異邦人(いりびと)

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著者 : 原田マハ
  • PHP研究所 (2015年2月25日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (377ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569823812

異邦人(いりびと)の感想・レビュー・書評

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  • 原田マハをちょっと見くびっていたかもしれない。勝手に既定路線をひた走る優等生的な作家だと思っていた。ごめんなさい。
    それほどまでにこの作品が期待を裏切って良い作品だったということ。
    私の中では「楽園のカンヴァス」と同等もしくは超えたかもしれない。

    同じようにアートを扱っている作品には違いないが、今回は作品そのもの作家そのものに焦点を当てているわけではなくそれを取り巻く画壇、画商、コレクターなど普段知ることのない世界を織り交ぜて描いているところが決定的に違う。
    まだデビューしていない謎の画家を登場させてミステリー仕立てにしているところはお見事。

    舞台となった京都の移ろいゆく季節や文化、人間模様が描かれる様は耽美的であでやか、妖艶といった形容詞がぴったり。観光客として訪れるだけでは決して見ることのできないブルジョアな京の暮らしが物語のほとんどを占めているが、まったく嫌みなところがない。このぎりぎりまで抑えた筆さばきに好感を覚えた。
    もしこれが林真理子だったら目も当てられないだろう、なんて勝手な感想。

    とにかく全編にわたって楽しめた。
    登場する人物が一癖も二癖もある人ばかりではあるが、いい人ばかりではつまらない。
    わがままなお嬢さん育ちの菜穂をはじめ、京都画壇の重鎮である志村照山、菜穂をサポートする書家の鷹野せん、ミステリアスな白根樹などなど。
    最後の最後で表紙を見ると・・・、いや憎いですねマハさん。

    今までの爽やかで読後感の良い原田マハ作品が好きな人は苦手な作品かも。
    好き嫌いが分かれるかな。

  • たかむら画廊の青年専務・篁一輝と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長期逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一毎の絵に心を奪われる。画廊の奥で、強い磁力を放つその絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。深く、冷たい瞳を持つ彼女は、声を失くしていた―。京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」。『楽園のカンヴァス』の著者、新境地の衝撃作。
    「BOOKデータベース」より

    美術館に行きたくなった.
    もう長いこと美しい情熱に触れていない.無性に心が乾いていることを感じた.涙がこぼれた.いろんなところに深いふかい溝を感じた作品だった.
    本の中で紡がれることばから頭の中に浮かび上がる絵はきらびやかで美しく、紅葉の葉一枚が、苔むした岩一つが、目の前にあるような感覚に陥るような文章だった.
    激しい感情は感性を守る鎧、譲れないものをもつものは強いと思った.
    京都はよそ者には不親切な街だ、よそ者を受け入れない街だ、とよく聞く.それは一面事実であるけれども、そうではない部分がある.京都のうわべだけを見るものには開かれない扉があるのだろう.求める心が強ければ開く扉もある.
    才能は裕福な家の子どもに降りてくるばかりではない.才能を見出す人がいて後世に残るものもある.絵から情熱を感じるたびに、作者だけでなく、それを残そうとした人々へ尊敬の念を禁じえない.
    嗚呼、美しいものに触れたい.

  • 実家が運営する美術館の副館長でするどい審美眼をもつ菜穂と
    菜穂が見出した画家白根樹の物語。

    めずらしいことに…私の中の響きが弱かったんです。
    白根樹の謎が多いミステリー調になっているからなのか、
    図書館の返却期限に追われて、倍速で読んでしまったからなのか。

    菜穂の妊娠が東日本大震災と重なり、
    原発事故のことがあり東京に住んでいた妊娠初期の菜穂が
    一時京都に移り住むということで、京都が舞台でした。

    菜穂がお世話になる、書道家の鷹野せん先生宅。
    家の土壁の色、箱庭の表現。

    白根樹の描く絵画たちの表現。
    (私は特に「青葉」が好きです。
     ホンモノのクレーの絵は私には高度すぎて、
     魅力がちょっとよくわかりませんけど)

