昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)

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著者 : 半藤一利
  • 平凡社 (2009年6月11日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (548ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766714

昭和史 1926-1945 (平凡社ライブラリー)の感想・レビュー・書評

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  • 張作霖爆破事件から太平洋戦争の終結まで、なぜ戦争が始まり、戦争が拡大し終結が遅れたのか、著者の平易な語り口でまとめた大書。日本の国民性の負の面が積み重なってしまった不幸な歴史をしっかりと見つめ、学び、同じ過ちを繰り返してはならないと思います。

    ・歴史はリアルな事実の塊、そこから学ぶべきことはとても多い。但し、各々がもっと歴史から「学ぶ」という気持ちを持つことが大前提。

    ・不都合なことは起きないこととするという発想、大局を踏まえ先々を見越そうとせず、現状を改めることをせず、個々の事象に対する根拠のない自信に基づいた行き当たりばったりの対処療法を積み重ねた結果の大敗。

    ・メディアの重要性を再認識。国民の熱狂が国を危うくする。その熱狂を引き起こすのはメディア。メディアは常に冷静で中立性を保たなければならない。

    ・国民はもっと政治に関心を持ち、関与しなければならない。政府の要人に付く人が「そんなことするはずはない」という前提ではダメ。

    ・後から振り返っているから「何て馬鹿なことを・・・」っと言えるが、今の日本でも同じような馬鹿ことを行ってないか?と常に歴史と照らし合わせて検証をしてみる必要がある。

  • 語り下ろしという形で書かれた昭和史。かなり読みやすく見通しがよい。著者自体の歴史評価については様々な意見があるだろうが(自虐史観だとか)、一つの見方として筋が通っている。昭和史とはいうものの、中身は陸軍・海軍の動きの話がほとんどである。政治は軍隊との関わりでのみ登場するし、戦前の文化について情報は少ない。まして経済状況、企業活動の記述などはほぼ皆無。

    著者の見方から言えば、太平洋戦争に結実する昭和史において、指導者たちは客観的事実に基づく判断をせずに見たいものだけを見て、精神論や建前・義理に引きづられている。「昭和史を見ていくと、万事に情けなくなる」(p.267)、「何とアホな戦争をしたものか」(p.498)というのが基調として流れる。読んでいるとなかなか暗澹たる気分になる本でもある。明治維新(1867)から始まる近代日本の建設は、日露戦争(1905)までのおよそ40年間でピークを迎える。それ以降の40年間は敗戦(1945)に向かって国が滅んでいく過程である(p.500)。ちなみに言うと、戦後は高度成長期を経て約40年間で再びピークを迎える(バブルを経て日本経済が凋落するきっかけの一つであるプラザ合意は1985年)。そこから国が滅んでいく40年の過程に我々はいまいるのかもしれない(2025年に何が起こるだろうか)。

    ひとまず著者の歴史観に乗るとして、軍部の暴走を政治(や軍部の上層部でさえ)が止められなくなった原因は2つにある。一つは昭和天皇の沈黙(p.50f)。田中義一首相にあれこれと介入した挙句、田中義一内閣が倒れ、田中義一本人も病死してしまう結果に至る(1929)。これが昭和天皇および元老、侍従長といった天皇の周囲の人間にトラウマを残す。これ以降、昭和天皇は「君臨すれども統治せず」となり、終戦の決定までほぼ沈黙となる。明治憲法の根本的な欠陥として、軍隊が内閣の管理下になく、天皇が大元帥として統括する。したがってその天皇が沈黙する以上、軍隊を最終的に統率する人間がいなくなってしまう。
    もう一つの原因は2・26事件にある。これ以降、軍内部のクーデターを恐れて、軍の上層部でさえ青年将校を始めとする血気盛んな意見を止められなくなってしまう(p.301)。上層部は主張しているのは自分たちでなく部下であるとして心情的に責任を転嫁、下層部は黙認とはいえ上層部は許可したのだと考える。ここに誰も責任を取らない体制ができあがる。しかし問題は2・26事件そのものより、それに対する広田弘毅内閣の対処である。これは「とんでもないことばかり」(p.147f)。まず軍部大臣現役武官制の復活。これにより軍部が反対して陸軍大臣・海軍大臣を推挙しなければ政治が止まり内閣が倒れるという事態が生まれる。さらにドイツとの防共協定。日独伊三国軍事同盟への道を拓く。三番目に陸軍と海軍の話し合いにより、南進論が決定されたこと。

    また大きなファクターとしてはワシントン条約による海軍軍縮(p.28)、国際連盟離脱による国外情報の謝絶(p.114f)がある。とはいえ、高橋是清を中心とする軍事費削減の話の件はあまり出てこない。

