日本、遥かなり エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (423ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569827056

作品紹介・あらすじ

1890年の「海の恩」を1985年の在イラン邦人救出で返してくれたトルコ。だが、その後も邦人の危機は続き……。当事者たちが胸迫る真実を語る。

感想・レビュー・書評

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  • 海外で日本経済の尖兵として働いている日本人の安全をどう守るか、救援機を飛ばすことが出来ない日本政府の実情はイーイ戦争時の邦人救出劇から湾岸危機、イエメン内戦、アラブの春のリビア政変に至る年月を経ても変わっていないと訴え、国と国民に問い掛けている。著者の問題提起は正に正鵠を射ている。イラクで人間の盾にされた者としては、湾岸危機で大使館の地下に避難したクウェイト在留邦人が救援機の到来を信じて脱出訓練を繰り返していたが、無駄になった経緯に記述がなかったことは残念であった。当時、人質であった私は外務省本省と出先の大使館が国の方針と役人の建前を邦人の命に優先させることがあることを思い知らされました。クウェイトの下りではこの辺りも書いて欲しかったと思います。

  • 1890年のエルトゥールル号から時を経て、1980年代以降のイランイラク戦争、クウェート、イエメン等での日本駐在員の脱出に日本政府が現地へ助けを出すことができなかったことが非常に情けなく感じた。特にテヘランではトルコが日本人脱出に大きく貢献してくださったが、日本政府ではなく、豊田通商の方がおきく貢献していたのには驚きだった。日本国民であれば誰もが知るべき事実だろう。

  • 事実の概要自体は知っていたが、やはりこの作者ならではの大胆かつ精緻な構成で書かれると迫力がある。しかし最近はどうもこの国は迷走しているようにも思われるし、複雑な気持ちにもなった。

  • 戦争や紛争で自国民が窮地に陥ったら、どの国も同胞を救おうとする。それなのに、日本はそれができないし、する努力もしない(ように思える。)。日本人を救ってくれたトルコに感謝するとともに、日本人は自国のあり方を問い直さなければならないと感じた。

  • 泣いた。
    いろんな意味で。
    いくつかのエピソード、海外の事件に巻き込まれた自国民の命を保護できない某先進国の話。

    売りだった、トルコのエルトゥールル号事件は、一生割くほどの話ではなかったが、それがあったからこそのエピソード。
    もともと日本人こそこうではなかったか。

    起きて欲しくないことは起きないと信じている外務省。
    現場で逞しく生き抜いた現地の人たち。

    戦中無能な大本営と、それでも勝っちゃった優秀な現場が、結局日本を壊滅に導いてしまった先の大戦を思い出す。

    それにしても、著者の門田先生。
    文章がうまいわけでもなくたどたどしいのだが、ジャーナリズムってこうかねと思わせてくれる。

  • 日本とトルコの友好の歴史という感動的なエピソードから始まるものの、日本の国としての歪さに恐ろしさと憤りを覚える読後だった。

  • エルトゥールル号の遭難者の救出に力を尽くした串本の人々の話は知っていた。しかし、テヘランからの日本人を救出したのがトルコだったとは知らなかった。恥ずかしい。トルコについてもっと知りたくなった。また、海外で活躍する邦人を自衛隊が救えない現在の法規制は直ぐに改正すべきであることがよくわかった。本書は、多くの日本人に読んでもらいたい。

  • 今の日本の危うさをシッカリとした取材に基づいて書いています。なぜこの事にいて議論されないのか!尊い犠牲がなければ変わらないのか?明日、自分の知り合いが巻き込まれるかも知れない事に目を閉じさせているメディアに憤りを感じます。

  • [来てくれない。けど、帰りたい。]エルトゥールル号の遭難事件を背景とし,日・トルコの友情の証としてクローズアップされることが多いイラン・イラク戦争時のトルコ航空による邦人の救出。しかしそのときなぜトルコは航空機を送り出すことができて,日本は自国民の救出に乗り出せなかったのか......。その後に起こったイエメンやリビアの事例などと合わせて,「邦人救出」のあり方に一石を投じた作品です。著者は、ノンフィクション作家として幅広い分野の執筆を手がける門田隆将。


    とんでもなく痛切な問題提起をした一冊だと思います。本書から浮かび上がってくるのは,戦後に「日本」が平和を享受する一方で、「日本人」はたびたび戦争や紛争に巻き込まれ,その保護や救出については議論が脇に追いやられていたという冷厳たる事実ではないでしょうか。

    〜あなた自身が、そしてあなたの子供たちが、もし、その最も大切な「命」を見捨てられるとしたら、どうしますか-それは、これまでの「邦人救出」の現場で、かろうじて他国の好意で命を救われた当事者たちが発する根本的な問いかけである。〜

    今日,『海難1890』を観てくることもあり☆5つ

  • さすがに門田隆将のノンフィクション作品は内容が濃いですね!海外の駐在日本人たちが戦火に襲われた際に、国外への脱出が容易ではないという問題点を当事者コメントや日本以外の国の対応なども巧みに織り交ぜて指摘し、いかに日本という国が駐在日本人の命に対して、無責任であるということを痛感させられました。
    紛争国に取り残された現地で奮闘する日本人NPO職員やビジネスマンなどの一般人を日本は憲法などのしがらみで救出する術がないというのが何とも情けないし、人命救助最優先という本質的な議論が日本の政府ではなされていないのですね!なんのための安保法制なのですかね?
    それに対して日本以外の国の対応は緊急事態だからこそ命がけで自国民の人命救助に向かうという感動ものです。
    また、現地の日本大使館員が日本の一般人よりも先に国外脱出したというエピソードには怒りすら感じました。

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著者プロフィール

作家、ジャーナリスト。1958年、高知県生まれ。中央大学法学部卒業後、新潮社入社。『週刊新潮』編集部記者、デスク、次長、副部長を経て2008年独立。『この命、義に捧ぐ─台湾を救った陸軍中将根本博の奇跡』(集英社、後に角川文庫)で第19回山本七平賞受賞。主な著書に『死の淵を見た男─吉田昌郎と福島第一原発』(角川文庫)、『日本、遥かなり─エルトゥールルの「奇跡」と邦人救出の「迷走」』(PHP研究所)、『なぜ君は絶望と闘えたのか─本村洋の3300日』(新潮文庫)、『甲子園への遺言』(講談社文庫)、『汝、ふたつの故国に殉ず』(KADOKAWA)、『疫病2020』『新聞という病』(ともに産経新聞出版)、『新・階級闘争論』(ワック)など。

「2022年 『“安倍後”を襲う日本という病 マスコミと警察の劣化、極まれり!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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