精神史的考察 (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (301ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582764697

作品紹介・あらすじ

自分の頭で考えること、想像力を高めること、敗北の経験から学ぶこと、その糧を求める人々へ贈る。精魂を込めた最高傑作。

感想・レビュー・書評

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  • 収録されている全ての論文に通底するのは、「敗北者の経験」・「劣者の劣位性」の立場に身を置きつつ、そこから強大な権力に立ち向かっていこうとする挟持である。
    「書く」という行為につきまとう売名的性格からできるだけ遠くに位置しつつ書かれたこれらの論文は、どれも燻し銀のような輝きを持っている。

  • 丸山真男の弟子であり「戦後精神」とは何かを考察し続けた思想史家、藤田省三が70年代から80年代に発表した文章を纏めた論考集。最初にある「或る喪失の経験」が何より素晴らしい。路地裏で行われていた子供達の遊び「かくれんぼ」を取り上げる所から始まり、戦後日本のあり方について考察しながらベンヤミンの「勝利者が心得るべきことは、敗北の経験を敗北者だけに委ねないことである」の言葉へと繋げていく。決して目に見えない存在である精神、それを言葉にするために誠実に考察を積み重ねよるとする姿勢には何より経緯を表したくなるのだ。

  • アメリカに亡命したドイツの思想家テオドール・W・アドルノの亡命生活についての分析と考察。

    理性・記憶・そして「客観的」という冷然たる思考の働きさえ、全ては「衝動」によって養われている。
    そして自分を育成した文化(生活様式)は同時にそういう「衝動」の母なる大地に他ならない。
    亡命生活の中に生ずる「母国語」喪失の問題もそれ自体として問題化するのではなくて今述べた「衝動」の母なる大地の喪失と分かちがたく結びついて出て来るものである。
    言い換えれば「文化的障壁」などというものよりは「認識の歴史的次元の喪失感」。
    その感覚を体感した時、喪失感を逆に「地盤」とし直す所に認識者の土壇場の健全さが窺い知れる。

  • 1982年の再刊。個人的には「市村弘正「都市の周縁」をめぐって」が
    よかったです。こういう書評が書けるようになれれば、よいなぁと思う。

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