鳥肌が

著者 :
  • PHP研究所
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本棚登録 : 697
感想 : 100
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569830513

作品紹介・あらすじ

日常の中でふと感じる違和感、自分が信用できなくなる瞬間……。思わず「鳥肌」がたつ瞬間を不思議なユーモアを交えて描くエッセイ集。

感想・レビュー・書評

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  • ほむほむこと歌人の穂村弘さんの‘恐怖’をテーマにしたエッセイ。講談社エッセイ賞受賞。

    子供の頃から怖がりの私にはドンピシャな本でした。
    次々繰り出される恐怖エピソードにいちいち共感、というか共震(恐怖なだけに(* ̄∇ ̄*))しまくり。

    ちょっと怖がりで心配性な人のあるあるエピソードから、ある意味病的で読んでいると『鳥肌が』立ちそうなものまで。
    共通するのは自分や他人、それを含む‘世界’の訳の分からなさ。分かっているはずのモノが突然分からなくなる、そんな恐怖。
    私が一番怖くて面白いと思ったのが穂村さんの友人の話。

    ‘私の友人がある日ひどく怒っていた。
    「ビール券なんか送ってきたんだよ」
    「ビール券...」
    「どういうつもりなんだろう」
    「......」
    「ふざけてる」
    「......」
    「もうあいつとは付き合わないよ」
    「......」
    (中略)
    穂村「ビール、好きじゃないんだね」
    友人「え、ビールは飲むよ」’

    ご友人の理由は「ビール券=通俗的なもの」で自分が通俗的な人間と見られたのが許せない、というもの。
    一見コントのようだがやっぱりオソロシイ、と思う。

    彼には(もしかしたら読んでる方にもかもしれないけど)常識なのだ。

    ぞくり、や、ぞわり。
    日常の底が抜けかかるような、そんな気分になるエッセイ。

  • 小さな子供と大きな犬が遊んでいるのを見るのがこわい。自分以外の全員は実は......という状況がこわい。「よそんち」の不思議なルールがこわい。赤ちゃんを手渡されると、何をするかわからない自分がこわい......。
    日常の中でふと覚える違和感、現実の中に時折そっと顔を覗かせる「ズレ」、隣にいる人のちょっと笑える言動。それをつきつめていくと、思わぬ答えが導き出されていく。こわいから惹かれる、こわいからつい見てしまう。ただ、その裏にあるものを知った時、もう今まで通りではいられない!?
    ユーモア満載で可笑しいのに、笑った後でその可笑しさの意味に気がついたとき、ふと背筋が寒くなる。そんな44の瞬間を集めた、笑いと恐怖が紙一重で同居するエッセイ集。
    「PHP」HP内容紹介より

    日常の風景に対する認識が激変してしまいそうな怖さのあるエッセイ集.
    先日見た映画のテーマに通じるものを感じる.

    「未来が過去を変える」

    過去が未来を変えるというのはよく言われるところ.その映画では、未来が過去を変えると言っている.すなわち、過去にあった事象に対する認識が未来に起こった出来事によって違うものに上書きされる、ということ.

    これに近い感覚を本書を読んでいて味わった.
    穂村さんの本って、何気ない日常が描かれてあるのに、書かれてないことに恐怖する、そんな感じなんだ.

  • 図書館で穂村弘さんの本を見つけると、つい借りてしまいます。間違いなく面白いから。

  • 久しぶりの穂村さん。
    『鳥肌が』。
    本のカバーそのものに鳥肌が立っており、その時点で面白い。(無数の小さな凹凸がある)

    本書はちょっとぞっとしたり、今考えたら怖いかも、というようなことをまとめたエッセイ。
    よくよく考えたら怖い内容の短歌の考察を交えているのが個人的には嬉しい。

    穂村さんの文章を読んでいると、ネガティブなことや、こわがりなこと、なんとなくちょっとダサいことが肯定されているような気がして、安心できる。
    あまりに自身の恥ずかしい体験、格好悪い体験を赤裸々に、おもしろおかしく語るから。
    (どなたかが解説に、その赤裸々さによって女心を掴んでいる、あざとい、と書いているのも読んだ記憶があるけれど。笑)

    P.11
    父の小皿にたけのこの根元私のに穂先を多く母が盛りたる 中山雪

    P.41
    ほんとうはあなたは無呼吸症候群おしえないまま隣でねむる 鈴木美紀子

    P.75
    ずっと以前のこと。電車の中で今までつきあった相手のことをぼんやり思い出していて、彼女たちが全員長女でしかも一人として男兄弟をもっていないことに気づいた時、ぶわっと変な汗が出た。外見のタイプなどはばらばらなんだけど、唯一の共通点が姉妹の姉限定。これって、これって、何を意味しているんだろう。それから数年後にできた恋人に弟がいることを知った時、何故かほっとした。やった、解けたぞ。呪縛。呪縛?いったい何の?

