カラスとの過ごし方 (二見書房 シャレード文庫)

著者 :
  • 二見書房
3.43
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本棚登録 : 189
感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784576121727

作品紹介・あらすじ

のばしっぱなしの黒髪と、あまり言葉を発しない唇。かかとを踏みつぶした靴に、天然石の数珠-。カラス、そう密かに呼んでいた部活の先輩・槇野和隆と再会した加藤幸一は、自由奔放な彼を捨て置けず同居をすることに。「捨てたくなったら捨てればいい」という言葉の裏にある槇野の想いに気づく幸一だが、本当の意味で救いの手を差し伸べることができない。次第に恋人・久美との仲も危うくなるほど抜き差しならない関係になっていく二人が、年月を経て辿りついた"幸福"とは…。

感想・レビュー・書評

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  • 最初に言っときます。
    ★5つの評価は、同時収録されている【ヒカル】に対してであり、
    表題作への個人的評価は★1どころかゼロでも良いと思ってます。

    実際とても評価の分かれる作品ではありますが【ヒカル】に登場する
    光久が主役である【晴れの雨。】を読んでると、本当に
    文句なしに光久と和隆が最終的に恋人同士になってよかったと
    思いました。
    あんなに綺麗で、切なくて、悲しい別れがあった光久が、
    木生を心の中に大切に住まわせたまま幸せになる結末は、
    これ以上ない素敵なハッピーエンドでした。

    正直表題作の【カラスとの過ごし方】に出てくる幸一は
    刺身のつまくらいでしかなく、読んでたらもう色々と胸糞悪いの
    なんの……彼女まで死ぬほど鬱陶しいタイプの女で、
    こういう子、職場にもいるわぁ……みたいな本当に色々と
    腹立たしい。
    一番腹立たしいのは幸一のどっちつかずな態度なのですが、
    光久と結ばれた後にも和隆が自分を卑下して幸一を庇うのには、
    光久じゃなくてもイラつきます。

    辟易しながらダラダラと続く男女の痴話喧嘩と三角関係を
    読みながらふと思ったんですが、はっきり言って幸一の存在って
    別になくっても良かったんじゃ……。
    絶望してたときに拾って飼ってくれた存在がいた、くらいに
    匂わせて、全編【ヒカル】で構成してくれた方が嬉しかったです。
    そんなわけで、もっとじっくりと光久と和隆が惹かれあっていく
    過程を読んでみたかったです。
    「死んじゃいたい」が口癖のようになってた学生時代の光久が、
    「死にたくない」と願っていた木生を亡くした後に、どういう
    風に生きてきたのか、そっちが気になって気になって!

    もう一度【晴れと雨。】を読み返そうと思います。
    新装版という形で出版されないかな、とちょっと期待しても
    いますが、中々難しいんでしょうね。
    絶版で入手困難ですが、この作品と合わせてぜひぜひ読んで欲しいお話です。
    この作品だけ読んでたとしたら、私も幸一が和隆と結ばれたら
    良かったのに、と思っただろうな……。

  • まさに異色のBL。
    今まで読んできたBL小説とは全然違う雰囲気のお話です。
    ハッピーエンドが好き!という方は、ちょっと……なってしまうかもしれません。悲恋や切ないお話が好き!という方は良いかもしれません。
    私は割と何でも好きなので、胸をきゅーっとさせられながら読みました。

    男の先輩に惹かれつつも、常識、普通という枠から抜け出せず、覚悟もできずに思い悩む主人公の姿は、少々イラっとしてしまいました…。
    ですが、それは誰しもがそうなのかもしれないと思うと、共感する部分もあり、なんとも言えない気持ちになりました。
    というか、主人公の彼女だったり相手の先輩が綺麗な存在すぎて、悩んじゃうし比較しちゃうよな……。うん……。
    そして、まさか「晴れの雨」のキャラクターが思わぬ形で出てくるとは!読みながら、やられた!とドキドキしました。

  • BL本って括りで読むより、恋愛ものの作品だと思って読んだらいい。切なくて、苦しい…。

  • 積読だったので、本棚の整理がてら読破。
    人それぞれ愛の形がある、それには賛成。オチがBLじゃないとかNLは認めないとかそんなことを言うつもりもない。ストーリー自体がダメだったわけでもない。
    ただ伝えたいことが伝わらなかった。主の話の始まりと終わりが乖離してる気がする。要はちぐはぐかな、という感想。
    ふうん、そっか。で?としか言いようがない。キャラが薄い。薄いわりに設定にリアリティがない。
    BLはファンタジー!ではなく、リアリティな恋愛であると言いたいのであればもう少し練って欲しかった。
    ぶっとんだ非日常でもリアルな現実でも、それを貫いてくれれば評価は高かったかなあと。わたしの中では惜しいかな。

