『エクサスケールの衝撃』抜粋版 プレ・シンギュラリティ 人工知能とスパコンによる社会的特異点が迫る

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著者 : 齊藤元章
  • PHP研究所 (2016年12月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (254ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569832449

『エクサスケールの衝撃』抜粋版 プレ・シンギュラリティ 人工知能とスパコンによる社会的特異点が迫るの感想・レビュー・書評

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  • この本はスーパーコンピュータを開発している斎藤氏によって書かれたもので、2014年に「エクサスケールの衝撃」という大部(600ページ超)な本のエキスをまとめた本という位置づけのようです。

    読み始めるときに「エクサ」という単位に聞き覚えたがなかったので調べてみました、数年前に5テラバイトのハードディスクレコーダーを購入した我が家ですが、その「テラ」の100万倍が、「エクサ」という単位でした。

    そんな凄いコンピュータを開発して私達の生活にどう影響するのだろう?と思って開いた本の内容には驚きました。何か既視感を感じたのですが、それは映画「ターミネータ」でした。

    確か2045年にコンピュータが人間に対して反乱を起こすというものだったと思いますが、この本においても、2045年には、超知的マシンは更に知的なマシンを開発できるようになり、人類は置き去りにされて二度と追いつくことはできない、最初の超知的マシンが発明されたとき、それは人類最後の発明になる(p43)、これが、シンギュラリティ(特異点)=2045年とのことです。

    この本では、コンピュータと人間は敵対するのではなく、優れたコンピュータは人間をより幸せにする働きがあると解説しています。まずエネルギーがフリーになり、これが達成されることで、エネルギーを必要としていた、衣食住がフリーになるとのことです。

    思い返せば今まで人類はエネルギーの取り合いが戦争や争いの原因となってきました。本当にエネルギーがフリーになれば、戦争もなくなり、それを支えていた産業もなくなることでしょう。その後には、お金も不要になり、ついには「不老」を得ることもできるそうです。すごい衝撃を受けた本でした。

    以下は気になったポイントです。

    ・ベンチャー企業として、世界スパコンランキングの消費電力性能部門である「Green500」で2014年11月に2位、2015年6月には1-3位を獲得した、初めての快挙(p14)

    ・重油産生藻類が短期間に大幅に改良されて、世界各地でその作付増殖競争が行われるために、地球上には化石燃料と同機能の燃料が溢れかえることになるだろう(p21)

    ・日本に水田を代表として広大な農耕地があり、国土面積の12%を占める、宅地は5.1%、日本国内で必要とされる農作物が集約化されたプラント内のきわめて高い効率で生産されるようになると、農耕地の大半はその役割を終えて、宅地への転用が可能となる(p22)

    ・不労が実現し、生活必需品のすべてがフリーになると、対価という概念、貨幣の価値、貨幣の存在意義が大きく変化するだろう(p23)

    ・25万年間の平均寿命を25歳とすれば、我々は人類の1万代を経た子孫となる。24万年間はきわめて原始的な生活を送り続け生活に進化は無かった。農耕・牧畜が始められる最初の革命点は1万年前、次は都市と国家、社会と政治制度を構成した2000-1500年前、そして300年前の産業革命、100年前からの科学技術革命、30年前からの情報通信革命となる、革命の間隔は急速に縮まってきている(p30)

    ・シンギュラリティが2045年として、その手前に聳え立つ「プレ・シンギュラリティ」は2030年頃である。それまでに、エクサフロップスの演算処理性能を持つ次世代スパコンが完成して稼働を開始する。それらは2020-30年にかけて、確実に実用化されて様々な重大なる技術革新を強力に推し進めるはず(p48)

    ・原子力、地熱、潮力以外のエネルギーのすべては、地球上に降り注いだ過去の太陽光のエネルギーがその形態を変えたもの(p72)

    ・中間バンド型の量子ドット方式太陽光パネルの理論的変換効率の最大値は1つの中間バンドを用いた場合は63%、複数用いれば75%にまで高められている(p79)

    ・熱電変換効率を高めるには、大きな起電力、高い電気伝導率、低い熱伝導率をバランスよく満たした物質を見つけ、合成することが求められる。(p83)

