真壁家の相続

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (312ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575238921

感想・レビュー・書評

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  • 大学生の真壁りんの祖父・麟太郎が突然亡くなった。
    急いで葬儀会場へ向かい真壁家の一族が集まったところで、
    一人の青年が現れる。
    彼・植木大介が「隠し子」と名乗ったことを皮切りに、
    相続の話し合いは揉めに揉める事にー。


    祖父・真壁麟太郎の突然の死去。
    孫のりんは法学部の大学生という事で、遺産相続の手続きを任される事になる。
    財産と呼べるものは、大した価値のない土地と古びた家。
    資産価値はわずか1,200万。
    真壁家の結束は強く、皆善い人だから揉める事等無い!と言うりんに
    大介は「相続は金額じゃない。そんな単純なことじゃない」と言う…。
    大介の言葉通り、話し合いは揉めに揉め
    粗探しと、それぞれの自己主張…。
    それぞれが胸に抱えてた密かな思いや言ってはいけない言葉を投げ付けあい。
    真壁家は崩壊寸前まで行く。

    当たり前の家族が、善き人々だった思いやりのある人たちが、、
    これ程までになってゆくのか…。
    わずかな金額ゆえに、どこか滑稽だけど、
    人の本性をリアルに抉り出していて読んでて本当に辛かった。

    家族って脆いなぁ…。
    家族の思い出が濃密であればあるほど、話し合いはこじれ、
    家族の形を保つのが難しくなるのかなぁ。
    ほんの数百万円の事で、失っていいのだろうか…。
    私だったら、そんなの嫌だ!
    そう考える私は、甘・甘なのだろうか…(p・Д・;)アセアセ

    りんの母・容子が、実の子供が何もしないのに一人で麟太郎の
    介護を2年間も続けていたのに、何も受け取れない。
    そして、受け取ろうともしない事にそれって酷い!って思ってた。
    もどかしい思いをしていたけれど、うわぁそういう事だったのねと、
    ニマッとしてしまった。

    遺産相続を巡る骨肉の争い
    耳にはするが、どこか他人事って感じてた。
    それが、わずか1,200万円位の土地と家でここまで、揉めちゃうのか…。
    読んでて苦しかった。怖かった。
    心を痛め、ハラハラした後の見事な結末。
    ラストは、とっても良かったです。
    真壁家崩壊しなくって本当に良かった。
    家族ってやっぱり、良いなぁ。

  • どこの家にでも起こりそうな遺産相続問題。どんなに仲良い一族でもお金が絡むとこういうことになるんだと考えさせられる話でした。

  • 真壁家のおじいちゃんが亡くなった。残された一件の家の相続を巡って、仲良くやっていたはずの一族が崩壊寸前の様相を呈する?

    面白かったです。
    お金持ちの莫大な遺産を巡って、というのはありがちな話。
    でも、ごく普通の家族の、ごく普通の遺産相続での話、かなりリアルで、興味深かったです。
    こんな親戚いるな、とか、こういうことありそう、とか、思い当たる節がたくさんあって、苦笑いする場面が何度もありました。

    容子さんの立場が、途中痛々しくて、見てられないようでしたが、最後に用意されていた展開に、なるほどね、と妙に納得。
    これからもいいお嫁さんでいられるってもんです。

    連ドラでも見てるような感じ。めでたしめでたしでした。

  • 家族の中のお父さんが亡くなり、4人の子供とその家族が相続について向き合うお話。
    どんなに大人になっていても親が生きているときの家族の最終決定は親がしていてくれたのに、その人がいなくなって決めなければならない最初の仕事が相続。

    一番印象的だったのは「話し合いに他人が入ると揉める」と言ったような言葉。
    両親と子供という家族構成もやがては子供が結婚して新しい家族を形成する。
    そこには嫁もしくは旦那という家族とも他人とも取れる人が存在する。
    その家族以外の常識や視点が入ってくるとより複雑になるものだということを実感した。
    また、兄弟の中で誰が一番親に貢献したか、誰が一番金銭的、精神的に面倒をかけたのかが数字で評価される。

    相続で揉めないように遺言を書きましょうなんて言われているけど、それにはどのくらいの意味があるのか考えさせらた。

  • 著者初読み。構成が凄いですね。途中読んでて辛くて醜いシーンもありましたが、良くできた推理モノみたい。相続と家族、家族なのに大きくなると別の自分の家族があって、兄弟姉妹だけで、とはならないものなんですね。知らない相続の制度も勉強になりました。みんな「自分のところだけは大丈夫」って、つい思ってしまいますけど。相続に当事者以外が絡むと厄介、これはそうかもしれません。

  • .

