- Amazon.co.jp ・本 (168ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575238006
作品紹介・あらすじ
祖父はビルマ戦の帰還兵で、口を開けば戦争中の自慢話だ。当時4歳だった僕にイギリス兵を素手で殺したという話や、自分が現地の娘にモテたことなどを、得意満面に語る。いいかげん聞き飽きたが、話を聞かないと鉄拳制裁が待ち受けている。我が家の生活もすべて祖父の意志が大優先だ。その祖父が倒れて入院した。そしてベッドの上で、あり得ない言葉を呟いた…。
感想・レビュー・書評
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あ〜あっおもしろかったと、言葉に出てきてしまうほどでした。『死んでも負けない』この題名を見た時これは悲惨な戦争小説と思ってしまいました。ところがどっこい主人公のじいさんの行動が面白いのなんのって、雪見大福10個食ったとか、孫にベットを作れだのハチャメチャじいさんですよ。ビルマでやった悪事の数々は、映画兵隊やくざの勝新太郎を思いだしてしまった。戦争小説とは違った家族の小説として読んでもらいた小説ですね。
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「壮絶で陰惨なビルマでの戦争を生き延び、性格的に変調をきたした祖父を精一杯支える高校生の孫。
二人には他人には入り込めない深い絆があった…なんて感動の話ではないっ!
こんなじいさん、絶対イヤだっ!」
いや、面白かったです、古処さんってこんなに笑える小説を書かれるんですね。びっくり。
うひゃうひゃと笑いながら読んでいて、それでいて少しずつ忍び寄る老いに「もしかして」という心の準備をしている自分に気づき、ひやっとしたり。
思わず途中終わりかっ!とメールしてしまいましたが、これはここで終わるからいいんですね。
あとは余韻。読み手の想像力が彼らの可能性をさまざまに描く。
ただ、誰もが思うでしょうね。幸せになってくれ哲也!と。 -
「雪見大福が好きな人に悪人はいない」と平気で言い切り、唯我独尊の日々を送る。こんな頑固爺に私はなりたい。ビルマで40キロの行軍や捕虜になった経験は無いが、戦争の中で青春をすり減らし、それでも先祖に頭を垂れ続けて生きる。そんな背骨の通った頑爺になりたい。
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茶目っ気のある古処作品ということで期待をしていましたが、
どうもスベっている感があり、いたたまれませんでした。
(普段真面目なクラスメイトが突然おやじギャグを言い出すような)
シリアスな作風を得意とする作家が
コメディタッチに手を出すことは珍しくないと思いますが、
古処さんには合わなかったのかなという印象です。
ちなみに、読み終わるまでこれは古処さんの自伝なのかと思っていました(笑) -
学校の課題図書のような読みやすさ、面白さだった。
戦争に勝つことが正義だった世代の、そのむき出しの精神を、果たして私たちは否定できるんだろうか。
真実は、ただ、あの戦争があったということだけなんだろう。
誰のために、良いとか悪いとか、言えるだろうか。 -
祖父・父・自分(高校生♂)が3人で住む古い家。その祖父は太平洋戦争中、ビルマで下士官として戦った。そして何かというと戦争中のビルマでの逸話(戦争であるから当然殺し、食料の調達(強奪?)、傷病、女、しごき等、上品とは言えない話だ)を持ち出す、思い出話大好きの老人だ。頑固者で屈強で近所でも評判である。当然家でも父や自分に鉄拳を振るい、専制的に振舞っている。ところがそんな祖父が日射病で病院に担ぎ込まれたことにより、日常に少しずつ変化が生じていく・・・オチはない小説だが、戦時中の逸話がいちいちリアルで実感がこもっており面白い。実話に基づいているのだろう。
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ビルマ戦線を戦い抜いた暴君のごとき祖父の秘密。
主人公と父親がびくびくしながらもなんとか祖父とつきあっていくところが微妙にくすぐったい。
佳代さんといい京子といいヒロインが強い。強すぎて漫画的かも。祖父の寝言の種明かしは、なんとなく釈然としない。そういう広い視野を持ったキャラには見えないので。 -
コメディタッチのホームドラマなのだが、そのなかで繰り広げられるのは、帰還兵である祖父と息子と孫の三人家族の軍隊並みの厳しいドタバタ生活である。
その祖父が突然倒れ、病床でふと漏らした言葉。その言葉は、多くの兵士たちが口にしたくともできなかった一言であろう。戦後、多くの将兵が戦争や軍部を批判した。自分たちが非人間的な扱いを受けていたことを告発した。司令部の責任を問おうとした。
しかし、口を閉ざしたまま死んで行った多くの兵士たちの気持ちは、この老人と同じではなかったか?軍人として、兵士として、何を全うすべきだったのか?その一言がふと宮崎繁三郎中将と重なるのは言い過ぎだろうか。。。 -
今も生活の全てがビルマ戦と直結している頑固一徹な祖父。日常の暮らしぶりを孫の視点から描いた作品。
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ビルマ戦での自慢話ばかりする爺さんの話し。いわゆる正しい戦争エピソードとは違うところがよかった。本人大真面目だけど、やはりおかしくて、でも少し深いところを突いてくる戦争自慢話。戦争に負けて捕虜収容所で、イギリス人の仕打ちに、改めて世界のためにもイギリス人は殺さなくてはいかんと決意を固めるエピソードが印象的。
この爺さんが人生で悔やんでいることはただ1つ。
戦争に負けたこと。なんで、あのときもう少し踏ん張れなかったのかというのを死ぬ間際になっても後悔している。つまり、僕らの世代以下が刷り込まれてきた「戦争そのものが悪で、その戦争をしたことが間違っている。」という考えとは全く違う「戦争をするなら勝たなきゃいかんかった。」という腹の底からの後悔、それに考えさせられた。
ちなみに、話の途中で本が終わったみたいでそこは別の意味でびっくり。