    他に印象に残るところは1933年の大阪府警察と陸軍の対立に見る、軍国主義への最後の抵抗(p.123-126)、陸軍内の統制派と皇道派における階級闘争(p.147f)、陸軍との対立を避け、軍事費を確保するために(アメリカとの戦争になったら勝てる見込みが無いことが図上演習で何度も明らかになっているのに)三国同盟に賛成する海軍(p.299f)。山本五十六の残した言葉が心に残る。「内乱では国は滅びない。戦争では国が滅びる。内乱を避けるために、戦争に賭けるとは、主客顚倒もはなはだしい」(p.300)。

    陸軍の暴走ばかりが目立つような記述だが、海軍善玉説には乗らないようにバランスを取っている。海軍がまともな判断ができたのは米内光政、山本五十六、井上成美という三人がいたからであって、この三人がいなくなれば海軍も無謀な主戦論一方になったと言う(p.246f,288-294)。

    著者が昭和史から導いている5つのポイントを記しておく(p.503-507)。(1)国民的熱狂に流されたこと。この傾向はいまでもよくある(反原発ブームなど)。(2)抽象的な観念論を好み、具体的・理性的な方法論をまったく検討しない。(3)参謀本部と軍令部に見られる、小集団エリート主義。ある認められた立場の人間の意見を除き、他の意見を認めない。(4)国際常識の無さ。ポツダム宣言の受諾は単なる意思表明で、降伏文書の調印をもって発効するという認識がなかったのでソ連侵攻を招いた。(5)大局観、複眼思想のない対症療法、すぐに結果を求める発想。

    それにしてもここまで陰鬱な気持ちになる読書も珍しい。歴史評価というのは難しいものだが、あまり入れ込みすぎる歴史書もどうかと思う。入れ込むのであれば、そのような事態を引き起こしたものが何なのかを語らなければならない。ただ悲惨でアホな出来事が起こったとか、人物を糾弾することには意味が無い。昭和史から5つのポイントを引き出すなら、それらを生み出したものが何のなのかを考えなければならない。畢竟、それは明治憲法を始めとする明治政府の構造に由来してしまうので本書の範囲を超えるのかもしれない。この点ではとても薄っぺらく感じる一冊だ。

    おそらく著者に欠けていて、この本を薄っぺらくしている視点は、「国民」だろう。太平洋戦争は単なる軍部の暴走とそれを止められない指導部によってなるのではない。国民自体が戦争を煽り、さらなる戦果を求め、政治や軍をけしかけた側面がある。それはマスコミと一体になって進行した。こうした側面はこの本から根本的に欠如している。それはマスコミが開戦に果たした役割に目を向けられない、著者(元新聞記者)の限界かもしれない。

  • 厚さ約3cmの文庫本で、借りてきた時は一瞬「うぉ」っと唸ってしまったが、ちまちまと通勤電車や寝る前などに読むうちに、すっかり引き込まれて、気がつけば読了していた。

    内容は、その名の通り、1926−1945、つまり昭和の初めから終戦までの通史。

    ところどころ、著者の個人的な考えが出てくるが、概ね客観的で偏りは少ないと思う。にもかかわらず、文体のリズムは小気味よく、小説のように読める。

    半藤氏の本はこれが初めてだったが、昭和史の続編(戦後史)や、注釈で出てきた他の本も読んでみたくなった。

  • 黒船来航から明治維新を経て、列強の仲間入りを果たした日本。昭和に入って、自らの力を過信して、結果的に敗戦という結果を招いたのだと思う。戦況が芳しくなくとも、そういった不都合な真実にはひたすら目を背け、抽象的・扇動的イデオロギーを信奉する姿勢。数百万人の命と引き換えにするにはあまりにお粗末ではないか。読んでいて、胸が痛くなる。
    敗戦から72年が経過して、我々の生活もまるで変った。しかし、日本人の根底にある甘ったるい精神構造はそこまで変わっていないのではないか、と不安になる。福島第一原発事故、大企業の製品欠陥、探せばいくらでも出てくる。「何とかなる」では済まされないし、起きてからでは取返しがつかない。
    現代の日本に住んでいれば、戦争なんて縁遠い話にしか聞こえないというのも理解できなくはないが、惨事を招いてしまった原因に目を向けて己を律しない限り、また別の形で惨事は発生してしまうのではないか。歴史を学ぶ意味はそこにこそあるのだと強く感じる。

  • 終戦の8月であったことと、近代が弱いのを補うために読みました。半藤さんの著書は2冊目。

    掲載されている年表を整理して、太平洋戦争をゆっくり考えてみたいと思う。マスコミが煽ったのか国民のムードは異様だったし、インパール作戦など無責任な軍部。学んで同じことを繰り返してはいけない。

