- Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575236958
作品紹介・あらすじ
太宰治の未完の絶筆「グッド・バイ」から想像を膨らませて創った、まったく新しい物語。1話が50人だけのために書かれた「ゆうびん小説」が、いまあなたのもとに。
感想・レビュー・書評
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とりあえず太宰治の「グッドバイ」を読みたいリストに追加した。
やはり伊坂作品お約束の下らないやり取りが大好きだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
カテゴリを悪い男にしたものの、星野ちゃんは悪いと言うより人が良すぎて…というところ。
イチゴ狩りでギャルも狩り、映画のように突然車の前に立ちはだかったり、キャッツアイもどきの犯行を阻止しようとしたり、女優の飲んでいるスポーツドリンクの味を知りたがったり、結果五人の女性と同時並行で交際してしまう星野ちゃん。
金はなく、知らない間にとある権力者の怒りを買ってしまい、「あのバス」に乗せられてどこかへ送られる運命にある彼は、身長180cm体重180kgの(多分)女 繭美に監視されている。
繭美同伴で星野ちゃんは五人の女性に会いに行く。「彼女と結婚するので別れてくれ」と。
「あのバス」に乗り込んだ人間はもはや人間ではなくなってしまうほど恐ろしい場所に送られる、その組織や目的地は明かされないままで不完全燃焼の感もあるが、このお話は素敵だと思う。
悲惨なはずの星野ちゃんの運命、なのにくすりとしてしまう伊坂さん流のエピソードが詰め込まれている。
「同情」や「色気」「可愛い」などの言葉を塗りつぶした辞書を持ち歩く繭美を次第に好ましく感じてしまうのも良い。
太宰治の未完作「グッドバイ」を参考にしているらしいと聞き、「グッドバイ」も読もうと誓う秋の夜長。 -
とある理由からとある組織に「あのバス」で連れ去られてしまうことになった星野。彼は連れ去られる前に付き合っていた5人の女性に別れを告げるために、組織からやって来た謎の大女・繭美と女性たちの元に行くのだった。
クールでかっこいい装丁から、そういう話だと思って読み始めたらスラップスティックコメディでした。5股を掛けていた男が、この人と結婚することになったから別れてくれと告げる物語なのですが、その「この人」が暴力と暴言の固まりのような大女なのですから。しかし話の展開は実に伊坂幸太郎的なのですね。細かいセリフのひとつひとつにまで物語上の意味を持たせてしまう。その展開の小気味よさを味わえます。それでいて大きな謎は放ったらかしというのもいいです。
また星野と繭美という人物造形が面白いのですね。先の計算をせず、その時の思いのまま動くため二進も三進も行かなくなる星野。初めはどうしようもない男というイメージを持ちますが、読み進めていく内に「悪い人じゃあないんだけどねえ」「いや、いい人ではあるんだけどねえ」と印象が変わります。さすがは5股ができる男。そして作中で怪獣的な扱いをされる繭美に至っても、読み進める内にちょっと好意を抱いてしまうんです。これは星野の目から繭美を見ているからでしょうか。そしてその好意を抱く原因は、星野自身の人の好さに由来するのかも知れませんが。
で、あちこちで書かれていましたが、僕も繭美はマツコ・デラックスしか脳内に描けませんでした。それしかないでしょ。うん。 -
伊坂さんらしいテンポの良い話だった。
台詞が多く、かけあいが楽しい。
星野と彼女たちとの出会いが、一風変わっているものばかりで、たしかにこんな出会い方をしたら仲良くなるよなぁと思わせられた。
繭美のイメージはマツコ。
共感できる人も多いことだろう。
傍若無人だけれど、憎みきれないところが、伊坂さんらしいと思えた。 -
繭美のビジュアルイメージがマツコ・デラックスに脳内変換されてしまい、そのおかげで場面を想像しやすかった。