ランチのアッコちゃん

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (166ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238198

作品紹介・あらすじ

ランチのアッコちゃんは、柚木麻子さんの小説です。
あらすじは、恋人に振られ意気消沈しているOLの主人公が有能な女性上司アッコさんとお弁当を1週間交換するというものです。2014年には本屋大賞にノミネートされています。等身大の女性の気持ちが描かれているので、読むと元気が出ると人気の作品です。様々なことに挑戦し、日々成長していく姿を目の当たりにすることができます。

感想・レビュー・書評

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  • オフィスのお昼休みは12時〜1時の間というのが一般的でしょうか。午前中に発覚したとんでもない失態に、お昼休みが吹っ飛んだという苦い経験(汗)を思い出したりもしますが、普通には一日の中の一つの区切りとしてホッとするひと時であることは間違いないと思います。私は外食したり、パンを買ってきたりといった感じですが、買ってきて自席で食べると、思いがけず同僚たちのふとした素顔を見るような思いに囚われることがあります。お弁当持参の人、パンを買ってきた人、この人いつ食べたのかなあと思うくらいに自席に伏せてお休みモードの人。そんな光景を目にするとついついお弁当持参の人に質問をしたくなってしまいます。“自分で作ってるの?” 今の時代、そんな質問も若干憚られる時代になりつつあるのかもしれませんが、”はい”、”いえ、母が”、”子どもとペアでカミさんが”、まあだいたいこんなところでしょうか。そして、チラっと覗き見するお弁当には、そんな答えの後ろに彼らの生活、考え方が垣間見える、お弁当というのはなかなかに奥深いものだと思います。では、そんな同僚に対して、”そのお弁当を代わりに食べてもいいですか?”といきなり私が聞いたら何が起こるでしょうか?もし、あなたがそんなことを言われたら、どう答えるでしょうか?

    『ただいま。ああ、お腹減ったー。ランチを食べ損ねたわ』と『後ろを通り過ぎていくアッコ女史の大きな声』にどきっとしたのは澤田三智子。『小学生用の教材を専門とする小さな出版社』である『株式会社 雲と木社 営業部』に派遣されてまもなく一年という三智子。十三時二十分という時計を見て『いつの間にかこんな時間だ』とお昼休みに入ろうとします。その時『澤田さん、もしまだだったら、これからお昼一緒にどう?』と声をかけられる三智子。『部長席からにこりともしないでこちらを見ている』のは『アッコ女史こと黒川部長』。『四十五歳の独身』という彼女は『がっちりとした肩幅に身長百七十三センチ、つやつやのおかっぱ頭が、某大物歌手を思わせることと、下の名前が「敦子」であることから』このあだ名がついたという経緯。でも『もちろん面と向かって「アッコさん」なんて呼ぶだけの勇気がある社員はいない』という職場内。お弁当持参の三智子が口を開こうとした時『ごめんなさい。あなた、確かお弁当持参だったわね。毎日作るなんてマメよね』と先に返すアッコ女史。『今日はあんまり食欲がなくてまだ食べてないんですよね。このまま持って帰ろうかな、と思ってて…』と返す三智子に『なら、私が食べてもいい?迷惑かしら?』と言うアッコ女史。『迷惑だなんて、め、滅相もないですっ』と急いで部長席へとお弁当を持って行く三智子。『ありがとう。なんか悪いわね』、『いえ、召し上がっていただけたら、こちらも助かります。粗末なもので恐縮です』と会話もそこそこに恥ずかしくて部屋を出た三智子。オフィスに戻ると『ごちそうさま。美味しかったわ』とお弁当箱を手渡すアッコ女史は『こんなに美味しいお弁当を食べたことがない。似てるの。母の味と』と語ります。そんなアッコ女史はいきなり三智子の肩に手を置き『来週一週間、私のお弁当を作ってくれない?』と言い出します。驚く三智子に『もちろんお礼はするわよ。私の一週間のランチのコースと取り替えっこするの』と続けるアッコ女史。『どうしてこんなに面倒なことになってしまったのだろう』と嘆く三智子。そして、そんな二人の『ランチ取り替えっこ』の一週間が始まりました。