    こういうところは、さすがマハさんと堪能しました。

    その上、上品でやわらかい京言葉。
    京の人々の凛とした所作、佇まい。
    鷹野先生が着こなす着物の色の名前の
    なんと豊かで素敵なことか。

    憧れの京都。雅やかな雰囲気を堪能する
    ただの観光客で終わってしまったような、
    響きが弱かった自分に寂しい気持ちが残る一冊です。

    絵画や芸術はこんなにもこんなにも貴重なものなのに
    その時のお金の事情で誰もが見ることが出来たり、
    皆の目から遠ざけられてしまったり…。

    価値のあるものが辿る運命なのかも知れませんが
    権力とは切り離された所で
    最高の保存の状態で後世に繋げて欲しい。
    そう願わずにはいられませんね。

  • 京都を舞台に、逗留していた資産家の若妻と画家や画廊をめぐる物語。
    美術界を扱うのはお手の物ですが、ドラマとしては新境地のようです。

    画廊経営者の息子で専務の篁一輝は、資産家の令嬢・菜穂と結婚した。
    東日本大震災後で原発の事故が起き、妊娠中の菜穂は、京都に一時避難することに。
    菜穂は美術には目利きで、祖父のコレクションを有する有吉美術館の副館長でもあった。
    うつうつと過ごしていた菜穂はある日、老舗画廊で小品『青葉』を発見する。その絵の作者はまだ無名の若い娘・白根樹だった。
    京都に馴染み、謎めいた白根樹の作品にのめりこんでいく菜穂。
    ところが、東京では画廊と有吉不動産の経営は危機に陥っていた‥

    最初は、お金持ちらしくわがままな印象だった菜穂ですが、美術への感性が鋭く、真摯な気持ちを抱いていることは伝わってきます。
    ある意味では、東京の家族に何もわからない若い娘のように扱われていて‥そのへんをひっくり返して反逆していく話かも。
    鷹野せんの家に預けられてからは素直な感じに。
    こういう京都なら知りたいと思いますよね。

    悪気はないけど周りに押され気味な夫の困惑。
    自分を押し通しているけど、その陰には以前からの事情も実はあった有吉の母。
    京都画壇の重鎮や、老舗の画商。
    どろどろした人間関係は、さわやかな印象が強い原田マハにしては、ねっとりしたストーリー。
    ただその描写はあまり突っ込んではいないので、修羅場は追っていません。その辺が原田さんらしい、抑制したタッチになっています。

    画家の樹も神秘的な面があっていいけれど、最後に明かされる点は、‥え?
    まとまるような、まとまらないような。
    芸術家と作品への尊敬が何より輝いているので、他の面が出てくると意外な落ちに感じるようです。

  • 原田さんが描くアート小説では
    いつも絶妙な位置に絵画が配置されていて
    私達は
    絵画自身が語りかけてくるような
    深い余韻のごとき物語に耳を傾けつつも
    視線はずっとそこでいい、
    絵画を眺めていていい、
    まるで美術館にでもいる様なそんな心地良さが好きだった。

    が、
    今回目線が若干落ち着かないな?と、感じたのは
    絵画と読者の間にいる人物の色が濃すぎたせいだろうか。
    <本当に価値のある絵画を見抜く目>が
    後世に残して行く偉大な作品を発掘するのだから
    大事な事だとわかっていても、
    私にはあまり興味が持てなかったせいもあるのだろうか。

    主人公が経営する美術館で所蔵していた
    モネの『睡蓮』を諸事情で夫に売却され、
    落ち込んでいた彼女に
    ある人が言った

    「気の毒でしたなぁ。
     せやけど、その『睡蓮』は
     もともとあんたのもんやなかったん違いますか?」
    の、言葉が最も私の心を捉えた。

    人の心を打つ絵画は
    画家の生活を支える為に描かれたのだろうか?
    一部の収集家の欲を満たす為に存在するのだろうか?

