ジャッジメント

著者 :
  • 双葉社
3.45
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感想 : 168
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  • Amazon.co.jp ・本 (272ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575239706

作品紹介・あらすじ

大切な人を殺された者は言う。「復讐してやりたい」と。凶悪な事件が起きると人は言う。「同じ目にあわせてやりたい」と。犯罪が増加する一方の日本で、新しい法律が生まれた。目には目を歯には歯を-。この法律は果たして被害者とその家族を救えるのだろうか!?第33回小説推理新人賞受賞。大型新人が世に問う、衝撃のデビュー作!!

感想・レビュー・書評

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  • 「復讐法」が可決され犯罪抑止となるか?
    20XX年の架空の設定ではありますが何ともリアルなストーリーであります(*_*)
    読むのが辛い…
    アリかナシか…
    自分ならどうするか…

    5人の被害者とそれぞれの加害者達
    執行を見届ける「応報監察官」鳥谷文乃
    復讐を執行する「応報執行者」達

    文乃は立ち会う毎に悩み、疲弊していきますが読んでるわたしも疲弊します。゚(゚´Д`゚)゚。

    ラストの執行者は10歳の少年
    タイトルになっている「ジャッジメント」
    ネグレクトと虐待の末殺された妹の復讐として、母親と内縁の夫を殺す事ができるのか…

    答えの出ない問題を抱えて読み終えました。
    小林由香さんはこれで2作品目
    このジャッジメントがデビュー作との事で、なかなか興味深い設定ではありました。

    この作家さんちょっと辛い作品が多いのかな?
    もう少し他の作品も読んでみようと思います。


  • 「復讐法」犯罪者に合法的に刑罰執行。思い悩みながら復讐する人々と見守る執行官。
    「ジャッジメント」一番良い。十歳の少年が母と男を裁く。妹を思う兄の気持ちは切ない。

  • 凶悪な犯罪が増加する日本で、治安の維持と公平性を重視した新しい法律が生まれた。それが「復讐法」だ。
    応報監察官、鳥谷と復讐法を選んだ遺族の5つの短編集。
    父親と喧嘩して飛び出した息子が、未成年の少年らによって壮絶なリンチの末に殺害される、サイレン。
    宗教にはまった祖母に、災いを呼ぶ子と忌み嫌われ虐待をうける孫娘の、ボーダー。
    心神喪失と偽り、無差別に通り魔に刺された、母親と、大学生の弟、婚約者のアンカー。
    予言者と崇められた女が予言によって殺されるかも知れないと孫を庇い、同級生の少年を殺す、フェイク。
    内縁の父親と、実の母親に、激しい暴力と育児放棄され、ゴミ袋にいれられたまま餓死した妹の為に復讐法を選択した10歳の兄のジャッジメント。

    殺害された方法で、刑を執行できる復讐法。
    読むまでは、自分も同じ立場なら必ずや復讐法を選択するだろうと思っていたが・・・・どんな罰を与えようが、大切な人の命はもう戻らない。
    同じ方法で刑を執行して犯人を殺害した時に、もう自分は自分を保てないと思った。
    しかしやっぱり殺したい程憎むであろう・・もう、読み終えた時にはグッタリしてしまった。

    かなり難しいテーマの内容なのに、デビュー作と知り驚いた。他の作品もぜひ読みたい。

    皆さんなら、大切な人が殺された時に、「復讐法」を選びますか?

  • 読み終わってスッキリするものではなかったです。

    犯罪者から受けた被害内容と同じことを合法的に刑罰として執行できる『復讐法』。
    被害者の身内としては同じ目に合わせてやりたいという憤りを感じるのは想像できるけれど、その後は…どうなるのかなと思いました。
    犯罪者と同じ人間になってしまったと後悔するのか、それとも仇をとったとスッキリするのか…。
    そんなどちらかで区切れるものではない、そのあとも色々なもので苦しまなくてはならない。

    今実現するとしたら、何を選ぶのか。
    選んだとして、自分で納得したはずなのに周りの安全な立場にいる人たちからの攻撃もあって安心できる場所にいられない。
    何の救いもない話だなと思いました。

  • 大切な人を殺された者が、加害者に同じ目にあわせる「復讐法」
    被害者家族からみたら、それはいい法律だ。と安易に思って読み進めたが…
    それに立ち合う監察官や監視官はたまらない。合法の殺人、死刑の立ち合いも精神的にキツイのに、復讐法は「同じように殺す」状況を受刑者の命がなくなるまで見届けなくてはならない。
    そもそも復讐を遂げる執行者も復讐したことに満足するとは限らないのだ。