    4編の短編から構成されるこの作品ですが、アッコ女史と三智子が主として登場・活躍するのは連作短編のような前半の2編のみ。後半の2編では街中のエキストラのような感じでふわっと登場するだけです。そんな前半の2編から受ける印象は”食事の風景”です。三智子が作ってきたお弁当は、『エビフライにメンチカツ、鮭とホタテのミニグラタン、ポテトサラダに蓮根のきんぴら、きのこの混ぜご飯』という豪華セット。ここまで具体的だと自然とその豪華なお弁当箱のイメージが浮かんできます。食べてみたくなる一方で、作る立場に回ると、上司に食べてもらうお弁当を作るというのは、とてつもなく大変そう、家に帰っても仕事が終わった気がしないとんでもない苦行、真っ平ごめんという感覚だと思います。しかも三智子の場合『似てるの。母の味と』というアッコ女史の一言付きです。三智子も当然に悩みますが、毎日工夫を続けながら頑張ってお弁当を用意します。しかし、一方でそんなお弁当を食べるアッコ女史の食事の風景は出てきません。あくまで食べることになるお弁当のイメージだけです。そして、そんなアッコ女史から『ランチ取り替えっこ』をされた三智子の方は食事の風景がリアルに登場します。『ここ何年か、外で何か食べるという経験をほとんどしていない』という三智子。そんな三智子がカレーライスを食べる風景はとてもリアルです。『スプーンを取った。ひとさじ、カレーとご飯を口に運ぶ』という緊張の瞬間。『スパイスがピリッと鼻の奥を刺激し、体が急に熱くなる』というまさしくカレーを食する感覚。そして『冷えて固まっていた何かが、ゆっくりと溶けていくのがわかった』というその変化。『カレーなんてうちでも作れると思っていた。外食はお金の無駄だと思っていた』というそんな三智子の口から『人に…、誰かに作ってもらうカレーって、いいものですね…』と飛び出る言葉がとても自然に伝わってくるシーンはとても印象的でした。そして、こういった日常の中のちょっとした喜びの感覚の積み重ねが、物語を、そして三智子の生き方をそっとあと押ししていくことになります。

    書名にもなっている『アッコ女史』。第一人称の主人公・三智子の視点の中でしか出てこないにもかかわらず、その存在の大きさは、この作品の本当の主人公は誰なんだろうか?と思うくらいに圧倒的です。それは2編目の〈夜食のアッコちゃん〉を読んでも変わることはありません。『アッコさんと一緒にいると、こんな風にぐんぐんと視界が広がっていくのだ』と感じる三智子。そんなアッコ女史の魅力は、アッコさんに繋がる人たちの魅力でもあります。職場の人間関係に悩む三智子。そんな三智子にアッコ女史は『何よ、まだ解決できてないの?』と繰り返すばかりで直接解決方法を示してくれることはありません。そんな一方でアッコ女史繋がりで出会ったレイカさんに話を聞いてもらいます。『わかるなあ。女の子同士って時々険悪になるものね』と優しく話を聞いてくれるレイカ。『そういう時は、みんなの話の流れに合わせるんじゃなく、自分から話題をふればいいのよ』とアドバイスをくれます。さらに『こちらから提供できるネタが多ければ多いほど、人間関係って楽になるわよ。ささいな、くだらないことでも構わないから』と具体的な説明もしてくれます。これをヒントに『レイカさんの言う通り、本当にちょっとしたことで空気って変わるんですね』という結果論へと繋がっていくそのアドバイス。しかし、ここで大切なのは以前の三智子だったら同じアドバイスをもらっていても素直に聞けただろうかということです。アッコ女史と出会い、『ぐんぐんと視界が広がった』という今の三智子だからこその結果論、そう感じました。

    とても前向きな4つの短編から構成されたこの作品。斜めに構えてしまうと、うまく行き過ぎ、出来過ぎ、を感じないわけではありません。でもそれは、そんな幸せをどこかで妬む感情が読者の心の中にあるからかもしれません。そう、それは自身がこの作品世界に浸る余裕を失っている証拠なのかもしれません。

    落ち着こう、視界を広げて見てみよう、そうすればきっと、この作品の主人公たちが見たように、自分にも違う世界が見えてくる、きっと。

    心にすーっと入ってくるホッコリとあたたかい物語、これいいなあ、そう感じた作品でした。

  • 「3時のアッコちゃん」を先に読んでいて、痛快だったのでそれを期待していたら、こちらは期待程ではなかった。
    期待しすぎたのかもしれない。
    アッコちゃん、なんだか大学時代の先輩を思い出すんだよね。
    真っ直ぐにブレない芯が一本あって。
    人生何回目?みたいな貫禄もあって。
    大好きなの。
    アッコちゃんが出てくるのは最初のふたつだけだったけど、他の短編にも時たまチラッと出てくるからそこでテンションがちょっと上がったりね。
    楽しく読めました。

