完訳 日本奥地紀行1―横浜―日光―会津―越後 (東洋文庫)

  • 平凡社
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本棚登録 : 87
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (391ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582808193

作品紹介・あらすじ

イザベラ・バードの明治日本への旅の真実に鋭く迫る初版からの完訳決定版。正確を期した翻訳と丹念な調査に基づく巨細を究めた徹底的な注で、初めてわかる諸発見多数。

感想・レビュー・書評

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  •  帝国主義真っ只中の大英帝国の女性らしく、英国が絶対の価値観といわんばかりで、蛮人の国としての日本に対する上から目線を感じる。多様性が一般的になってきた現代の価値観から見れば違和感を感じるが、利益や損得ない描写的な分析は、当時の日本を正確に分析していると思われる。
     一部ネットで言われているように、日本賛美の一冊というよりは、日本を9貶して1褒める内容で、褒める対象は日本民族よりも日本の自然が多いという印象。
     英国絶対のバイアスはかかっているが、当時の日本の現実が具体的に見えてくる描写は参考になる。

  • 約150年ほど前、開国してまもない日本の、しかも内地を旅したイザベラ・バードの手記。

    とっても面白かった。内容は妹ヘンリエッタへの手紙の形式を取っているので、堅苦しすぎずエッセイ感覚で読める。それでいて、終始鋭い観察と考察、詳細な描写で書き出されているので、約150年前の日本の風景がありありと目の前に浮かぶ。英国人であるイザベラ・バードの視点は現代人の私たちに近いところがあって、旅の中で抱いた感情にも共感でき追体験できる。
    旅の中で見た日本のあれこれについて褒めることもあればかなり辛辣に書いているところもあり、その正直な感じにも好感が持てた。現代の感覚からするとちょっと上から目線に感じる所もあるかもしれないが、150年前の人間が書いた内容と考えるとむしろ視点がフェアであることに自分は驚いた。

    しかし驚いたのは、(バードが作中でしばしば褒めるところだが)150年前の、しかも田舎の村落であっても、日本人は礼儀正しく大人しかったということだ。別にだからといって「ニホンスバラシイ!」的な愛国主義を掲げたい訳では無いが、今より貧しく義務教育も始まったばかりくらいの世にあって、見たこともなかったであろう外国人に対しても無礼な態度をとる人が田舎でもそれほど居なかったというのは驚きだった。作中に出てくる日本人の振る舞いは、自分の知る現代日本人のそれとあまり変わらないように思えて、容易に想像できた。時代が変わっても国民性ってそう簡単に変わらないんだなと思うと同時に、日本人のこういうところって教育云々というよりも根っからの気質なんだなと思った。
    ちなみに、寺社参拝などの宗教行為が大衆にとっては行楽に過ぎず、また迷信的な信仰である(教義を学ぶ等ではなくご利益のある像に触って健康を祈るなどの行為が主になっている)という指摘も、今と変わらないなと思った。
    自分自身、寺社参拝は信心というよりも行楽感覚で行っているし、寺社にたまにある「触ると利益のある某」を触りまくって健康や多幸を祈りまくる日本人なので、自分のことを言われているようでおかしかった。

    研究者である訳者のこだわりも詰まっていた。本文だけでも分かりやすく十分楽しめるが、膨大についている訳注では作中に出てくる施設や地名の比定はもちろんのこと、ちょっとした比喩なんかで用いられた聖書の引用表現の元ネタまで突き止めていちいち書いてある。解題には先行の訳書の欠陥の指摘、それらを踏まえた本書のこだわりや必要性、意義について詳細に語られ、この訳者の方の並々ならぬ情熱を感じた。さらには本書を手に足跡を辿る楽しみにまで言及していて、訳者がこれを「研究の学術的成果」としてだけでなく、一般に楽しんで欲しいという願いも感じられた。

    期待を上回る面白さだったので、残りの巻も読みたい。

  • これは130年以上前の明治時代の日本を、日本人従者ひとりだけ連れて旅した英国のおばさん探検家が妹に書き送った日記である。
    概略を一言で言ってしまえば、終始歯に衣着せぬ物言いで日本を誉めまくっては貶しまくる大変正直で実用的な日本探検ガイドブックだ。
    日本の景色・日本人の気質・日本の建物や風物などは非常に高く評価していて誉めまくっている。逆に日本の衛生面・道路事情・迷信的習慣については悪態をついてつきまくる。しかしこの本からは先入観や差別感情は排除されているし、そうするように努めたとの記述もある。それは彼女の旅行が学術的な使命を帯びたものであることを彼女自身が自負していたからであろうし、また彼女が外国人未踏の地であった明治時代の北日本に(従者付ではあるが)単身で乗り込むような女傑だったという性格も無意識的に作用していたことだろう。
    また褒貶どちらの場合にもその様子については挿絵入りでたいへん細かく描写されており、現代の研究者をうならせるレベルで彼女が意図したとおりにその学術的な価値は高い。

    そうして可能な限りフェアに描写された明治日本をながめて思うのは、たかだか130年くらいでは当時の日本人の気持ちが分からなくなるほどには私たち日本人の気質というものは大きく変わるものではないということである。そして既に失われてしまった日本の風景とともにそこで暮らす日本人の様子が彼女の目を通してではなくまるで自分で見てきたようにありありと目の前に広がっていくように感じるのだ。

  • 『ふしぎの国のバード』元ネタ。バード一筋20年の研究者が訳した。第一部(横浜〜新潟)、第二部(新潟〜青森)読了。
    バードが書いた部分は率直な紀行文として非常に興味深いが、さすがにマンガの方は味付けされていて、文章の方は単調だ。同じような繰り返しが見られる。本書の半分は訳文で、半分は注釈。さらに訳者による解説文もたくさん付いてくる。原著者の書籍の訳書というより、訳者の研究論文である。昔、コンピュータ関係の書籍の翻訳者に岩谷宏と言う人がいたが、そんな雰囲気だ。

  • 明治の始めのイギリス人女性から見ても日本は既に礼儀正しく、治安もよかったのね。妹への書簡の形をとった本書は、やや上から目線に感じるものの、文化や習慣(特に衣食住と生活行動)の違いを良悪あわせて的確に描写したように感じた。

  • 当時の英国人女性の眼で見たニッポン。

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