    ・水深1万メートルで2万ヘクタールの湖沼面積を使って、オーランチオキトリウムを繁殖させることで、日本の年間原油消費量を賄えるという試算がある。これは琵琶湖の約3割に相当する。新しい種類の藻類を探すよりは、重油産生藻類全般の遺伝子・タンパク質・代謝の全系をエクサスケールコンピューティングで完全解析して、遺伝子操作で理論限界に近い産生効率を持った新種をつくったほうが早いだろう(p88)

    ・トヨタ自動車の関連会社では、重油産生藻類の事業化のためにオーストラリアで広大な土地を確保してその建設を着手したが、その立地条件として、二酸化炭素濃度が高いことをあげた。人口光合成と重油産生有機モジュールを稼働させるには二酸化炭素濃度の高い場所は大きな価値を持つ。二酸化炭素が資源として売買される日も近い(p89)

    ・熱核融合発電は先進7か国メンバ(EU、日本、米国、ロシア、中国、インド、韓国)が組織した「ITER」で実験炉の開発が進められている。現在主流のトカマク型の次世代となるヘリカル型の実験装置にて、岐阜県土岐市で行わている(p94)

    ・南フランスでは、世界初となる熱核融合実験炉が2020年に完成予定、2027年までに500メガワット級の発電開始、2040年には商用発電炉が稼働予定(p94)

    ・熱核融合炉は、核分裂とことなり、原子量の小さな水素の同位体である重水素と、三重水素を融合させて、ヘリウムと中性子を生成する核融合の一種によって生じるエネルギーを取り出すもので、危険性ははるかに小さい。この実現は、火の利用にも比肩する歴史的インパクトである(p95、96)

    ・1回の実験から得られる膨大なデータ解析に日数を要していて、シミュレーションと解析が十分に行えていない状況である。これが次世代スパコンにより状況が変えられれば、日々間断なく実験ができ解析もできる(p97)

    ・小型レーザー核融合開発を推進する、浜松ホトニクスは日本を代表する有数の技術開発企業である。10年以内に核融合発電炉開発を目指している(p102)

    ・植物工場には、閉鎖環境で太陽光を一切使わない、「完全人工光型」と、温室などの半閉鎖環境で太陽光の利用を基本として、雨天・曇天時の補光、高温制御を行う「太陽光利用型」、併用型がある。完全人工光型は、クリーンルームとして運用し、害虫・細菌を完全に遮断できるので、有機農法をも超越する完全無農薬栽培が可能(p107)

    ・植物工場のランニングコストは、光源・光源の冷却、空調とクリーンルーム維持のための電気代、したがってエネルギーがフリーになり電気代がタダになると、デメリットが除かれる。光量不足も効率良いLED光源が開発されることで解決される。残るは初期の設備投資は国が補助金で後押し可能だろう(p109)

    ・ヴァーチャルリアリティ世界で用いられるようになる最新技術は、ビデオ会議システムに導入される、それはもう現実世界である(p123)

    ・ロボット化のわかりやすい例として、自動車の自動運転がある。自動車自体が無人で運転されるロボットという位置づけとなる(p130)

    ・現生人類は生きるための労働から解放されて、十分に高い水準の、衣食住を安定して保証されることになる。今まで地球上に生息したなかで初めての快挙である。それは、我々の社会構造、価値観、生き方のすべてを永遠に変革しかねない衝撃であり、これが「エクサスケールの衝撃」である(p136)

    ・ビットコインはすべての取引記録を暗号化して、ネットワーク参加者のすべてで共有し、閲覧、確認可能としているので、変更や改ざんが不可能となっている(p149)


    ・ビットコインは、貨幣に相当するものは存在せず、その数値について確認できるのみ。貨幣に相当するものは、全取引記録のなかに組み込まれている記録でしかない(p150)

    ・世界の年間の総生産額は、7360兆円、1日20兆円、一人当たり1年間100万円、それに対して外国為替取引は1日で667兆円、デリバティブを加えると1000兆円である、金融危機が起きた場合、その50分の1しかない実体経済はひとたまりもない(p154)

    ・すべてをフリーにし、お金を使用せずとも生活できるコミュニティ、お金を使用する人々が、時間の経過とともに変化し、やがて逆転するタイミングが訪れるだろう。お金が使われ始めて普及していく過程とまさに瓜二つ(p157)

    ・お金を使わない社会というのは、「そこでお金を使わない、ということ自体が、新しいお金である、あるいは、新しい「お金というシステム」と考えられる(p157)

