生死問答-平成の養生訓 (平凡社ライブラリー)

  • 平凡社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582767193

作品紹介・あらすじ

人間はどこから来て、どこにゆくのか?私たちはこれまでも幾度となく、その問いかけの声を聞き、そのつど日常の雑事にかまけて、ごまかしてきた。本書はその声にじっくりと向き合い、死後のビジョンにまで触手を伸ばし、死への恐怖や不安を、すこしずつ消し去ってくれる。生きる勇気と、死ぬ元気がでる本。

感想・レビュー・書評

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  • この二人の対談で面白くならないはずがない。

    お二人の生きること、死ぬことへのこだわりが私にとっても腑に落ちる話ばかりで読みながらずっとうなずきっぱなしです。

    読んでいると生きること、そして死ぬことも希望に満ちてきます。

    「野垂れ死」の話もすごくいいです。

    平成の養生訓の名に恥じない名著です。

    おすすめです。

  • クラシックバレエの演目に『瀕死の白鳥』という作品があります。一羽の白鳥の死の瞬間を描いた、ほんの2分くらいの小品なのですが、テーマがテーマだけに技術だけではなく内面世界の深い洞察力と表現力、情緒性が必要な難役といわれています。これまでにも初演のアンナ・パブロワはじめ、歴史的なプリマによって演じられてきました。もっともハイライトといえるのが、やはり終盤のこときれるその瞬間でしょう。ここはとくに踊り手によって表現が異なり、火が消え入るように繊細にくずおれるひともいれば、閃光のように生命力をいっしゅん輝かせてみせるひと、ふりしぼるような叫びが聞こえてくるかのようなひと、じつにさまざまです。そしてそれぞれにすばらしい。


    さて。
    「明日死ぬとわかっていてもするのが養生」とは、シリーズ3作を貫いている、五木寛之の決意表明のようなものだとおもいます。これは健康法についてだけ言っているのではなく、生きている限り“よりよい”とおもえる選択をしつづけよう、ということでしょう。もうすぐ死ぬとわかってるのに、なぜ“よりよい”選択をする必要があるのか。帯津先生のことばを借りれば、それは「命の目的は成長すること」だからです。つまり、死の瞬間こそ、命のピークというわけですね。

    『瀕死』という作品が観るひとの心を打つのは、そこに生命の輝きをみるからです。死の瞬間にこそ生はより勢いを増す、というのは逆説的に感じていましたが、帯津説よれば、むしろそれこそが素直な生命の流れなのかもしれません。

    “生命”というテーマは科学だけでは語り得ない分野です。生死がかかわる以上、語るひとの哲学や宗教観が絡んでくるからです。そのせいか、シリーズ3作ではもっとも歯切れが悪い。まあ生命の謎が解明されてないので、当然っちゃあ当然ですが、生命の真理とか養生の方法はひとつと思い込まないで、じぶんにとって“よりよい”方法をその都度選択していくべし、ということかなとおもいます。

    で、前回は現代医学の医者についてちょっとワルクチを書いたので、バランスをとるわけではありませんが、実際、医学で治るものは治せばいいのです。というか、医学の進歩のおかげで、たいていの病気や怪我は治癒するようになりました。日本では癌で亡くなるひとが増えているなどといわれますが、それは裏を返せば、医学が進歩したために、たいていの病気は治せるようになって多くの人びとはもはや癌でしか死ねなくなったと解釈すべきでありましょう。
    おかげさまで滅多にお世話になりませんが、病気になれば、わたくし迷わず病院に行きます。だって、医学の進歩で死亡率が減少している疾病のデータはありますが、たとえばホメオパシーで疾病による死亡率が減少しているデータはおそらくないでしょう。病院に行かないでレメディで治そうとしたら、まかりまちがうとヤバいことになってしまいます。いやホンマに。なので治るものは病院で治しましょう。治らないとわかったら、“よりよい”選択をしましょう。


    最後に私事ですが、クラシックバレエの最終目標は、いつか『瀕死』を踊ることです。それまでは死ねません(笑)。



    ※瀕死の白鳥(マヤ・プリセツカヤ)
    '59年 34歳
    http://www.youtube.com/watch?v=Y-AMH_Woywg&feature=related

    '75年の舞台 
    http://www.youtube.com/watch?v=Wpk7Kx4dt-U&feature=related

    http://www.youtube.com/watch?v=Luz5g-doa34&feature=related
    '86年 61歳の来日公演。
    この舞台を観たときは落涙してしばらく席を立てませんでした。いまでも『瀕死』といえばあの踊りが想い出されて目頭が熱くなります。もう20年以上前ですが。

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著者プロフィール

1932年、福岡県生まれ。作家。生後まもなく朝鮮半島に渡り幼少期を送る。戦後、北朝鮮平壌より引き揚げる。52年に上京し、早稲田大学文学部ロシア文学科入学。57年中退後、編集者、作詞家、ルポライターなどを経て、66年『さらばモスクワ愚連隊』で小説現代新人賞、67年『蒼ざめた馬を見よ』で直木賞、76年『青春の門筑豊篇』ほかで吉川英治文学賞、2010年『親鸞』で毎日出版文化賞特別賞受賞。ほかの代表作に『風の王国』『大河の一滴』『蓮如』『百寺巡礼』『生きるヒント』『折れない言葉』などがある。2022年より日本藝術院会員。

「2023年 『新・地図のない旅 Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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