人類と地球の大問題 (PHP新書)

著者 :
  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569827353

作品紹介・あらすじ

日本はもちろん中国でさえ、人類の存亡に欠かせない水、食料、エネルギーを自給自足できない。「地球の未来と日本」に警鐘を鳴らす書。

感想・レビュー・書評

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  • 久米書店

  • かつてABCD包囲網により石油等資源を海外から輸入できなくなり、資源確保を目的として東南アジアへの侵略及び太平洋戦争へと突入した歴史が日本にはある。当時はヨーロッパ各国がアジアに多くの植民地を持ち自国に多大な利益をもたらしていた事、尚且つ白人による白人以外への差別意識や搾取対象と見ていた考え方もあり、それへの反発という意味合いもなかったとは言えない。然し乍ら資源の無い日本が一切の資源輸入を止められて仕舞えば、海外へと進出して自ら取りに行く以外に選択肢は無い。当時の日本は明治維新以降急速に近代化を推し進め、日清日露戦争に勝利するほどの力を蓄えていたが、エネルギー資源の蓄えは出来なかった。現代の様に平和な日常の中でゆっくり自然由来のエネルギーを検討している余裕など無かった。
    日本は今でもエネルギーは海外に依存している。それだけではなく食料自給率は40%前後で先進国中最低ライン、大量にありそうな水でさえ、水道インフラ、浄化設備による飲み水への加工、その全ては海外からの輸入エネルギーに支えられている。極度に世界と密接につながるグローバル社会の中で万が一日本が孤立でもしようものなら、あっという間に国民は干上がってしまう。
    東日本震災原発事故により、それまで一定量を供給してきた原発は停止に追い込まれた。直近では原発事故で発生した除染の処理水を太平洋に放出したがために、お隣中国からは激しいバッシングを受けている。その原発がこのまま停止を続ければ、日当たり100億円(年間3兆円)以上を海外からのエネルギー調達に当て続ける必要がある。ガソリンが200円/リッターを超え、オール電化のマンションで電気代が10万を超えたが、これは致し方ない事である。エネルギーがない事は日本に生まれた国民が背負う宿命となっている。
    かつて地下に眠る化石燃料はいずれ枯渇するから、エネルギーの代替は絶対に必要と幼い頃は習ってきた。結果的にシェールガスの開発や新たな油田の発見などで引き続き輸入さえできれば当面は問題なくなってしまった。
    失敗のリスクがあり、難易度も高いような事業は誰も手をつけたくない。だから安易に輸入できるうちは誰もが(新エネルギー開発や地熱発電で土地を差し出す様な行為)身を切ろうとは思わない。結果的に電気代が上がってからどうするんだと文句を言ってももう遅い。
    食料自給率も基本的な構造は変わらない。カネにならないくせに重労働の農業を誰が好き好んで続けるだろうか。挙げ句の果てに過去には生産調整を繰り返し作った作物を廃棄する様なこともしばしば行われている。近年は牛乳がその代表例だろう。減らした結果、価格は維持できるが、儲からない酪農農家が生産をやめて仕舞えば元の状態に戻れない不可逆的な道筋を辿る。その様な状況を改善すべき国の力も期待できない。国民の人気取り最優先で、本来痛みを享受しなければならない国民へそれを転嫁できず、一部の生産者のみが痛みを負う構造を打開できていない。原発についてもそうだが、これは完全に説明力の問題だと感じる。
    本書はそうした「エネルギー」「食料」「水」そして「気候変動」といった人類が生活するのに絶対必要な要素について、地球規模で人類が直面する危機に警鐘を鳴らしている。筆者は元商社の社長、農業が受ける気候変動に機敏に反応し、世界を回って得た生の経験を元に記載している。
    人類が直面する問題の中で最近は異常気象、温暖化、線状降水帯にゲリラ豪雨と天気にが関わる異常性についてニュース映像をよく見かける様になった。確かに今年(2023年)の夏は毎日36、7度で夜も熱帯夜が続きエアコンフル稼働であった。小さい頃はその様な記憶はないし、夜は蚊取り線香が窓から入ってくる心地よい風に揺られて過ごした記憶しかない。いつからだろうか、明確には解らないが確実に暑くなった。
    筆者は異常気象だけでなく前述した様な人類の危機に対して今我々が何を考えどう動くべきか、多くのヒントをくれる。今後については、筆者とは異なる意見を持たれる読者もいるだろう。それで良いのである。まずは筆者の思考ロジックを見ながら「自分ならどうするか」を考えるきっかけにする事が重要だ。かつて50年前に予測された未来は来なかった。だが地球の人口増加がもたらす影響は確実に限られた惑星の中で資源や水、食料の奪い合いに発展する。それを防ぐ画期的な技術など存在しない。前述の3つの課題に対して一人一人が何をすべきか考え、地球を維持できなければやがては地球自体からしっぺ返しを喰らう。電気代値上がりどころの痛みではない。

  • 世界の人口は1800年に8-11億人、1900年に15-17億人、2000年に61億人。未来予測は2030年に84億人、2050年に95億人、2100年に108億円。世界とは逆に、日本では2008年から人口が減少局面に入った。2017年から毎年50万人減少し、2030年代には年間100万人減少し、2050年には9700万人、2060年に8600万人へ。2015年から45年間で約4000万人減る。世界中でこれだけ人口が急速に減少する国は前例がなく、その衝撃の大きさを我々は肝に銘じなければならない。

  • 不都合な真実

    BS日テレにて久米書店という番組で紹介されていた本。
    本人をゲストに本について解説していてとても面白そうだった。
    「不都合な真実」という
    アル・ゴア https://www.amazon.co.jp/dp/427000181X/ref=cm_sw_r_tw_dp_tUHzxbRXGGM7M
    の本と一緒に読むのがよさそうです。

  • 元商社マンということで、現場で肌で感じた事象や危機感は説得力があるが、資料から示される現実は総じて一般的に認知されているものが多く、対策も総花的で、新しい切り口や情報はそう多くは感じられない。

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著者プロフィール

丹羽宇一郎(にわういちろう)
公益社団法人日本中国友好協会会長。一九三九年愛知県生まれ。元・中華人民共和国駐箚特命全権大使。名古屋大学法学部卒業後、伊藤忠商事(株)に入社。九八年に社長に就任すると、翌九九年には約四〇〇〇億円の不良資産を一括処理しながらも、二〇〇一年三月期決算で同社の史上最高益を計上し、世間を瞠目させた。〇四年会長就任。内閣府経済財政諮問会議議員、地方分権改革推進委員会委員長、日本郵政取締役、国際連合世界食糧計画(WFP)協会会長などを歴任ののち、一〇年に民間出身では初の駐中国大使に就任。現在、一般社団法人グローバルビジネス学会名誉会長、伊藤忠商事名誉理事。

「2023年 『仕事がなくなる!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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