図書室のキリギリス

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238235

作品紹介・あらすじ

バツイチになったのを機に、学校司書として働きはじめた詩織。人には言えない秘密を抱える彼女のもとに、さまざなな謎が持ちこまれる。本にこめられた想いと謎を読み解くブックミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 失踪した夫と離婚が成立した詩織は、学生時代からの友人の紹介で学校司書の職に就く。
    こつこつ努力して高校の音楽教師になった友人が“アリ”なら、自分は“キリギリス”だと例えているのがタイトルの由来。
    帯にはブックミステリとあるけれど、日常の謎というにも謎が足りず、ミステリを期待してはいけません。

    いちおう謎と呼ぶものとしては、大きくはふたつあって、前半は、前任司書「永田さん」の謎。
    本の妖精のような人だったという彼女は本の町に旅立ったという噂。
    本と職場の図書室を愛してやまない彼女が急に辞めたのはなぜ?本の町とはどこ?
    週末に3日間だけ何度も借りている「世界の夢の本屋さん」に関係があるの?
    彼女が残してくれた丁寧な引継ぎマニュアル、手をかけられた居心地のよい開架、そういうものに触れるたび永田さんのことが気になる詩織は、本の町のことを調べ始め……。

    ふたつ目の謎は、なぜか他校の蔵書印のある本。
    寄贈されたデータはなく、詩織の学校の登録書籍として存在しているのに、なぜ?
    その本のタイトルが「小さな本の数奇な運命」というのだから、またなんともぴったり。
    謎が解かれ、現れるメディアミックス企画の思い出の楽しそうなこと!

    その後に訪れる文化祭。図書室では3つの企画を出す。
    栞に好きな本のキャッチコピーを書き、展示。お客さんに心に留まったものを投票してもらう、ブックマークコンテスト。
    テーブルごとに同じ本を読み、その本について語り合う読書会、ブックテーブル。
    (リテラチャー・サークルという方式を採っている)
    何冊か(ここでは3冊。流れや関連があるように選択)の好きな本について聞き手に紹介する、ブックトーク。

    ところで、詩織には隠された能力がある。
    本に触れると、その本を読んだ人の思いを読み取れる、というもの。でもはっきりとした思念が読めるわけではなく、特に大活躍する力ではない……ので、正直コレいらなかったかも。
    特に物語終盤、ブックマークコンテストのために書かれたたくさんの栞を前に、伝わってくる思いを感じるところで、

    “栞に触れた指先から、書いてくれた人たちの思いが伝わってくる。その本で楽しんだり、心が震えたり、新たな知識に興奮したりした思いだ。それが他の誰かにも味わってほしいという思いに変わり、様々な言葉となって記されている。”298ページ
    ”栞に染み込んでいるのは、本から生まれた喜びや善意の結晶だった。それが詩織を内側から温めてくれている。”298ページ

    これらの思いは「力」がなくても伝わったと思う。むしろ力を使わないほうが、たくさん伝わってくるような気がする。

    詩織も元オットも、いい加減な司書教諭(最後のほうで少し株を上げますが)も事務長も、大人グループに残念な人が多いので、☆3つ。だったのだけど。
    ウォーターボーイズやスウィングガールズの、ラストの演技や演奏に感動して泣いてしまうタイプなので、最後のブックトークでの生徒たちにこれまたじんわりきてしまい、このこどもたちが大好きという気持ちで☆4つに上げました。
    なかでも本を全く読まなかった男の子が、一冊の本と出会い影響され、一人旅に出かけるほどになってしまう姿が印象的。

    なんちゃって司書と呼ばれる学校司書のシステムなど現実的に切ない話もあるけれど、本好き・図書館(図書室)好き・きらきらしたこどもたち(高校生ですが)が好きという方にはおススメです。


    最後に自分のために、ブックトークの定義として本書に書かれている文章を引いておく。
    “読書の喜びを語る行為である。本の内容や知識を教えるのではなく、朗読や読み聞かせをするのでもない。ブックトークの目的は、その本を読みたいという気持ちにさせること。”311ページ
    少しずつでも、こういうレビューを書けるようになれたらいいなぁ。
    (まずはこのムダムダな長文をどうにかするところから……はふぅー。)

    • takanatsuさん
      九月猫さん、こんにちは。
      この本とても気になっていました。
      「本に触れると、その本を読んだ人の思いを読み取れる、というもの。」
      おぉ!すごい...
      九月猫さん、こんにちは。
      この本とても気になっていました。
      「本に触れると、その本を読んだ人の思いを読み取れる、というもの。」
      おぉ!すごい!と思いましたが、活躍はしないんですね(笑)
      どんな風に使われているのか気になります。
      図書館とか、図書室とかタイトルに入っている本を見ると吸い寄せられてしまうのですが、「きらきらしたこどもたち(高校生ですが)」も大好き(笑)なので読むことにします!
      「(まずはこのムダムダな長文をどうにかするところから……はふぅー。) 」
      ムダムダなんてことないですよ!
      私はとても読みたくなりました。
      ありがとうございます♪
      2013/08/18
    • 九月猫さん

      takanatsuさん、こんばんは♪

      コメントありがとうございます!