    ・全ての自動車バイクに高性能ビデオカメラを搭載、さらに、個人それぞれが自分用の高性能カメラを複数身にまとうか、BeeCamと呼ばれる超小型クワッド・コプターを頭上に複数飛ばして、ビデオカメラで自身と周囲をモニターする(p168)

    ・1個の細胞である受精卵は、その後に生じるすべての細胞が46回(人の染色体数と同じ)の細胞分裂を繰り返して、2の46乗である、約60兆個の細胞となって、人体のありとあらゆる種類の臓器・組織を形作る。(p191)

    ・BeeCam(ビーカム)が利用可能となり、世界中に普及すると、自分が瞬間的に移動して所望する場所に行くことができるという点で、実質的に「どこでもドア」と変わらない機能を提供することになる(’p216)

    2017年5月7日作成

  • 請求記号 548.2/Sa 25

  • これと、レイ・カーツワイル氏の「シンギュラリティは近い」は将来への必読本!

  • 本書は著者が2014年12月に「エクサスケールの衝撃」と題して上梓された600ページ近い大作の抜粋版です。2011年11月時点での世界最高のスーパーコンピュータ「京」は10.51Peta フロップス(1秒間に倍精度の浮動小数点演算が何回行えるかを表すコンピュータの演算性能単位)、その「京」の100倍である1000Petaすなわち1Exaのスーパコンピュータを開発して2020年に稼動開始と理化学研究所が発表している。それを受けてエネルギー、社会、人体そして新しい価値観が未来に向けてどのように変化していくかを著者の卓越した創造力で展開している。スーパーコンピュータが社会を大きく変えるにはソフトウェアが重要な役割を果たすと思うのですが、それについてはあまり言及されていません。やはり600ページ近い原著に挑むべきだろうか。

  • 齊藤元章さんの名前を知ったのは清水亮『よくわかる人工知能 最先端の人だけが知っているディープラーニングのひみつ』中の清水氏との対談。壮大なスケールの話に圧倒され、齊藤氏の著書『エクサスケールの衝撃』を買ったが、その厚さにさらに圧倒され、積ん読状態でした。書店で齊藤氏の新刊が出ているのを知り、衝動買いをした後で、『エクサスケール』の抜粋版と知ったが、同書は相当に分厚いし、本書も決して薄くはないので、多忙なビジネスパーソンは、まずは本書を読むべきだろう。

    筆者の考える、労働もなければ貨幣もなく、争いや犯罪もないプレ・シンギュラリティ、シンギュラリティの世界を極めて具体的に描写している。

    全くの門外漢だが、疑問に思った点は以下のとおり。

    著者は「ムーアの法則」が今後も持続していくことを当然の前提にしているようだが、物理的な大きさには分子の大きさという限界がある以上、スーパーコンピュータの性能の向上も限界に近づいているのでは?量子コンピューターのようなブレークスルーがあるなら別だろうが…。

    著者の考えるプレ・シンギュラリティ、シンギュラリティの世界の大前提として、エクサスケール・コンピュターの実現により、超効率的な太陽光発電パネルや新薬の開発が容易になるというが、果たして計算能力、マシンパワーの向上だけで、そのような開発が可能なのだろうか?むしろ、莫大な計算能力を新素材や新薬の探索に生かすためのプログラムを作成するのが難しいのではないか?

    著者がユートピアのように語る、労働のない世界は本当に幸せなのか?そこでは、人は思索や哲学、芸術に没頭できるというが、すべての人がそれに満足できるのだろうか?また、長い進化の歴史の中で、闘争、競争により発展を遂げてきた人類にとって、争いのない世界は、進歩のない世界でもあるのでは?

    『星を継ぐもの』シリーズのガニメアン宇宙人が、闘争心にあふれた地球人と異なり闘争を知らない平和主義者であるためか、進歩の速度が極めて緩慢であったことを思い出した。また、『タイムマシン』の美しいがか弱い未来人が、闇に住む醜いが力強い地底人に襲われるシーンを連想してしまった。

    著者の発想の自由さはすごいが、果たしてそのような未来が手放しで歓迎できるものなのか。やや楽観的に過ぎるようにも思われるが…。

    シンギュラリティとはどんな世界なのか、具体的なイメージを持つにはもってこいの本。

  • (プレ・)シンギュラリティに到達したと仮定した場合に、どうなるかを予想する本。シンギュラリティに到達するかどうかの議論について等、科学的・論理的とは言えない。

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