    すごく重いテーマなのにサラサラ読ませてしまう小林由香さんはすごいと思った。

  • 復讐法という設定が面白かったです。
    復讐する=執行者も殺人者になるというところに、登場人物たちの葛藤と重みを感じます。
    復讐を見守る立場の文乃が主人公となり、客観的に一つ一つの事例を捉える一方、彼女自身の精神面の辛さも伝わってきます。
    こういう法律が一度制定されると、作中にあるように賛否が出て色々な決断をする人がいるのでしょうが、実際にどう法と向き合うかを決めるのはなかなか難しいだろうなと思います。
    虐待や信仰等、それぞれの短編の事件に考えさせられる背景があるので、長編でも読んでみたいと思いました。
    特に2編目の「ボーダー」はもっと深掘りして読んでみたいです。

  • 未来で殺人犯に新しい法律が出来たと言う設定で復讐法なる、被害者と同じ目に合わせる死刑、何と言うすごい発想のお話なんだろうと驚きを隠せませんでした。自分がこの立場になった時、その復讐法を実行するかどうかと言う気持ちで読んでしまいました。本当にこの法律が出来た時のことを考えるとぞっとしてしまいます。それほどこのお話はリアルで想像を絶すると言わざるを得ません。表題作『ジャッジメント』のラストは感動的でした。

  • 重い、重い、重すぎるよ!!「目には目を歯には歯を」被害者の関係者は加害者にそれと同じ目にあわせられる、復讐法。斬新な切り口でした。この本で少し違和感?を感じたのは懲役数年の比較的重くない刑でも復讐法が適用され(=殺してOK)、復讐法の方が刑は重い点かな。この法律が施行されたら、犯罪が抑止的に働くでしょうね。気を付けないといけないのは、私のような心清らかな人間には心臓に悪い。できないよ!絶対できない、合法だと知っていて、相手を嬲り殺すこと。この作家さん、注目していきたい。もう一度、斬新でした!!

  • 読書備忘録706号。
    ★★★★。

    小林由香さんを読むシリーズの最後。デビュー作にたどり着きました。
    テーマが衝撃的ですね。この作品以降続く、救われない被害者の苦しみ、微かに見える救いを描き続ける作者の原点と思います。

    「復讐法」
    20XX年に制定された法律。
    凶悪犯罪が増え続ける日本において、これに歯止めを掛ける為に、やられたらやりかえしても良い、ということが合法となった。
    犯罪者はこれまでの旧法で裁かれる。いわゆる懲役刑など。それに加えて、被害者遺族が加害者に対して、被害者が受けた内容と同じことを執行できるオプションが付く。被害者遺族は、旧法による裁きか、自らが執行する復讐かを選べる訳です。

    作品は、復讐を選んだ被害者遺族の刑罰執行に同席し観察する"応報監察官"鳥谷文乃を主人公に、復讐法執行の5つの短編から構成されます。

    【サイレン】
    応報執行者は、息子を札付きの未成年達に壮絶なリンチの末殺された父親。
    執行される施設の外で息子を許してくれと土下座する加害者の母親。息子がリンチされるきっかけを作ったのは父子喧嘩であり、一切息子のことを構って来なかったことに苦しむ父親・・・。
    【ボーダー】
    応報執行者は加害者の母。娘を執行しようというのだ。娘は祖母を殺した(応報執行者にとって母親)。最愛の母親を殺された母は、自分の娘に同じ思いをさせて復讐すると。しかし、娘にとって祖母はいかがわしい宗教団体にはまり、自分の大切な家族を壊した悪魔であった・・・。
    【アンカー】
    通り魔殺人に最愛の家族或いは婚約者を殺された被害者3人が応報執行者3人。3人の気持ちは纏まるのか・・・?
    【フェイク】
    霊能者の女性に息子をビルの屋上から突き落とされた母親が応報執行者。霊能者はなぜ女性の息子を突き落としたのか?霊能力に裏に秘められたふざけるな的事実・・・。
    【ジャッジメント】
    妹を、内縁の父親と実の母親に、暴力と育児放棄により餓死させられた少年が応報執行者。執行方法は餓死。骨と皮だけになっていく両親。しかし、少年も消耗していった。少年の抱える後悔は・・・。

    巻末を見ると、実は最終話のジャッジメントが初出。
    単行本としては時系列。作者は初めからすべての構想を練っていたのでは思わせる。
    ジャッジメントが重すぎる。頻繁にニュースになる育児放棄による幼い子供たちの死。この問題の深刻さを見抜き2011年に小説にしていた作者は苦しんでいたと思われます。

    小林由香さんはこれにてひと段落ですが、新作が出れば苦しみながら読みたいと思います。

  • もしも、この世の中に復讐法が存在したら・・・
    自分だったら、通常の刑の執行と、自分で手を下す復讐法、どちらを選ぶだろうか?
    そんな苦悩と闘う人たちを描く連作短編集。終始、淡々と語られており、強く感情移入をするようなこともないが、それぞれの人たちの苦悩が手に取るように分かる。これがデビュー作とは思えない作品。普段、本を読まない人にも読んで欲しい1冊。

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著者プロフィール

1976年長野県生まれ。11年「ジャッジメント」で第33回小説推理新人賞を受賞。2016年、同作で単行本デビュー。他の著書に『罪人が祈るとき』『救いの森』がある。

「2020年 『イノセンス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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