奇跡の人 The Miracle Worker

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著者 : 原田マハ
  • 双葉社 (2014年10月21日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238792

奇跡の人 The Miracle Workerの感想・レビュー・書評

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  • 幼い頃読んで、感銘を受けた伝記を
    (もう一度、読み返したいなぁ)
    と、常に思ってはいるのだが。

    いつもなんとなく後回し。
    つい、どんどん増えてく積読本ばかりを手にとる私に、
    原田さんがとても良い機会をくれた。

    大好きだったヘレンケラーの伝記。
    人物や背景などは変えているが
    (設定は日本。しかもわが故郷青森に♪)
    他は何も変わらない。

    ただ、
    それまで闇の中を生きてきた三重苦の<れん>を指導し、
    未来へ続く長い道程を
    輝く光で照らした<あん先生>との物語は、原田さんの2人に対する愛が満ち溢れており、
    言葉、という世界と繋がるツールの他に…
    あたたかい光がもうひとつ。

    今、ふと思ったのだが、
    物語を読んでいた私が
    この目で捉えていたのは
    活字が並んだただの白い紙面。

    そして心が捉えているのは
    魂を揺さぶる
    津軽三味線の力強い音色と
    透き通る歌声。
    そして
    共に涙を浮かべ、嬉しそうに微笑んでいる
    彼女らの表情。

    目に見える事だけが全てじゃないのかな?
    なんて、
    どこかの星で誰かが言っていた様な…(^^;

  • 【奇跡の人】の紹介文に書かれていたのは
    <盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女が青森の弘前にいるという。
    明治二十年、教育係として招かれた去場安は、その少女、介良れんに出会った――。
    大きな苦難を背負った少女と、人間の可能性を信じて彼女の教育に献身する女教師が、奇跡を起こす。>

    ヘレン・ケラーを思い起こさせる紹介文。
    三重苦の娘の名は介良れん(けられん)
    教師の名は去場安(さりばあん)
    ヘレンン・ケラー、アン・サリバン…
    ここから名前は来ているんだろうなぁ…と想像する。

    ヘレン・ケラーの伝記は子どもの頃、夢中になって読んだ記憶がある。
    【奇跡の人】を読みながら、ヘレンン・ケラーを想起させられるけれど、それでも胸がつまるほどの思いが…

    【奇跡の人】には狼野キワという盲目の女性が登場する。
    狼野キワを通し、この時代に生きることが難しかったであろうことを思い知らされた。

    もう一つ、考えさせられたのが「重要無形文化財」のこと。
    「人間国宝」と言われる方がピンとくる。
    生まれた時からこの制度が存在しているので、何ら疑問に思ったことはなかったが…
    本の中には
    <戦後、この国の何もかもが欧米化されていくのを懸念した一部の国会議員や有識者のあいだで、日本特有の伝統文化を守り続けるという観点から、日本各地に伝承される「かたちなき」芸術も保護するべきではないかという議論が高まった>

    最近、日本ってすごい国だ!と感じることが度々ある。
    今更ながら、だけど(笑)
    日本の伝統芸能に、もっともっと触れたくなった。

  • 冒頭───
     その町のいっさいの色を奪って、雪が降っていた。
     一両きりのディーゼルカーの箱から降り立った場所は、駅のホームに違いなかっただろう。けれど、革靴の底が踏んだのは、コンクリートではなく、経験したこともない深い雪だった。ホームはすっかり雪に覆い尽くされて、周囲には雪の壁ができている。小さな駅舎にたどり着くまでのわずか数メートルの間、柴田雅晴は、何度も転びそうになって足を踏ん張るはめになった。
    「だめだなあ、柴田さん。長靴を履いてきたほうがいいって、あれほど言ったじゃないですか。格好をつけて、革靴で来るんだもの。霞が関への通勤とは、わけが違うんですよ」
     慣れた足取りで一足先に金木駅舎に入った小野村寿夫は、得意そうに足踏みをし、ゴム長靴のかかとをきゅっきゅっといわせた。柴田は、参った参った、と苦笑しながら、英国製のウールのコートに降り積もった雪をはたいて落とした。
    ──────

