英語もできないノースキルの文系はこれからどうすべきか (PHP新書)
- PHP研究所 (2014年12月16日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (237ページ)
- / ISBN・EAN: 9784569821634
感想・レビュー・書評
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ノースキル文系への愛のあるアドバイス本。
内容はシンプル。今の世の中は30年前とは違って、新卒入社からの終身雇用の道は狭くなっている。だから、英語と経験を身につけて、勝てる土俵(海外就職など)を探そう、というもの。
海外現地法人にいたときの経験からも、それは事実だと思う。海外では、現地語と日本語が話せる日本人は重宝される。学歴やスキルがなくても職があるだろうし、その勤務経験自体が自分のスキルになる。
もう、新卒一括採用でこれからの人生が決まる時代じゃない。就職してからもずっと試され続けるし、そこで努力を辞めなければ、随分遠くまで行けるだろう。
採用イベントでは、新卒の子たちにそう伝えてあげたいし、私自身ももっと遠くまで行けたらいいなと思う。 -
新聞報道を見ると最近の就職活動は私が実際に経験したころとは様変わりしていることに驚かされます。PDF化した履歴書をネットで多くの企業に送って、何度も面接試験を受けて「内定」を受けるところに行くのには多くの時間がかかっている様です。
人口減少時代がすでに到来し、将来の若者の減少が確実視されている現在でも、就職するのは困難な様です。但し、この本によれば条件があるです。それは、タイトルにあるように「英語もできないノースキルの文系」の、いわゆるトップ大学でない一般の学生です。
この本はそのような大学生を対象としています。かなり厳しい事が書かれていますが、その内容は恐らく真実で、単に書いて不安を煽るだけではなく、解決策を示しています。思い切って1年間留年して、「英語と実務能力(スキル)を磨きなさい」というものです。具体的にそれを行うべき場所(国)、1年間の時間の使い方も具体的に示しています。
著者の大石氏は普段はコンサルタントをされている様ですが、本文における説明も分かりやすく素晴らしい内容だと思いました。資格の必要性(持っていて意味のあるもの無いもの)についても鋭い指摘をされていました。この本をこれから就職活動を迎えることになる二人の娘達に如何に伝えるべきか、思いを巡らせました。
以下は気になったポイントです。
・その時々と自分の得意分野に注目するには、1)興味を持てることがたくさんある人は、一つに絞る必要はない、2)少なくとも「嫌ではない仕事、人から自然に求められる、過去にうまくできたこと」をやる(p30)
・就職の面接とは、「その企業のビジネスのどこに興味を覚えて、どういう仕事に取り組みたくて、どういうことができるのか」を端的に述べる(p38)
・志望動機を言うためにすべきことは、1)相手の会社には何が足りなくて、何が必要とされているのかを見極める、2)自分ができること(できそうなこと)から企業が欲していることを探して結びつける(p44)
・今までの就活は、できることが何もない学生が、企業に採用してもらうために、夢や理想を語って、経験・スキルではなく、自分を企業に40年間丸投げします、という宣言を売りにしていた。「がんばります」で内定がとれるのはブラック企業だけ。(p45、48)
・今からでもできることをして、英語力・ノースキルの2つを改善したうえで、日本国内のみに囚われず海外も含めて就職先を考えたら、可能性は広がる、ということを伝えたい(p49)
・日本の上場企業の2012年の全従業員は合計618万人、日本の全従業員は4000万人なので、比率は15%。ここにはブラック企業と噂されるところも含まれている(p56)
・世界的常識では、ノースキル文系学生は無職で当たり前。学校卒業して仕事が欲しければ、コンピュータサイエンス・エンジニアリング・ファイナンスや法律を学ぶのが普通(p63)
