- Amazon.co.jp ・本 (260ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582705089
作品紹介・あらすじ
「家族」が多様化する現在、「nLDK」「51C型」といった従来の標準タイプを現代のニーズに合わせて今こそヴァージョンアップ!上野千鶴子がその論考とともに山本理顕・隈研吾らとの対話をとおして「住まい」の再構築を目指した、もっともエキサイティングな住居論。
感想・レビュー・書評
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家族と住居はセットになっているはず。そこに注目して「建築」を考察することは当然。言われているように、建築家は必ずしも家族を念頭に置いて住居を作らない。行政も第四のエージェントを交えるような形で計画を進めない。思想にも縦割りが入りこんでいるのでしょうね。
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「家族や社会が変わっているのに、住宅はなぜ半世紀も基本プランを変えないのか」
建築家の仕事
建築家は空間を設計します。空間を設定することによってコモンな人びとの集団、すなわちコミュニティを実現しようと考えます。
家族モデルの変遷
nLDKのモデルが(n+1)LDKのモデルに変わるということは、家族の人間関係がなにかしら根底的なところで変化した、ということを示唆してはいないだろうか。たとえば、夫婦寝室という異性愛の性関係を前提する空間がなくなれば、そこに住む家族(いえ・ぞく)は、同性どうしでもかまわないし、血縁関係がない他人どうしでもかまわないということになる。 引用ここまで - 22ページ
「家族の世紀」の終わり
30代前半で女性の非婚率は3割近く、男性は4割
生涯非婚者は人口の2割近くになるだろうとされている
子育て終わり、配偶者に死別離別するとまたシングルになる
シングルは孤独、という思いこみはうそだ。家族とつき合わない分だけ、友人たちと深いつながりをもっている。老後は不安、も正しくない。子どもの数がひとりやふたりでは、老後の不安は子どもがいてもいなくても同じ。なまじ子どもに頼ると、かえって子どもの生活を破壊し、親子関係がこじれるもとになる。いずれにしても、いつかはシングル、になるのが誰の人生にとっても避けられないなら、シングルを基本にした人生と社会システムの構築が求められよう。 引用ここまで - 32ページ
上野 結婚の戦後民主主義は、男の間での女の平等分配でした。つまりどんな男でも一度は結婚できる、女が一人は当たるという。累積結婚率という統計によれば、四◯歳になるまでに、死別、離別を問わず一度でも結婚した人の割合が、六◯年代の半ばに男が九七%、女が九八%を越えた。これが日本歴史上、瞬間最大風速でした(笑)。この後は低下しますから。 - 38ページ
依存的なメンバー
もし社会なるものが独立した成人のためだけにつくられるべきなのだとすれば、「家族」など必要あるまい。しかし、たとえ成人だけからなる集団が存在するにしても、時間と運命によって、つまり高齢化と病気によって、その集団のありかたはじきに変化せざるをえなくなるだろう。
104ページ
首都圏では標準世帯(夫婦と未婚の子)は少数派(三割台)、単身世帯も三割を超えている
全国でも単身世帯は二割
標準世帯が少数化したということは、育児・介護の機能は住宅の内部にとどめることができなくなったということを意味します。介護保険は介護の社会化を実現しましたが、ここに育児をつけくわえて、育児・介護の社会化はもはや必須の条件です。したがって、家族の内部にあった機能を外部に組み込んでいく、つまりコモンの空間に育児・介護という機能を組み込んでいくことが必要になるでしょう。
124ページ
住宅というユニットはそれだけではもはや完結しない
外に開かれる可能性
血縁、地縁、社縁、第四の縁「選択縁」
グループホーム
コモンスペースがデイケアのビジターの人と共有のところもある
これから介護保険で他人がどんどん家の中に入ってくる
個室が集まった僧院型でなくてもいい
個室にベッドがなくてもいい
ベッドがコモンスペースにある場合もある、雑魚寝とか
セックスが関係なければそれでもいい
住宅にもうちょい開かれる要素が入っていい
鉄の扉で閉ざされたものでなく、ガラスで見えるように 縁側的なとか
仕事場を組み込むとか
住居は家族のための閉鎖空間からもう一歩進む
メシ・フロ・ネルの食と性に特化した空間から
ラボ機能を組み込むとか
山本「居住専用の住宅だけが集まった集合住宅は異様だと思います」
上野「介護と福祉は一人では担いきれない」
マルチインカム
下層はシングルインカム、ダブルインカムでもやっていけなくなる
小銭をかき集める装置を住宅に組み込まないといけない -
建築観の変わる本。
山本理顕を「空間帝国主義」(空間設計によって人間生活には影響を与えられるというポジティブ?な考え方)と評しているが、建築家というのはそもそも大体がそういう人種なのである。上野は、現代における家族の住まい方に係る社会学的分析を通じて、その「そもそも論」に正々堂々と立ち向かっている。 -
上野千鶴子節が対談形式でさく裂。彼女を知らない人が読んだら、なんだ!?と思うだろう。
家屋というハード面と、そこに入る家族というソフト面でのとらえ方が興味深い。建築家と社会学者の異文化接触。 -
学生時代「郊外化」をテーマに調べる中でこの本を読みました。
山本理顕さんとの対談がとても面白かったです。
この本自体は社会学に加担した内容ですから、そのように論説が進められている所もありますが、建築というちょっと違う視点で「家」や「家族」を覗いてみるのも、なかなか面白いと思います。 -
タイトルが気になって読んでみたみた。
「パブリックセックスとプライベートセックス」
ハコ関係ないけど、この言葉がものすごく頭に残った。
あとは色々な家族の形と建築家が創りだした家との関係を探っていくのが面白かった。
老後の心理問題で一番大きいのは、自分が弱者になったという変化を受け入れられないということ。 -
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家を建てる時にどんなことを気をつければよいのか、
ってことの一つの指標にはなるかも。。。