ゲゲゲのゲーテ (双葉新書)

著者 :
制作 : 水木プロダクション 
  • 双葉社
3.51
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本棚登録 : 271
感想 : 37
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575154665

作品紹介・あらすじ

水木しげるの人格形成に多大な影響を与えたゲーテ。本書では、そんな賢者の言葉を、水木が暗記するまで何度も繰り返し読んだ『ゲーテとの対話』の中から厳選。真理を鋭くついた格言・箴言・警句の数々は、明日を明るく照らし、前を向いて歩き続ける力になる。混迷を深める時代を生きる現代人の杖となる座右の書!

感想・レビュー・書評

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  • 水木しげるにとってゲーテの言葉は生涯にわたって生きる指針だったのだなと分かる本。

    死の直後に出された本として、水木しげる自身が書いたものというより、水木しげるプロダクションが今までの著作やインタビューなどから編集したものなので、企画モノ的な雰囲気も漂う。

    第二次世界大戦に招集される前、絶対に死ぬと、死を前にした中、水木しげるは哲学や聖書、ゲーテの本を読みまくる。

    そして戦場に『ゲーテとの対話』を持っていく。
    まさに生死の境を一緒に切り抜けた大切な本なのだ。

    また新約聖書もかなり読み込んでいるということも、妖怪、万のモノに神が宿るという立場なのかなと思っていたので、意外だった。
    本書にもあるが、宗旨とかは関係なく、フラットに良い考えを吸収しようとする姿勢が素晴らしいと感じた。

    私は、水木しげるは、ほんわか、達観したようなイメージを持っていたから、かなり堅い名著を貪り読む、探究的な部分が少し意外だった。

    この時代とその後の戦争において、しっかりとした考えができたからこそ、その後の漫画にどっしり一本の筋がとおって、名作がかけたのではないかと思う。

    また、水木しげるの痛快な金言もたくさん
    老人の説教臭い戯言ではなく、中身があるのにポップ。
    爽やかでありながら考えさせられる言葉。
    さすがだな。

  • ご逝去前後の企画本。
    水木はゲーテの作品を、以上に、ゲーテ自身を、好きになる。
    それは、少なからぬ人が、鬼太郎を越えて水木サンを好きになるのと、同じ現象だ。

  • 先月発売されたばかりの新書で、巻末にある水木夫妻の対談を読んでいると(2015年に入ってからのもの)、まだまだ長生きするつもりだったのだなぁ…と思って少し切なくなった。
    実際亡くなったのは家の中で転んでしまったのがきっかけだったらしいから、きっと身体はどこも悪くなかったんだろうし。

    水木さんがゲーテを愛する理由、インタビュー、エピソード、そしてゲーテの格言や箴言に水木さんの言葉を加えた、面白いつくりの本だった。
    私自身は哲学の世界はあまり詳しくないけれど、なぜかゲーテの本は本棚にあったので(いつ買ったのかも覚えていないけど)もう一度開くきっかけにもなった。

    ニーチェやヘーゲルではなくてなぜゲーテなのかというと、ゲーテの言葉は幅が広くて日本人に合っていると感じているそう。
    戦争という過酷な体験をしている氏にとって、徴兵の気配が近づいた時に読み始めたゲーテ哲学の存在は、とても大きいものだったということが分かる。

    人間は欲深い生き物で、その欲には際限がないけれど、自分にとって何が幸福なのかということが自分の中で明確にあって、しかもその幸福のラインを低めに設定すれば、普通に暮らしている毎日は大抵幸福なのだと思うことが出来る。
    それは向上心がないということではなくて、そんな風に精神が安定していれば、何でもかんでも闇雲に、ではなくて、自分が本当に求めているものが分かってくる、ということ。

    「長く寝るのが一番の幸福」と言い切り、フラットに生きた水木さん、とても素敵だなと思った。

    ゲーテの言葉で印象的だったのは「精神の意志の力で成功しないような場合には、好機の到来を待つほかない」
    努力だけじゃなくタイミングも大事。
    その他にも全部で93個の厳選された言葉を楽しめる。
    無理をしないこと。を、心に刻み込んで生きたい。

  • 戦争は水木サンが少年の頃に始まった。
    十代の終わり頃、戦争に行くのが嫌で、死ぬのを恐れ、聖書や哲学書、小説などを読みまくって死の恐怖を克服しようとした。人生とは何か。答えは見つからなかったが、痛切に「死にたくない」と思った。ゲーテ的な考え方をするようになった水木サンは戦地にも文庫本『ゲーテとの対話』上中下三冊を持って行った。
    片手を失って帰国して、貧乏な暮らしをしながら数十年かけて漫画家として大成する水木サン。

    まるで人生そのものが一つの作品のようだ。
    そんな水木サンに影響を与えたのは聖書とゲーテらしい。正直なところ、ゲーテの言葉より、水木サンの文章をもっと読みたいと思った。

  • 水木サンが選んだゲーテの93の言葉。
    見るものをちゃんと見て、読んでて、賢いのに偉ぶってない、幅広く考えてる。ほんまに水木サンの80%はゲーテ的。
    天才的人間って、いつまでも若く、精気が漲ってる。
    ゲーテも、ほかの人びとには青春は一回しかないが、天才には反復する思春期がある。って言ってる。

