- Amazon.co.jp ・本 (358ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575231175
感想・レビュー・書評
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「その友だちはもう死にました」
「どうか、お願い。頼むから死んでいてちょうだい、お父さん」
何度読んでもここで涙がこみあげてくる。
最近あまりニュースにならなくなったように思うが、ひところ、サラ金が大きな問題になった。過酷な取り立て、それによる家族の崩壊、自殺など、悲惨な報道をよく目にした。
消費がもてはやされていた時代だったからだろうか。
それからまだ20年くらいしかたっていないのに、社会の流れはすっかり変わってしまったようだ。
すくってもすくっても、指の間から「ふつうの生活」がこぼれ落ちていってしまう新城喬子が、切なくてたまらない。その強さは、決して明るく生き抜く強さではなく、悲しくて哀れだ。
ラストで本間は思う。「きみの話を聞きたい」と。私も聞きたいと思う。彼女の怒りを。やるせなさを。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
1992年双葉社発行の単行本。火車、すなわち火の車。借金が人を狂わせる、それも普通の人が自然な感情によって借金を重ねてしまう。殺人者は最後まで登場せず主人公の想像の中で像が重ねていく。ここに批判もあるようだ。でも、殺人者の寂しさ、必死さが伝わってくる気がする。たっだ、ラストシーンの先、殺人者の肉声も少しは聞きたい気がした。
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もっともっと宮部みゆきさん知りたい…これだからミステリーもの好きです。
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火の車とは家計が苦しいことを表現すると時によく使われる。本書もそのイメージに近い内容である。
彰子はカード破産者、それを知らずに、戸籍を自分のものにしていた。戸籍をのっとるためには、本人が死んでいることが暗示される。そして、中盤以降になって、犯人像が浮かんでくる。だんだんと実態が見えてくる。この構成は作者が得意とするところである。住宅ローンのために、サラ金から借金、そして闇金を借りる、そのために、一家離散し追われる身となった。追っ手から逃れるために、他人の戸籍を手に入れようとする。そして実際手に入れる。これはばれてしまったので、二つ目の戸籍を手に入れようとする。これは追ってのやくざも戸籍を偽っている彼女も同じことをしていると思えてしまう。本の紹介ページには、カード破産について書かれたと紹介されていた。当たってはいるが、私は個人認識、自分の証明ということも伏線にあると思う。 -
テレビドラマされる前に読んでおきたかったが、間に合わなかった。お友達がドラマより原作本が良かったと言われるだけあって、本当に読んでみて確かにドラマ以上に細やかな描写がよかった。
しかし、俳優さんを思い浮かべながら読むには楽しめて良かった。 -
先日テレビでドラマをしてたので読んでみたかった。
緻密な計画の下、他人の戸籍を取得して自分の苦境から逃れようとする謎の女。休職中の刑事が地道に追いかけたどり着く。最後にその女に会う直前で話しは余韻を残して終わる。逮捕したのかそしてしいちゃんはどうなったのか?
おもしろかった -
ミステリ史上に残る傑作。
派手なシーンはなくとも一気に読ませる筆力は秀逸。読後に背筋が寒くなるリアルな怖さもある。