実録 神戸芸能社―山口組・田岡一雄三代目と戦後芸能界

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (318ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575301724

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  • 不世出の侠客と謳われた山口組三代目組長 田岡一雄にはもうひとつの顔があった。それは、現在の芸能界の基礎を作ったと言われる興業会社「神戸芸能社」の代表取締役。

    戦後復興と歩調を合わすかのように隆盛を遂げ、一時期芸能界を牛耳っていた神戸芸能社。所属タレントは美空ひばりを筆頭に、鶴田浩二・里見浩太朗・山城新伍・北島三郎・力道山・坂本九・橋幸夫・西郷輝彦…ら、枚挙にいとまなく、卓越したマネジメントぶりを求めてタレントから所属を希望してきたという。

    興行はその土地土地において、今も昔も芸能人が様々なイベントを行なう。大相撲の巡業も、興業のひとつ。本来、興業は土地や会場を一時借用して商いを行う。そのために興行主はその土地を仕切っている顔役や地回りのヤクザに筋を通すのが習わし。とはいえ、“仁義”を通したからと言って、必ずしも円滑にいくとは限らない。また、興行主だって、海千山千の山師的な輩が跋扈し、客入りが悪いと言って契約したギャラを渋る者もいる。

    そんな荒涼とした戦後の興業界をビジネスチャンスと捉えたのが田岡一雄。具体的なマネジメントとして、
    ⑴現場に先乗りする。
    ⑵悪質な興行主との間に立ち、話をつける。
    ⑶段取りを整える。
    ⑷芸能人を駅まで迎え、イベント終了まで立ち会う。
    ⑸時にはギャラを立て替えをする。

    代紋をチラつかせることで、円滑に興業が開催でき、また培った独自のノウハウをもって一興行屋から芸能プロダクションへとなり、主要都市に支社を置き、西日本エリアの興行権を得るまでの急成長を遂げていく。

    ただ、その隆盛も長続きはせず、1964年警視庁は「組織暴力犯罪取締本部」を設置。暴力団の全国一斉取締まり(第一次頂上作戦)を断行。これにより稼ぎ頭の美空ひばりのコンサート会場使用拒否が相次いだり、神戸芸能社は表立っての活動ができなくなっていく。

    まぁ、タレントからすれば、ギャラも保証され、安心して芸を披露できる。俳優・歌手・タレントがこぞって所属したのも頷ける話。

    本書を読むと、芸能ビジネスに反社会勢力との関わりがいかに根深く巣喰い、そうたやすく断ち切れない関係であることをうかがい知れる一冊。

  • 島田紳助事件を受けて読んでみる。

  • 芸能界とやくざの関係を知る糸口になる本。時代のとともに関係も変わってきたことがわかる。

  • 山口組三代目のもう一つの顔について本当によく分かった。こんな時代だからこそ、田岡のような人物がまたれる。

  • 山口組の立場から見た芸能社。田岡三代目は魅力ある人だったんだろう。それが、正義かどうかは別にして、、、

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著者プロフィール

1953年山形県生まれ。法政大学卒業後、フリーライターとして活躍。『ヤクザに学ぶ』シリーズなど著書多数。近著に『伝説のヤクザ18人』(イースト・プレス)、『爆弾と呼ばれた極道 ボンノ外伝 破天荒一代・天野洋志穂』『サムライ 六代目山口組直参 落合勇治の半生』(徳間書店)、『実録 赤坂「ニューラテンクオーター」物語』(双葉社)、『高倉健からアホーと呼ばれた男 付き人西村泰治(ヤッさん)が明かす――健さんとの40年』『最強武闘派と呼ばれた極道 元五代目山口組若頭補佐 中野会会長 中野太郎』『力道山を刺した男 村田勝志』(かや書房)がある。

「2023年 『東映任俠映画とその時代』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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