森に眠る魚 (双葉文庫)

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  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514643

作品紹介・あらすじ

東京の文教地区の町で出会った5人の母親。育児を通して心をかよわせるが、いつしかその関係性は変容していた。-あの人たちと離れればいい。なぜ私を置いてゆくの。そうだ、終わらせなきゃ。心の声は幾重にもせめぎ合い、それぞれが追いつめられてゆく。凄みある筆致で描きだした、現代に生きる母親たちの深い孤独と痛み。渾身の長編母子小説。

感想・レビュー・書評

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  • この小説は、1999年に東京の文京区で起こった幼女殺害事件をモチーフにしていると言われている。
    当時、自分の子どもも殺されたお子さんと同じくらいの年齢だったので、ニュースや新聞を注視していた記憶がある。

    そして本書。まぁ、本当に「子育て」という呪縛に絡めとられた母親達の姿を、恐ろしくリアルに、それぞれの心情の一つ一つを細やかに拾い上げている…うーん、流石としか言いようがない。

    そして、どの母親の気持ちも分かってしまう。
    皆不安なのだ。
    これでいい、うちはこうなの、と腹を決めてもどこか不安になる。
    それまでは、月齢で子どもを見ていたのに、幼稚園に入るといきなり横並び。
    生まれ月で差があるのは当たり前と思っても、やはり他の子と比べてしまう…などなど。
    自分で選んだ友だちではなく、子どもを介してできた友人だからなのか、自分のことならやり過ごせても、それが子どもとなるとそうはいかないものなのだ。

    子どもが幼稚園の頃の一時期を、東京の武蔵野エリアで過ごした。
    緑が多く、のんびりした所だと思っていたらとんでもないかった。
    国立、私立ともに小学校が結構あり、お教室には行かないけど、国立はとりあえず受けるという人も多く、皆教育熱心だった。
    いずれまた転勤になると、他人事でいられたので良かったが、当事者のお母さん達は本当に大変そうだった。

    しかし、この母親の苦悩と苦労を、後に子どもがどれだけ感謝するものなのだろうか…。
    2020.6.21

  • まさに自分も誰かのママ友で、ママ友を持つ身。
    この本はママ友はもちろん、ママとしての自我がリアルでゾッとする。

    登場するママたちの渦を巻くような心の中、ママ友へのザラっとした感情、それを封じ込めて笑顔を貼り付けるところ。パパ友ではないであろう、ドロドロなのにキラキラで、楽しくもあるし、どっと疲れる日常が書かれている。

    私もそうだよ、人には言えないけど同じように感じて嫌になることがあるよ、と、共感すること多数!
    女ってただでさえ難しいのに、子供の母という共通点だけで繋がるややこしさ。これはもう苦行というかホラーだと思う。

    コロナの影響で保育園行事が縮小したり、みんなで集まってイベントする機会が減り、家族だけで過ごせたこの3年は楽だった。
    今年度はどうなるかな。戦々恐々としている。

    解説も良かった。

  • テレビドラマ「名前をなくした女神」を彷彿させる小説であった。
    このドラマは、当時ママ友が「怖いよ〜」と夢中になっていて、勧められて観ていた。
    今度は逆にそのママ友に、この本を教えた。
    ドラマの原作ではないらしいが、調べているうちに、1999年に起きた事件に辿り着き、色々と考えさせられた。

    子供のことやお受験が絡むと、ママ友(女性)は怖いなぁ〜〜。
    特に容子さんみたいな人に関わりたくないと思った。

  • 小さな子供を持つ5人の母親のお話です。
    仲の良いママ友だった母たちですが、子供のお受験を意識し始めた頃から、関係性が一気に崩れていってしまいます。

    誰だって、自分の子供が他の子より劣っているなんて認めたくない。
    幼い子供の成長は千差万別だし、まだまだ隠れた才能が沢山あるだろう子供たちを一律に比べること自体がおかしいと思うのですが、
    "劣っている子の母"のレッテルを貼られたくないという焦りから、狂気じみた行動までも取るようになってしまう。

