- Amazon.co.jp ・本 (331ページ)
- / ISBN・EAN: 9784582766677
作品紹介・あらすじ
目で見、匂いを嗅ぎ、触り、持ち上げ、落とす…私たちは肉体的感覚の相互作用を通して物を知る。その経験の元締めが心眼(マインズ・アイ)であり、思い起こされた現実と思い描く工夫のイメージの座、信じられないほどの能力をもつ不思議な器官である。科学と技術の歴史のなかにその働きをたどり、現場軽視と数式・計算偏重の現状に警鐘を鳴らし、モノヅクリの根本について再考を促す。
感想・レビュー・書評
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井戸を掘る為に副読本として読んだ。
現場の実感や経験則によって、失敗によって現在の技術による社会の「栄光」があることがよくわかる。同時に数学や物理理論では説明できない、現象など五万とあり、机上の中で組み立てることではなく、現場の技術屋の心眼が正に評価されている稀有な書。
栄光に胡座をかくこと無かれ、ということですな。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
見える化の促進で、設計思想から各種計算結果をすべて記録し、過程をトレースできるようにすることがもとめられている。しかし、直感的、感覚的、思いつき、好みは記録したところでどうなるものではない。しかしまさにこれらが設計対象の質を決める、という記述にうーむと唸る。解析は重要ではあるがメインではなく、あくまでも構造体実現のためのごく一部の道しるべにすぎないとし、解析至上主義に警鐘を鳴らす。数十年前のコンピュータがまだへろへろだった時代にも関わらず。
本書後半にある、技術者はトラブル発生時に、己が正当性ばかりを主張し、ミスをみとめない傾向が強いとの記述にもどきり。気をつけねば。数々の悲惨なリコール事故が正直あまり生きていないように見えるが、その小型版は日々どこかで、自分で発生している。
・・・などなど色んなことを考えることが出来る良い本でした。 -
本書の主題である、設計時に「直感」や「像」や「非言語的な思考」が重要であることについて、特に異論はなかった。でも、いまひとつピンとこなかった。それは、現状ではそうかもしれないが、いずれ克服しなければならないことだと思うから。単に経験や技能が重要というだけでなく、ではそれを不要にするにはどうしたらよいか、という話が聞きたかった。
染みこんだのは1点、主任技術者にはスパーリング・パートナー(論争相手)をつける必要があるという箇所。自分の経験から言っても、主任技術者だけでは納期やコストなどの外乱に無意識に影響されて、安全性は担保できない。そして第3者的な設計レビューは大して機能しない。スパーリング・パートナーが重要と思う。
「~主任技術者が入手するあらゆる情報に関知している年長の技術者で、主任技術者がその意見や勧告を無視することができないような地位にある」 -
土木・建築・機械系技術の読み物。
技術者が開発や製造の過程で用いる「経験と観」と理論の関係について簡潔に。
現役エンジニアには表層すぎて面白くないでしょうし、門外漢ではディテールがわからないだろう、工学に興味のない人ならそもそも手にとらない。
じゃあこの本を面白がるのは誰なんだ?そんな「面白がる人をやたら限定する」本です。
職人志向の読書家エンジニアなら一読してもよろしいかと。