    ヘレン・ケラーの伝記は、おそらく日本中の多くの子供が読んだことのある物語だろう。
    僕も子供の頃、間違いなく読んだはずだ。
    だけれど、それほど深くは内容を覚えていない。
    眼が見えず、耳が聞こえず、口がきけない三重苦の少女をサリバン先生がどんな方法で立ち直らせたのか、その細かなところの記憶がない。
    読み終えた後は感動したような気もするが、それも定かではない。
    この作品は、それを日本風に置き換えて、小説として完成させたものだ。
    少女の家庭教師としてやって来たアメリカ帰りの去場安(サリバン)。
    三重苦を背負った少女、介良れん(ヘレン・ケラー)。
    この二人の闘いの物語だ。
    これを読んで、あらためて“奇跡の人”の素晴らしさを思い起こすことができた。
    けものの子として扱われていた少女を、必死の思いでまともな未来のある人間に育てようとする安先生。
    そこには、幾度も挫折しそうになりながらも決してくじけることのない安の断固とした固い決意と意志があった。
    “彼女だって人間なのだから”という信念のもとに。
    安の固い信念が、れんに人間らしい心を植え付け、変化をもたらしていく。
    人としての習慣を身に付け、表現する方法を覚え、言葉という概念を理解し、一歩ずつ成長していくれん。
    苦難の壁に何度も跳ね返されながら、そこに至るまでひたすら立ち向かう安とれんの姿に、読みながら、何度も何度も涙が零れた。

    そんなれんに初めての友だちができる。
    盲目の旅芸人一団で三味線を弾く少女キワ。
    その唯一の友だちとの出会い、そして別れ。
    出会えたときはどれほどうれしく、別れるときはどんなに切なかったことだろう。
    ここでも涙があふれ出た。

    最後の最後まで、一文字たりとも疎かに読むのを許されないような、そんな緊張感にあふれた感動作。
    原田マハさんの素晴らしさをあらためて感じることのできる傑作です。

    かつて「ヘレン・ケラー物語」を読んだことのある人も、読んでいない人も、人間であるならこの作品は心に響いてくるはず。
    今年一番のお薦め作品です。

    それにしても、時代も環境も劇的に変わってしまい難しいのだろうが、今この時代にサリバン先生のような本当の情熱を持った教師がたくさんいれば、世の中も良い方向に変わっていくのだろうな、とふと思った。

  • 原田マハ版「ヘレン=ケラー」。

    目が見えず、耳が聞こえず、口がきけない、三重苦の少女と、教育係としてやってきた先生との交流と云うかむしろ、闘いの日々を描いています。
    名前がもう、去場安(さりば あん)に、介良(けら)れん、ですから。

    安が、当時ではとても珍しい帰国子女ということ、女子教育が全く理解されない日本社会での困惑と失望、彼女自身も弱視ということ。
    同じく盲目の旅芸人「ボサマ」で、天才的な三味線を弾く少女。
    れんの家族や女中の関係性。
    などなど、物語には日本ならではの奥行きがあります。
    東北の遅い春の風景が、行ったことないけど感じられるようでした。

    子ども相手に日々イライラしてしまう自分を顧みて、もっと人としての可能性を信じて諦めず向き合わないとね...と思った次第であります。

  • 手短に!、、。今年の代名詞"妖怪~"的に言えば、古典・レジェンドなる…安とれんの絆。そしてプリチーな宝なる…キワの煌めき。年内に読めて良かった!、ぐいぐい引きこまれた!!、、三人の"奇跡の人"が織り成す感涙のファンタジー♪。

  • 時は明治。北海道を舞台にした、原田マハ版・ヘレンケラーの物語。

    登場人物は著者らしい遊び心を感じる名前。去場安(さりばあん=サリバン先生)、介良れん(けられん=ヘレンケラー)。

    何も聞こえない無音の闇の中に、閉じ込められるようにして育ったれん。その彼女の固く閉ざされた扉を開けた、安。
    自分を信じ、何より一人の少女の可能性を信じ、そこに希望を見出した。
    めげそうになっても根気強くれんと向き合い、彼女の魂に寄り添おうとする。
    そんな安に尊敬の念を抱かずにはいられない。
    聡明で機転が利いて(ウグイス作戦はさすがの一言)、信念を曲げる事のない、安の強さに感服。