  • かなり厚みのある本なので「読むのに時間かかりそうだな」と腰が引けていたけれど、いざ読みはじめてみると頁を繰る手が止まらない。
    日がな一日夢中になって読んで、結局一日で読み終えた。

    ある出来事がどういう意味を持ち、その後の意思決定にどのように影響していくのか、要点を押さえて、しかも軽妙洒脱な語り口で説明してくれており、読んでいて飽きることがない。

    基本的には軍部をこけおろしているが、事実なのでしようがない。
    思わず笑ってしまうようなあほうなことを本当にしているのだからしようがない。
    これらは一部の人が言うような「自虐史観」でも何でもないわけで、この本から伝わってくるのは「歴史から学ばなければならない」という切実さだ。

    何を学ぶべきなのか。

    最後に昭和のこの終戦までの20年から学ぶべきことを五つの教訓としてまとめているが、この五つの教訓も「驕慢なる無知」という言葉に集約される気がする。
    この「驕慢なる無知」を「見たいものしか見ない」という風に私は理解している。
    あの時代、上から下まで「見たいものしか見ない」人が多かったのでないか。
    その愚かさががどれだけ多くの犠牲を払ったか…。

    「しっかりと見なければ見えない、歴史は決して学ばなければ教えてくれない」

    うん、目を背けずに、進まなければならない。

  • 1926-1945:B210.7-ハン-1
    300524444
    戦後篇 1945-1989 :B210.7-ハン-2
    300524436]
    近年、日韓、日中の関係が以前に比べてギクシャクしています。これに関して多様な意見が出されていますが、特に若い人の意見の中には自分で歴史的な事実を勉強することなく、ネットなどに流される意見をベースにした意見が多く聞かれます。高校では習わなかった日本の近代史をまずは勉強して広い視野で現在の問題を考えて貰えればとおもいます。昭和史に関しては近年いろいろな立場からの著作が発行されていますが、先ずは手始めとしてこの本をお勧めします。著者の意見に疑問を感じたらさらに他の著者の昭和史を勉強して、自分なりの考えを持っては如何でしょうか。

  • 昭和の生の声。昭和を生きていない我々はこういった本からしか当時を知れない。知らんプリはできない。読む。読む。


     前から読もうと思っていたんだけれど、ちきりんのソーシャルブックリーディングをキッカケに読むことに。

     学術誌というより、半藤さんのおはなし。って感じ。だから読みやすい。わかりやすい、でも個人名(軍人とかの)が多いから記憶力が追い付かない。その点でギブアップする人は多い。でも頑張って欲しいな。

     個人名は気にしなくていい。大まかな流れを知るために読む本である。


     読書メモは人生最長の75項目に達した。疲れた。まとめるのも二週間かかった。それほど学べるところがある。


     まとめると、昭和の日本が太平洋戦争を始めたのは、満州を手に入れて大陸に土地を持つため。それに対する脅威に場当たり的に対処していったらいつの間にか周りは敵だらけになって、ついに日米開戦していた。そんな感じ。

     満州がどれだけ日本の経済力を上げる要になっていたとしても、コスパが悪かった。いや、当時はコスパという概念が無い軍人が政治に干渉したからだめだったのか。

     日本人は正義を語りはじめたら要注意。これが教訓。熱狂、ダメ絶対。

  • 太平洋戦争に進んだ一つの要因として、国民的熱狂が挙げられることはなんとなく知っていた。が、それが軍部を始め、天皇の意思決定にも強い影響を与えていたことは衝撃だった。対外戦争より、国内戦争を恐れたのは、保身としか言いようがない気がする。

    また、本文中には「抽象的観念論を好み、理性的な方法論をまったく検討しようとしない」国民性が度々指摘されている。自分の都合の悪い展開への想像力が欠けているという点は、今の原発政策にも繋がりそう。

    そのほかにも、
    ・ポツダム宣言≠戦争の終わり
    ・対症療法的な発想
    も今日につながる教訓だと思う。
    2016/4/17

  • 読みやすい

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授業形式の語り下ろしで「わかりやすい通史」として絶賛を博した「昭和史」シリーズ戦前・戦中篇。日本人はなぜ戦争を繰り返したのか-。すべての大事件の前には必ず小事件が起こるもの。国民的熱狂の危険、抽象的観念論への傾倒など、本書に記された5つの教訓は、現在もなお生きている。毎日出版文化賞特別賞受賞。講演録「ノモンハン事件から学ぶもの」を増補。

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