    思うに、育児をするお母さんたちは、ずーーーっと大きな不安と孤独感を抱えているのではないかと思います。
    誰も正確を教えてくれないし、皆と一緒だから良いという訳でもない。
    これで良いのかな、間違ってなかったかな、という心配がいつもあって、だからこそ、周りと比べて少しでも我が子が劣っている所を見つけると、不安で不安でたまらなくなってしまのではないでしょうか。

    …なんてことを、まだ結婚も出産も経験していない身分で書いてしまいました。笑


    いや〜、それにしても母親たちのどす黒い感情がリアルすぎて苦しい小説でした。
    ママ友、怖いなぁ。。。

  • 仲良しだった何人かのママ友たちの関係が、小学校受験によって崩壊していく話。

    話に出てくるママ友たちは、それぞれが何か(男女関係だったり過去の自分だったり)に満たされない想いを抱えている。そこに小学校受験の優劣がつけこんでくる。受験に受かったからと言ってそれらが満たされるわけでもないのに…。

    受験でなくとも、誰かと比べて優劣をつけて安心したくなる気持ちは理解できる。だからこそ自分にも起こり得そうな気がして怖くなる話だった。

    最後は未来が見える終わり方で良かったと思う。

  • 読み終えると胸が重くなる。嫌な気持ちにすらなるのに、どんどん読めてしまうのは登場人物それぞれ生々しくて現実に起こり得る話しだから。
    少しの気持ちのズレと相手への期待が思っていたのと違うと感じた時に人は今までと同じ事でも気になりだし許せなくなる。人の弱さと闇が描かれている。

  • 1999年の文京区幼女殺人事件をモチーフとしていることを後で知り驚いた。幼稚園でのママ友たち4人は、最初は学生時代のようなノリで和気あいあいと付き合っていた。小学校受験をきっかけに、じわりじわりとその関係にヒビが入っていく。

    子育て中の母親の孤独って、こんなにしんどいものなのかとびっくり。なんだろう、これって母親だから、というより、相手のものをほしがったり人と比べたり、もともとそのようなタイプの女性たちが出逢ってしまったから生じた亀裂ではないかと思ってしまった。
    狂気に駆られていく、その内面の描き方が凄まじい。


  • 後半に進むにつれ胸が締め付けられ、軽く吐き気を覚え、読み進めるのが苦しかった。自身の子育て時代を思い出す。散々、話し合いもしたし、歩み寄ろうと譲歩もしたが、そうそう思い通りになんてならないものなんだよね...。ラストは好みでした。

  • 女性は話を聞いてもらいたいし、共感してもらいたい。
    傷ついている時ほど、孤独を感じている時ほどその思いは強くなる。
    それによって救われた過去があって、「この人なら分かってくれる」「この人ならば」と依存してしまう気持ちはよく分かる。
    しかし、子供を通しての付き合いという限られた狭い世界の中では、純粋な「友達」ではいられない。
    分かち合う事が出来て、つらい胸の内を明かせるのは良いが、憧れや羨む気持ちがささいなきっかけで嫉妬や劣等感に変わる。
    そしてそれはなかなか拭えない。
    育ってきた環境が違えば価値観のズレは生じる。
    経済力によっては選択肢が増える事もある。
    そういった現状で比較し出すと関係性はややこしくなるが、そうしてしまうのは人間の性だろうか。

    現代日本の子育て事情という閉鎖的な世界を女性ならではの視点で描かれた、とても闇の深い小説だった。

  • リアルで怖い。
    他人は他人、自分は自分と思っていてもついつい比べてしまう。
    しょうがないことだとは思うけど、自分の身に置き換えてみると、怖い。

  • 角田光代ワールド全開。本来絶対的存在である我が子(と自分自身)を、次第に「比較」の中でしか愛せなくなっていく女たちの狂気がリアル。完全なフィクションとして接しないと引き摺り込まれるので注意。

  • 物語に出てくる女性たちと同じくらいと思われる年齢だった頃の自分を思い出す。
    後悔が大半をしめるので、読後は気持ちが沈んだ。
    登場する女性それぞれに共感する部分があり、人物が細やかに描かれている。
    人は縛りの中で生きているんだとあらためて感じたが、その縛りは自分で作っているものではないかとも思う。
    この物語を通して、自分の生き方を考えさせられた。

