先生と僕 (双葉文庫)

著者 :
  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575514728

作品紹介・あらすじ

都会の猫は推理好き。田舎のネズミは…?-ひょんなことから大学の推理小説研究会に入ったこわがりな僕は、これまたひょんなことからミステリ大好きの先生と知り合う。そんな2人が、身のまわりにあるいろいろな「?」を解決すると同時に、古今東西のミステリ作品を紹介していく連作短編集。事件の真相に迫る名探偵は、あなたをミステリの世界に導く名案内人。巻末には仕掛けに満ちた素敵な「特別便」も収録。

感想・レビュー・書評

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  • 極度の怖がりで、とことん悲観的な方へ方へと妄想を膨らませてしまう大学生の「僕」二葉くん。友人に誘われ仕方なく推理小説研究会へ入部するものの、殺人事件とか死体とか超苦手で困っている。そんな彼に形だけの家庭教師になってほしいと声をかけたのが、初めて出会うお姉さんたちのハートを鷲掴みするようなアイドル並みの破壊力を持つ容姿と笑顔の中学生、「先生」隼人くん。かなりのミステリ好きで毒舌。現代の犯罪は、けちくさい、くだらないとがっかりする。犯罪は、エレガントであるべきだ。
    彼らの身の回りで起きる「日常の謎」を隼人くんと彼に引っ張り回されながら二葉くんが解き明かす。これが、とっても面白い。日常の謎が、あんまりひねくり回されることなくて、解決後もすっきりする。それに一番いいなぁと思うところは、成績優秀で世間の表裏を知っている隼人くんに、引け目を感じている二葉くんなんだけど、ともすれば、事件に絡む人や物事に対してきつく当たり過ぎる彼にそっと語りかける言葉がいい。まだまだ中学生、一方の面からしか見ることの出来ない隼人くんに、別の方向から見ることも必要だよって、優しく舵をとってあげるような二葉くん。隼人くんが二葉くんと接することで、ちょっとずつ人として成長していくようなところまで描かれているから、気持ち良く読み終えることが出来るんだと思う。
    そして、二葉くんと共に隼人くんおススメのミステリ小説にも挑戦してみたくなる。ミステリ小説を読むなかで、次のミステリを紹介してくれるのは、ほんとお得感あり。
    でも、しっかり者の隼人くんだけど、心配性のお母さんとのやり取りは彼の可愛らしい面が垣間見えてほのぼのしちゃう。

    • ほしこさん
      地球っこさんのレビュー読んで、「それだ!」って言いたくなりました。
      私は日常の謎をつい社会問題に紐付けちゃうので、読んでほんわかする地球っこ...
      地球っこさんのレビュー読んで、「それだ!」って言いたくなりました。
      私は日常の謎をつい社会問題に紐付けちゃうので、読んでほんわかする地球っこさんのレビューに憧れます(^^)
      2019/06/17
    • 地球っこさん
      ゆずさん、コメントありがとうございます♪私のレビューというよりもつらつらと思いのまま書いている読書日記のようなものを、そんなふうに言っていた...
      ゆずさん、コメントありがとうございます♪私のレビューというよりもつらつらと思いのまま書いている読書日記のようなものを、そんなふうに言っていただいて恥ずかしながらも嬉しいです。ありがとうございます。
      ところで、ゆずさんの「僕と先生」のレビュー“今流行りの4低じゃないか!”ってところ、あっなるほど!と納得しました。
      そのあとの“肉食女子の餌食になりそうな…”で、あははと笑ってしまいました。
      ゆずさんのレビューいつも楽しみにしてます。これからもたくさん書いてくださいね(*^^*)
      2019/06/17
  • 皆様、ミステリはお好きですか?

