国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569832043

作品紹介・あらすじ

明治日本はなぜ成功できたか? ナチスドイツと日本の違いは? 「国際法」がわかれば「歴史」の謎はすべて解ける! 常識を覆す刮目の書。

感想・レビュー・書評

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  • 【インターナショナリズムとコスモポリタニズム】
    ここで二つの概念を考える必要があります。
    国際主義と訳されるインターナショナリズムと、世界主義と訳されるコスモポリタニズムです。

    コスモポリタニズムというのは、全人類が一つにまとまれるという前提です。
    コスモポリタンのことを地球市民といいます。
    コスモ(世界)がポリス(都市)であって、そこのアン(市民)、つまり、地球という都市の民という意味です。

    一方、インターナショナリズムというのは、地球には一つのまとまった人類の政府などというものはないという前提です。
    だから、いろいろな主権国家が並立している中で、知恵を出しあい、国際慣習に立脚して、仲良くしあおうと考えますが、これこそ国際法の発想です。
    インターナショナリズムは、それぞれの国のナショナリズムを前提としています。

    コスモポリタニズムはそれぞれの国のナショナリズムを否定して一つのコスモ、地球市民になろうというところがある、そういう違いがあるわけです。

    インターナショナリズムの人たちも、もちろん「仲良くしよう」とは考えています。
    しかし現実として、いろいろな主権国家が並立しているので、対立も起きるだろうし、世界政府などというものは到底実現しないだろうというリアリズムも持っています。
    だから、せめて、それぞれの国が自国の国益を追求するためには「国際法を武器としてやるしかない」と考えるわけです。
    それがまっとうな国際法学者なのです。

    ところが、困ったことに、コスモポリタニズムの人たちの多くは、自分の考えるコスモポリタニズムとインターナショナリズムが違うということが理解できません。
    なぜかというと、インターナショナリズムが理解できないからです。
    日本の国際法学者の多くはコスモポリタニズムです。
    コスモポリタニズムでは国際法を理解することはできません。

    たとえばEU(欧州連合)は、単純にいうと神聖ローマ帝国を復活させて、主権国家体系を中世に戻そうとしているようなものです。
    EU加盟国の共通点は、「白人」の「キリスト教国」の二つだけです。その域内ではコスモポリタニズムができます。

    しかしその一方で、暗黙のうちに、その外の世界に対してはエクスクルージング(排外的)になりインターナショナリズムを主張するという二重基準になっています。
    トルコのEU加盟を認めないのは、その象徴的な現われです。

    コスモポリタニズムだけでは、国際法、インターナショナリズムがわかりませんし、ここがわかっていないとEUのような今の国際社会の問題もわかりません。
    逆にいえば、本書をお読みになって、コスモポリタニズムとインターナショナリズムの違いを知って、国際法を武器にできたなら、世界史の真実をすっきりと見通すこともできますし、複雑でわかりにくいと感じる現代の国際社会の議論にもついていけるようになれます。

  • 良かった点。今まで深く気にしたことのなかった国際法の重要さについて、気づかせてくれた点。

    悪かった点。嫌中・嫌韓の主張に耐えられない。どこまで事実で、どこから事実でないか、よくわからない。
    また「私はわかった」のような記述が何箇所かあるが、少し調べてみると、特に目新しいことでない。一言でいうと、この人の書き方が性に合わない。

  • 「国際法を無視した憲法はいずれにせよ醜悪な結果を招く」(by『帝国憲法物語』)
    とあるように、憲法を論じる上でも、国際法は欠くことのできない「教養」ですが、
    混迷を極めるであろう今後の国際社会において、日本がどうあるべきかを論じる上でも必須の教養として「国際法」が存在しているのだと思いました。
     
    「はじめに」と「おわりに」の文章は、是非多くの方に読んでもらいたいです。

  • 兵頭二十八 中国は条約は守らないが、密約は絶対守る

    アイバージェニングス 国際法の裏付けは軍事力でらう。憲法の裏付けは総選挙によって示された国民世論である

    イギリス 必要は法に優先する

    ドイツ あれはナチスとヒトラーがしたこと 補償はするが絶対に賠償はしない

    国際社会で生き残ることができるのは、自分の身を自分で守ることができる国だけです。国際法は、その重要な一つの武器です。軍事力や経済力と同様に

    外交官の序列 大使、公使、参事官、書記官
    陛下(皇帝、国王)>大統領>首相 プロトコル(外交儀礼)

