教養としての「ローマ史」の読み方

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  • PHP研究所
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  • Amazon.co.jp ・本 (382ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784569837802

作品紹介・あらすじ

ローマはなぜ世界帝国になれたのか。繁栄が続くとなぜ人は退廃するのか。現代を考える大きな羅針盤となるローマの歴史に学ぶ。

感想・レビュー・書評

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  • 世界史の面白さが詰まっているローマ史。その大きな流れを捉える

    ●本の概要・感想
     ローマの誕生から滅亡までのストーリーを追って説明する。教科書的な記述だけでなく、著者の意見や価値観を表してくれるので面白い。例えば「カエサルのカリスマ性は世界史の中でも5本の指に入るに違いない」「キリスト教の迫害を行ったためか、ディオクレティアヌス帝の評価が不当に低くなっている。彼は優秀な統治者であったし、自ら在位を譲った後にも先にも最後の皇帝だった。」「ローマ人の強みは寛容さだった。それを失い、国としても瓦解し始めた」などなど。歴史は事実だけ追っていてもなかなか面白がれないため、詳しい人に解釈の仕方を教えてもらうのが一番だなぁ。
     本の帯にあるような「現代人必読の教養」ではないけれど。歴史を面白がり、歴史に学ぶには良い本ではないでしょうか。

    ●本の面白かった点、学びになった点
    *ローマの終わりと始まりを明確に定義するのは難しいが。古代ローマは紀元前5世紀ころから始まり、ローマの東西分裂は4世紀に起きた。
     →1000年近く続いた国家?であった

    *パックスロマーナ時代の皇帝は、皆世襲でなかった。幸いなことに、皆息子がいなかったのだ。しかし、最後の五賢帝の息子であるコンモドゥスが帝位に就くと、ローマの平和な時代は終わりを迎えた..。やっぱ、無能な子どもに託してもうまくいきませんね

    *ローマの繁栄と農業を支えたのは奴隷と捨て子

    *皇帝の資質でその国の明暗が分かれる
     国のトップである皇帝がよければ、国も反映する。一方、馬鹿な皇帝の時代は国の調子も悪くなる

    *ローマの皇帝の座を巡って、何度も権力闘争、暗殺などがくりかえされた
     人の本質は変わらない。皇帝が自然死することは非常に少なかった。戦死することもあったが、同じローマの民から暗殺されることも少なくなかった。悪目立ちを嫌い、自ら身を引く者もいた

    ●学んだことをどうアクションに生かす
    *人間の本質である「嫉妬、妬み」を買わないように気を付ける。どれだけ志が高くても、悪目立ちすれば、カエサルのように殺されてしまうだろう..

    ●タグを設定しよう(evernoteにもね)

  • 以前も本村氏の本を読みました。もう内容も覚えていないのですが、おぼろげに面白かったことを覚えています。

    今回、改めてローマ史について読みましたが、これは実に面白かった。忘れないうちに備忘として記録に残したいと思います。

    ・・・
    本作、ローマの歴史1,200年を通史として紐解いています。で、実に面白い。

    それはやはり、人にフォーカスしているからだと思います。紀元前8世紀から共和制を経て、そして賢帝たち、続いて軍人皇帝時代を経ています。

    賢帝でも愚かな息子を次の帝位につける、反抗した軍でも恭順を示せば許す、気前の良いことを言って約束し財政を悪化させる、反乱に諦めかけるところを妻の一言でやる気を出す等々。

    良いことも悪いことも、すべて感情をもった人が行うこと。1,200年もあれば大概の事例が出てきてもおかしくはないわけです。こうした人間ドラマという切り口で政治史を読み解く巧みさにより、すんなりと文章が読めたと思います。


    例えれば、NHKの大河ドラマでしょうか。

    歴史の古臭い物語ながら、多少の脚色はあろうとは思いますが、そこに描かれるのは人間ドラマ。だから面白い、と。

    ただ、本作の場合、皇帝の数がまあ多いです。ですからもう瞬間瞬間は読んでいて面白いのですがもう皇帝の名前とかは覚えきれません。。。すみません。

    ・・・
    次に白眉であったのは、「なぜローマは衰退したのか」ということへの解説です。世にいう説はどうやら三つほどあるそうで、「衰亡説」「異民族問題」「変質説」に解説されています。

    「衰亡説」は経済的に衰えていったと。栄枯盛衰ではないですが、ピークを保つのは難しいですし、上がれば下がりますね。具体的にはかつては貴族が出していたインフラへの投資。老朽化していくとメンテナンス代がかかりますが、政府(というか皇帝)はここまで面倒を見るつもりがない。多少のメンテナンスはあっても根本的に古くなっていくと。となると非効率なインフラが非効率な生活につながり、あとは応じて国力も落ちてゆくということなのでしょうか。