  •  遺産相続を巡る人間模様を描く。
     8章からなり、物語は、相続人の1人、渓二郎の娘・りんの視点で描かれる。

          * * * * *

     相続が絡むと血縁関係にもひびが入る。よく言われることです。平等に分ければ済むものなのに、なぜ揉めるのか? その理由がよくわかる構成になっていました。

    ・ 取り分を多くしたいという利己主義
    ・ 相続人以外の人間の(欲得ずくの)介入
    ・ 故人の気持ちを汲もうとしない不人情

     そして、陽一郎のような強い劣等感や、風子のような享楽至上主義が、話をこじれさせることもよくわかりました。こういう人間とは、親族であっても縁を切るべきだと思いました。( りんは縁を大切にしたそうだったけれど甘すぎると思います。それよりは容子のつかず離れずのスタンスの方を見習いたい。)

     本作は、植田大介という、正体不明の人物が序盤から登場することによってミステリータッチで進んでいきます。そのおかげで、前半は読み進めるモチベーションにつながりました。( 結局、真壁家とは血縁がないのがわかって少しがっかりはした。)

     また、故人の介護に尽力しても相続の蚊帳の外に置かれる現行法への問題提起になった点でも、彼はキーパーソンとなっていました。
     キャラクター設定として優れていたと思います。

     苦手なイヤミス構成ではありましたが、いちばん賢く立ち回ったのが容子だったことが明かされるラストのおかげで、最後まで読んでよかったと思えました。優れた〆だと思います。
     ただ欲を言えば、容子とりんはやがて千歳にいる渓二郎のもとに身を寄せ、地道に幸せに生きていくというオチにして欲しかった。

  • (母は)こつこつ積み立ててきた家族の堅実な将来を、「人間本来の生き方」などというふわふわしたもののために手放すはずがない。通帳は父に全部渡してしまい、学資保険は生活のために解約してしまい、それでも、母はあきらめずに、将来を積み立て続けた。

    <母の献身はなかったことになってしまった。マンションの売却が決まり、祖父や祖母は相続分の金額を満足げに眺めていた。祖母のために、彼らは自分のどんな生活も変えなかった>

    家族の間に弁護士を入れるなんてあってはならないことだと。(入れるなら)絶縁を覚悟して挑んだほうがいいらしい。家庭内の働きを強化するということが、これほど難しいことだとは思わなかった。

    「うちのやつもそうしたがってるって。父さんは言ったらしい。叔母さんはそれを都合よく解釈して、お母さんが進んで介護をしたかのようにとってるだけなんだ。」
    「うちのやつもそうしたがってるって、そう、あの人そんなこと言ったの」

    祖父が生きていた頃から、終わりははじまっていたのかもしれない。親子だけで過ごす年月は終わり、他人が交ざり、守るべきものが他にできる。交わす言葉の端々に、遠慮や、気遣いや、妥協や、嘘や、秘密が生まれる。親戚同士が集まるとわく、賑やかで温かな空気は、大人たちの少しずつの我慢の上に成り立っていたのだ。

    何かないだろうか。相手に強要するんじゃなく、自然と行動を変えさせる方法。母がいつもやっているような解決法があるはずだ。

    「でもよく考えて、いい考えかもしれないと思ったの。お金をもらえるって思ったら、こっちも手を抜かないでしょう。どうして私だけって恨みに思ったりもしなくていい。ビジネスライクにやれる。それに生命保険だったら」生命保険は相続財産に含まれない。請求手続きができるのは受取人だけで、相続人に知られず、手続きをすませることができる。

  • 確かに、相続の話は当事者だけの方がスムーズに行きそう。配偶者や周りに相談するといらぬ知恵がついてそう。怖い怖い。

  • 相続 うん。うん。
    小説だぁ。〆もあり。すごいなぁ。

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著者プロフィール

東京都中野区生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。2009年、『マタタビ潔子の猫魂』(「ゴボウ潔子の猫魂」を改題)でメディアファクトリーが主催する第4回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞し、作家デビュー。13年、『駅物語』が大ヒットに。15年、『海に降る』が連続ドラマ化された。現代の働く女性、子育て中の女性たちの支持をうける。主な作品に『賢者の石、売ります』『超聴覚者 七川小春 真実への潜入』『真壁家の相続』『わたし、定時で帰ります。』など。

「2022年 『くらやみガールズトーク』 で使われていた紹介文から引用しています。」

朱野帰子の作品

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