養生問答 (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (307ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582766967

作品紹介・あらすじ

気功、ヨガ、東洋医学、さらに民間療法からホメオパシーまで、最新の代替医療・統合医療の力を、作家と医師が本音で語る、国民必読の名著。病院不信の患者さんに贈る、一家に一冊の「現代養生訓」。

感想・レビュー・書評

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  • 二年前、首と肩の激痛に堪えられなくなったとき、ついに自力では立ち上がることができず、救急車で整形外科に担ぎ込まれました。このとき、医師が問診で「最近、なにか怪我や病気をしたことは」と聞くので、足首の靭帯を傷め、接骨院に通って治したと答えました。すると「骨接ぎ? あんなもの医者でも病院でもない」と吐き捨てるように言いました。人が人を鼻で嗤うというか、あからさまに見下した態度をひさしぶりに見た気がしました。

    現代医学の医者がすべてそうだとは思わないけれど、代替医療を小馬鹿にしている彼のようなタイプはすくなくないのかもしれません。現代医学だろうが中医だろうがアーユルヴェーダだろうが接骨だろうが、患者は治ればなんでもいいのです。そこをわかっていない。

    病気をしたり、怪我をしたりしたときは、誰だって治療する技術や資格をもつ人に頼らなければなりません。でも、病気や怪我を治すのは本人です。もっといえば本人のもつ生命力の勢いのようなものでしょう。医師であれ、理学療法士であれ、誤解を恐れずにいえば霊能者であれ、やれることはそのサポートにすぎません。どんなに医学が発展しているといっても、人は死ぬときは死ぬ。すべての医療は発展途上の学問であり技術なのです(さらに云えば、科学は永遠に発展途上のはず)。医者もヒーラーも神ではありません。患者自身も誤解してはいけないのです、なにより病気に、怪我に倒れたそのときに。

    とはいえ、もし○○するだけで治るだの、○○は万病に効くなどとと云われたら、飛びつきたくなるのが人情というもの。ただ、それは到底成立しない理屈です。
    結局はあれこれ試しつつ、直感に従ってじぶんに合った方法を選んでしくしかないのでしょう。それすらも固執せず、ある時期が過ぎて効果が感じられなくなったら、継続するか方法を変えるか、その都度判断していく。めんどうくさいけれど、結局これが治るかどうかはともかく、自分にとっては納得できる病気や怪我とのつきあいかたのような気がします。

    帯津先生は西洋医学に中医学やホメオパシーなど代替医療も取り入れ、東西医療の融合をめざすホリスティック医療の確立に取り組んでいます。わからないことはわからないと云い、医学的には実証されていなくても成果が上がっているものについては安易に切り捨てるべきではないと云います。アーサー・C・クラークが「高度に発達した科学は魔法と見分けがつかない」と云ったように、東西医療がもっと接近、あるいは融合することで、双方を補完できるのではないでしょうか。個人的にはそうあってほしいと願っています。

    医療だってビジネスです。治療技術の水準が高いところを選ぶにこしたことはないけれど、昔から「医は仁術」というように、最後にして最大の決めては医療従事者の人間性ではないでしょうか。病気や怪我とどうつきあうかは、まさになにをどう考えて生きるかという命題とおなじことだとわかります。融通無碍でありたいものです。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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