      そうなんですよー、あまり活躍しないんです。主人公さんの...

      takanatsuさん、こんばんは♪

      コメントありがとうございます!

      そうなんですよー、あまり活躍しないんです。主人公さんの特殊能力。
      前半は、その特殊能力で謎を解いていくのかなーと思いきや・・・
      だんだん、それいらないかも?になってきて(^-^;)
      大人たちは半分くらいダメな人ばかりなのですけれど、
      文化祭でのブックトークの子どもたちは本当に生き生きとしていて、
      かわいいので、そこはおススメできます♪
      takanatsuさんのレビュー、すごく楽しみです(´∀`*)

      >図書館とか、図書室とかタイトルに入っている本を見ると吸い寄せられてしまう
      同じです、同じです!!
      やっぱり本好きにはたまらないキィワードですよねっ!

      >ムダムダなんてことないですよ!
      ありがとうございますー♪
      すごーくすごーくうれしいです(*´∇`*)
      2013/08/19
  • 図書館でふと目に留まり、面白そうだと借りてきた。夫の失踪により離婚して働き口を探していたところ、音楽教師になった同級生より勧められた学校司書。資格もなく初体験ながら奮闘する姿を描く。
    今は子供の本離れが深刻だし、学校の図書館も大変だろうと思う。だが、本書に出てきた学校図書館は魅力的で、こんな企画なら子供たちも興味を持つ子がいそう!と単純に思った。
    主人公の成長だけでなく、生徒たちの成長にも目を奪われるものがあり、こうやって生徒たちと共に本を通じて成長していけるなんて素敵だなと、すごく羨ましく思えた。自分も母校の図書館を思い浮かべながら、学校司書になりたい気持ちが湧いてくる。いいな~素敵だな~(実際は大変な事も多いと思いますが…)
    文中に出てきた本、読んだ事があったり子供の頃持っていたりして、それもまた気持ちを高ぶらせた。気になる本もいくつか…。これは後々読んでみたい。

  • 図書館に入ったらまず返却棚をチェックする。自分では思いもつかないようなテーマや知らない作家さんの本が並んでいる。ぱらぱらとページをめくり、感じるモノがあればジャケ借りする。

    新入荷や月替わりで設けられている特集のコーナーもチェックする。ブクログのお友達に教えてもらった本、あらすじを聞いて気になっていた本を見つけ出し、鞄に入れていく。それが済んだら、好きな作家さんの名前順に徘徊し、上限ギリギリまで本を借りてほくほく顔で帰宅する。

    これが私の図書館ルールだ。司書さんの手を煩わせるのは書庫本貸し出しのときぐらい。でも、こんな司書さんがいるならブックトークがしてみたくなった。

    3年前に行方不明になったカメラマンの夫と離婚した詩織は就職活動中。友人の紹介で学校司書になるのだが、彼女には実は不思議な能力があり、本から残留思念を感じることが出来る。

    サイコメトリーの設定は正直あまり活かせていない気がしたが、高校生らのブックトークが楽しく、読んだことのない本が多く紹介されていたのでまた借りてみよう。

  • うわー!まずい。また読みたい本が増えてしまう!良い仕事してます。この司書殿。

    離婚を機に高校の学校司書となった詩織。
    学校司書という立場のシビアさに戸惑いつつ、前任の永田さんの丁寧な仕事ぶり、図書室にやってくる生徒たちとの交流にだんだんと司書の仕事に魅せられていく。

    次から次へと出てくる本たち。
    円花蜂から寄贈された「モーフィー時計の午前零時」
    事務長が夢中で話す山田風太郎の「八犬伝」
    永田さんが何度も借りた「世界の夢の本屋さん」
    彼女がおすすめする「オカメインコに雨坊主」
    「天国はまだ遠く」
    謎の多い「小さな本の数奇な運命」

    最初は手探りだった司書の仕事が、文化祭で花開く。
    おすすめの本にキャッチコピーをつけるブックマークコンテスト。
    本を3冊紹介するブックトーク。一つの物語をみんなで語るブックテーブル。
    本に魅せられていく生徒の成長を間近でみて、詩織は自分を見つめていく。
    彼女自身にまつわる謎もだんだんと解けてきて。
    うーん、彼にはもう少し粘って欲しかったかも。続編でないかな。