    自国を守れる前提がない中立は、中立とはいえない。
    非武装中立で失敗したのはデンマークとベルギー
    李氏朝鮮は中立?日露戦争前、朝鮮の国王がロシア公使館で政務をとっていた

    自分の権利を自分で守れない国は、マトモな国として扱われない。また悪いことをされて泣き寝入りする国こそマトモ扱いしないのが、国際社会なのです。

    東京裁判における最大の問題は、戦争という決闘、すなわち民事裁判を、刑事裁判で裁こうとしたこと

    初期の国際連盟 日本が支えていた 新渡戸稲造など優秀な人材を送り込んだ ヨーロッパの揉め事解決クラブ

    新渡戸稲造、石井菊次郎、安達峰一郎、佐藤尚武

    条約とは、条約遵守能力(治安維持能力)の意志と能力がある主権国家同士で結ぶもの 九カ国条約の中の中国に条約遵守能力があったか?

    侵略 挑発されないのに先制攻撃をすること 満州事変前 膨大な数の挑発があった 日本人に対する権利侵害は懸念三千件とよばれていた

    リットンレポート 満州事変で起きたことは日本の自衛とはいい難いが、日本の権益はすべてみとめるべきだ

    日本がリットンレポートを受け入れ、無駄な戦いをしなかったら、大日本帝国も大英帝国も残っていたはず

    ベルギーはイギリスの、バングラデシュはインドの傀儡国家

    1937 通州事件

  • 最初の方は国際法から見る世界史や各国のスタンスが書かれていて、新鮮で為になると思っていた。
    しかし、それ以外は日本ひいきな内容で萎えました。

  • あまり頭使わずに読めるやつが読みたい、という理由で書店に行きうっかり手にとってしまいましたとさ。

    「法は守るものでなく使うもの」とか「安全保障の力のない国は主権国家としての地位を守れない」という当たり前のことを歴史を紐解きつつ、雑かつ丁寧に解説してある。

    読む前の期待では「そもそも国際法とは」というあたりをじっくりやるのかと思ってたのだけど、そのあたりの解説もしっかりやりつつどちらかというと「国際法は過去どう使われてきたか」に重点が置かれている。

  • 一冊で随分と勉強になった。
    先の大戦に至る歴史、何が起こって、当時どう評価されるべきであったかということが、新書と思えない分量で展開される。

    日本は優等生ゆえに、ボコられた。

    決して正しかったわけではないのだろうが、正しくあろうとして、踏み外した。いや、はめられた。

    そうした視点を持ち直した上で、もう一度歴史を評価する必要もあるだろう。

    確かに、倉山満の過去の著書で述べられていることが、この本を読むことで一層はっきりするような気がした。

  • 倉山は「国際法で読み解く世界史の真実 (PHP新書)」で以下のように述べている
    国際法は強制法ではなく合意法である(p64)
    国際法 -> 国際条約や規範という関係になる。つまり国際法はヤクザの世界の仁義(約束)と同じ(p70)
    『国際社会では歴史は1つの武器です。慣習が歴史的に蓄積されると、それは破れない法になるのです。』(p72)
    「中立』の本質は、「味方にとっても、敵にとっても、敵である」ということです。(p90)

    表現がわかりやすい。

  • 倉山満は現代人に必要な事実・知識を、幾度も繰り返し、同じ事柄も常に現代抱える問題を例示しながら伝える。言論人として、自分の考えを布教するわけでもなく、自分で考える力を身に着けさせるために・・・。なぜなら、無知が日本を無間地獄に落としたため、また、さらなる国難が迫っているから

  • 倉山氏の主張だけが真実とは思えない。主張を正当化するために断片的に真実を述べているところもあるだろう。
    しかしこの本は、間違いなく今までの常識を大きく変えてくれる良書だと思う。
    日本人はなぜ、戦争へ突き進んでいったのか。
    単に個人名を挙げて悪役にする今の日本史の解釈では、また同じ過ちを繰り返すかもしれない。

    過去の研究にとどまらず、これから日本がどうあるべきか、考えさせられる本だった。

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著者プロフィール

憲政史家

「2023年 『これからの時代に生き残るための経済学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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