  • 「3時のアッコちゃん」での『アッコさん』のイメージは、『アッコちゃん』ではなく『アッコさん』あるいは『アッコさま』あるいは『アッコ女史』であった。そして、「ランチのアッコちゃん」で、『アッコちゃん』は、『アッコ様』へと私の中のイメージが確定する。

    著者の作品を今回、初めて手にとってこのアッコちゃんシリーズで感じたことがある。
    軽快な進行と理解しやすい表現、日常生活でが安易に想像できる描写、読者と等身大の登場人物とスパイスとなる人物のテンポのいいやりとり。ごく平凡な題材であって、飾り気がなく共感しやすいということであろう。人それぞれの感じ方があるかと思うが、私はそのように感じた。

    「アッコちゃん」シリーズは、『食』、『食べ物』強いて言えば、『身体に優しい食べ物』あるいは『身体を作る食べ物』への理解が根底にある。
    以前読んだ本で、人間の体は自分の食べたものでできている。そして、食べたものが結果になって現れるのは3ヶ月後。つまり自分の体調を考えるなら3ヶ月かけて、体を作っていくことを常に考えなくてはならない。そして、食べ方も然りであり。例えば、炭水化物は約8時間、肉などのタンパク質は14時間かかる。夜、8時にご飯を食べて、12時に就寝するとすると、36度の体内で炭水化物を温めていることになる。つまり、体内で食べ物を腐らせていることになる。だから、食べ物の消化時間を見越して食事をしないといけないなどと書かれた本を読んだ。

    そこまで徹底することはないとしても、食の好き嫌いなく、身体を作るような食事を摂る。身体を作る食事は身体だけでなく、健全な心も作るということを思い出させてくれた作品であった。
    そして、本文では『生き方を変えたいなら食べ物を変えなさい』という言葉で描写されており、身体、心は当たり前で、それは『生き方』にも繋がることであると言われている。

    さて、本作は、今回も4つの短編集からなり、短編集ながら繋がりがあるので読みやすい。

    第1話 『ランチのアッコちゃん』
    「株式会社 雲と木社」の営業部の黒川敦子部長ことアッコさん。45歳、独身。173cmでガッチリした肩幅、つやつやの黒いおかっぱ頭。
    営業部の派遣社員澤田三智子と1週間、ランチの交換をする。

    第2話 『夜食のアッコちゃん』
    前職の「株式会社 雲と木社」が倒産し、新しく大手貿易会社「高潮物産」で、派遣社員として働いていた三智子か、ランチタイムに「東京ポトフ」としてワゴン車での移動販売を開始していたアッコさんと出会う。アッコさんと一緒に働きたいと思っていた三智子は、面接がわりにアッコさんの深夜の仕事を1週間手伝うことになる。

    第3話 『夜の大捜査先生』
    30歳の契約社員・満島野百合は、合コンに参加していた時、母校の清盟女子学園高等部 現国教師のノゾせんこと前園英作先生と遭遇する。ノゾせんは、清盟女子学園高校の生徒・ハマザキを追いかけていたところであった。

    第4話 『ゆとりビアガーデン』
    大手総合商社「中村山商事」から派生したベンチャー総合ネット商社「センターヴィレッジ」始まって以来の使えない社員・佐々木玲実であったはずが、実は…

    『読むほどに不思議と元気が湧く、新感覚ビタミン小説誕生』とある通り、食べて元気になるように、読んで元気になる小説であった。

    暖かくて体に良い食べ物と言って想像すると、「具沢山のスープ」だし、冷たくて体にいい食べ物といえば、「スムージー」を思い出すのが、一般女子だ。
    作者がアッコさんの仕事を『東京ポトフ』(後に『東京ポトフ&スムージー』)と設定し、私たちに健康=元気=活力を連想されるところも本作の大きなテーマに沿っていて、実は作品全体の緻密な構成があることが伺える。

    追伸: アッコちゃんは『秘密のアッコちゃん』を想像させる意図があった。にしても、アッコさんと働きたいと思うのは三智子だけではない!