・新卒で正社員として入社し、できるだけ長く勤め上げるのが正しい人生、それを真に受けたらプレッシャーで潰される、そんなゲームは降りるべき(p69)
・現在の就活では、なんらかの武器になるスキル、経験、実績が必要。気合い芸では内定が取れないのは明白(p80)
・1年間休学し、最初半年間は英語学校に通う、フィリピンに留学するのがお薦め。メリットは、マンツーマンのレッスンを一日6時間受けられる。米英ではグループレッスンで1日2時間程度なので、話せるようにならない。2つ目のメリットは、寮費・食費込みで20万円以内で行ける(p89)
・日本人に求められている、多くの企業で求められている英語は、欧米向けの英語ではなく、インドネシア、シンガポリアン、インド人と仕事ができるようになるための英語である(p91)
・自分に足りないものを認識して、留年を決めて一年で帰ってきたところが、企業が大きく評価するポイントとなる(p96)
・世界一周して、百人の凄い人と会ってきても何の足しにもならない。それをするなら、そのうちの一人に弟子入りして半年間働く(p98)
・企業は海外で、海外の給与水準で雇える人材を大量募集している、現地のインドネシア人よりははるかに給与は高いけれど、日本人の本社の人材よりは給与はだんぜん安い、そういうところにすごく需要がある(p116)
・現在、日本とインドネシアでは報酬額が10倍以上異なる、ただし、インドネシアでは、クラウドソーシングの報酬が一般の平均賃金よりも3倍程度高い。このため、先進国から単価の高い仕事がネットを通じて入ってくるようになった、日本国内で働く人には脅威(p125)
・先進国に住み、新興国の高度人材と同じ仕事をしている人は、単価が下がり生活苦しくなる。新興国に住みネットだけで先進国の仕事が受注できる人は、単価が上がり暮らし向きは良くなる(p127)
・日本に住んでギリギリの生活をしていたら、新しい事にチャレンジするのは難しい。海外に住んで日本からの仕事を受けることができれば、「時間を稼げる」(p132)
・人材を分ける4つは、意識の高低・実行力の高低により分けられる。実行力が高く意識が低いのは「マニュアル人材」、意識だけ高く実行力が低いのは、企業が雇いにくい(p138)
・意識が高くで実行がちぐはぐな人材は、1)やりたいことが壮大な割に、その目標は自分で考えたものでない、2)やりたいことを実現するステップを考えていない、3)やりたいことがすぐ実現できない社会が悪い(ショートカット思考)と言う(p140)
・意識が本質的に高いのではなく、意識が高く見えるマニュアルを実行しているだけの、マニュアル人間の可能性がある。意識の高さの偽装(p147)
・意識の高さを偽装してしまう人は、目標やゴールの立て方が間違っている。変えたいこと、実現したいことにフォーカスするのは本来のビジョンや目的だが、その代わりに「自分がなりたい「状態」にフォーカス」してしまう(p149)
・企業の仕事を見極めるのは、企業の業種、にもっと着目すべき。航空会社、鉄道会社、バス会社、宅配業、これらの仕事の中身は非常に似通っている(p159)
・銀行業は、1)企業にお金を貸す(融資)営業、2)融資可能かを判断する審査、3)原資となる庶民の預金を集めてくる窓口業務、が基本である(p163)
・業界には、どういう仕事が存在するのか、どういうことが経営のポイントか、それを調べるのが大事(p164)
・資格を分ける基準は、「国家資格か否か」「独占業務があるか否か」で分けられる。別の言葉だと、「シグナリング効果の有無」「ライセンスであるか否か」(p169、174)
・シグナリング効果あり、かつライセンスがある資格として、医師・弁護士・公認会計士等、ライセンスはないがシグナリング効果があるのは、ハーバードMBAやTOEFL満点等、気を付けないといけないのは、シグナリング効果は無いが、ライセンスである資格:宅建、行政書士、社労士、中小企業診断士等(p176)
・いま外国に仕事をとられている仕事というのは、「世界のどこでやってもかまわない」仕事(p199)
・仕事の移転に関しては、知的かどうか、単純かどうかが判断軸ではない。物理的な場所を問うか問わないかである(p202)
