- Amazon.co.jp ・本 (363ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575234572
作品紹介・あらすじ
13歳の皇国民「自分の意思で殺した。後悔はしていない」ミステリー史上、稀にみるその殺害動機。鮮烈に胸を打つ、衝撃の結末。
感想・レビュー・書評
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1945年、学業は停止され少年たちも学徒動員に借り出される。13歳の少年たちは何を思い生きていたのだろうか?
大切な者のために殺意を抱く対馬…。自分の信念のために殺意を抱く成瀬…。
成瀬の手紙の「少し気になるよ」がとても印象深くて、本当は誰よりも純粋な子なのではないかと思った。純粋だからこそその時代に染まったのでは、洗脳されたのではないか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
戦争の不条理さと理想しか知らない少年。生と死が身近にあっても人間として生きるとはどういう事なのかを考えたりなんかした。
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今回は内地でアメリカを迎え撃つための拠点作りに駆り出された中学生の視点を通しての、日本人と戦争、そして終戦の物語。
他の作品と比べると、主張もそれなり、展開もそれなりで、正直いって衝撃を受ける読後感ではなかった。皇国の信念を持ち続けることに自分の存在意義を見出す少年と、それよりも自分の感情のあるがままに現実を見つめる少年との対比でこの物語は成り立っている。古処作品ではありがちな設定だが、やはり切ない。
少女と友人が銃撃され、動きを止める描写が生々しかった。 -
戦争テーマは、たとえフィクションであってもしんどい。どちらかが悪でどちらかが善と断言できればいいのに。
圧倒的に相対悪だとしても、全体的視点は必要だと思うのです。個人的視点と共に。
どうしようもなく相容れないものであっても、どちらかを無きものとするのは危険だと、個人的視点寄りの者としてはそれだけを心に留めおくことしかできないのだけれど。 -
戦争を知らない世代の目で見ると、かなり理解しがたいところは多い。感情移入もしにくいかなあ。だけどこの「衝撃の動機」ってのは、たしかに衝撃かも(新聞に載ってたキャッチコピーはちょっと大げさだと思うけれども)。
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終戦直前の日本が舞台。中学生までもが軍の下で働かされ、誰もが日本の敗戦を感じ取っているのにまだ『皇国』としか口にも態度にも出せない世界。そして、それによって抑圧され麻痺した精神状態が怖かったです。「理想的」なのであろう成瀬の姿は薄ら寒くさえありました。著者の作品を読むのは三作目ですが、戦後生まれとは思えないくらいの作品を書く方ですね。
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太平洋戦争末期の沖縄戦。皇国少年が兵士を殺害した動機をめぐるミステリー仕立てになってます。古処誠二の現代物も好きなのですが、文章に品がありますよね。カノン砲とか書いてるくせに。
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この本に出合えたことがとてもしあわせです。
この作品では終戦間近の少年と大人を描いています。
ラストの成瀬の台詞が本当に本当に、ぎゅってきました。
日本が勝つと信じて信じて、本当はわかっているんだけどそれでも信じて。
ノンフィクション的な作品です。きっと同じような心理の方は実際にいらっしゃると思います。
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通り一遍の戦争を書いた作品でもなく、掲載誌から考えられるようなミステリというわけでもない。皇国民が兵士を殺したことのホワイダニットミステリという形で、「軍とは何なのか」「戦争とは何なのか」「信念とは何なのか」を描き出そうとしていると思う。物語は本土決戦のための防空壕掘りに借り出された中学生を中心に若い将校の話が交差する。淡々と進んでいき、クライマックスですべてが明らかになる。なるほど、こういう動機か…。ありえる動機なんだよね。この時代なら。