    今作の主人公は伊藤二葉、十八歳。
    人が殺される小説は読めない、極度の怖がり。
    しかし、友人山田の誘いで推理小説研究会へ入部することとなる。
    そんなある日公園のベンチで本を読もうとしていると、ある男に声を掛けられた。
    「こんばんは」「大学生?」「よかったらバイトしない?」そんな怪しい言葉に逃げようと立ち上がった二葉。
    そこであることに気がつく。彼は、少年だったのだ。
    家庭教師を探しているという少年、瀬川隼人。
    勉強も運動もよくできる模範的な生徒の隼人に二葉が教えることはない。そう思い断ろうとするが、前半は自習、後半は二葉のミステリ講義という案に落ち着いた。
    そんな2人の周りで起こる「?」を解決していく。

    本屋の雑誌に貼られた謎の付箋、
    カラオケ店から消えた二人組、
    個展のギャラリーに誘う女性…

    もちろん殺人などの物騒な事件ではない。
    隼人の行動にはかなり振り回されるが、推理力と年相応の笑顔にも救われる二葉。
    お互いが生徒で先生という不思議な関係が微笑ましい。

    坂木先生の作品は相変わらず読みやすいし、入りやすい。
    本が苦手な人、ミステリが苦手な人が坂木先生の作品と出会って何かが変わるきっかけになればと思う。

  • どっちが 先生だか わからない。

    そこが 面白いですね。

    ところで 猫は いつ 登場するのでしょうか。

    続編が あるんですよね。

    とても 楽しみです。

  • ミステリ好きが推理好きかと言えばそんなことはなく、死体の描写に慣れているから本物の死体を見ても大丈夫かと言えばそんなわけはない。
    小説だから読める。
    たまに怯みながらも読み通すことが出来る。
    凝ったトリックとそれを見抜いた探偵の推理力に感心したりするのだって、現実の事件だったら不謹慎と言われてしまうだろう。
    いやもしかしたらミステリ好きをどんな神経してるんだと冷やかに見ている人は多いのかもしれないが…。

    今作の主人公、タイトルの「僕」、二葉さんもそんな人の1人。
    とても怖がりで人が死ぬ小説が読めない。
    古くて狭いエレベーターに乗り込む時には水とチョコバーを持っていることを確認してしまうし、ウォータースライダーを滑り降りるのも命がけ。
    そんな「僕」が大学の推理小説研究会に入るところから物語は始まる。
    ミステリが怖くて読めないとは言えず、オススメされた本を1人公園で読んでいた彼に声をかけてきたのがタイトルの「先生」。
    「先生」が「僕」を連れまわす(?)のはミステリの世界。
    そして、小説よりもずっと怖い現実の闇。
    怖がりの「僕」と怖いもの知らずの「先生」が巻き込まれる事件は人が死ぬことはないけれど、人の悪意がぬるりとまとわりつくような気持ち悪さがある。
    目的は自分の利益、標的は「誰でもよかった」。

    人を疑うことに罪悪感を覚える「僕」の気持ちが私にも分かる。
    誰が信じられて、誰が自分を騙そうとしているのか。そんなことばかり考えて生きていたくはない。
    でも騙しの手口はどんどん巧妙になり、注意を促す言葉が目から耳からどんどん流れ込んでくる。
    そして「先生」の言う通り、自分だけの問題では済まないんだ。家族や友人にも迷惑をかけてしまうことになる。
    だから気を張っていなきゃ。
    初対面の人に自分のことをべらべら話すなんてもってのほか。
    今しかないなんて急かす人には気を付けて。
    うまい話なんてあるわけない。

    そんな緊張を強いられる世界で生きたいですか?

    これだけなら答えは「NO」だ。
    でも、「僕」と「先生」の間には確かな信頼が育っている。
    そして私にも信じられる人がいることを思い出させてくれる。
    そんなところがこの小説の魅力だと私には思えた。

