「父の娘」たち (平凡社ライブラリー)

著者 :
  • 平凡社
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本棚登録 : 89
感想 : 9
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  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582765793

作品紹介・あらすじ

「あるがままのわが身を美とみなす不遜のわざだけは、さいごまで自分には無縁のままにとどめたい。美意識とはおそらくそういうものではないだろうか」無欲で、精神的で、非妥協的な「少女」とは、いったい何者なのか。森茉莉とアナイス・ニンという「少女」を通して解き明かす「不滅の少女」論。

感想・レビュー・書評

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  • 奇しくもこの二人は1903年に産まれた、同い年の作家。森茉莉は父に溺愛されて、まるで近親相姦を匂わせるような『甘い蜜の部屋』を書き。一方アナイス ニンは身勝手な父に捨てられたことによるトラウマを、後に実際に父親と愛人関係を結ぶことで克服したその過程を『インセスト』に書き記している。まさに表裏のファザーコンプレックスといってもいいこの二人を並べて論じるのは新鮮な試みだ。でも、この興味深い試みも結局着地点を見つけられず曖昧に終わっている。

  • 矢川澄子による森茉莉とアナイス・ニンの『少女論』。森茉莉の『甘い蜜の部屋』、アナイス・ニンが書き残した膨大な『日記』から、彼女達が抱えていたファザー・コンプレックスを探り出す。森茉莉が如何に父・鴎外を愛し、また彼も茉莉を溺愛したのか。父娘の恋愛のような深い結びつきは正しく『甘い蜜の部屋』だ。アナイスもまた父を愛したが、森茉莉とはベクトルが異なり、こちらは陰画とも言うべき、暗い影がまといつく。野溝七生子、尾崎翠についても言及しており、少女とは何か?を考察している。高原英理さんの解説も興味深い。アナイス・ニンの著作である『日記』は買ってあるので、近いうちに読みたい。

  • 図書館

    森茉莉とアナイス・ニンについて。
    一番興味深く面白かったのが、
    犀星と茉莉 ー「蜜の文学」の系譜の章だった。
    『甘い蜜の部屋』と『蜜のあはれ』の血縁性...

  • アナイス・ニンの章が面白く読めた。彼女の日記も読んでみたい。森茉莉、アナイス・ニン、野溝七生子、尾崎翠。。。

  • 森茉莉さんと矢川澄子さんの対談がとってもおもしろかった♬

  • 著者の定義する「少女」ー「自分の身が生殖・繁殖のために外に向かってひらかれていることを自覚していない」、「かぎりなく精神的な何者」か、である森茉莉、アナイス・ニン、野上弥生子、尾崎翠、野溝七生子へ捧げたオマージュ。『甘い蜜の部屋』、『アナイス・ニンの日記』、『第七官界彷徨』、『山梔』によって描かれた「完全な少女」論。親しかった森茉莉、野溝七生子の老いと死について「幸福」と書いて見せた矢川澄子の最期を考えると余りに痛ましい。

  • ★★★★★

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著者プロフィール

東京生まれ。東京大学文学部美学美術史学科中退。著書に『架空の庭』『わたしのメルヘン散歩』、翻訳書に『おばけリンゴ』(福音館書店)、『キスなんて大きらい』(文化出版局)、「ババール」のシリーズ(評論社)ほか多数。

「2018年 『タイコたたきの夢』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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