・日本国内に残るジョブは、「ラストワンマイルジョブ」、最終的にお金を払う人のことろで、人が直接何かをするような仕事。電車や車の運転、高齢者等の介護、接客、ホテルマン、料理人、美容師、医師、看護師、公務員全般など、但し高賃金は保証されないのが注意(p206)
・グローカルという仕事もある、日本と海外をつなぐような仕事もある。グローバル(海外)で働いていながら、ローカル(現地)とも密接に関わる(p209)
・ニートをするなら海外、そのメリットは、1)生活費、2)人生の意味を考える時間を持てる(p214)
・ものごとの戦い方には2種類ある、1)戦闘力を高める、2)戦う場所を変える(p231)
・戦って勝てる場所で勝つ、これがポイント、経営学用語で「ポジショニング」という。相対的な戦闘力が大事(p237)
・行うべきことは、1)参戦できる最低限の武器(英語と多少の実務経験)、2)常識にとらわれない勝てる見込みのあるポジションをとる、3)仕事を見つけたら自分を磨く(p237)
2016年3月6日作成 -
良書。目から鱗。
題名とは違い、英語とスキルを付けなくてはいけないよ、ってこと。
自分の得意なことは何か。社会、会社に活かせる自分の強みは何か、で勝負する。
30から就職でもいいじゃないか。
自分を活かせる会社、仕事を探す。 -
なかなか面白かった。
できないことはできないと認めろ、英語勉強しろ、稼げないならコストを下げろ、国外へ出ろ。主論はそんな感じでした。
ただし、海外に出ればなんとでもなるよ、と書いてるけどそれは詰まる所、みんな海外に行きたくない(日本を離れたくない)から、みんなの嫌がることをして儲けるという論法に他ならないのであると感じた。
なので、海外に興味のある自分には面白いが、海外に興味無い人からすると面白く無いかもしれない。 -
勉強になりました。
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言っていることはもっとも。
ただ、結局「英語」なのね~というのが、題名からすると意外。
就活生向けの本。 -
<目次>
第1章 「好きなこと」より「得意なこと」を仕事にしな さい
第2章 志望動機で苦しんでいる人へ
第3章 就職活動に失敗して自殺をしてしまう前に
第4章 就職活動はスタートしたときから勝負がついてい る
第5章 アジアで就職するという選択肢
第6章 フラット化する世界で、どう生きのびるべきか
第7章 「意識が高い(笑)学生」と、やりたいことがで きないという病
第8章 入社後、希望と違う仕事をやらされて悩んでいる 人へ
第9章 MBAは、ほんとうに役に立つのか?
第10章 履歴書は手書きにすべきか、という昔ながらの 議論に終止符を打つ
第11章 グローバル化でなくなる仕事、生き残る仕事
第12章 どうせニートするなら、海外でニートしよう
終章 どうやってよい企業に入社するのかでなく、ど うやって食っていけばいいのかを考えよう
<内容>
タイトルから言うと、内容はやや肩透かしを食らうかもしれない。結論は、日本国内ではやっていけない(しいて言えばラストワンマイルジョブの外食産業)。海外でニートしながらじっくりと考えよう。そのために英語力を鍛え(これも海外に出てしまえば自然と最低ラインは身に付く)、最低限の学力と(世界的)常識を持って、冷静に考えてみよう、ということです。
そして、これから5年くらいならば東南アジアでそうしていくか東南アジアで職に就けば、しばらくは食っていける。その間にグローバル化に対処できる仕事のスキルを身につけていけば、その後も食っていけるでしょう。
まあ、ある意味極論だが、理には叶っていると思う。日本人の「島国根性」を脱することができれば、日本人の若者は、能力的にも性格的にも、世界では相当力がある。そこに気づいて、早くグローバル化に乗ってしまえ、というのが著者の考えなのだろう。 -
一般的就活人を痛烈に、あるいはコテンパンに痛めつけて現実を知らしめてくれたあと、凡人でも実効可能な具体的挑戦の形を示してくれる良書。
若い時読んでおけばよかったと後悔するより、今からでも飛び出す勇気を与えてくれる。