  • こわかった〜〜
    ちょっとしたホラー小説。

    今はLINEやSNSがあるからこの小説よりももっとママ達は生きづらいだろうと察する。

    自分よりも何百倍も大事であろう子供のことだと他人と比べてしまうのはどうしようもないだろうなぁ。
    登場人物の5人の母親達は狂ってるようでまともだと思う。人間そんなもんだよなー。
    でも男の人が読んだら”バカらしい”の一言で終わりそう。

  • アメトークでオードリーの若林さんが紹介されていたと思う。
    「ママ友」というキーワードに反応して猛烈に欲しくなったが、自宅近くの本屋には在庫が無く・・・。
    そんなことを職場の先輩に話したところ、購入してプレゼントして下さった。
    本当にお優しい(T_T)

    幼稚園や小学校くらいの子供の母親を経験したことがある人であれば、誰かしらにぐっと感情移入できるかもしれない。
    私は田舎の母親なので、受験には縁が無いが、それぞれの母親の持つ感情はとてもよくわかる部分があった。
    短い時間でぐっと入り込んでしまった。

    もう少し大きな展開があっても良いかなと思ったが、十分楽しむことができた。

  • 1999年に起こった「文京区幼女殺人事件」(通称:お受験殺人事件)を題材にした小説であり、数年前のドラマ「名前をなくした女神」の原作になった小説。

    女同士のドロドロを描かせたら角田光代さんの右に出る者はそうそういない、といつも思う。
    探り合ったり、貶め合ったりしながらも、実際顔を合わせたときには何事もなかったように笑顔で振る舞う。崩れるギリギリのところで保たれる関係。
    その裏側にあるのは不安や嫉妬。というのは、学生時代から子どもを持つ親に変わっても、変化することはないものなのかもしれない。

    未婚で子どももいない私が読んだ第一の感想は、ママ友って面倒くさい…というものだった。自分自身だけの人間関係ならば多少孤独を感じても平気だけど、自分の振る舞いが子どもの人間関係にも影響を及ぼすと思うとそういうわけにはいかない。
    幼稚園や小学校の受験は田舎に住む私には身近ではないけれど、都会に住んでいて子どものお受験に励む母親というのは実際たくさんいるのだろうし、そんな中でママ友同士のトラブルというのもたくさんあるのだろう。
    幼稚園や小学校に通う立場である子どもは蚊帳の外で、実際は親同士の戦争であるというのが滑稽だとも思う。
    子どものためを思うから幼稚園から良い所に行かせたい。それは愛情なのかもしれないけれど、そのために子どもに苦しい思いをさせるのは果たして。自分が誇らしくありたいから子どもを良い所に行かせたいだけではないのか?
    そういう感情ってはっきりと線引き出来るわけじゃないから難しい。
    健康で育ってくれれば、とは思っていても、出来の良い子どもに育てば誇らしく思うのは当然だろうから。

    まだ幼い子どもを持つ5人の女性、それぞれの目線で描かれていく連作のようなつくりの小説。年齢も、立場も、生い立ちも、家庭の経済状況も、当然みんな違う5人。
    違うから子育てに対してもそれぞれ違う考え方を持っているはずなのに、関わり合うことで影響を受け合って、最初は友好的だった関係がだんだんと変化していく。
    ほんの少しのズレやすれ違いが思い込みに変わって、緩やかな雪崩のように関係が壊れていく恐ろしさ。大袈裟ではなく身近にありそうだからこそゾッと背筋が寒くなる。

    でもいつも思うのは、角田さんの小説には“ひかり”を感じる。
    ドロドロしていて痛々しくて恐ろしくても、その先にはまだ未来があるんだと思わせる不思議な力強さがある。
    実際は殺人事件にまで至ってしまった出来事が、小説では…。

