歴史とプロパガンダ

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (239ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569825823

作品紹介・あらすじ

開戦はやはり仕組まれていた。占領政策は巧妙なブラック・プロパガンダだった。中国の謀略の淵源はここにある……。驚愕の歴史開封!

感想・レビュー・書評

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  • 第2次世界大戦において・・・
    日本は世界を侵略した悪であり、各地で多くの悪を為し、何から何まで日本が悪く、間違っていたのであり、まったくもって弁明の余地なしとする・・・
    1990年代以降、こういう見方を『自虐史観』だ!と批判する動きが強まってきたわけですが・・・
    少しばかりだけども当時のことを調べると、『歴史修正主義』の方までは針が振れずとも・・・
    確かに、本当に日本は何から何まで悪かったのか?
    とは疑問に思いますわ・・・
    連合国がすべてにおいて善で、大日本帝国はALL悪である・・・
    とは、古今の歴史を紐解けば、さすがにそのようにはとてもとても思えません・・・

    で、著者は言うわけです・・・
    自虐史観はGHQのプロパガンダの成果の賜物であり、GHQのプロパガンダは今も日本のマスコミと教育機関により、日本に浸透し続けている・・・
    GHQによる『心理的占領』は未だに続いているのだ、と・・・
    戦後70年以上経ち、そろそろその心理的占領の呪縛から脱しないとダメだ、と・・・
    事実は事実として認識しよう、と・・・
    で、本書は・・・
    アメリカの公文書館に所蔵されている歴史資料を用いて・・・
    アメリカ政府の公式記録や政府高官の証言や書簡によって、何がGHQによる『プロパガンダ』で何が歴史的事実かをハッキリさせよう!
    というもの・・・
    ちゃんと一次資料等を使って、プロパガンダを打ち砕く、と・・・
    じゃないと、著者もまた『それ、あなたのプロパガンダですよね?』って突っ込まれちゃうから・・・
    一次資料を基にしているから正しいということではないですが、それなりには信頼できるかなという内容でございます・・・

    内容は全部で6章・・・
    日米開戦の真相、真珠湾奇襲に関して・・・
    ヤルタ会談のいい加減さ(特にF・ローズベルト)に関して・・・
    原爆投下に必要性に関して・・・
    占領軍のプロパガンダに関して・・・
    中華人民共和国の侵略の歴史に関して・・・
    尖閣諸島に関して・・・
    というラインナップになっております・・・

    自分として、特に興味深かったのは真珠湾攻撃に関する第1章・・・
    日米開戦に関しては、日本軍の真珠湾奇襲、だまし討ちということになっており、
    アメリカの対日戦争はそれに対する正当で正義の戦争ということになっているけれども・・・
    著者はこれはローズベルト政権のプロパガンダであると反論する・・・
    2010年にアメリカの公文書館で公開された機密文書から・・・
    ローズベルトは1941年11月中旬の段階で、石油禁輸措置によって望むと望まないに関わらず日本が米国に先制攻撃をせざるを得ない状況に陥っていることを確認している・・・
    そして、日米が開戦すれば、『ドイツも参戦してくる』ことをあのハルノートを日本側に渡す前に分析し、確信を得ていた・・・
    というのが分かる・・・
    ドイツが参戦してくるということは・・・
    日本が先制攻撃してくれば、(イギリスを救うべく)ヨーロッパ戦線に参戦できる・・・
    そして、日本が開戦に踏み切るならば今しかない・・・
    これを踏まえた上で、ローズベルトは例のハルノートを日本に渡したわけですね・・・
    で、ローズベルトはハルノートが日本を開戦に追い込むことを知っていて、交付前日の11月25日に陸軍長官のスティムソンに・・・
    「たぶん12月1日にはわれわれは日本に攻撃されることになるだろう」と伝えている・・・
    さらに、11月27日には海軍作戦部長のハロルド・スタークから・・・
    対日交渉は終わった・・・
    日本の侵略がここ数日中に予想される・・・
    フィリピン、タイ、クラ地峡、ボルネオが作戦地域として予想される、警戒せよ・・・
    との戦争警報が発令されている・・・

    ・・・

    そう、日本軍が先制攻撃してくるの・・・
    分かってたのよね・・・
    ローズベルト政権にとっては突然の攻撃でもないし、分かってたならだまし討ちでもないですね・・・
    ただ!
    そう、予想地域でハワイ抜けているんですよね・・・
    まさかハワイには来ないだろう、攻撃できないだろう、リスク高すぎだし、ってことだったみたいです・・・
    よく真珠湾攻撃はローズベルトが予知していて、対日戦争に対する国民の支持を得るために、そしてヨーロッパ戦線に参戦するために、太平洋艦隊とハワイの基地を犠牲にした・・・
    という陰謀論がありますが・・・
    その陰謀論は大抵、「攻撃させるとしても、普通もっと被害が少ないようにしますよね?」って返されて終わりだったんですが・・・
    上ので分かりましたね・・・
    日本軍が先制攻撃を12月アタマにしてくることは分かっていたし、警戒態勢も取っていた・・・
    けれども!まさかハワイを攻撃してくるとは予想していなかった、と・・・
    この意味では、真珠湾攻撃って、ローズベルト政権にとっては奇襲といえば奇襲と言えるんですかね・・・
    虎の子の太平洋艦隊壊滅させられちゃってるし・・・

    このように真珠湾攻撃、日米開戦は・・・
    奇襲であったとか、だまし討ちであったとか、一方的に日本が開戦に踏み切ったというのはプロパガンダだったよう・・・
    ローズベルトの陰謀というか、思惑に日本政府・軍部が乗せられたのは資料からして多分間違いないんでしょうね・・・
    他の章読んでも、アメリカさん何やってくれてんの?!と憤りを感じます・・・
    でも・・・
    そもそも日本側も乗せられちゃダメだし、そこまでやらせちゃダメだし、追い込まれちゃダメだし、というのもある・・・
    日本の愚かさも感じるし、そこまでやる(やれる)アメリカやっぱり恐ろしいし、スゲーわとも感じる・・・
    戦争に正義とか悪って、まぁ基本的にはないよね・・・

  • 日本の軍閥倉山満から

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著者プロフィール

有馬哲夫(ありまてつお)
1953(昭和28)年生まれ。早稲田大学社会科学部・大学院社会科学研究科教授(公文書研究)。早稲田大学第一文学部卒業。東北大学大学院文学研究科博士課程単位取得。2016年オックスフォード大学客員教授。著書に『歴史問題の正解』『原爆 私たちは何も知らなかった』『こうして歴史問題は捏造される』『日本人はなぜ自虐的になったのか』(全て新潮新書)、『NHK解体新書』(ワック新書)など。

「2021年 『一次資料で正す現代史のフェイク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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