    それにしても、大好きだったマガーク探偵団!
    あの挿絵込みで訳されてるのだと思ってたら、挿絵は日本のものだった。
    学研のあの漫画!荒馬宗介を描いた人なんだー。
    そう言われれば同じ絵だわ。
    マガーク探偵団にファンタジーな番外編があるとは。読んでみたい。

  • 高校の3年間、図書委員をしていました。どんな活動をしていたのかよく思い出せないけど、学校を離れて、地域の図書委員が集まっての会議のような物があって、他校の図書室を見られたのが印象に残ってます。

    縁あって、学校司書になった詩織さん。図書委員のメンバーがみんな良い子達で、ホントに素敵な図書室。こんな図書室があったら、本好きな子はもっと増えるだろうなあ………。

  • 学校司書が主人公の物語。同業者としては「あるある」満載の業務日誌のようなお話。でも共感はできない。なぜなら個人の履歴を検索するのはNGだし、他人の心に異常に執着している主人公が怖いから。物にさわるとその持ち主の気持ちが感じられる、という「能力」にも違和感がある。そういう人は遠ざけたい。

    高校生のビブリオバトルは楽しめた。それだけで1冊にしていいのでは?この作品は高校生を主人公にして、司書は脇役でいいと思う。前任者や元夫のエピソードも噂程度でいいのだ。

  • 図書室という空間、本が好きな人たちの集まり、本好きにはたまらない内容でした。

    これといった大きな事件も、深刻な謎も、ドキドキハラハラもない図書館ミステリーですが、現実のミステリーなんてこんなもの。
    どれも解決後温かい気持ちになれます。

    今いる場所が全てででない

    わたしはこの言葉が印象的。
    世界が広がる感じが好きです。

    こんなに熱心な生徒さんばっかだったら、学校司書さんもやりがい満点だろうな。
    これも、生徒に本を好きになってもらいたいという詩織さんの熱意ゆえ。こんなステキな司書さんいたら私も通いたい!

  • 学校司書の仕事も知りたいなと読み始めましたが最初の謎解きから面白かったです(*^^*)
    実際にある本が出てくるのでどんな感じの本かな?と検索しながら楽しく読みました。最後に主人公が自分の道を進んでくって決めたところにぐっときてしまいました!続編も読みたい。

  • 新米の司書さんが
    本にまつわる謎を解き、
    本を通して図書委員の学生を変えていく話

    シリーズになっていて
    他にも2冊あるようなので、
    これから読むのが楽しみです


  • キリギリスは、高良詩織。
    学生時代は旅行や合コンに明け暮れ、卒業の条件ではなかったので、教職員資格も取らずに教育学部を出た。
    夫の失踪で離婚が確定し、ライターの収入では心細い。
    学生時代の友人、コツコツとと勉学に励んで音楽教師になったアリ(?)井本つぐみは、勤務する高校で図書館司書を探している、と紹介してくれた。

    キリギリスと称された割には、詩織は勤勉で真面目に映る。
    元々本に詳しかったのと、雑誌のライターだったということもあり、司書の能力もめきめきと揚げていく。
    詩織には、物に触れる事で、そこに刻まれた思いを感じ取るという能力がある。

    学校図書館の、しんと冷えてちょっとカビ臭いようなイメージが懐かしい。
    公立図書館とはまた違った感じがします。
    一時間目、二時間目…という時間の区切りも学校ならでは。

    詩織は、学校に勤務する大人として、高校一年から三年生という狭い年齢層の来室者を相手にすることとなる。
    彼らの、読書面で、または人間面での成長を見守りながら、自分の人生、大人として、女としてのトラブルにも向き合わなくてはならない。
    表と裏の顔のようだが、裏が表に出て、図書館での活動を通して、生徒の何気ない行動が無邪気に秘密を引き出し、自分でも気付かなかった真相に辿りついたりするのだ。

    高校生たちの描かれ方が少し幼いように思えます。

    『司書室のキリギリス』
    詩織、司書の資格を持たずに「学校司書」に採用される。
    早速本を寄贈に来た、校長先生。
    寄贈者の名を「円花蜂」にしてほしいという。

    『本の町のティンカー・ベル』
    詩織にていねいな手引書を残してくれた、前任者の永田さん。
    彼女の足跡を追う。

    『小さな本のリタ・ヘイワース』
    一年生のオリエンテーション。
    図書室の説明をして、必ず一冊、本を選んで借りてもらう事。
    そこから、謎と縁が生まれる。
    よその高校の蔵書印のある本、見たかった写真が載っていない本。

    『読書会のブックマーカー』
    図書委員の有志による読書会。
    星野道夫の「旅をする木」の中から「十六歳のとき」
    詩織が大隈君に貸した本の中にはさんであった鳥の羽。

    『図書室のバトンリレー』
    スガシカオの「1095」
    三年間という日数。
    高校の三年間。
    失踪人との離婚が認められるのも三年間。
    意外なところから夫の消息を知る。

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