  • 快作!
    働く女達の憂さや迷いを晴らす楽しい展開で、元気が出ます。

    第1話 ランチのアッコちゃん
    派遣社員の三智子は、雲と木社という小さな出版社に勤めている。
    4年付き合った恋人に振られた翌日、上司のアッコから意外な申し出を受ける。
    お弁当とランチを一週間交換しようというのだ。
    アッコちゃんこと黒川部長は、長身で独身の45歳。営業部唯一の女子正社員で、一人だけセレブ感を漂わせている。
    曜日ごとに行く店とランチが決まっているというアッコ部長。
    知らない世界をのぞき見ることになった三智子は?
    軽快で、現実的ではないが~ありえないほどでもない予想外な面白さ。
    だんだん元気になる三智子が嬉しい。

    第2話 夜食のアッコちゃん
    雲と木社は倒産、別な会社で働いている三智子。
    正社員と派遣社員の間に立って困っていたとき、「東京ポトフ」のワゴンをやっているアッコちゃんに再会する。
    一週間、仕事を手伝うと申し出て、問題解決のヒントを得ることに。

    第3話 夜の大捜査先生
    30歳になる野百合は合コンに精を出していた。
    3年以内には結婚したいから。
    中高一貫の出身校の名を出すと、好印象をもたれるのだが、実は在学中スカートを改造し遊びまわっている不良だった。
    当時の先生、前園が今も繁華街で生徒を追っているところに出くわし、生徒を探すことに。

    第4話 ゆとりのビアガーデン
    総合商社に入ってきた新入社員の玲実。
    ゆとり世代の典型でまったく使えない女の子。3ヶ月で辞めたのだが、社長の雅之は今思い出しても苦笑するほど。
    ところが、その玲実がビルの屋上でビアガーデンを始めるという‥?

    アッコちゃんの話が2話で終わってしまうのはちょっと残念だけど、後の話にも少しずつ出てきます。
    のほほんと明るい玲実の個性がまったく違っていて、社長にも育てられたとは言いがたいが、これはこれで視点の変わる面白さ。
    なかなか秀逸でした。
    ちょっとだけど現実に参考になるような言葉もちゃんとあり、夢のあるエピソードが楽しい!

  • 別の本を読み途中、職場に忘れたので選んだのが「ランチのアッコちゃん」。仕事に行き詰まっている時、新しい道を切り開く先輩と魅力的な食事にまつわるお話し。4話とも主人公のパーソナリティは心地よく、応援したくなる。中でも1話の「ランチのアッコちゃん」が印象的。1週間だけ先輩にお弁当を作ることと先輩のランチ巡りを取り替える。1週間のランチ辿りで先輩のアクティビティーの高さ、人から愛されていること、交友関係の広さを思い知る。で、みるみるうちに元気になった。柚木さん初読みだったがこのシリーズを追うべきだと思った。

  • お弁当をとりかえっこする。
    なんだかそれだけでわくわくしてしまう、食いしん坊な私。

    でも、手作りのお弁当を単純にとりかえっこするのではなくて
    手作りのお弁当と、いろんなお店で食べるランチをとりかえっこする、
    という設定が意表をついていて、いかにも柚木さんらしい。
    上司のアッコさんに持ちかけられた一週間の「ランチのとりかえっこ」で
    なんだかパッとしない、契約社員三智子の世界がぐんぐん拡がっていきます。

    バリバリのキャリアウーマンだと思っていたアッコさんのいろんな顔を知り
    勤めている出版社「雲と木社」で、契約社員だからと縮こまらず頑張ろう!
    と希望に満ちた結末を迎える第一話に、うんうん!と頷いていたら。。。

    なんと第二話では、いきなり会社が倒産して、三智子は別の会社で
    アッコさんとも離れ、また別の悩みを抱えていたりして
    柚木さんの小粋な企みに、またもや驚かされて。

    三智子の成長をずっと追っていくのかと思いきや、4つの物語のうち
    後半では、さらにサプライズが用意されているのですが
    タイトル通り「アッコちゃん」と呼ぶにはあまりにカッコよすぎて
    「アッコさん」としか呼べないアッコさんの魅力と
    おいしそうなポトフが結ぶ温かい縁が元気をくれる
    まさに栄養たっぷりのお弁当のような物語です。

