作家の食卓 (コロナ・ブックス)

制作 : コロナ ブックス編集部 
  • 平凡社
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本棚登録 : 231
感想 : 30
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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582634167

感想・レビュー・書評

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  • 「文豪と食」という本を読んで間もないが、こちらは食の背景まで撮った写真が豊富に掲載される。文字通り「食卓」。
    「文豪」のカテゴライズに留めおきたい永井荷風や檀一雄・澁澤龍彦・内田百閒・谷崎・織田作之助、立原正秋。
    寺山修司や白州正子、石川淳や色川武大に森瑤子・・・それはもう大変な人数だ。
    ゆかりの人物による回顧談や作品の「食」にまつわる箇所の引用。
    常連だった料理屋と料理、好んだおやつ、現存する4名の作家さんによるエッセイ。
    「食卓のポルトレ(肖像画)」として佐伯誠による5編のエッセイ。
    面白いのは「ことばの御馳走帖」として湯豆腐に関するエッセイが11編載っていること。
    ここには池内紀・淀川長治・梅原猛・大江健三郎など意外な面子の名前もある。

    料理そのものは一見して味の想像がつくものが多い。
    かなり庶民的なのだ。
    永井荷風がせっせと自炊に励む昭和22年の写真が貴重。
    七輪の前にしゃがんで何やら焼いている。なかなか真剣だ。
    檀一雄が肉屋さんの前で買い物籠を股に挟み、がま口から小銭を取り出す時の写真もある。
    買い物好き・料理好き・もてなし好きな素顔の持ち主だったというから、「無頼派」「破滅派」と称されるのは作品世界だけと知ることになった。
    そうだ、「壇流クッキング」という著作もあったわ。
    壇ふみさんも写っている家族の食事風景もあるし。

    池波正太郎や谷崎潤一郎、開高健などの食に関する記事は外でも読める。今回は他の方を。
    鴎外の娘・森茉莉の、下北沢の「邪宗門」での過ごし方が面白い。
    リプトンティーの淹れかたを店に教え、冷蔵庫の普及していない時代に自分で買った上質のバターや自作のおかずなどを置いてもらったらしい。
    他店で買ったものを堂々と食べたりもしている。
    いつも決まった席に座り、テーブルに原稿用紙を広げて仕事もし、周囲の話し声にも一切構わずここで眠ったという。
    ここまで読むと単に浮世離れした困ったお客様になってしまうが、さすがなのはここから先。
    彼女を訪ねてやってくる編集者や友人に、一度もこの店を紹介しなかったらしい。
    そして親密な手紙を店の主人宛に20数通も送っている。
    きっと「邪宗門」は、森茉莉にとって夢を紡ぐための貴重な場所だったのだろう。
    ほとんどお喋りもせず、たまに話すと小さな若々しい声でまるで女学生のようだったという店主の談がある。「女学生」という品のある表現が生きていた時代だ。

    旺盛な好奇心と探求心で生き抜き、作品に著した作家さんたち。
    何となくその場しのぎで食べていては作品に昇華しない。
    自身で工夫を凝らし、一心に食すことで見つめるものがあったのだろう。
    写真があることで「文豪と食」のようにイメージが立ち上る力はどうしても弱くなるが、思わぬ素顔をいくつも垣間見ることが出来た。
    作家さんに馴染みがなくとも、写真のおかげで親しみを感じることが出来る。
    読みたい本も見つかるかも。お勧めです。

  • いま、私のお気に入りの和食のお店は6軒で、すべてのお店に共通していることは料理と日本酒の種類が豊かで、ともに、とても美味いことです。高齢のご夫婦が営まれているお店の特製納豆や山芋のお焼きやオイルサーディンのなんと美味いこと!また、最近開業したお店では、とり貝と蕨の付だしから始まって、肝を絡めた鮑のほか数品の刺身の盛り合わせ、猪肉と根菜との炊き合わせ、若い雌牛の炙り、料理の合間に鰯や鰆の握り、そして〆に鯨のさえずりをいただきました。年齢を重ねるとともに、私の欲望は日本酒と和食に収斂しそうです。

  • 美食家、健啖家、大食漢等々稀代の作家たちが毎日、朝昼晩、食べていたメニューwp再現、知らなかった作家たちの素顔が見えてくる。

  • 文学

  • 十人十色、様々な食卓模様。
    ご本人の食に関するエッセイからの抜粋+周囲の方の懐かしみを含んだエッセイの構成が良い雰囲気。
    夕顔と貧乏サヴァラン読んでみたい。

  • 永井荷風の料理姿には親近感が湧いてきます。踊り子たちに大人気なのもうなずけます(^-^)この地上で買い出しほど好きな仕事はないと買い物かごを提げて商店街へ向かう壇一雄カッコいいです(^-^)色川武大、一日六食の日常メニュー、いくらなんでも(ーー;)邪宗門(喫茶店)が開店時入って、本を読み原稿を書きうたた寝して閉店まで過ごした森茉莉(^-^) 作家の食卓は自由気まま、個性溢れる世界ですね!

  • はっとりさんが本当によく読む料理本
    あたらしい食のabc

  • 元は雑誌の特集だったものを再構成したらしい。とりあえず読後の第一声は「お腹すいた!」だった。

    どこか懐かしみと親しみある料理、ちょっと気取った料理、とにかく色々な料理の写真や話ばかり。エッセイにしろ、小説にしろ、食べ物に関する描写が盛りだくさん。

    湯豆腐の話を延々とされ続ければ、そりゃあ湯豆腐が食べたくなる。

    日本の作家の人柄と、食へのこだわりがにじみ出ている。とにかく扱う作家の数が多い気がした。作家という生き物は皆、食に関してここまでこだわるものなのか、と思ってしまうくらい。

    作品を通じてしか知らなかった作家の日常が、奥さんやその子供、または友人知人の類から語られる。聖人君子のようなイメージのある作家たちが、人間味を増して行くのを感じた。

    お腹がすいたなぁと同時に、この作家の本、ちょっと読んでみようかなぁと思わせる。

  • 池波正太郎の食エッセイが好きで、ヘミングウェイの食べ物の描写がとても好きです。ゆえに食べ物の本は手に取りたくなります。
    この本の写真はあまり美味しそうに写っていないんですが、ただの文字のが美味しそうに思えたりする美文にめぐり会えたりして文字って中々やりよります。作中にあったわかばのたい焼きが美味しそうで(ただ撮った写真なのに造形が美味しそうだった)近いうちに買ってこようと思いました。首都圏に住んでいて良かったと思えた瞬間。某何某氏が”仙台で入りたいと思う店がなく東京着いたら行きつけの洋食屋何某に行こう”とあって、ム!と思いました。美味しいお店、仙台にもありますから。

  • 再再読くらいかな。文豪が愛した食べ物!見てるだけで豊かなキモチ。

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