大人が絵本に涙する時

著者 :
  • 平凡社
3.79
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本棚登録 : 229
感想 : 40
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784582833430

作品紹介・あらすじ

豊かな子供の人間形成と潤いのある大人の心の回復のために。柳田邦男が薦める80冊の絵本。

感想・レビュー・書評

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  • 著者がノンフィクションライターであるということを忘れてしまうほど、絵本との感動的な出会いを事細かに語る。
    心が動かされた体験だから多少なりとも大げさに感じられるのは仕方が無いとしても、これほどとは。
    なので、絵本のレビュー本として読むとやや読みにくい。よって星ひとつ減らす。
    紹介されている本は全部で80冊。
    選ばれた本の数々は紛れも無い名作揃いで、さすがの選書と感心してしまう。
    絵も文章も美しく、説教じみたものもなく、でも心に残るものばかりだ。

    とりわけ、亡くなられた息子さんとの思い出にからむ「星の王子さま」の章は、胸の奥にずんと響くものがある。
    わずか8ページ分だが、いのちについて、生きることについて、愛について、人間の存在について、深く静かに考えさせられる出色の章だ。
    著者の文章が、深い悲しみにとらわれているように感じるのは、息子さんの死が影を落としているからなのだろう。
    著者の「犠牲」を読まれた方は、たぶん頷いているに違いないが・・

    ところで、今大人こそ絵本をという著者の語りかけは、大切なことを子ども時代に置き去りにせずに、大人になってからでも心の滋養分にじゅうぶんなり得るという考えの元に発せられたもので、私もそれには心から賛同している。
    心のゆとりとか潤いを求めるためだけでなく、大人になってからの方が、絵本の内容を深く味わえるのだ。
    そこに、自分の心の成長をみたり、時に退化をみたりしては、ひそかに居住まいを正すことも多い。
    でもそれはやはり、良い絵本との出会いがあるからこそ。
    絵本というジャンルに興味があるけれど、さて何を読んだら良いかとお悩みの方には、良い道しるべになるかも知れない一冊。

  • 著者の作品、ブクログ登録は2冊目。

    著者、柳田邦男さん、どのような方か、再度見ておきましょう。
    ウィキペディアには次のように書かれています。

    柳田 邦男(やなぎだ くにお、1936年6月9日 - )は、日本のノンフィクション作家、評論家。

    航空機事故、医療事故、災害、戦争などのドキュメントや評論を数多く執筆している。妻は絵本作家の伊勢英子。娘にカメラマンの石井麻木がいる。

    で、本作の内容は、次のとおり。

    豊かな子供の人間形成と潤いのある大人の心の回復のために。柳田邦男が薦める80冊の絵本。

    著者の妻、伊勢英子さんは、絵本作家です。
    ここに、今回の作品を書かれた理由がありそうですね。
    伊勢英子さん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    伊勢 英子(いせ ひでこ、1949年5月13日 - )は、日本の絵本作家。夫はノンフィクション作家の柳田邦男。しばしば「いせひでこ」名義でも活躍している。

    絵本、私も時々読みますが、子供の頃のことが思い出されたりします。
    良いものです。

  • 絵本の力
    「絵本」はさまざまな世代と社会の、大人の複雑なストレスを解放してくれるような気持ちになる。特に「星の王子さま」は人間が生きる上での大切なものを感じさせ、辛い悲しいことでも乗り越えさせてくれる。昔出逢った絵本をもう一度ゆっくり、じっくり自分の経験を振り返りながら読むと違った世界が見えるかもしれない。

  • 「大人こそ絵本を読もう」と提言する柳田邦男氏の書名を見るだけで泣けてきそうな絵本の世界への誘いです。 年齢や世代を超え共有できる、ユーモア、悲しみ、別れ、思いやり、心のつながり、支えあい、心の持ち方など、人間として生きるうえで大事なことを教え諭してくれる絵本の素晴らしさが語られています。柳田氏の亡きご子息から贈られたサン=テグジュペリの『星の王子さま』のこと、クライマックスで登場するキツネが 「肝心なことは目に見えない」 この言葉から、心の中で生き続ける子息を想う著者に胸を締めつけられます。

  • ❝心のいちばん深いところにあるもは、悲しみなのだ。
    そのことを心やさしい言葉で教えてくれたのは、
    サン= テグジュペリの『星の王子さま』だった。❞
    という柳田邦男氏の言葉に共感し、手に取った1冊。

    「ここで紹介される絵本を読むべき」というようなガイド本として読むのではなく、こんな風に自分の心に照らし合わせながら選べばいいんだなと、絵本との関係の築き方を教えてくれる本です。

  • たくさんの絵本が紹介されている1冊。

    多分名作ばかりなんでしょう。

    絵本と近しい生活をしている立場ではないので、知らないものばかりでしたし、掲載されているものを読もうとして、リストを作りながら読みましたが、そういう方法よりも、ふいに出会ってしまって心に残る1冊と出会えるよう、アンテナを立てておこう、と思いました。

    でも、いいきっかけでした。

  • 絵本を選ぶ目は確かだと思う。しかし、それらを紹介する記述がくどいというか、胸に響かない。本を紹介する難しさをあらためて感じた。絵本に寄りすぎているか、本人が出過ぎているかのどちらかで、エッセイに成りきれていない。

    ただし、『星の王子様』だけは飛び抜けて素晴らしい。亡くなった息子さんとのやりとりがなまなましく、心の深みが感じられるからだ。

    ・絵本は文学の重要なジャンルではないか、いや正確に言えば、絵本とは、簡潔に洗練された言葉と象徴的な絵と音読する肉声とが一体となって物語の時空を生み出す独特の表現ジャンル。
    ・なぜ「今、大人こそ絵本を」なのか。1.仕事やお金のことばかりではなく、豊かな感性や相手を思う心などに気づかせてもらえる。2.落ち込んだとき、年老いたとき、心をほぐしてくれる。3.メディアが錯綜する中で、絵本は親と子、大人と子どもが同じ空間と肉声と表情と物語の世界を共有できる
    ・幼少期の感情の分化を再体験する。
    ・一般的には「回想」することで、楽しいと感じることが多い。人生のさまざまな変化に対して、うまく適応していくのを助けるのが回想。

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BA79453217

  • 実は、モモ、を読んでいない。
    やっぱり読まなきゃと強く思った。

    戦争は絵本を通じて語り継がれるのかもしれない。

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著者プロフィール

講談社ノンフィクション賞受賞作『ガン回廊の朝』(講談社文庫)

「2017年 『人の心に贈り物を残していく』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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