  • 本の中に出てくる本も読んでみたい!という人にお薦め。日常の謎解き+ミステリの先生による本の紹介(しかも殺人が起こらず、怖くないのに本格派)が絶妙。

    隼人くんを黒猫に擬猫化する発想が好き。
    猫をかぶった隼人くんも、素のままの隼人くんも何とも言えない可愛さがある。

    巻末に『ホリデーとホテルと僕』という、ホリデーシリーズ、ホテルジューシーを読んだ人には嬉しいおまけが付いている。

  • 上京したばかりの大学1年生が家庭教師をすることになったのは?
    殺人の出てこないライト・ミステリ、連作短編集です。

    伊藤二葉は、怖がりの大学生。
    友人と推理小説研究会に入ることになってしまうが、実は殺人の出てくる話は読めない。
    たまたま公園で知り合った中学生に、家庭教師を頼まれる。
    正確には、母親が家庭教師をつけたがっているが、その必要はないので、ふりをしてくれと。

    まだ中学1年だが都会っ子で頭もいい隼人は、ミステリ・マニア。ジャニ系のアイドル並みの容姿で、女性から話を引き出すこともできるという。
    二葉は大人しいけど実は、写真のように丸ごと記憶することができる特技があるのです。
    そんな二人が、目の前に現れる謎から思わぬ犯罪を解明していきます。
    古本屋での事件。
    ビルの火事のとき、消えた人物は?
    区民プールで起きた出来事は。
    画廊での個展をめぐって。
    ペットショップでの不思議な売買は‥?

    ついでに、殺人の出てこないミステリ作品のお勧めも。
    巻末にも紹介されていますが、これ‥ほとんど、読んだことあります!
    ミステリ好きでも、怖いミステリばかりでは疲れますから~こういうの、大歓迎なんですよ。
    内容を良く覚えていないものなどは、楽しみに読み返そうと思います。

    中学生の隼人が「先生」で、家庭教師のはずの「僕」が生徒という面白さ。
    頭の切れる隼人にも嫌みはなく、兄弟のように仲良くなっていく二人が、さわやか。
    あっさりした読後感ですが、好感が持てました☆

  • 日常系ミステリ。

    頭が良く骨太なミステリー作品が大好きで好奇心旺盛な中学生・瀬川隼人と、
    彼の家庭教師にしてネガティブ思考でミステリーが苦手な大学生の「僕」こと伊藤二葉の二人がコンビ(ホームズとワトソン)を組んで、日常に蔓延る悪事を解明していく連作短編集。

    面白かった!
    登場人物も多くなく、メインである二人のキャラクターと彼らの事件に対する心持ちにだけスポットがあたっていて、テンポ良く読みやすくも、侮れないミステリー作品集になっている。

    心配性で人が死ぬようなミステリー作品が苦手な伊藤二葉に対して、ミステリ好きな瀬川隼人が彼にオススメの気軽に読めるミステリー作品を紹介してくれる「ブックガイド」的側面もある。







  • 大学生の僕は中学生の隼人の家庭教師になるが、、、どちらが先生か、、、小さなミステリーを解決していく2人。

  • 僕双葉と先生隼人のキャラが良い感じ。
    自分も二人と友達のようにその場に入っていける。


    坂木司さんの作品をこれまで読んできたけど、
    ミステリだと思って読んだことは1度もなくて、
    人それぞれとらえ方が違うんだなぁって思うと面白い。


    (図書館)

  • 坂木司の先生と僕を読みました。

    主人公の伊藤二葉は田舎から出てきたばかりの大学生です。
    小心者でこわがりで極度の心配性ですが、視界を写真のように記憶することが出来るという特技の持ち主です。

    そんな二葉がなりゆきで入った推理小説研究会で指定されたミステリーを公園で読んでいると中学一年生の隼人が「僕の家庭教師にならない?」と声をかけました。
    成績優秀な隼人は家庭教師などは要らないのですが、母親の要求をのんで家庭教師のふりをしてくれる大学生を捜していたのでした。

    田舎のねずみの二葉と都会の猫の隼人のコンビは日常で出会う謎を解き明かしていくのでした。

    今回は謎解きはそれほど面白くありませんでしたが、二葉と隼人の掛け合いが楽しく、あっという間に読み終えました。
    この本で紹介されていた小説もそのうち読んでみようと思ったのでした。

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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