    そうじゃない、と思う私には
    物語の中での売却合戦が、ちょっと哀しく感じられた。

    でもミステリー小説だと思って読めば、
    間違いなく面白い。
    ぐいぐい物語に引き込む筆力には圧倒された。

  • 一枚の絵が、ふたりの止まった時間を動かし始める。
    たかむら画廊の青年専務・篁一輝(たかむら・かずき)と結婚した有吉美術館の副館長・菜穂は、出産を控えて東京を離れ、京都に長期逗留していた。妊婦としての生活に鬱々とする菜穂だったが、気分転換に出かけた老舗の画廊で、一枚の絵に心を奪われる。画廊の奥で、強い磁力を放つその絵を描いたのは、まだ無名の若き女性画家。深く、冷たい瞳を持つ彼女は、声を失くしていた――。
    京都の移ろう四季を背景に描かれる、若き画家の才能をめぐる人々の「業」。
    『楽園のカンヴァス』の著者、新境地の衝撃作。
    「Amazon内容紹介」より

    京都は新参者をなかなか受け入れてくれない街という印象だが、ほんものを受け入れる器をもっている街だとも思う、というのは住んでいる印象.
    途中まで、菜穂の言動にいら立ちを感じていたけれども、それが自分の感性を信じる心や意思を貫く強さから来ているものだと分かって以降は、称賛に値するほんものだと思った.
    人間、いやだと思っていることをずっと続けているとダメになってしまう.でも、やりたいと思うことを続けられる環境にいるのは難しいこと.どれだけ信念をもっていて、貫くことができるのか、だろう.

  • 個人的に、今まで読んだこの作者の本の中では一番面白かったと思います。
    これまでのこの人の本は「まあまあ」「上手に書けてるな」くらいの印象で夢中になって読むという事はありませんでした。
    題材選びも上手だし、文章も上手だし、でもそれは表面上の事で、心をゆさぶられるほど深く入りこんで書いてないという印象。
    いつも何冊か図書館で本を借りたら自然とこの人の本が読むのは後回しで最後になる。
    この本も以前図書館で借りたものの、その時は精神的に本を読む気にならなくて貸出日が過ぎたので読まずに返したくらい。
    だけど、フォローしてくれているvilureeefさんのレビューを読んで、興味がわき、また借りて読んでみたいと思いました。
    素敵なレビューなので、このレビューの続きを読むよりはそちらを読まれるのをおすすめします。
    私はいつもの通り、自分の備忘録としてレビューを書きます。

    この物語の主人公は二人。
    老舗画廊の跡継ぎである男性とその妻で絵画に対して天才的な審美眼をもつ女性。
    彼女はもともと資産家の娘で、夫はいわゆる逆玉婚で結婚したことになる。

    この二人のそれぞれの視点で描かれた話が交互に進んでいくという構成。
    男性の目線では、財閥の娘と結婚することとなった経緯。
    そして、その娘の母親である義母にそれとなく男女の関係を誘われているということ。
    ある事件をきっかけに画廊は経営困難となり、妻の大切な絵画を売ることとなった、そして、それまでさりげなくかわしていた義母との関係が変り-という事が描かれている。

    一方、女性の方の話としては、東北大震災をきっかけに妊娠している彼女は京都に避難することになった、そして、その京都で、まだ無名の天才画家の女性と出会い、それをきっかけに彼女の考え、人生が変わっていくという事が描かれている。
    そして、そこには思いがけない真実が-。

    この話、もしも男性側の目線だけで描かれていたら妻はただのワガママなお嬢さんにしか見えなかったかもしれない。
    だけど、そんな彼女の側から描かれていることで、彼女の心情や結末として何故そうなるのかというのも理解できる。

    今までの作品と比べると深く登場人物の心情を描いている-けれど、やはり結末は少し物足りない。
    どこかそこまで描くという事にためらいがあるのか、表面上なきれいなことにこだわっているような感じがした。
    これがこの作者の持ち味なのかもしれないけど-。
    今まで読んだこの人の本の中では一番面白く夢中・・・とまではいかないけど、入りこんで読むことができました。