    容姿、年齢、夫、経済状況、そして子どもの出来に至るまでが嫉妬の要素になる“ママ友”。その中で本当に信頼出来る関係を築くのは不可能なのだろうかと、考えてしまった。

  • 5人の仲良しママ友が、子供のお受験をきっかけに歪んでいく物語。

    嫉妬、仲間外れ、、
    誰かと比べたってキリがないのに、
    やっぱり同じ土俵に立つ者同士
    比べてしまうのだろうか。

    いつまでもみんな仲良し、みんな一緒であることなんてできるはずもないのに。

    そう思いながらも、私も自分の子供が例えば公園とかで
    遊んでいる他の子供たちより言葉が遅かったりとかすると
    落ち込むことはある。
    高価なブランドの服や小物を身に着けている子供を見ると
    羨ましいなと感じることはある。

    そうやって周りと自分の子供を比較などしたくないものである。

    「よそはよそ、うちはうち」
    自分が小さい頃は親がこの言葉をいうと
    なんて都合の良い言葉なんだと思っていたけど笑、
    実はとっても素敵な言葉なんじゃないかとふと思った。

  • 未婚男性なので登場人物に共感は持てなかったが、
    結婚をし、母親になるって事はATフィールドを強固にする可能性大なんだな、怖気がした
    タイトルの森が社会と雑多な意識、魚が閉じられた世界と歪んだ自我って事なのかな

  • ママ友なんて作るもんじゃない。そもそもママ友ってどんな関係といえるのか。友とつくほどの間柄に果たして人はそう簡単になれるものなのか。胸がざわつく内容だった。

    世の中を見渡せばママ友がいて良かった、という人だっている。こんなおどろおどろしいことになったことなんか一度もなーい。そんな人だっている。
    そんな人達とこの作品のママ5人は何が違っていたんだろうか。

    ママ友という関係がうまくいかない形ではないのかもしれない。
    そこに適度な気遣いがあり、互いに踏み込まない暗黙の了解があり、粛々とそのルールに則って行動する人であれば成功したと言えるのもしれない。ママ友という形を否定はしないが継続するのは身も心も削られるものであることは避けようがないと感じる。

    疑心暗鬼。それが明暗を分けたのではないかと思う。
    馬鹿にされているんじゃないか、子供の頭が悪いと思われているんじゃないか、稼ぎが少なくてかわいそうと思われているんじゃないか。
    たらればが大きな疑心暗鬼を生み出し無いものがあるようにみえ、あるものが見えなくなる。

    孤独な育児が生み出すしっとりとした孤独感は親であることや愛する我が子のために頑張る自分を鼓舞させながらも、自分にはそれしかないと思い込ませ、輝きを失ったなにかのように自身を感じてしまう。

    もっとこうだったら、もっとああだったら、ここでもたらればは止まず、そんな不安定な時に不安定な人達に出会って自分だけがこんな風に悩んでいるわけではないと感じることで運命共同体のような繋がりを勝手に抱いてしまう。

    わかってくれる、この辛さもしんどさも理不尽さも。旦那への愚痴も理解のなさも何もかも共用できる。そのうちとても親しい間柄だと勘違いする。
    こんなにあけすけに何もかも話せているのだから隠し事もないマブダチのようだと勘違いする。

    ところが蓋を開けてみれば各々がちゃんと個別に蓋をしていてそれに気づかない。蓋をされていることがわかるとそれを拒絶だと受け取る。信用されていない、言ってもわからないと思われていると憤慨する。

    たまに会う程度の人達だったからこそ、共通点があるというだけで親近感が増したのではないか。
    広く見渡せば我が子と性別も歳も好きなものも同じような子はたくさんいる。そのすべての人たちと腹を割って仲良くなれるかといったら普通はならない。でもそう思い込める。出逢った世界が小さければ小さいほど。
    こんな広い世界でたまたま、こうして出逢ったことが奇跡的なんだと美化できる。

    勝手に美化したマブダチは付き合いが進むにつれ、違和感が膨れてくる。でも同じ幼稚園に通っているし、子供同士は仲がいいし、明日も明後日も顔を合わせなければならないのだからこれくらいは我慢すべきなんだ、思い過ごしなんだと自己暗示をかけるもやはりそれは徐々に解けていき真実を目にしたときこんなはずじゃなかったと相手に対して一方的に裏切られたと憎しみや怒りを露わにする。

