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この作品からのみんなの引用
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食べることも嬉しいが、そのとき満たされるのはせいぜい味覚と嗅覚である。「ウド仕事」をしているときは、硬めの産毛に覆われているようなウドを触る手触り、それを剥くときのシャッという音を聞く快感と、立ち上る香りの清冽さ。酢水の中で透き通るような白と白緑の混交を見る喜び。切ったばかりの(まだアクの出ない)短冊を、酢水に入れる前にこっそり口に運ぶ喜び。文字通り、五感が沸き立つような経験である。こういうとき、ああ、料理というのは何と贅沢な喜びであろう、と、食べるだけの人たちに対して申し訳なくさえ思うのだ。
― 161ページ -
竹林は地下茎でどこまでも増えてゆく。たくさんの竹が生えているようだが実は全体で一つの個体といってもいい。竹の一本一本は同じ遺伝子のいわばクローンで、だから花も同じときに一斉に咲く。そういうい事情も、他の雑木林にない、しんとした静けさの理由かもしれない。そういう「脇目もふらず」的なゆとりのなさは、一方では悲壮感に近いリリシズムを感じさせ、幼いながらに私はたぶん、そういうところにすっかり「やられて」いたのだろう。
― 25ページ -
ひっそりとある、という風情が好きなのだった。自分を強く主張することもない、他の植物の陰になっていても自分が犠牲になっているなんて思わない、淡々と自分を往き切る、そういう日常の満ち足り方。だから華やかな他の花のように周囲に自分を誇る必要もない。
― 28ページ
みんなの感想・レビュー・書評
『からくりからくさ』『りかさん』を読んだ直後だったので、この本に通じる部分、というか、作者梨木さんの考え方とか生き方とかがすごくよくわかる。
いろいろと共感できることも多かった。
梨木さんの視線って好きだなーと思いながら読んだ。
梨木さんのいうところの魔女としての生き方という感じ。
穏やかに、ゆったりと時が流れるようなひとときだった。
草花を愛し、背筋をぴんと伸ばして、凛とした佇まいの女性。 彼女の作品に登場する女性はおおむねそういう女性で、それはそのまま梨木さんに対するイメージに繋がっていた。 作中、著者は『「西の魔女が死んだ」の「まい」と同一視されることがある』と記していたけれど、私はむしろ「西の魔女」の方が梨木さんのイメージに近く感じるなぁ、と思った(年齢云々という意味ではなく、知識や考え方、生き方について思ったのです... 続きを読む »
梨木香歩さんといえば有名な作品は『西の魔女が死んだ』。 私も大好きな作品で、そこからいくつか彼女の本は読んでいるのだけれどもエッセイは初。 ちょうどジュンク堂で彼女の本が飾ってあるセクションがあって (彼女は鹿児島出身だったのね。というのもこのエッセイで知って、納得) そこでなんとなくこのタイトルと、青い空と草という帯に惹かれて手に取った。 立ち読みしてみると「あ、これはゆっくりと読みた... 続きを読む »
季節の移ろい、動物たちの鳴き声、風に揺れる植物など、改めて自然を意識してみると、人生を過ごしていくうえの指針が羅針盤のようにたち現れてくる。エッセイを読み進めていくうちに、何度深呼吸が出来たことか。自然を慈しみそして畏怖して生きていけるのなら、人間も一種の動物としてアンテナを張りめぐらせて人生の荒波も乗り越えていけるのだろう。
著者の作品はいつも、極細の糸で緻密に編まれたレースを思わせる。
特にエッセイは、自らの確固たる考えを持った上で、ひとつの事象について真摯に冷静に思索を深める様がとても好きです。(自分が疲れている時には読み込めないんだけど...)
物語としてスピチュアルなものや輪廻とか前世とかを読むのは問題ないにです。
でもね、エッセーとか、実生活が描かれていることが前提となると話は別。
信じてないし、苦手な分野。申し訳ないけど、この本も苦手なものでした。
日々の感じ方の鋭さや言葉の精度がものすごい。
どうしても合わない人に対しても、切ってしまうのではなく、最低限繋がって、その人がどうにもならないときには助っ人となれるように、そういう、温かなスタンスが素晴らしいなあと思います。見習いたい。
しかしこの引き出しは、すごいなあ。自分が生きると言うことにきっちりここまで興味を持って体験しに行き、向き合うことは、なかなか出来ない。
ただ私は犬を飼ったこともないし飼う気もないがボルゾイが悪く言われていて悲しかった。勿論、それは買い主と躾の問題だけど。レトリバーは好きなわけではないから趣味が違うのだろう。
植物への穏やかな目。独特の古風な感性。素敵なエッセイ。梨木さんが、意外にも社会派(しかも結構強気の。)であることが新鮮な驚き。メッセージ性も強く、大人の女性向けの1冊。
読んでいると落ち着くのに、気持ちが高揚してくるという、幸せな本。言葉遣いや文章は静かに落ち着いているのに、それが表すところはとても瑞々しく、若さを感じる。共感できるところ、教わるところの多い、きっと何度も読み返すだろうと思える本。
作者は植物を愛しているが、固執はしない。育つがままを見つめてしまう目を持っている。それは世界の全てにも向けられ、見つめてしまう自分をも見つめてしまう。小説とは違う、進まない日常のエッセイでした。
一日一日を大切に過ごしているような印象を受けた。
自然にこういう感じ取りかたを出来るようになりたい。
以前、一連の作品を読んだ時にも感じたことだけど、彼女の感性のアンテナに引っかかってくるものとKiKi 自身のアンテナに何らかのシグナルを送ってくるものにはびっくりするぐらい共通項があるんですよね。 もっともそこから展開される物語(心情でもある)には大きな差があって、こちらがモタモタと「えっと、それは○○みたいなもので、でもそう言い切ってしまうのとはちょっと違って・・・・・」などと逡巡している間に... 続きを読む »
この人のエッセイ、作品が好きだからずっと避けてたんだけど、気付かなくてかりちゃった。
読んで、気付いた。
なんだ…。
だから好きだったんだ、わたし。
2011/9月
梨木さんのエッセイ。梨木さんのぐるりのことの価値観のコンテキストが表現されていて、良い本でした。
2007年から2009年にミセスに連載されたエッセイ~旅に出て,住む場所を変えて,人を見て,人に会って,本を読んで・・・考える~ ちょいと疲れるエッセイだ。「ぐるりのこと」だとか「渡りの」などを読んで,疲れる人だなあと考えていたが,1959年生まれ。直接知っている人として,鈴木まもるさんが出てきて吃驚したけどね。度々,「西の魔女が死んだ」が出てくるが,あれが彼女の絶頂だと思うのは自分だけではなく,彼女自身もなのだね,きっと
梨木さんの本は「からくりからくさ」がダントツで好きなのですが、これもそれに準ずるくらい好きな本になりました。
読んでいて、少しばかり薄ら暗くて、でも温かい居心地のいい本でした。
最近、覚えておきたい、気になる言葉とかがめっきり覚えられなくなってきたので(涙)自分でも買って手元に置いて、時々読み返しては、新たな想いになりたいと思いました。
梨木さんの本は裏寂しいけど、とてもホッとします。

著者の真骨頂である草木、鳥に関してのエッセイは三分の一くらい。
残りは彼女の感性の源が判るようなエッセイが続きました。
自身の作品について、感銘をうけた本についてなどアカデミックな分野から
日常...





