湯川秀樹 詩と科学 (STANDARD BOOKS)

著者 :
  • 平凡社
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感想 : 17
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  • Amazon.co.jp ・本 (217ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582531596

感想・レビュー・書評

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  • 日本人初のノーベル賞受賞者、言葉にうっとりする。難しいところもあるけれど、すごく面白い。論理の進め方が、物理をはじめとする理系だからかなぁ。仏教や文学、短歌の話もあり、とにかくエレガントな印象がある。湯川秀樹さんのような会話が出来る友だちが欲しいなぁ。読み進めながら「そうそう」と愉しい時間を過ごした。

    わたしは、言葉がうまく紡げないときは、数式やおんがくなど、国語とは遠いものへ目を向ける。新聞だったり、絵画だったり、自然だったり。遠いようだけど、詩や短歌、文学に近付いている感じがする。湯川秀樹さん、ありがとう。もっともっと、読みたいなぁ。

  • 文の組み立てや論の進め方が整然としていて読みやすい。旅行の思い出や文学の話から科学技術と平和、国家や世界の在り方まで、物理学者と儒教思想の両方の考え方を感じた。

  • TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』で、春と秋に「推薦図書特集」としてゲストや宇多丸さん、スタッフさんまで含めて本を紹介する回がある。
    その中で、今年2017年5月に放送された回の放送後に収録され、ラジオクラウドというアプリで聴くことのできる中で構成作家・古川耕さんが紹介していたのが、この『STANDARD BOOKS』という、学者による随筆を集めたこのシリーズ。前置きが長い。
    番組で紹介していたのは中谷宇吉郎の巻だったが、むしろこのシリーズについての話に惹かれた。
    シリーズを集めるモチベーションになりそうなかわいい装丁や、中のしおり、そして巻末の解説や関連書籍が素晴らしい、と宇多丸さんをはじめその回のゲストである番組にゆかりのある編集者さんたちが絶賛し、「エロい本」というパワーワードも飛び出してたので(内容はもちろんエロくない)無性に気になって書店へ。
    シリーズの何冊かを立ち読みしてみて、一番読み進めやすそうで、かつ興味があったこの『湯川秀樹 詩と科学』をチョイスしたが、僕にとっては大正解でした。
    まあまず何と言っても読みやすく、そして一編一編が短い。星新一のショートショート的な感覚で読み進められる。
    また、内容によって緩く章立てられており、(その章を区切るイラストも見事。これも星新一新潮文庫版の挿絵をどこか思い出す)科学について、紀行文、故郷の京都の話、そして戦争についてなど様々。
    特にタイトルにもなっていて、最初に載っている「詩と科学」は名文だと思う。
    また、科学者として戦争や人類のあり方について論じた最終章は一気に読み進めてしまう。
    一編一編読んでも面白く、それが一つの本として芯が通ってもいて、あまりこういう随筆集は読んだことがなかったせいもあってか新鮮な読書体験だった。

  • 持続可能な社会のための提言がたくさんあった。

  • 湯川秀樹先生(1907~1981)、1949年、日本人初のノーベル賞受賞者です。私が生まれた年ですが、そういえば、小学校の同級生に秀樹という友達がいました。「詩と科学」(2017.2)、著者ならではでしょうか、ユニークなエッセイです。詩と科学、遠いようで近く、近いようで遠い。出発点は同じ、どちらも自然を見ることからはじまる。薔薇の花の美しさをたたえる気持ちと花の形状を調べようとする気持ちの間に大きな隔たりはない。しかし、薔薇の詩をつくるのと顕微鏡を見るのでは方向は違う・・・。わかりやすいようで、難しく・・・、でも、なんとなく共感を覚えました。

  • 紀行文で述べている「ただ何となく楽しい落ち着いた気分」がよいというところに共感しきり。朝永先生にしろ、仁科先生門下(?)は実に懐が深く学問はもちろん感性も磨きぬかれている方々で尊敬と憧れの感でいっぱいです。

  • 15歳から68歳までの随筆集。幼い時の祖父から受けた漢籍の素読、父の膨大な蔵書の環境の中で育つことで教養の下地ができる。進路選択にあたり、教師の解答以外は評価しない不自由さを嫌い数学を離れ、手先が器用でないため工学系や実験物理を避け、理論物理に進むが、当時の量子論の台頭を先駆的に感知し、独学で進めた。精神の自由さと物事の本質を考え抜く姿勢が本書の論考に見られる。'人間万事、塞翁が馬'という寓話があるが、これをもとに少数意見に耳を傾ける重要性に触れている点は印象深い。

  • 端正な文章。論理的で理知的。
    特に若い頃の文章は、才気がみなぎっているとはこういうことなのかな。
    良質な文章という点では、読み応えがある。
    でも、こちら側の入り込む余地が少なくて、ちょっとしんどいかも。

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著者プロフィール

理学博士。専門は理論物理学。京都大学名誉教授、大阪大学名誉教授。
1907年に地質学者小川琢治の三男として東京生まれ、その後、1歳で転居した京都市で育つ。23年に京都の第三高等学校理科甲類(16歳)、26年に京都帝国大学理学部物理学科に入学する。33年からは大阪帝国大学講師を兼任し、1934年に大阪帝国大学理学部専任講師となる(27歳)。同年に「素粒子の相互作用についてⅠ」(中間子論)を発表。日本数学物理学会の欧文誌に投稿し掲載されている。36年に同助教授となり39年までの教育と研究のなかで38年に「素粒子の相互作用についてⅠ」を主論文として大阪帝国大学より理学博士の学位を取得する(31歳)。1939年から京都帝国大学理学部教授となり、43年に文化勲章を受章。49年からコロンビア大学客員教授となりニューヨークに移る(42歳)。同1949年に、34年発表の業績「中間子論」により、日本人初のノーベル物理学賞を受賞。1953年京都大学基礎物理学研究所が設立され、所長となる(46歳)。1981年(74歳)没。『旅人―ある物理学者の回想』、『創造への飛躍』『物理講義』など著書多数。

「2021年 『湯川秀樹 量子力学序説』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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