  • 幸一とカラス先輩はズブズブの共依存関係だなぁ……というのが一読しての感想。
    生きる気力を完全に失ったカラス先輩にとっては自分を繋ぎ止めてくれる幸一は手離せない存在だったんだろうけど、半ば飼い殺しのように見えて辛い。
    真剣に恋をしてお互いに向き合った結果として、こういう選択を選ばざるを得なかったんだろうなと。
    「先輩を放って置けない、一人にしたくない」と友人や恋人との関係に支障が出るまで二人でいる事に逃げ込んで行くあたりは見ていて痛々しくて堪らなかった。
    澱のようにぐらりと揺れる感情が穏やかにそっと掬い上げられていく透明感溢れる文章はどうしようもなく一つ一つが胸に突き刺さりました。
    どうしようもなく悲痛でありながら、人と人がぶつかり合い、感情を重ね合う喜びがここにはちゃんとあって、そういった意味では幸一とカラス先輩の時間は幸福な時間だったとそう言えるのかもしれない。

    幸一との別れのその後、互いの喪失の痛みを受け止め合い、共に生きていこうと思える光久に出会えてよかったね、という気持ちでいっぱい。
    光久と二人で笑っている挿絵の屈託のない穏やかな二人の笑顔に胸がつぶれそうになりました。
    光久のまっすぐな強さは、文字通り「光」そのものとして暗闇を照らしてくれるような清々しさが心地よかったです。
    嫉妬や苛立ちをぶつけながら和隆の弱さも優しさも迷いも全て受け止めて、自分の中で生き続ける木生先輩ごと受け止めて愛そうとしてくれた和隆を可愛い、とまっすぐに愛して共に生きていく覚悟を決めた光久の強さと優しさは見ていて心地よかったです。
    幸一の煮え切らなさに若干イライラしたのできっちり啖呵を切ってくれた辺りには「いいぞよくやった!もっと言え!」的なカタルシスがあったり(笑)
    あとがきで朝丘さんが言っている「本当に書きたい物」が色濃く出た、清々しく穏やかな物語の締めくくりだなぁと素直にそう思えました。

  • 好き嫌いが分かれる、人によっては地雷だらけの話。斯く言う私も、朝丘さん作品でなければ手を出すのを躊躇う。バッドエンドではないし、これはこれでハッピーエンドなのだと思う。これは様々な愛の形の話。それはわかるけど、やっぱり和隆と幸一で幸せになってほしかったと思ってしまう。

  • 某挿し絵のシーンに涙。
    通勤時のお供に読んでいたのですが、最後の方は家で読了。正直、外で読まなくて良かった。笑

    ネット上の評価では賛否両論、異色のBLと評されていて気になっていたのですが。
    読み終えてみて納得。これは確かに好き嫌いが別れる内容だと思う。

    個人的には好きな部類。

    本来、BLはファンタジーなので、様々な困難や葛藤があれど
    最終的には二人の恋は成就するものが多い。
    けど現実的に考えれば、世間体や常識、周囲からの理解など様々な障害があるわけで。
    だから表題作の二人の関係も、これも一つの恋の結果だと思えば納得できました。

  • まさに異色のBL。評価が分かれる作品ですね。そして、ハッピーエンドじゃなきゃダメな人にはうーん…てなってしまう…。バットエンドなのかハッピーエンドなのかイマイチで…。
    槇野と幸一で幸せになって欲しかった( ;∀;)

  • 異色と言われてなんで?と思うのは、私があんまりBLと呼ばれるジャンルを読んでいないからかもしれない。
    BLの基本はハッピーエンドだというのは、ついこの前知りました。

    確かにハッピーエンドじゃないのかもしれないんだけど、ドロドロと膿むような感情を、独特の透明感ある文章に仕上げる作家さんの力はさすがだと思いますし、そもそも本を読む時にBLだからというジャンル分けは必要なのか?とも思います。


    さて、そういうわけで、これは、エロシーンとかハッピーエンドとかそういうBL必須要素を期待して読んではいけないということになります。
    むしろBLというジャンルわけをすっきり追い出してから読んだほうがいいかもしれません。
    でも問題は、BLじゃなかったらこの不協和音的なささくれた心持ちは生まれずに、作品の魅力もそのササクレ分だけ減っていたかもしれないという矛盾がここに在るということです。
    そういう意味では充分問題のある作品でしょう。

    ジャンル分けに関して問題を多く含む作品は実は私の好物の一種なので、朝丘さんと言う作家さんにますます持っていかれた気分です。

    澱を沈めた透明感をぜひぜひ今後も味わいたい。

  • 透明感は流石だし、朝丘さんが本当にやりたいことだったんだろうけど
    主人公は幸せにはなれてないよね
    救済のページが少なすぎてみんなが幸せになれてない気がする

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