    「異民族問題」は民族大移動とも関連しています。寒冷期が始まり、ゲルマンがより温かい南に進出してきた。でも実はその前にフン族によりゲルマンが押し出されてもいた。またゲルマンを取り込んで親衛隊等に組み込むことで爾後軍人皇帝時代の混沌を呼んだといってもよいでしょう。これは良い悪いではなく結果からみてそういう原因に見える、ということなのだと理解しました。

    最後に「変質」説ですが、これは本村先生が押しているように見えます。端的に言えば「寛容さ」を失った、というものです。かつては許す・受け入れるという文化が広まっていたものの、そのような文化が消えていったということのようです。またギリシア・ローマ的な万神論的な思考から、キリスト教的一神教が国教となったことも大きいようです。

    このあたりは非常に興味深くて、キリスト教が偏狭であると言っているのではないのですが、他の宗教を認めないという司教(アンブロシウス)が力を持ったり、皇帝へのプレッシャーをかけたことなどが大きいようです

    ・・・
    ということで、本村先生の著作でした。

    非常に読みやすいにも関わらず格式高く歴史を謳い上げている佳作でありました。タイトルにある通り、教養としてこういうのがさらっとしゃべれるとちょっと素敵ですね。

    世界史が好きな方にはおすすめできます。

  • ローマ史の流れが1冊にまとめられています。あまりローマ史について知らない方が流れを把握するには良い本だと思いました。最終章の「ローマが滅んだ理由」はいろいろな見方がある内容なのですが、オーソドックスな内容でまとめられていると思いました。ローマ史について知っているといろいろなことを考えられることを再認識できました。今の自分の置かれている状況から考えることがいろいろとありました。

  • 歴史の悲哀。
    ローマ崩壊のなかに、「共同体から、個への変質」

  • flier要約
    https://www.flierinc.com/summary/2905

    ====
    やはり興味持てず…

  • 「ローマ人の物語」のファンですが、本書を拝読し、初めて全体の流れに気づいた気がします。この本の内容を頭に入れてまた「ローマ人の物語」を読みたいと思います。しかしながら、ローマ帝国の盛衰があまりにも今日と似ている点が気になります。「寛容さ」。それを実行せしめる経済的な豊かさ。食べれる、養える、ということ。「個人主義」とやらがもてはやされる今日。それでよいのか?寛容さ、公共心がなくなる社会がどうなるのか歴史が示していますよね。歴史に学ばねば、と深く思った一冊でした。

  • 自分のローマの知識は塩野七生の「ローマ人の手紙」がすべてなのだが、専門家からの批判が多いということで、専門家による書籍の手始めとして本書を読んだが、結果的に「ローマ人の手紙」のどこが不正確なのかはわからなかった。ローマ帝国の最後を”「衰退・滅亡の時代」ではなく、「変革の時代」へ”と最近の研究では捉え直されているという指摘は新鮮であったが、最後の不寛容についてトランプ現象と重なっているというのはさすがに強引な気がした。

  • MR1e

  • 事実だけでなく、経緯や原因も書いてあるので
    とても分かりやすかった。
    世間では悪帝と評される皇帝も
    一概に悪帝で終わらせるのではなく
    皇帝としての実績もちゃんと紹介されてるのでよかったです。
    ローマ史入門として初心者にもわかりやすくて
    これから読もうと思う作品や、ローマを舞台にした映画などを手助けしてくれるだろうと思いました。

    知識欲が満たされて満足。
    ローマ史を語る上でのギリシアとかキリスト教、
    スラブ人たちの歴史も学んでいきたい。

  • クレメンティア(慈愛)を切り口にした分析は面白かった。ポリス時代の(弱者を切り捨てた上での)平等に基づく慈愛、カエサルの親分から子分への慈愛、キリスト教の強者から弱者への慈愛。

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著者プロフィール

1947年 熊本県生まれ
1980年 東京大学大学院人文科学研究科博士課程(西洋史学)修了
現在 東京大学名誉教授
西洋古代史。『薄闇のローマ世界』でサントリー学芸賞、『馬の世界史』でJRA賞馬事文化賞、一連の業績にて地中海学会賞を受賞。著作に『多神教と一神教』『愛欲のローマ史』『はじめて読む人のローマ史1200年』『ローマ帝国 人物列伝』『競馬の世界史』『教養としての「世界史」の読み方』『英語で読む高校世界史』『裕次郎』『教養としての「ローマ史」の読み方』など多数。

「2020年 『衝突と共存の地中海世界』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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