  • 面白くてサクサク読めました。短編小説だけどどこかしらにアッコさん(ポトフ)が出てきます。
    読んでいて元気になりました。

  • 全話楽しく読めた。
    その中でも最後の話が良かった。
    彼女のような人にしか出来ない事ってある。社長の考えも間違えてはいない。
    けれど、彼女が成功したのは自分を排除した社長からも学び自分自身を冷静に見る力があったから。
    自分がどうしたいのか、何なら出来るのかを分かっている人が1番強いのではないかと思う。

  • 働く女性3人のまわりで起こる、日常と仕事を描く短編集。

    ふとしたきっかけで、派遣社員の三智子は自分のありあわせのおかずの入ったのおべんとうを上司のアッコさんに譲ることになり
    それを気に入ったアッコさんは1週間、三智子のおべんとうと自分のランチを交換しようと提案する、第1話。

    アッコさんが指定するランチの場所へ出かけていくと、仕事一筋、できる上司として近寄りがたさを感じていたアッコさんの、かわいさや多くの人に慕われている姿など仕事場では決して見ることのできなかった一面を彼女を知る人たちから伝え聞いて、彼女の魅力を認識することとなった。

    少しばかり背中を丸め、派遣先で気配を消すように分をわきまえて仕事をしていた三智子。
    アッコさんの仕事に対する真剣味を知り、彼女の知人たちに出会い、関わっていく中で、本来三智子の持っていた良さが引き出されていく。

    アッコさんに言い渡された「おべんとうを1週間つくる」ということを通して人に出会い、新たな視点を持ち、自分が変わる。
    今まで思ってもみなかったことや、目の前に横たわる問題にすら気づいていなかった自分、解決への糸口にようやくたどり着く。そして1週間後にはずいぶん、自分でも変化したと認められるようになっている。


    子どものころ、好きだった話の一つに宮沢賢治の「セロ弾きのゴーシェ」がある。
    ねずみの親子(だったか)とのやり取りによって結果的に、ゴーシュは演奏の腕前をあげ、楽団の指揮者に認められるようになって・・。

    概して、物事がうまくゆかないとき、根拠のない自信を持ち、人の言うことを聞かず、目の前にある課題を見ようともしない。
    この本を初めて読んだとき、その一つ一つの過程は認めたくない腹立たしいものであっても、思わぬ人の言動により、目の前のことに心血を注ぎ、再評価され、自信をつけていく様は子ども心に愉快な気持ちになった。

    そういえば、こんなのもありましたねぇ。
    映画「ウォーターボーイズ」では、偽コーチに水族館のガラス磨きを命じられ、理由もわからずやらされた彼らは、いつしか水中での水かきの方法のコツが身についており・・・。

    人が成長するときって、自分に足りない何かを手に入れたくてあがいたり、謙虚な気持ちで人に教えを請う、自分の持たないものを持つ人に憧れておいかけるといった状況を通過するんじゃないかな。
    そんなとき、背中をそっと押してくれたり、優しい解釈を与えてくれる人ばかりではないと思うけれど、求めれば自分にとって必要なコーチに出会えると思うのですよ。 

    三智子さんの成長も爽快で、アッコさんはタフでカッコイイひと。
    続編を望むのは、私だけではないと思いますよ!

  • 図書館で借りました。重めな本を読んだ後に読みたい1冊。 出てくる食べ物がとってもおいしそう。料理があまり得意ではない私は、毎日こんなお弁当食べたいな~って思いました。

    ブログにて詳しいレビューしています*
    https://happybooks.fun/entry/2021/03/17/170000

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著者プロフィール

1981年生まれ。大学を卒業したあと、お菓子をつくる会社で働きながら、小説を書きはじめる。2008年に「フォーゲットミー、ノットブルー」でオール讀物新人賞を受賞してデビュー。以後、女性同士の友情や関係性をテーマにした作品を書きつづける。2015年『ナイルパーチの女子会』で山本周五郎賞と、高校生が選ぶ高校生直木賞を受賞。ほかの小説に、「ランチのアッコちゃん」シリーズ(双葉文庫)、『本屋さんのダイアナ』『BUTTER』(どちらも新潮文庫)、『らんたん』(小学館)など。エッセイに『とりあえずお湯わかせ』(NHK出版)など。本書がはじめての児童小説。

「2023年 『マリはすてきじゃない魔女』 で使われていた紹介文から引用しています。」

柚木麻子の作品

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