『坊っちゃん』の時代 (第4部) (双葉文庫)

  • 双葉社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784575712407

感想・レビュー・書評

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  • 関川夏央、谷口ジロー『『坊っちゃん』の時代 第四部 明治流星雨』双葉文庫。

    再読。関川夏央と谷口ジローの名コンビによる大傑作漫画である。『坊っちゃん』が哀しい小説という認識を持ち、改めてこのシリーズを読み返してみると関川夏央と谷口ジローが明治という時代に抗えなかった敗者を描いていたことが見えてくる。

    第四部の主人公はジャーナリストで思想家の幸徳秋水と魔性の女、管野須賀子。勿論、夏目漱石や石川啄木、森鴎外、二葉亭四迷、伊集院影韶といった第三部までに登場した馴染みの面々も顔を見せる。

    高知から政治家を目指して上京した幸徳秋水は中江兆民に師事し、次第に社会主義へと傾倒していく。後輩の荒畑寒村の妻である管野須賀子を寝取った幸徳秋水は踏み入れてはいけないテロリズムの道へ……

    明治43年。ハレー彗星が長い不吉な尾を曳いて地球に接近する中、大逆事件により管野須賀子と共に刑場の露と消えた幸徳秋水もまた敗者であったのだろう。

    単行本も持っており、既読ではあるのだが、先日たまたま立ち寄った古本屋で5巻揃いの文庫版の美本を目にし、少し迷いながら購入した。

    昨日、本屋を覗いた時に夏目漱石の『坊っちゃん』の文庫本を目にした。このご時世に新潮文庫で僅か310円だったことに驚いた。40年前なら150円くらいだったが。購入して、再読してみようかな。

    本体価格600円(古本470円)
    ★★★★★

  • やはり明治を知る上で、大逆事件は避けて通れないんだな、と思いました。
    今まで深く調べたことがなかったので、この本で大筋を知ることができたのは良かったし、引き込まれました。不安定ながらもエネルギーに溢れ、明るい印象だった明治の終焉を目撃しているような読後感。時代の空気を感じて戦慄しました。

  • 中上健次が時折り言及していたので多少興味があったという程度の大逆事件。
    幸徳秋水にはもちろんだが、管野須賀子という女性に興味深まり。

  • 本作は第三部から3年半の後に上梓されたそうな。私も前作から時日が経過しての読了となった。大逆事件を芯に据えた群像劇で、主役は幸徳秋水なのだが、目立つのは菅野須賀子である。大逆事件は、維新を成し遂げた薩長の暴走にも見える。この世相・経済を良しとしない庶民の中から生じた「主義者」達に同情してしまう。だがしかし、当局側も主義者側も極端な思想に走ったが故の結末と感じ、日本人の気質を映し出しているように見えた。

  • 主義、言論の自由はあって然るべきだと思うが、これがない時代、いわばこれを政府が取り締まる場合はそれらの口は閉ざされ、テロリズムという極端な行動へ導きやすくなるのか。自分はまだ近代史、日本の社会主義思想の展開には疎すぎる。ただ興味を持つ入り口としてはかなり適していた。

  • 読後、幸徳秋水の著作を読んでみたくなった。
    印象的だったのは、管野須賀子。彼女がテロリズムに走ったのは、やはりその生い立ちにあったのかと思う。それにしても、何が彼女をそうさせたのか、もっと知りたいと思った。

  • 漱石、鷗外、啄木と焦点を当ててきた第3部から趣を変えて、中心人物を擁さず、大逆事件をめぐる群像劇に。一応は幸徳秋水をめぐる人々であるが、やはり最も強い魅力を放ち中心的な立ち位置を獲得するのが管野須賀子。大逆事件で処刑される無政府主義者であり、数々の男たちと性的関係を持った須賀子は、文芸作品の格好の題材といえる。多くの作家によっておもしろおかしく肉付けされ虚実あいまいな須賀子という存在、実際の須賀子はどんな人物だったのだろう。

  • ハレー彗星が長い不吉な尾を曳いて地球に最接近したのは、明治四十三年だった。彗星の淡い光芒とともに歴史の舞台を横切った秋水、須賀子、寒村、そして血気に満ちた不運な青年たち。

  • -さようなら 錆びた声が聞こえた それが主義を違えつつも長年友誼を保った友との 永訣のことばになった-

    授業でさらりと通り過ぎた「大逆事件」が、幸徳秋水、菅野須賀子らの生い立ち、恋愛、思想やらが織り交ざって、彩をもって蘇る。これは中学生必読。まだ幼い日本に生きる、権力者・知識人・生活者・社会主義者・無政府主義者・・・それぞれの正義の中で、思いが交錯してたことを識る。

  • 「多少の縁あるひとを見捨てるは恥です。」
    「役立とうと思うは義です。」

    舞台は明治(末期)。登場人物は夏目漱石、森鴎外、石川啄木、幸徳秋水、管野須賀子、二葉亭四迷をはじめとした明治の文学者・思想家たち。それぞれの生きる明治の世相が、時に痛快に、時に物悲しく描かれています。

    登場人物の一言一言が重く深く響く、関川夏央・谷口ジローによる劇画的、というか映画的な超名作です。

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著者プロフィール

1949年、新潟県生まれ。上智大学外国語学部中退。
1985年『海峡を越えたホームラン』で講談社ノンフィクション賞、1998年『「坊ちゃん」の時代』(共著)で手塚治虫文化賞、2001年『二葉亭四迷の明治四十一年』など明治以来の日本人の思想と行動原理を掘り下げた業績により司馬遼太郎賞、2003年『昭和が明るかった頃』で講談社エッセイ賞受賞。『ソウルの練習問題』『「ただの人」の人生』『中年シングル生活』『白樺たちの大正』『おじさんはなぜ時代小説が好きか』『汽車旅放浪記』『家族の昭和』『「解説」する文学』など著書多数。

「2015年 『子規、最後の八年』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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