- Amazon.co.jp ・本 (241ページ)
- / ISBN・EAN: 9784576990903
感想・レビュー・書評
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ssriの特徴が分かった ためになった
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読んですっきりした。
うつなどの治療法がSSRIがでてきてから薬物療法が幅をきかせるようになってきて、心の病が薬で治せるのかという疑問がずっとあった。この疑問を本書は答えてくれた。気分は脳内のセロトニンなどのホルモン影響下にあるので、SSRIなどによって気分は改善しうる。しかし、問題そのものは解決しないということだ。
著者も以下のように後書きで書いている。
人間の心には気分という領域だけでなく、もっと大切な局面がある。たとえば、愛、愛情、共感能力、人間の生きる糧となる「志」、さらには人間の精神のうち超越的な方向へ関わっている部分ー宗教意識である。SSRIは愛を深めることはない。SSRIはうつでの心の衰えを回復させることでその人が本来もっていた共感能力を発揮させることはできるが、共感能力そのものに影響を与えることはできない。自分は何のために生きるのか、広く自分以外の存在に対して何をなすべきなのかという点ではSSRIは無縁である。宗教意識にいたってはSSRIは何らの作用もしないし、というより、啓示にせよ神秘体験にせよ「苦悩を乗り越えて初めて人に降り立つ」というものなで、逆に宗教体験を持つ機会を奪うという側面を持つ。人間の成熟には苦悩は必須のものである。安易に薬で気分を改善していては、本物の人間としての経験は手にいれることができないという考えには多くの正しさが含まれる。
ちなみに、著者自身も、SSRIを投与して治療していくなかで、本来その人がもっているものがなければ、薬だけを投与しても問題解決に向かわわない(山田君:あまりにも未熟な患者さんへの処方の中止)などで学んだ得た感触のもよう。