    同じ、ということだけで繋がれていた。
    少しでも何かが変われば関係も変わってしまうのだろう。

    ただ読んでいてこんな気持ちなったことあるわぁ、と頷けるところも多々あった。
    だよねー、わかるー。
    この一言がほろりとするくらい嬉しくなるのを知っている。
    この身も蓋もない行き場のない気持ちを知っている人がいて、わかるよーと言って受け止めてくれたら、あー、この人いいなぁとなる。
    つい、友達ではないはずなのに特別な感情を抱いてしまう。塞ぎようのない風穴があった。その風穴をママ友が埋めてくれたことで一気に盛り上がってしまうのかもしれない。

    子育てをしていて感じる孤独感はママ友ではなくて、共にするパートナーと分かち合いたいはずだ。
    これから子育てをする男性陣にもぜひ読んでみてほしいと思う。

  • 今、わたしは保育園児の子供を育てているけれど、周りと比べることなく過ごしている。
    それが、受験するとなればこんなふうになってしまうのだろうか?と考えてしまった。

    自分の身の回りにはいないけど、こういう面倒くさい心情、学生の時にはあったなあ、とリアルな女性たちの描かれ方にヒヤヒヤとした。

    終わり方は、なんともあっさりしていたけれど、それぞれの未来に希望を見出せるようで、よかったように思う。

    数名の方も書いているが、オードリーのラジオで若林さんが話にあげていたので、気になって読んだ。

  • 読みながら名前をなくした女神っていうドラマを思い出してたけど、解説を読んで初めてモチーフになった事件を知って驚いた。途中、名前のない不気味な「彼女」の描写があったのはそういうことだったのか。時代設定も。



    たまたま近く住んで、たまたま歳の近い子を産んだだけで、知り合って、仲良くなって、でもそれって本当に友達なんだっけ?という違和感がありありと描かれているお話。

    なんか、誰もが「これでよかったんだっけ?」と思いながら生きてるんだよな、というのを改めて思わされるお話だった。

  • ママ友の関係がこじれる話。

    ママ友の関係って、子供が絡む分、学生時代の友達みたいに素直にいかないんだなーって思った。

    ちょくちょく不穏な描写が出てきて、主人公たちの心の中の闇みたいのを感じて、ゾワゾワしながら読んだ。ママ友怖。

  • 文京区で起きた事件を思い出しました。

  • 読了日2010/06
    過去に本当にあった事件を題材にして書かれた本。
    ママ友の微妙な関係を、女性の外には出したくない醜い内面をズバッと書いてあって、面白かった。
    そして、私も一応ママの端くれなんで、興味を持って読み進みました。

    他人の心の中なんてわかんないけど、女ってみんなこんな妬みや嫉妬でいっぱいなのかな・・ちょっとショックだった。
    憧れと嫉妬は紙一重だし、人を見下すといことを自分では気がつかないうちにやってしまってるのかもしれないなぁ。

    この本を、今からママになる人が読んだら、きっと恐ろしくなるだろうなぁ(笑)
    公園デビューだとか幼稚園ママのお付き合いだとか、メディアでも騒がれてた時もあったけど、
    世の中、ママ友関係でこれほど追いつめられてしまう母親がたくさんいるのかなぁと思うと怖くなるなぁ。。
    実際、友達は幼稚園ママ時代、リーダーママ主催のお茶会で、父親の年収順に席を座らされたり、お茶会の幹事を要領よくやらないと、母親として失格と言わんばかりの避難の嵐だったりと・・・壮絶な体験をしたらしい。。
    こんな世界が身近に本当にあるとは・・とビックリしました。

    子育ては孤独だから、ママ友を作ることは大切だけれども、子どもをそっちのけにして、ママ友の関係に執着しすぎて、そのことしか考えられなくなってしまって、子育ての悩みよりママ友との関係の悩みの方が大きくなってしまうなんてバカバカしいと思ってしまうけど・・

