蛇行する月

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著者 : 桜木紫乃
  • 双葉社 (2013年10月16日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238358

蛇行する月の感想・レビュー・書評

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  • 道立湿原高校を卒業した図書部の仲間たち。
    その中の一人、順子は親ほどの歳の男性と駆け落ちをし、釧路を出ていく。
    順子を取り巻く六人の女性たちの目線から綴った連作短編集。
    生きることに必死で過去も未来も考える暇もない順子。
    捨てた故郷には帰れるはずもなく。
    それでも彼女は「幸せ」だと言い切る。
    そんな彼女がいったいどう彼らに映っているのか。
    そして自分の幸せはどこにあるのか。

    桜木さん、最新作。いや~、よかった。まさに新境地。
    「ホテルローヤル」で自身のトラウマである過去を昇華しきったのか、この作品には性愛がほとんど描かれていない。
    彼女の作品特有の女のどろどろした部分を極力抑えて、逆に女同士の絆の強さが前面に出ている。

    六人の女性それぞれが過去に囚われて生きている。
    その中でもがきながらも自分の幸せを探していく。
    幸せに規範なんてない。他人と比べても詮無いこと。
    彼女たちの真摯な姿に心を打たれる。
    そんな中、一人だけ自分の幸せを疑うことなく「今」をがむしゃらに生きる順子。
    みずからは語ることのない順子だが、六人の女性を通して対比的に順子を描く構成は見事。

    「ホテルローヤル」でがっかりした人、多分いるんじゃないだろうか。
    それだけが桜木さんじゃありません。
    本書も是非ご一読を!

  • 桜木紫乃さんの本は3冊目ですが、この本が一番好みです。

    北海道・湿原高校の図書部に所属していた清美・桃子・美菜絵・直子、順子の5人。
    この5人と周りの人達との関わりを描いた6編の連作短編
    卒業後に彼女達5人が歩んだ道は全く違う。
    その時々に必死で選んだ道。

    その道で良かったの?と問うたら声を揃えて返事が帰ってきそう。
    "もちろん!"って。
    ラストの2編は特に良くて涙が……

  • 始めての桜木作品でしたが、さすが直木賞作家という感じの作品でした。
    25年という時間の流れの中で、幸せとは何かを問いながら人生の岐路に立つ6人の女性の繋がりを描いた作品。
    幸せの意味を問いかけ、人生の儚さを感じつつも女性の生きる強さを感じさせる、構成も良い作品だと思いました。

  • こういう流れの短編はすごく好きだし、この作品は面白かった。それぞれの幸せの形があり、他の人には見えない幸福が有るんだなと感じた。とても幸せには思えないのに。

  • 6人の女性についての短編集。同じ高校の部活仲間4人の卒業後と関係者、とでも言っておこう。
    桜木作品には市井の人のぞっとする日常を描いていて、普通の人って括りはありえない。

  • 人生の岐路に立つ六人の女の運命を変えたのは、ひとりの女の“幸せ”だった。

    桜木柴乃さん『ラブレス』で泣かされて
    2冊目でしたが、『蛇行する月』も好きだなぁ。

    『順子、幸せなんだね。』
    『もちろん』

  • 順子の存在がまぶしい
    周囲の人々にとって月の光のよう
    暗闇に隠れているけど
    ほんのり照らす道しるべ
    明るくはない
    でも輝く星には変わりない
    貧しく病魔に侵されてもなお
    幸せと言い切れるその姿
    胸を打ちました

  • 勤め先の20歳も年上の男性と駆け落ちした順子。彼女と過去に関わった6人の女性が、それぞれの悩みや孤独を抱えながら、現在の順子の生き様を知ることで自分の幸せについて考える短編小説。

    短編がひとつすすむごとに時代が数年後にうつり、6人の女性の目線を通じて順子の物語がどう進んでいるのかがわかる。
    順子が主人公になった、順子目線の短編がないところがおもしろいなと思いました。

    駆け落ち後の順子はお世辞にも順風満帆な人生とはいえない。6人の女性たちはそれぞれの立場から、順子の暮らしぶりを評価する。
    自分より下、自業自得、みすぼらしい、みじめな生活ー
    そうした最初の思いは、順子の話を聞くうちに、自分の人生と照らし合わされ、なぜか羨望だったり優しいまなざしに変わってゆく。

    それは順子がまっすぐで、自分を幸せだと強く感じ続けているからなのか。
    しかし最後の章、順子の運命はあんまりで泣けました。

    『ホテルローヤル』は正直おもしろいと思えなかったのですが、これはよかったです。
    読んでてつらくもどかしいところもありましたが、前を向こうという気持ちにさせてくれました。

  • お金があるとか身なりがいいとかそんな表面的なものと幸せとはイコールではない。
    自分自身が幸せだと思えるかどうかが重要。
    自分だけの幸せを見つけられればいいんだわ〜。
    毎日楽しい、笑って暮らせている、そんなあたしは幸せだ。

  • やっぱり巧いと唸った。ホテルローヤルのみ未読だが、ほぼすべての著作が極めて限定された地域を舞台にし、設定も特殊ではない(逆に言うとそう代わり映えしない)のに、小説というツールを使って読み手に何かを感じさせる圧倒的な力が著者にはある。
    本作は、6人の女性を異なる時間軸の中で描いた連作短編。中心となるのは親より年上の男性と駆け落ちした順子。ただし順子の目線から描かれた物語はなく、他の女性たちの目と心情を通して順子の人生が浮かび上がってくる。
    著者の作品を読むといつも、一点の曇りもない(とまでいかなくとも、せめてそう暗いところのない)幸せなどというものはあり得ないのかという気持ちになる。ここまで辛くなくてもいいんじゃないか、と。本作も同様で、皆が悩み苦しんでいる。けれど同時に、それでも生きる女性を描くことが著者のテーマであるとも思う。例えば、人の親であれば成熟した人格を持っているべきだ、少なくともそうあろうと努力しているはずだ、という常識あるいは期待を覆す在り方をする人間を単に"悪"とは捉えず、そのように生きる者がある、とだけ描く。その視線があるからこそ私は桜木作品を読み続けているのだと思う。

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