    一度でいいから、人間らしい生活を味わうために南の島で野蛮人に生まれてみたいって、格言というより願望でこれには笑った。これを取り上げる、目ざとい水木サンのニヤリと笑う顔が目に浮かぶ。
    人生は何かって、とうとう分からず終いって言ってた水木サンですが、彼から滲み出る「死にたくない」は、燦然と輝いてて、かっこよくて頼もしい。
    読後、確かにそうと思った言葉を最後に、
    「幸福感は伝染する」。

  • 水木しげるが20代から30代のころに暗記するくらいまで読み込んだというエッカーマンの「ゲーテとの対話」。その本の中から水木が傍線を引いた箇所を出版当時(2015年)の水木の年齢に合わせて選び出した93の箴言の数々を解説を交えながら紹介している。自分も少し前から初めて「ゲーテとの対話」を読み始めたが、当時の社会情勢や前提とする知識がないのでよくわからないことも多く、読み進めるのにも一苦労だったが、水木さんのように時間を掛けてじっくりと何度も味わうべき本だと分かった。

    〇メモした箇所
    6、比較的才能のとぼしい連中というのは、芸術そのものに満足しないものだ。彼らは、制作中も、作品の完成によって手に入れたいと望む利益のことばかり、いつも目の前に思い浮かべている。

    →この文章を読んだ時まさに自分のことやと思った。作ること、そのものを楽しむ。

    42、マンネリズムは(中略)いつでも仕上げることばかり考えて、仕事そのものに喜びがすこしもないものだ。

    →ここ最近はまさにこの状態に陥ってて、いつの間にか楽しむことよりも数を稼ぐこと起き出してが目的になっていた。楽しみながら作ることに主眼を置いたら少し打開できそうな糸口が見つかった。

    60、性に合わない人たちとつきあってこそ、うまくやって行くために自制しなければならないし、それを通して、われわれの心の中にあるいろいろ違った側面が刺激されて、発展し完成する。

    →いかに今現時点で自分の興味がないことでも興味を持てるような考え方が出来れば、さらに限界を広げ自身の能力の幅が広がるだろうと思う。だから苦手なこともやってみるべきはそういうことだと思う。

    92、生きているかぎり(中略)頭をおこしていよう。まだものを産み出すことのできる限り、諦めはしないだろうよ。

    →この姿勢こそが大事でこれこそが目的。

    またいつか読もう。

  • ー最近の若い男は、3分の1くらい下駄で叩いてやりたいような感じだ。ー
    水木サンらしい表現でピシャリと言ってくれていて、この一言だけでファンになります。

    ー水木サンが幸福だといわれるのは、長生きして、勲章をもらって、エラくなったからなのか? 違います。好きな道で奮闘して、食いきったからです。
    周りには水木サンの幸福菌に感染した人たちも多く居ます。幸福は感染するんです。ー

    幸福は感染する、その通りだと思います。

  • 妖怪作品もさることながら、「水木サン」の話しや、考え方、生き方について書かれたものをみると、ほんとうにすごい人だったことがよくわかります。
    「ゲゲゲの女房」をみるまで、片手で描いていたことも知らず、テレビアニメでかわいくデフォルメされたあとの目玉おやじのほんとうの意味もしりませんでした。

    手にとりやすい、子ども向けの作品の裏には、妖怪の姿を通じて、哲学や宗教、人一人の生を超えたところにある時の流れや真理について考え、描き続けて生きたすさまじい日々があります。

    巻末の「剣豪とぼたもち」も秀逸です。

    「妖怪は伝承があるから、勝手に創作しちゃいかんのです」

    とても、重たいひとことです。

  • 漫画家【水木しげる】は、『ゲーテとの対話』(岩波文庫版:上・中・下)を雑のうに入れて、戦地ラバウルまで持っていったという。常に死の恐怖と隣り合わせだっただけに、精神的な支えとなる「お守り」が必要だった。そのゲ-テの言葉に支えられて、本書のインタビュ-での答えは「今も80パ-セントは、ゲ-テ的な生き方をしている」と。〝人は窮屈な家の中にいると、ちじこまってしまう〟(デーテの言葉)。〝戦わずして土俵を降りるのはつまらんぞ〟(水木しげるの言葉)。

  • なかなかパンチの効いた人なんだなという印象。
    私はゲーテのことを知りたいわけじゃないんだけど、ゲーテを知らないと水木しげるを知れないんだろうな。
    戦争が始まって祭りのような興奮状態、何かマイナスなこと1つも言えない、こういうのは幻じゃないんだと絶句する。
    母親に宛てた手紙は、生死や幸福や不幸について自分の答えがハッキリと出ていて、戦争が与えた壮絶な体験がこの達観した考えを生んだんだと思えた。
    この生命力が絵に表れているんだと思う。

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著者プロフィール

1922年(大正11年)生まれ、鳥取県境港市で育つ。太平洋戦争時、ラバウル戦線で左腕を失う。復員後、紙芝居画家を経て貸本漫画を描き始め、1957年『ロケットマン』でデビュー。以後、戦記もの、妖怪ものなど数多くの作品を発表。1965年『テレビくん』で第6回講談社児童漫画賞を受賞。1989年『昭和史』で第13回講談社漫画賞を受賞。1991年紫綬褒章受章、2003年旭日小綬章受章。主な作品に『ゲゲゲの鬼太郎』『河童の三平』『悪魔くん』『総員玉砕せよ!』『のんのんばあとオレ』など。2015年11月死去。

「2022年 『水木しげるの大人の塗り絵 あの世紀行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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