  • 5人の幼子がいる母親が知り合い、ママ友になり、ずっと一緒に子育てをしていこうと約束するが、お受験、家庭の格差、様々な違いが5人それぞれが恨み妬み闇となって行く。何年か前の東京で起きた事件がモチーフなのは読めばすぐわかる。
    前回「砂漠(伊坂幸太郎)」のレビューの中で、女の友情は難しい、と言うようなことを書いたが、やはり今回もこの本を読んで思った。特に子供を通した、ママになってからのママ友は関係を深めたらあまりよろしくないのである。気持ちは同じ母として大変よくわかる。母親なんて我が子のことになれば、アホにでも鬼にでもなれるのだ。赤子の時から一挙手一投足に一喜一憂し見守ってきたのだから。目的が、子供の為、と言いながら自分の為に変わっていないか、迷走しながら母親は日々過ごしている。…かも。(笑)
    追記。個人的にママ友という言葉は好きではありません。

  • ここ最近読んだ小説の中でダントツに面白かった…何が凄かったかって人間模様が本当にリアル。仲良しだったところから、徐々にお互いに不信感を募らせていくまでの展開がお見事すぎる。人間の心の動きをこうも逃さず言語化してしまうのかと。一気見してしまうくらい面白い一作でした…

  • お母さんは子供のためなら
    何でもがんばれる
    狂えるほどに
    我が子が一番なのは誰しも一緒
    たまたま年が近い子供がいるだけで
    「ママ友」ってママがつくだけ厄介
    お父さんにはわからない ドロドロの世界


  • 5人の母親たちの心理描写が事細かく書かれた作品。
    好意・憧れ・嫉妬・憎悪など言葉では言い表せないほどの感情が、"子供のお受験"を機に目まぐるしく動いてゆく。

    ママ友は友だちではないけれど、頼りになる存在。
    それでも我が子が一番可愛いので、たとえ信頼しているママ友に対しても負の感情が出てきてしまう。

    作中で一人称が"彼女"に変わる章について、個人的には5人全員が当てはまるなと感じる。
    それほどまでに、母親は精神的に追い詰められている。

    困った時に自分の話を聞いてくれて、共感してくれる相手が欲しかっただけなのに、どうしてこんなにも難しいんだろう。

    何でも話せる夫婦でありたいね、ってある意味プレッシャーでもあるよね。

  • 最初は誰が誰かなかなか覚えられず戻って確認することも。
    序盤は人物像をあえてぼんやり書くことで読者側も登場人物に対するイメージの変化を感じられて面白い。
    最高に気が合う友達!っていう流れからの少しずつ嫌な部分が目についてじわじわと亀裂が入っていく感じがリアル。
    「彼女」のくだりは誰にでも起こり得ることなんだと言いたいんだろうけど、どんな事件が起きるのかと期待していただけにただ自然に疎遠になっただけという結末に肩透かしを食らった感じはある。

  • 彼女たちの誰でも「彼女」になり得たし、あるいは彼女たちではない何処かの「彼女」もまた、「彼女」になり得た。
    面白くてあっという間に読めた。

  • どの母親の気持ちもわかってしまう

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著者プロフィール

1967年神奈川県生まれ。早稲田大学第一文学部文芸科卒業。90年『幸福な遊戯』で「海燕新人文学賞」を受賞し、デビュー。96年『まどろむ夜のUFO』で、「野間文芸新人賞」、2003年『空中庭園』で「婦人公論文芸賞」、05年『対岸の彼女』で「直木賞」、07年『八日目の蝉』で「中央公論文芸賞」、11年『ツリーハウス』で「伊藤整文学賞」、12年『かなたの子』で「泉鏡花文学賞」、『紙の月』で「柴田錬三郎賞」、14年『私のなかの彼女』で「河合隼雄物語賞」、21年『源氏物語』の完全新訳で「読売文学賞」を受賞する。他の著書に、『月と雷』『坂の途中の家』『銀の夜』『タラント』、エッセイ集『世界は終わりそうにない』『月夜の散歩』等がある。

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