『坊っちゃん』の時代 (双葉文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575712292

感想・レビュー・書評

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  • 関川夏央、谷口ジロー『『坊っちゃん』の時代』双葉文庫。

    再読。単行本も持っており、勿論既読ではあるのだが、先日たまたま立ち寄った古本屋で5巻揃いの文庫版の美本を目にし、少し迷いながら購入した。

    関川夏央と谷口ジローの名コンビによる大傑作漫画である。刊行当時はこの1巻で完結かと思っていたのだが、漫画誌で断続的に連載が続き、5巻まで刊行されたのには驚いたものだ。また、漫画或いは劇画を超越した表現は非常に斬新であり、万人受けする作品とは思えなかった。

    因みにこの最初の巻はカラー版も刊行されている。自分も購入したが、大枚10,000円はする豪華な美麗本だった。

    第二回手塚治虫文化賞受賞作。明治38年。神経症に喘ぐ夏目漱石が名作『坊っちゃん』を創作する過程と近代日本の醸成を間近に控えた熱気あふれる時代を関川夏央という鬼才が見事な物語に紡ぎ出し、谷口ジローという類い稀な才能が素晴らしい筆致で描く大傑作。

    夏目漱石と共に同じ時代を生きた名だたる文豪たち。ラフカディオ・ハーン、森鴎外、石川啄木、国木田独歩、平塚らいてう、伊藤左千夫、島崎藤村……

    「所詮、坊っちゃんは勝てんのだ」。夏目漱石のは時代への敗北を認めながらも、敢えて敗北を受け入れることで自身を保つのだった……

    本体価格571円(古本270円)
    ★★★★★

  • 関川夏央と谷口ジローの美しいコラボレーション。これで大好きな漱石が主人公なのだから、面白いこと間違いなしである。鴎外や一葉、東条英機や安重根などたくさんの歴史的人物が(意図的に)錯綜する。文学者の、明治の息吹が聞こえる。

  • あまりに有名すぎて逆によく知らなかった、夏目漱石をはじめとする明治の文豪たちが生き生きと描かれている。
    この時代、文学に携わる者たちと政治家の交流って頻繁だったんだな… 現代ではもう全くの別世界の人々って感じになっているけど。

  • 関口夏央と谷口ジローの共同作品である。豊かな想像と表現力で、歴史とコミックに新たな世界を開いたと言われている。
    かなり昔に読んで以来、数回以上繰り返し繰り返し読むのだが、そのたびに新鮮な思いに囚われる。漱石、鷗外、啄木を軸に明治の群像とそれらの交流が、虚実を織り交ぜて、巧みな構成で描かれている。

    残念なことに谷口は2017年に亡くなった。没後『歩く人』『犬を飼う』ルイ・ヴィトンの『ヴェニス』などを見たのだが、本当に才能が豊かな人だったことがわかる。彼が真の意味で大人のためのコミックを開拓したと言えるのではないだろうか。2021年に開催された『描く人 谷口ジロー展』〈世田谷文学館)で一通りの作品群を見てその感を一層強くした。

    四谷から見る外堀沿いの省線図が1巻と5巻に出てくるのはご愛嬌だし、長谷川伸をもじった一本梶棒土俵入りなど、かっての名人落語家〈浪曲師)並みの「高尚な」笑いにも誘われた。

  • 明治の文豪とか歴史的人物とか錚々たる顔ぶれが色んな具合に濃厚に関連してて興味深かったです。漱石様が小説でいくら稼げるか?と生計のためのお金の計算をしてるところが人間臭くて少し親近感を覚えました。あと安重根と新橋駅でぶつかったエピソードは史実なのでしょうか?「歴史はときとして劇的な演出を好む」という一文が素晴らしいです。坊ちゃんの登場人物にはモデルがいて、リアルな土台の元に書かれた物語だったことが感じられました。ドラマやアニメにもなった坊ちゃんですが、時代というものに敗北する坊ちゃんの哀しみはそこに描かれていただろうか?
    もう一度原作小説を読み返してみたくなりました。

  • 読書がテーマの珍しい漫画。

    主人公の町田さわ子は、読書家にあこがれているのだけど、本を読むのがめんどくさくて、「読まずに読んだふりができる本はないかな?」といつも言っている女子高生。そんなさわ子の周りにはいろんなタイプの読書家が集まっていて、本に関するさまざまなうんちくや小ネタが繰り広げられる。とにかく毎日いろんなジャンルの本が紹介されるので、この本をきっかけに興味を持った本を読んでみたりする入口としてよさそうだ。
      (pha著『知の整理術』で紹介)

  • 今まで考えたことのない
    思考のマンガだった

  • 「坊っちゃん」の悲しさを、当時の漱石の人生観と重ね合わせる。
    また誰がモデルか、着想がどこにあったか、は面白い。
    虚実皮膜の面白さとはまさにこれ。
    「うーん。名篇だよこれは。なあきみたち」振り返って「……」居間にはもう誰も居なかった。
    この場面の寂しさといったら。

  • 漱石が「坊ちゃん」を僅か11日間で書き上げるまでの、ラフカディオハーンや門下生とのエピソードを描いた作品。漱石が文豪じゃなく、頭のいいダメ人間に見えてきて面白かった。

  • 『坊ちゃん』の時代に現代で言うところの文豪が、これほど密に生きていたということに驚かされる。漱石が神経症から逃避するため小説を執筆していたという逸話も初めて知った。なればこそ、あれほど自由な文章が書籍となったことに納得もできる。原作者と漫画家とのコラボとなるメジャーな漫画が少ないことを後書きで知ることになり、これも新たな知見となった。

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著者プロフィール

1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。
1985年『海峡を越えたホームラン』で講談社ノンフィクション賞、1998年『「坊ちゃん」の時代』(共著)で手塚治虫文化賞、2001年『二葉亭四迷の明治四十一年』など明治以来の日本人の思想と行動原理を掘り下げた業績により司馬遼太郎賞、2003年『昭和が明るかった頃』で講談社エッセイ賞受賞。『ソウルの練習問題』『「ただの人」の人生』『中年シングル生活』『白樺たちの大正』『おじさんはなぜ時代小説が好きか』『汽車旅放浪記』『家族の昭和』『「解説」する文学』など著書多数。

「2015年 『子規、最後の八年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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