- Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
- / ISBN・EAN: 9784575240528
感想・レビュー・書評
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ごく普通の大学生、菫(すみれ)が入ったサークルの飲み会で、酔って介抱してあげた光晴君。家まで歩いて帰るくだりがなかなかユニーク、暗渠(あんきょ)をめぐって歩いて送ると言う彼の誘い何が起こるのかワクワクしながら読み始めました。そしてたった一度彼に撮られたヌード写真をネット上に流失、偶然見つける。そこからの菫の行動が興味津々、いかにして立ち直るのか?そして光春君は?「自分は地下を流れる暗渠で彼女は陽の当たる緑道だ」これがこのお話のしめくくり、ちょっと変わった今までにめぐりあえたことのない恋愛小説でした。
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ある日菫は、元彼に撮られた自分の裸の写真がネット上で拡散されていることに気づく。ネット上で自分の裸の特長を揶揄するコメント、社会の「写真を撮らせる女が悪い」という風潮に傷つくが、友人の百合と共に立ち向かう。
柚木さんの本を読んで、いろんな人の感想を見ると「嫌な気持ちになった」とか「読み返したくはならない」といった感想が必ず一つは見つかるのはなぜなんだろう。
多分、描かれる女性やそれを取り巻く世界にリアリティがあるからだと思う。
①裸を撮らせる女が悪いという世間
②女の羞恥や恐怖が最高のスパイスになるという男の欲望
この二つが私は怖いと思いました。
この小説にはこれらのことに対して、「それは違うんじゃないか」と反応する登場人物が出てきます。
☆元彼の光晴が働く塾の生徒の言葉
p.224 「みんな、お酒の席で、笑い話にしようとするじゃん。女の人にひどいことしたとか、裏切ったとか。あんなの、笑えないよ。全然おかしくないよ」
⇒これはかなり共感できました。私自身、ネタにされる側だったのでお酒の席の笑い話にされていると知った時は、菫のように「身体がバラバラ」になった感覚に陥りました。自分の身体がじぶんのものでないような。私はこんなにも苦しんでいるのにそれを堂々と話す男が信じられなかった。
☆友人 百合の言葉
p.82「あんまり言いたくないけど、日本はそういう風潮を増長させるところがあるよね。嫌がっている女の子を性的に貶めるのが堪らないっていうやつ。そういうのにぐっときちゃうのは男だから仕方ないって、開き直ってあい空気もあるよね。」
⇒ここで漫画やアニメの例が出されたのには驚きました。小さい頃にみたアニメでは無意味にヒロインの服が破れたり脱がされたりするが、男の子は許されて当然。という展開が多かったという例。
確かになぁと思いました。欧米の子供向けアニメでは見ない、日本特有のストーリー。こういうことが日本人の思想に根付いているからレイプとか写真の流出があっても「女が悪い」という意見が出てきてしまうのではないでしょうか。
だいぶ前にみたニュースですが、女子大学生が飲み会の後に男子学生の家へと向かい、そこで複数の男子学生に性的暴行を加えられたというもの。生々しい事件でよく覚えています。このニュースに関してのツイートがテレビの下の方に流れてたのかな?その辺はあんまり覚えてないけど、誰かが「女の子のほうも遊んでたから自業自得」とか「不用心だ」とかいう意見を発信していたのに、心を痛めたのを覚えています。悪さをした男達のほうが絶対に悪いのに。
菫もこういう社会の目と戦っているんだと思って、この小説を最後まで読みました。そしたら友人の百合だったり、家族のみんなが本当に強く支えて最後まで一緒に戦ってくれていた。感動しました。
百合は、菫が誰にも話せず一人で抱え込んでいる状態の時、その心の変化を見逃さず「ちゃんと話してよ」とまっすぐ問題と向き合っています。
なかなかこんな友達いないです。本当にすごい。
それと比べて写真を流出させた元彼は自分のことしか考えず、テレビか新聞かで読んだ出来事のように他人事として受け止めています。ほんとにクズ、だけど本当にこういう人はいる。この男に執着していた菫から、自分の在り方を認めることのできる菫に成長するまで、目が離せませんでした。
他人ごとじゃないなぁというストーリーだったので、かなり私の心に残った作品です。 -
リベンジポルノ被害にあった女性の懊悩と再生を描くヒューマンドラマ。
◇
28歳の井出菫はコーヒーチェーンの広報部OLだ。多忙ながら充実した日々を送っていたが、ある日ネットで自分のヌード画像を見つけてしまう。それは、かつてつき合っていた恋人が撮影したはずのものだった。
* * * * *
「暗渠」が象徴的。
道の下に隠されている川の流れ。笑顔の下に隠されている本心。どちらも見えない。
『春の小川』のように「さらさら」流れているものと思ってしまいがちです。どれほど澱んで濁っているかわからないのに……。
人を見る目を養いたい。そうでなければ流れの清濁を見極めることはできない。この作品を読んで、もっとも強く感じたことでした。
好みと相性。受容と包容。信頼と依存。
人が人と関わって生きていくかぎり、それらはついて回ります。どのように切り替え、折り合いをつけるのか。いろいろ考えさせられました。
直木賞候補となった一連の柚木作品とは傾向を異にする味わい深い作品だったと思います。 -
この前に読んだ推理小説で疲れていたので、ものすごく読みたい小説の小説だった。
人間ってなんて強いんだろう。見えない川、登場人物たちの暗部、隠れているのか、隠しているのか。誤解されながら生きていく、いい風に理解しながら見てしまう。皆んなご都合主義の中で逞しく生きている。 -
菫と光晴、緑道と暗渠になんとなく重なる。
菫が百合に、
私の裸を描いて欲しいの
と言ったところ。
意志ある裸。乗り越えていくのだと泣けた。
流出した写真に対する様々な人のそれぞれの対応が、身近に起こり得る出来事として迫ってくるようだった。 -
今までの人間関係のなかで、あの人もこういう気持ちだったのかも、と考えさせられる作品でした。
やっぱり柚木さんは、こういう作品は、うまいなぁと思わずにはいられませんでした。前作は、はまらなかったけど、今回は、見事にはまりました。 -
「冗談で」「勢いで」「恨み嫉みから」
どんな理由であれ、された方は、人生を怯えて過ごすことになる。人を信じれなくなる。
普通の感覚を取り戻すのに、時間・勇気・人の助け、、、たくさんのことが必要で、ひとつずつ1日ずつ乗り越えていく。
やった方にも色んな思いがあるのかもしれないけど、人が傷つくなら、してはいけない。 -
菫の天然の強さ。この終わり方は好き。
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2019.4.15 読了
大学のサークルの飲み会で
初めて話した 菫(すみれ)と光晴くん。
淡い恋の始まり。。。からの別れ。
ひどい仕打ち。
必死に戦う菫。
言ってしまえば そーゆー話なんですが、
ひとつひとつの描写が とてもとても
しみた。
どちらの目線もあり、
それが かえってよかった。