    三重苦を持って生まれた当の本人の苦労は計り知れないけど、その彼女を「けものの子」から「人間」へと引っ張りあげる為に血のにじむような努力を重ねた安は、どんなに大変だったか。
    へレンケラーの物語といえば、彼女自身ばかりクローズアップされるけど、彼女が一人の女性として自立し生きていく事が出来たのは、サリバン先生の尽力があってこそ。

    ただ二人の半生を語るにはページ数が少ないし、キワの存在が物語の軸をぶれさせてる気がするのが少し残念。

    遠い昔にヘレンケラーの物語を読んだきりで、実際の二人にどれだけ忠実なのかはわからないけど(とはいえ期待していた「water」の名場面もちゃんと再現)。
    本当に凄い人達だと思う。安やれんをはじめ、サリバン先生とへレンケラーにも敬意。

    「ひとつひとつに、名前がある。
    それらのものを、かたちづくりたもうたのは、神だ。そして、名前を与えたのは、人間なのだ。
    私は、そんなあたりまえのことを―あたりまえの奇跡を、教えたい。
    れん。あなたに。」

  • 誰もが子どもの頃に一度は読んだことのある伝記を日本に置き換えて語りなおした「奇跡の人」
    時代や背景が変わっても、「言葉」という概念を人が手に入れる瞬間の感動は一ミリも変わらない。
    何も見えない何も聞こえない暗闇の中で生きてきた「ヒト以前の生き物」が言葉を手に入れ「人」になる、それを感動という言葉でしか語れない自分の薄さを思う。
    自分の子供が、初めて意味のある言葉を発した瞬間のあの全身を貫くほどの喜びを思い出した。

  • ヘレンケラーとサリバン先生の日本版。無形文化財云々のくだりは必要だったのかなぁとは思うが、キワちゃんが生き延びていて、その才能を正しく評価される日が来たことを読めたのはとても良かった。
    この本に出てくる主要登場人物の女性たちは皆視覚障害などの肉体的な問題を抱えていて、苦しい人生を歩んでいるけれど、心は高潔で優しくて、感動する。
    2017年の最後に読んだ本がこの本で良かったと思った。

  • 内容はタイトルから想像できるが、想像以上の内容。絶望的な状況でも希望を捨てず、進み続ける安を応援しながら読んだ。感動のラスト。もっと書いて欲しかった。後半の展開が飛びすぎて、もっと描けばもっとラストが光るのでは。

  • 舞台は明治時代の青森県弘前。裕福な家庭に生まれながら1歳に満たないころに患った病気のせいで全盲、聴覚障害という思い障害を負い、しゃべることもできなくなった少女れん。そんな彼女のもとに幼少の頃からアメリカに留学していた経験を持つ安(あん)が教師として招かれ、少女の可能性を開花させようと苦難の道を歩んでいく……

    この小説を読んでいると、人目に触れないように閉じ込めておく「座敷牢」なんて嫌な言葉が出てくるほど当時は障害者の人権なんてなかったんだなと。今でも福祉先進国に比べればまだまだ人権意識は低いのでしょうが。

    れんのことを思いすぎて周りが見えなくなる姿に鬱陶しさを感じることもありましたが、自身も弱視というハンデを抱えながら「人間は、弱みを強みにすることができる」と信じて最後まで諦めなかった安先生に拍手です。

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奇跡の人 The Miracle Workerの作品紹介

盲目で、耳が聞こえず、口も利けない少女が青森の弘前にいるという。
明治二十年、教育係として招かれた去場安は、その少女、介良れんに出会った――。
大きな苦難を背負った少女と、人間の可能性を信じて彼女の教育に献身する女教師が、奇跡を起こす。
『楽園のカンヴァス』で山本周五郎賞を受賞した著者による感動作!

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