  • 一言では言い尽くせない読後感。確かに一気に読んでしまうほど先の展開が気になったし、面白いか面白くないかといったら面白いのだと思います。でも、あまり好きではありません。共感出来る部分が少なかった気がします。菜穂にも克子にも一輝にも。
    あらためて表紙をみると意味深ですね。“異邦人”。
    京都って、特別感があり、和の中心というか日本の象徴のイメージがあるのですが、こうして四季折々の京都を感じられるのは良かったです。今は夏で連続猛暑日ですから、川床を想像して心の中に涼をとっておりました(笑)
    ただ、人間関係が一筋縄でいかないうえに、一部ナマナマしくて、少し辟易してしまいました。 それに、震災後の放射能のことは、いまだに心が痛くなりますね…。 福島は故郷ですので、原発のことや放射能のことに触れられる度に、ぎゅっと心痛みます。

  • 元キュレーターの著者らしい作。
    絵画や着物、京都の街の描写はとても美しく、雅な雰囲気に溢れている。その雅さと、登場人物たちに見え隠れする影との対比がこの作品の味わいどころでしょう。

    単純なストーリー展開ではなく仕掛けが施されていて、そこを面白がれればよかったのかもしれないが、いかんせん、私にはついぞ縁のない裕福な家庭の優美な遊びに気後れしてしまい、なんとなく楽しみそびれた感じ。

    著者の美術テーマの作品は、その道のプロフェッショナルなだけに秀逸で、いつも楽しみにしていたのに今回は残念でした。
    単に、自分に美術を理解し、鑑賞して堪能できるだけの素地がなかったと言ってしまえばそれまでだけれども。
    うーん、でも詰まるところ、それが原因かもなあ。

  • ここのところ、マハさんの“独占市場”である美術界を背景にした人間模様。あれこれの仕掛けが周到に用意され、この物語はいったいどう流れていくのか、決着はどうつけるのか?と、先を急いで読んでしまう、という意味では面白かったのですが…。

    東京の老舗画廊の御曹司・篁(たかむら)一輝。(この苗字、カッコいいよね。いかにも高貴&物語の主な舞台となる京都の匂いを始めから感じさせて巧いなぁ、とも。)そして、彼の妻・菜穂は、父親の経営する日本有数の不動産会社を母体とするセレブな私設美術館の副館長。幼いころから“名作”を見抜く目を持つ彼女は今妊娠中で、3・11直後の東京の放射能を恐れ、京都に一時避難中という導入です。

    ・・・・・・ う~~ん、これはマハさんの意図したとおり、なのかもしれないけど、どうしてもこの菜穂が好きになれない。いかにもお嬢様育ち、という自分の価値観だけを主張する我の強さ、想像力のなさ。
    美術の世界では、人好きのするような穏やかな女性ではわたっていけない、ということなんだろうか。うん、新人を発掘したり、大御所とやりあったり、また、他の画廊を出し抜いたり、と性格の強さは必須なのかもしれないけれど、それにしても、夫に対するモノの言い方、思いやりのなさは読んでいて辛かったし、うんざりだったんですよね。

    で、京都で出会った無名の若い女性の画家・白根樹。彼女の描いた絵に一目で惹かれていく菜穂の心の動きやその絵の描写はさすがマハさんと思わせる素晴らしさで、また、樹の持つ謎めいた空気・生い立ちはまるでミステリーのように読む者をぐいぐいと引っ張ってくれたし、京都に何百年も前から住み、その家系を誇る人たちの奥深い営みも素直に面白かった。

    でも、一輝がなぜ菜穂を愛したのか、こんなイヤな女(と言ってしまうけど)との結婚をこれからも続けたいと奮闘努力しなければいけないのか、がどうしてもストンと来なくて…。

    ネタバレです。





    愚直に妻を愛し、家業を守ろうと努力した彼がなぜこんな目に合わなければならなかったか、あまりに可哀想すぎる、と後味が悪すぎるんじゃないでしょうか。ねぇ、マハさん、と言いたいです。

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異邦人(いりびと)の作品紹介

京都に滞在中の菜穂。口がきけない画家の一枚の絵に魅せられた彼女は――。アートとドラマが見事に融合した、著者新境地の力作長編。

異邦人(いりびと)のKindle版

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