する」ということだ。これが本当ならば、この折り紙の通りに考えると人類の知能を20回程度成長させると1048576倍になるということだ。意味がわからない。
とはいえ、僕はこの本を読むちょうど一週間程度前に、姉に「人類はもうすぐIQ10000くらいになる」と告げていた。なので本書を読んだ時に感じたのは「同じ考えの人がいる!」ということだった。ただ、細部は著者の方が非常に具体的。
ちなみにソフトバンクの孫さんも「パソコンのIQがもうすぐ10000くらいになる」という趣旨のことを言っていたらしい。非常に近い考えだと思ったけど、孫さんはパソコンで僕は人類だと捉えた。正直、人類とパソコンはもうすぐ融合すると思っているのでそう考えると特に乖離があるわけではない。
人類とコンピュータの融合論は著者も唱えている。当然の流れだと思う。
僕が驚いたのはシンギュラリティを唱えたカーツワイルだ。2005年、今より10年以上も前にかなり先進的なことを述べていたらしい。人類進化の6段階の5段階目は僕の想定と同じだったので追いつけた。でも、6段階目ははっきり言って意味不明。宇宙との融合…何じゃそりゃって感じだけど、もし指数関数的に進化を遂げるのであれば不可能ではないのかも、と思えてしまうのがやばい。
人類史上最高の天才と言われているフォン・ノイマンのIQが推定300、アインシュタインは180~190、一般的な天才クラスは130程度、平均的な人は100らしい。そしてノイマンは伝説的逸話に事欠かない。とある教授が3か月かけて解いた問題を、話し始めて5分ほどで同じ結論に至ったり、子供の時電話帳を丸一冊暗記したとか、電話帳のパッと開いたページの総和を一瞬で出したとか。あまりにも頭が良すぎて半分冗談、半分本気で火星人だと呼ばれていたとか。
物凄い天才だ。しかしこの凄まじい頭脳の持ち主ですらIQ300程度である。
と考えるとIQ1000になったらおそらく、現人類の誰もついていけないレベルになる。「何言ってるのか意味不明じゃん」という話。
例えば現在、宇宙の最先端の研究だと大真面目に「宇宙は十次元あるんじゃないか」という議論が繰り広げられているらしい。これは一般人からしたら意味不明だろう。しかしオカルトチックなものではなく、エネルギー量とか計算するとそう考えないと辻褄が合わないということ。
仮に十次元あったとして、それをどうやって解明するのか?一見、そんなの物凄く先になりそうな気はする。しかしもし、人類とコンピュータが指数関数的に成長を遂げるのであればそれは数年で解かれてしまう可能性もあるのではないかと僕は思う。
スーパーコンピュータ京が出来たのは2012年で、その次に完成するポスト京が2019年ごろと著者は想定しているが、たった7年で演算速度は1000倍に達する予想が出ている。京なら50年(18250日)かかった計算が70日程度で収まるのだとか。約260倍の短縮である。ということはそのさらに次のバージョンが2026年くらいに出たとして、同様に成長していた場合(想定1000エクサ)、京で50年かかった問題が0.27日程度で終わる可能性が高い。この間、開発に要した期間はたったの14年である(現在から考えると10年後)。
ちなみにスパコンとパーソナルコンピュータはだいたい1万倍の差らしいので、もし1000エクサのスパコンができているとしたら、パーソナルコンピュータもその時点で100ペタクラスになっており、これは京の10倍のスピードということになる。今から10年後には誰もがノートパソコン、あるいはタブレットで京以上の演算速度を実現しているのかもしれない。
さて、本書の内容に戻って見てみると、エネルギー問題、衣食住問題、お金の問題はスパコンの性能が上がればまとめて解決する類のものであるという。この本は序盤で結論をまとめていて、後半多くのページを書いてその根拠を連ねている。前半が衝撃的、後半は説得するためのものという感じだ。
僕は概ね賛成なのだけど、2点気がかりなことがある。
1点目:他のものは全部フリーになったとして、お金まで果たしてフリーになるのだろうか?という疑問。というのも、人は優位に立ちたがるものだからだ。例えば僕が今、100万円持っていたとして、目の前に食べるのも困っている難民がいるとする。その人に「助け合いが大事だよな」と言って50万渡して、相手が助かった。対等な関係になった。それでメデタシメデタシとなるか?という問題。
いや、普通は100万持ってて、助けようと思ったらせいぜい渡すのは1万くらいでは?と考える。すると手元の残りは99:1で対等ではない。こっちは助けてあげた。向こうは助けてもらった。対等ではない。「俺のが偉いじゃん。恩人じゃん」と考える。いや、考えないとしても無意識下ではそう感じるはず。
たぶんほとんどの人はそう。「無私の奉仕」を掲げている人ですらそういう側面はあるんじゃないかと思うし、それは別に悪いことではないと思う。実際相手は助かってるわけだし。
この時、優位性をもたらした要因がお金だ。お金の多寡だ。
ビル・ゲイツ、ウォーレン・バフェットなど超富裕層、大富豪は寄付を行う割合がとても多い。非常に素晴らしいことだと思う。「飢えている人をなくす」このためにはかなりの資材を費やす人もいる。本当に凄い。
ただ、「皆が同じ立場になる」となると難色示す人いるんじゃないかなーと思う。富裕層が寄付をする理由の一つは「重要な人物だと思われたいから」だと思う。これは意識していない人も多いと思う。
完全に無私の精神で寄付をしている人がいたらそれはそれで凄いことだが、それは正直、富裕層になるより難しいことだと僕は思う。
というわけで、「重要な人物に思われたい」という富裕層がいなくならない限り、お金は残り続けると思う。形は変わるかもしれないよ。ビットコインみたいな感じで。でもステータス、アイテム、オプション的な形では残ると思う。
ただ著者の「お金フリー」はそこまでの意味を含んでいないのかもしれない、と書いてて思った。だとしたら論点ずれかなー。
2点目:奇跡の少女が亡くなってしまって非常に残念。肉体の不老は実現出来ても、脳の不老は果たして可能なのか?という問題。
これ結構本質的。例えば仮に肉体は500年生きられるようになったとして(googleがその類の発表をしたらしい:http://www.mag2.com/p/money/6904)脳が80歳くらいでボケてしまったら、420年間痴呆症というギャグみたいな人生になってしまう。この点が解消されない限り、肉体寿命がいくら延びてもなーと感じてしまう。
とはいえ、人類の平均IQが10000になったらこのくらいの問題はチャチャっと解決してしまいそうな気もしている。
本書を読んで、非常に将来が楽しみになった。特にVRの部分。ホロレンズの進化型だよね。あらゆる世界に入り込めてしまい、そこではきっと神になれる。怪しい意味ではなくて。文字通りの創造神みたいになれると思う。それはきっとあと20年もかからないのではないだろうか。脳の構造解明が早く進むといいよね。
【本書から得られた目標】
・シンギュラリティが訪れるまで生き延びる(事故とかトラブルとか病気でくたばらない)。
・(スーパー)コンピュータを創る。
・脳の研究をする。
・VRの研究をする。
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著者プロフィール
PEZY Computing代表
「2017年 『人工知能は資本主義を終焉させるか』 で使われていた紹介文から引用しています。」
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