    (私も末っ子しか付き合ったことないな、呪縛かな、と思うなどした)

    P.224
    子供の頃、友達の家に遊びに行くと、玄関のところではっとした。匂いが違うのだ。そう感じるのは、私だけではないらしく、Fくんの家は「ネズミのおしっこの匂い」だと云われていた。
    だが、変な匂いがするのは、Fくんの家だけではなかった。程度の差はあっても、どの家にもそれはあった。それなのに、不思議なことに自分の家には感じない。慣れちゃったのかな。でも、たぶん、友達は感じてるんだろうかな。そう思って不安になった。僕んちはどんな匂いがしてるんだろう。

    P.245
    昔からこわがりだった。初めてのことやよく知らないことに対して、わくわくする、という気持ちより、こわい、という気持ちが先立ってしまう。海外旅行や習い事や同窓会はもちろん、飲み会なども苦手だ。素面の時とは場のテンションが変わるから。それが楽しい、というのはわかるけど、私には不安の方が大きい。

  • わかるこれ怖いよね。え、これも怖いの?と思うような恐怖がいろいろ。時々ゾッとしたり、でもクスッと笑えたりと。
             読みながら表紙のぶつぶつを
             なでなでしてました。ふふ

  • 装丁も挿絵もしおりも素敵。
    くすっと笑ってしまうレベルからぞくっとしてしまう怖さまでいろいろ。
    よそんちのこわさとか。
    絶妙なタイミングで短歌紹介がなされていたり。
    打ち上げの飲み会どうなったか知りたい。

  • まずは素敵な装丁にメロメロ。
    タイトルのとおり触るとブツブツの感触が楽しめる表紙。
    しおりはショッキングピンクの3本の細い糸で、本も同じ色の糸で綴じてあるのです。
    作り手のこだわりを存分に味わって、いざ本文へ。

    ほむらさんが「こわい」と思うことについて綴ったエッセイです。
    いつもどおりケラケラ笑いつつも、100%笑い飛ばせないこわさが残るところが絶妙。
    ただ楽しいだけだったら読んですぐに忘れてしまうことが多いのですが、「ぞくり」と残る後味は簡単には薄れないのです。
    ほむらさんのちょっと怖い短歌が好みなので、個人的に本書はとてもツボでした。

    あとがきの次の一文でほむらさんに惚れ直しました。
    曰く「私の人生を四文字で表すならびくびくだ。」
    身悶えしてしまう自分は変なのだろうか…。

  • 薦められて、遅まきながらこれが初穂村弘。
    文体と感性が素晴らしいのでスイスイ入ってくるし読みやすく面白い。

  • タイトル通り鳥肌のたつような話が集められていて、普段の穂村さんのエッセイ集とは少し手触りが違います。独り暮らしの女性がある日目を覚ましたら部屋の中にシャボン玉が浮いてたという話と、作家の曾祖父が階段の踊り場で殺されてた話が特にゾゾゾでした。あ、あとあの、検索してもハートなんて動物が出てこないんですけど…(怯)。

  • 共感の嵐。特にあとがきの飲み会の話に共感してグサッときてしまった。コロナ禍以降、そういう飲み会もないのだけど。
    製本に使われている糸が蛍光のピンク色だったりシュールなイラストがあったりと、装丁が個性的かつきれいですてき。

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著者プロフィール

穂村 弘(ほむら・ひろし):1962年北海道生まれ。歌人。1990年に歌集『シンジケート』でデビュー。短歌にとどまることなく、エッセイや評論、絵本、翻訳など広く活躍中。著書に『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』、『ラインマーカーズ』、『世界音痴』『もうおうちへかえりましょう』『絶叫委員会』『にょっ記』『野良猫を尊敬した日』『短歌のガチャポン』など多数。2008年、短歌評論集『短歌の友人』で伊藤整文学賞、2017年、エッセイ集『鳥肌が』で講談社エッセイ賞、2018年、歌集『水中翼船炎上中』で若山牧水賞を受賞。

「2023年 『彗星交叉点』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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